| 01. 2013年9月13日 10:03:19
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 1. なぜ蛇に足を描いたか(論長論短 No.199)
 2. 上杉隆さん連載・その4 3. ソフトブレーングループからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1. 論長論短 No.199
 なぜ蛇に足を描いたか
 宋 文洲
 ソファでボーッとしていると「漢文の暗唱をチェックしてほしい」と小学校5年生の娘に頼まれました。私も昔に覚えさせられた物語です。
 「お祭りのお手伝いに来た数人が雇い主からお酒を貰いました。『この酒は皆で飲むと足りないが、一人で飲むと余るほどある。それなら
 各自が地面に蛇を描き、早く完成した人に飲んでもらおうか』と数人が
 相談して決まりました。
 一番早く完成した人が左手で酒をとって飲もうとしながら、右手で蛇に足を描き始めました。『俺は足を描く余裕もあるぞ』と。その間に次に描き終えた
 人が彼から酒を奪い『蛇には足がない。どうして足を描くのか』と言って酒を
 飲んでしまいました。
 蛇に足を描いた人は結局お酒を飲み損ないました。」 これは紀元前460年〜220年の間に書かれた「戦国策」という書物の中にある話でした。日本にも「蛇足」という表現がありますが、中国では四文字成語の
 「描蛇添足」でこの物語を略称しています。
 誰でも知っている話ですが、50歳を過ぎた私は急にあることに気付きました。蛇足は「余計なことをするな」と言っていますが、改めてこの物語の原文を
 聞くと、人はなぜ余計なことをするのかについて悟りました。余裕があるからです。
 もともとひた向きで堅実に経営していたベンチャー仲間が、ベンチャーキャピタルから大金をもらうと急に余計な設備を導入し、余計な事業に
 乗り出した結果、会社が傾いた実例はよく知っています。
 もともと勤勉で倹約していた上場企業のオーナーが株を売ったことで大金をもらって変なことにお金を使った結果、お金を無くしただけではなく、
 家族の絆、人間関係と生活の質も壊してしまう人もよく知っています。
 実際に「当時、お金が無ければ良かった」と失敗した後、私に言う人も居ました。 明らかに余計なことをやっているのですが、本人は気付きません。余裕が無い時に決してしないような合理性にかけた行為をする唯一の理由は、
 余裕があるからです。ずっと余裕がないのに急に余裕が持てるような人は
 特に危ないのです。
 ずっとお金が無かった人が急にお金を手にした時、ずっとヒラの人が急に昇進した時、ずっとお腹を空かしてきた人が急に食べ放題に遭遇した時・・・
 足りない状態から急に余る状態になった時、人間は容易に非合理的な行動を
 起こす。そのパターンは紀元前の「戦国策」にも記録されただけです。
 経営の話に戻りますが、「充分な資金さえあれば○○ができる」、「良い人材さえいれば□□ができる」という人は何もできないだけでは
 ありません。その状況が本当にやってきた場合、たぶん合理的な行動を取らず、
 その要素を過剰に評価し、逆効果を招くでしょう。
 技術も同じです。iモードに代表された日本の携帯電話の技術は世界をリードしていました。1999年夏にそれを最初に目にした時の衝撃は今も
 覚えています。現在多くの日本企業に導入され高いシェアを獲得している
 ソフトブレーンのeセールスマネージャー(http://krs.bz/softbrain/c?c=3234&m=43118&v=20fc4b5b)は
 まさに最初にこの技術に目を付けたことで世の中に広がりました。
 しかし、iモード自体は世界のマーケット環境に適していくのではなく、国内の細かいニーズに掘り込んで行きました。確かにいち早くWeb携帯に
 慣れた日本人にとって痒いところに手が届くような機能でしたが、より広い
 世界に広めるには、蛇足でしかありません。それが今となってガラパゴスと
 言われるようになりました。技は身を助けることもありますが、技への偏重は
 市場という美酒を無くすこともあります。
 余裕を求める世の中ですが、余裕が無い時こそ創造力と効率性が生れることを、せめてビジネスマンが忘れないでほしいものです。
 P.Sもともと今回のメルマガでは、オリンピック招致成功をテーマにするつもりでした。中国語で中国メディア・新浪財経に発表し、既に大きな反応を呼んだコラムを、
 日本語に書き直そうと思いました。やり出すと非常に翻訳し辛いことに気付き、
 諦めて上のようなテーマにしました。
 しかし、原稿を送った後、なんと、私の中国語コラムが既に日本語に翻訳され、日本のメディアから発表されたことに気付きました。ご興味があればご覧ください。
 時間のない方はここを飛ばしてください。
 東京五輪招致、成功の鍵は招致委員に一流の企業家がいたこと 2020年夏季五輪・パラリンピックの開催地は東京に決定した。国際オリンピック委員会(IOC)委員の投票直前に福島原発の放射能汚染水流出の
 ニュースが報じられ、「東京やや優位」の状況に陰りがさしたが、結果としては
 東京がイスタンブールやマドリードに大差をつけて勝利した。では、なぜ日本は
 最終投票でこれほど多くの支持を得たのか?
