★阿修羅♪ > IT11 > 780.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
『龍が如く』誕生秘話 “不自由さ”を残したことで生まれた大ヒットゲーム
http://www.asyura2.com/09/it11/msg/780.html
投稿者 MR 日時 2012 年 11 月 13 日 07:27:38: cT5Wxjlo3Xe3.
 

【第17回】 2012年11月13日 武田 隆 [エイベック研究所 代表取締役]
【名越稔洋氏×武田隆氏対談】(後編)
『龍が如く』誕生秘話
“不自由さ”を残したことで生まれた大ヒットゲーム
ヒット商品の仕掛け人が語る制作秘話はおもしろいものだと相場が決まっている。株式会社セガのヒットメーカー、名越稔洋氏の場合もまたしかり。
名越氏といえば、全世界500万本以上を売り上げたゲーム『龍が如く』の生みの親。この作品が誕生する過程にはどのような経緯があったのだろうか?
お話をうかがっていくと、『龍が如く』はコンセプトメイキングやターゲットユーザーの選定に一日の長があっただけでなく、ある点に徹底的にこだわり抜いていることが重要なカギを握っているのだとわかる。では、その「ある点」とは……?前編にひきつづき名越ワールド炸裂の対談は、ファンならずとも一読の価値ありだ。

繁華街をコンセプトにした時点で、勝算があった『龍が如く』

武田 私は名越さんが『龍が如く』の開発に入る前、その構想を聞かせていただいたことがあります。でもその時、「繁華街を自由に歩き回れるゲーム」と聞いて、どんなゲームかまったく想像ができませんでした。


名越稔洋(なごし・としひろ)
株式会社セガ 取締役CCO(Chief Creative Officer)。1965年6月17日生まれ AB型。山口県下関市出身。1989年セガ入社後、鈴木裕のもとCGデザイナーとして『バーチャファイター』シリーズの制作などに参加。1994年初のプロデュース作品『デイトナUSA』を発売し、ドライブゲーム史上に残る大ヒットを記録。2005年に大ヒットとなる『龍が如く』を手がけ注目を集める。『龍が如く』シリーズは全世界500万本以上のセールスを記録。
名越 それだけ聞いても、訳がわからないですよね(笑)。設定もストーリーも、それまでのゲームとはぜんぜん違うものでしたから。

武田 正直、お話をうかがったときは、こんなにヒットするゲームになるとは思えませんでした(笑)。「まだこれは世の中にはないものだから、つくってみないとわからない。自分はこれに賭ける」と名越さんがおっしゃっていたのを、よく覚えています。

名越 じつは「実在の繁華街」をコンセプトにした時点で、半分勝ったと思っていたんです。

武田 確信があったんですね。

名越 ゲームで何かの世界観をつくるときには、みんなが知っているものをテーマにするのが鉄則なんです。でも、メジャーなものは、たいていもう誰かが先につくってるんですね。

 そこで、ふと自分がかつてホームにしていた飲み屋街のことを思い出しました。そういう猥雑な繁華街をゲームの世界で再現したらどうなるだろうと思ったんです。繁華街って、今までメインテーマとして扱われたことはほとんどないけれど、みんなが知っていて興味もあるはず。「知らない世界をのぞいてみたい」という下心をくすぐるものがあるだろう、と分析していました。あとは踏み込んで、どれだけリアルに再現できるかがキーになるな、と。

 また、『龍が如く』というゲームの特殊性は、マーケティング的に徹底的に絞り込みをしているところにもあります。ゲームをつくっていると、いろいろ考慮しなきゃいけないことが出てくるんですよ。たとえば、海外展開を見据えて、舞台を海外にしたほうがいいんじゃないかとか。女性ウケを考えて、もっと主人公は親しみやすいイケメンのほうがいいんじゃないかとか(笑)。そういう意見は、もう全部突っぱねることにしました。

ターゲットを絞ると、クリエイティビティが加速する

武田 顧客ターゲットを絞り込むことで、コンセプトを際立たせていったわけですね。

名越 メンバーにも、そういった意見はいっさい相手にしなくていい、ただ基本コンセプトに従って、世界観をつくることに集中してほしいと伝えたら、とたんに内容が濃くなっていったんです。

 そこからは、メンバーが自発的に限界を超えてくるようになりました。僕がひとつメッセージを出すと、それに対して現場が出してくるものが、予想の先を行くようになったんです。結局、リーダーである僕が、流行や社会のルールにとらわれずに、取捨選択の「捨」の部分をはっきりさせることが必要だったんだと、わかりました。


武田 隆(たけだ・たかし)
エイベック研究所代表取締役。日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「企業コミュニティ」の理論と手法を独自開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2011年7月に出版した著書『ソーシャルメディア進化論』は第6刷のロングセラーとなっている。JFN(FM)系列ラジオ番組「マーケの達人」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。
武田 そのころに名越さんとご一緒することがありましたが、まさに“リアル『龍が如く』”というか、主人公の桐生一馬が乗り移ったみたいになっていらっしゃいましたよね(笑)。

名越 そういう部分もあったかもしれません(笑)。実際、毎日のようによく飲んでいましたしね。

 ゲームというのは、何かを模したうえで、それをバーチャルで体験するものだ、ともいえます。ゲームの舞台に似た繁華街は現実にあるのだから、あれはバーチャルではないという人もいました。でも、街に存在するすべての店に全部入ったことある人がいるか、というといないですよね。

武田 興味があっても、なかなか入れない店もあります(笑)。

名越 そうすると、そこを自由に歩き回る、というのは十分にバーチャルな体験になるんです。

武田 セガは『バーチャレーシング』など、もともとシミュレーションでバーチャルな世界を追求してきたゲーム会社ですよね。『龍が如く』はまったく異色のゲームに見えますが、しっかりセガの伝統の流れも汲んでいるわけですね。

名越 そうです。これは『バーチャレーシング』や『バーチャファイター』のプロデューサーだった鈴木裕から受け継いだことなのですが、バーチャルって、「本物」になってはいけないんです。

 たとえばドライブゲームだと、摩擦係数や慣性、景色など、現実に似せるための要素がいろいろあります。それが、そっくり現実どおりじゃダメなんです。ドライブの楽しさを引き出す「ちょうどいい」ところで、パラメータを調整しなければいけない。

現実をそっくり再現すると、ゲームはつまらなくなる

武田 現実を、正確にシミュレーションするだけではダメなんですね。

名越 それではゲームとしてつまらなくなってしまう。現実のケンカでも、『龍が如く』のバトルみたいに1対3で戦ったらほぼ100%負けるんですよ。でも、現実がそうだからといって毎回負けていたら楽しくないですよね。だから、たとえ100人を相手にケンカしても、楽しかったり爽快になったりするように、システムを調整してある。

武田 ディズニーランドのシンデレラ城も上に行くほど、城壁の石が小さく積まれていて、強化遠近法で実際より高く見えるようにデザインされていると聞きました。

名越 それと同じです。『龍が如く』って、実は2割が女性ユーザーなんです。その女性ユーザーにどこがおもしろかったかアンケートをとると、ドラマを楽しんでくれているのはもちろん、それと同じくらい「バトルがよかった」「戦っていて気持ちがよかった」という意見が多かったんです。それは、ひとえにうまく勝てるからだと思います。

 たとえば『バーチャファイター』だと、1/60秒でフレーム(画面の1コマ)管理をしていて、このタイミングでこのボタンを押さないと絶対に技が出ないというように、難易度の高い技は相当出しにくく設定していました。

 でも『龍が如く』は、より強い技が簡単に出やすい選択にしてあるんです。ある程度、勝つための行動をとっていると、どんな操作でも勝てる方向にフラグを振る。そして、勝つとやっぱり気持ちがいいんですよね。これも、強い人間になったような気持ちが味わえる、ひとつのバーチャル体験です。

武田 なるほど、だから『龍が如く』はプレイしやすいんですね。簡単というわけではないですが、先に進めないこともなく、ちょうどいい感じがしました。

名越 「ちょうどいいゲームがいいゲームだ」というのは僕のポリシーです。いま、ゲームが海外に合わせて重厚長大になる傾向がありますが、それではエンディングも見られない。僕からすると、長すぎると思います。

不自由をデザインすることで、自由を感じさせる

名越 バーチャルをつくるうえで、現実そのままではダメですが、現実からスタートするというのは必須です。軸はやはり現実にあるんです。

『龍が如く』では、実在の繁華街の風景などをかなり正確に模しています。道路の縁石の高さなど、調べてみてわからないところは、実際に測りにいくということを繰り返していました。写真などを撮っていると怪しまれるから、ササッと逃げたりしながらね(笑)。

武田 それでいうと、戦闘シーンなどで、ただの背景だと思っていた路上のパイロン(カラーコーン)や看板などがつかめるのがおもしろいですよね。『龍が如く』が自由度の高いゲームだと言われるのもわかります。

名越 いや、ほんとは不自由なんですよ。

武田 え!?

名越 よく「自由なゲームですよね」と言っていただくんですが、本当はできないことのほうが多い。

武田 不自由をデザインすることで、自由を感じられるようになる、ということですか?

名越 そのとおりです。また、作品性を守るための不自由、というのもあります。たとえば『龍が如く』は、自分から人を殴ることは絶対にできない仕様になっているんですよ。相手に絡まれないと、ケンカは始まらない。だから、暴力ゲームと言われるのはいささか心外なんですよね。

 また、子どもが死ぬシーンと薬物が出てくるシーンも絶対に使わない。これは『龍が如く』というゲームの作品性を守るためには、譲れない部分です。いま、7作目の公開を控えていますが、シリーズを通して一度も許したことはないです。

 すべてが自由だと、強いメッセージを保ったゲームではなくなってしまうんです。クリエーターによって考え方はいろいろあるかもしれませんが、ゲームというのはプレイヤーに決められた設定、役割、そしてルールがあって初めて成り立つものだと私は信じています。

武田 それは、企業コミュニティの運営にも通じるかもしれません。

これからは、企業組織もクリエイトする対象に

武田 企業コミュニティに人を集めて「さあ、何でもいいから自由に発言してください」と言っても、参加者は困ってしまうんです。

 そこで、たとえばある商品について、1年以上使っている先輩ユーザーに、購入を考えている人、もしくは買って日が浅い後輩ユーザーが質問をするという役割を提供します。ある種のルール、不自由を設計する。そうすると、堰を切ったようにみなさんが発言を始めるということがあります。

名越 たしかにその役割設定は、ゲームのルールに似ていますね。

武田 『龍が如く』も、プレイしていると「あれも触れる」「これもつかめる」という経験から自由に感じるのですが、それは逆につかめない場所があるからこそ、感じる自由なんですね。

名越 そのとおりです。それって、経営にも近いと思うんですよね。

武田 それはおもしろい観点ですね。名越さんは、今年の4月から、セガの取締役になられたんですよね。

名越 はい。会社のルールというのは、定款に始まって、人事制度みたいなところまで細かく決まっていますよね。それによってできないこともたくさんあるし、不満もある。しかし、逆に会社にいることで得られていること、守られていることもたくさんあります。社員にいま自分の置かれている環境がいいと感じてもらうのは、ゲームの不自由を上手に設計するのに似ていると思うんです。

武田 ゲームクリエイターの名越さんならではの経営論ですね。いまやっぱり関心は、組織をどうつくるかというほうに向いていらっしゃるのでしょうか。

名越 そうですね。うちはゲームをつくる会社なので、社員のクリエイティビティに足かせははめたくない。かといって、アイデアだけで具現化できない組織にはしたくない。そのバランスが難しいですね。


大ヒット作『龍が如く』誕生の極意は、マーケティングや企業組織のクリエイトまで展開できそうだ。
武田 これからは、組織もクリエイトする対象になっていくのでしょうね。私もその心構えで経営をしています。

名越 絶対、そうだと思います。僕はもともとグラフィックデザイナーからキャリアを始めているので、こういう言い方になりますが、セガという会社を「デザインする」という感覚に近づいています。

 やはり、セガはゲームをつくる会社ですから、その商品がもつメッセージ性がそのままブランドにつながっていくんですよね。だから、ブランドを守るのはもちろん、未来を見せるような、いまのブランドを超えていくようなものをつくっていきたいと思っています。

※次回は、劇作家・演出家の平田オリザ氏との対談を11月27日(火)に配信予定です。

【編集部からのお知らせ】
大好評ロングセラー! 武田隆著『ソーシャルメディア進化論』


定価:1,890円(税込) 四六判・並製・336頁ISBN:978-4-478-01631-2
◆内容紹介
当コラムの筆者、武田隆氏(エイベック研究所 代表取締役)の『ソーシャルメディア進化論』は発売以来ご高評をいただいております。
本書は、花王、ベネッセ、カゴメ、レナウン、ユーキャンはじめ約300社の支援実績を誇るソーシャルメディア・マーケティングの第一人者である武田隆氏が、12年の歳月をかけて確立させた日本発・世界初のマーケティング手法を初公開した話題作です。

「ソーシャルメディアとは何なのか?」
「ソーシャルメディアで本当に消費者との関係は築けるのか?」
「その関係を収益化することはできるのか?」

――これらの疑問を解決し、ソーシャルメディアの現在と未来の姿を描き出した本書に、ぜひご注目ください。

※こちらから、本書の終章「希望ある世界」の一部を試し読みいただけます(クリックするとPDFが開きます)。

絶賛発売中!⇒[Amazon.co.jp] [紀伊國屋BookWeb] [楽天ブックス]

◆内容目次
序 章 冒険に旅立つ前に
第1章 見える人と見えない人
第2章 インターネット・クラシックへの旅
第3章 ソーシャルメディアの地図
第4章 企業コミュニティへの招待
第5章 つながることが価値になる・前編
第6章 つながることが価値になる・後編
終 章 希望ある世界
http://diamond.jp/articles/print/27525  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > IT11掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > IT11掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