 今回の誘致成功は日本の財力や安全性、情緒的な英語のプレゼンテーションによるものではない。それは日本の五輪招致委員会の「売り込み能力」によるものだ。
 招致委員会のメンバーのなかに一流企業家が2人含まれている。
 1人はトヨタ自動車の張富士夫名誉会長であり、もう1人はローソンの新浪剛史社長だ。
 彼らが招致委員会のメンバーに選ばれた時、私は「今回の五輪招致は過去とは違う」と直感した。ビジネスを通じて、私はこの2人をよく知っている。張富士夫氏は
 彼の販売戦略担当者に私の著書を勧めてくれた。新浪氏は10数年来の友人で、
 私は彼の経営顧問をしている。彼らは気取りがなく、非常に仕事熱心だ。
 こうした企業家こそが最も怖い存在なのだ。
 IOC委員は東京視察の際、心のこもったおもてなしを受けている。彼らを迎えた猪瀬東京都知事は常に腰が低く、礼儀正しかった。さらに、
 IOC委員1人1人の詳細なデータを収集し、委員たちの嗜好や趣味、接触方法
 なども探っている。
 こうしたやり方は、一流企業の販売戦略と通じている。顧客の嗜好やニーズに合わせた商品を開発するプロセスと同じだからだ。官僚たちにはない発想が
 企業家たちにはある。顧客のデータを科学的に集めて管理し、これを販売に
 活用するのは国際企業の常識だ。わずか45分間のプレゼンテーションで委員の
 心が変わるとは思えない。目には見えない日本の過去の努力が実を結んだのだ。
 こうした事情を知らない人は主観的意見から五輪招致成功の原因を表面上の
 ものにみているが、功労者は何も語らず、ひっそりと自分の仕事場に戻って行った。
 http://krs.bz/softbrain/c?c=3235&m=43118&v=8577db55(翻訳文が掲載されているレコードチャイナのサイト)
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 http://krs.bz/softbrain/c?c=3237&m=43118&v=1511fd08
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 ■2.上杉隆さん連載
 その4上杉隆
 今週、2年ぶりにジャーナリスト休業宣言を撤回した。またツイッターでのつぶやきを無期限で停止した。
 詳細は発売中の『文藝春秋』に寄せたので、そちらを読んでいただきたい。
 私はこの2年間、公益社団法人「自由報道協会」の理事長、またインターネットメディアカンパニー「NOBORDER」社長の仕事を優先させたため、
 本業のジャーナリストを休んでいた。
 いや、正確に記さなければならない。一部、ジャーナリスト業は続けていた。そう、ゴルフ、私の本業はゴルフ作家なのである。
 今週の『週刊ゴルフダイジェスト』でも4ページの記事を寄せている。まだ発売中なので、今回は過去に書いたものを、このコラムに再掲しよう。
 (以下引用)
 【自民党の大敗は“ゴルフ”癖から垣間見えていた】(GOETHE×GDO 2009年9月)
 ゴルフのプレイスタイルはその人物の性格を表すという。歴代の大統領のほとんどが「ゴルファー」である米国では、その政治スタイルをゴルフプレイに
 比することで分析することも少なくない。
 たとえば、ニューヨーク・タイムズ記者のドン・ヴァン・ナッタJr.による『大統領とゴルフ』という本の中では、マリガン(打ち直し)を繰り返す
 ビル・クリントンを揶揄して、“ビリガン”とし、スコアと同様、政治姿勢も
 ごまかしの連続だったと断じている。
 ジョン・F・ケネディはゴルフ熱が昂じて、ホワイトハウスの中庭にアプローチ練習場を造ってしまった。現在のバラク・オバマもまた、
 そのケネディを凌駕するゴルフ好きとして知られる。昨年の大統領予備選中、
 休暇先のハワイでラウンドをしていたのは有名だが、実は駐留米軍兵士の
 慰問のために訪れた中東のクウェートでも秘かにクラブを振っていたのだ。
 国家リーダーのゴルフ好きは万国共通のようだ。日本でも鳩山一郎のゴルフ好きは有名で、単身、スコットランドのセント・アンドリューズやアメリカ西海岸の
 ぺブルビーチを訪れて、クラブを振っている。当時、鳩山は文部大臣、国会を
 サボってのゴルフ漫遊にさすがに批判の声もあったという。鳩山一郎元秘書の
 石橋義夫が語る。
 「あまりに頻繁なので、首相からは、『なんだ、鳩山はまた棒振りか』と呆れられていた。それでも飽き足りず、軽井沢の別荘にコースを造ったりもしていた」
 鳩山の次に有名なところでは田中角栄だろう。軽井沢ゴルフ倶楽部で白洲次郎に怒鳴られたという逸話も残っているが、そのプレイスタイルは確かに独特だった
 ようだ。田中角栄元秘書の早坂茂三が、生前、筆者にこう語ったことがある。
 「早いのなんのって。構えてさっと打ち、ダーっとボールのところまで駆け寄ると、もう球を打っている。あまりにもなんで、『オヤジさん、そんなに急ぐと
 身体に悪いぜ』と忠告したら、『バカ、1日で3ラウンドするんだ。健康のために
 急いでいるんだ』と怒鳴られたよ」
 田中派に所属したこともある細川護煕もゴルフ好きだ。上智大学ゴルフ部出身だけあってフォームは美しい。だが、そのスタイルはやはり独特だった。
 10年ほど前、箱根湖畔GCでラウンドする機会があった。細川はボールを打つと、
 静かに歩き出す。そしてボールのところに来ると、次のショットを考えて、
 また打つ。一見、優雅なゴルフに見えるがそうではない。同伴者の動きは
 見ておらず、ほとんど無視、そう、ひとり我道を行く“殿様ゴルフ”なのだ。
 だから同伴者はみな、細川のいない方向に打つように気を遣わなくてはならなかった。
 小泉純一郎は能天気である。山梨県の富士ゴルフコース、首相を辞めたばかりの小泉のすぐ後ろの組でラウンドする機会があった。「いやぁー、いい天気だね〜」
 ティーグラウンドでニコニコしながらこう語る小泉、だが、雲は厚く、富士山も
 見えなければ、陽も射していない。
 「いやぁ〜、緊張するね〜、久しぶりで」そう語りながら、小泉がアドレスをすると、なんと雲の切れ間から太陽光が覗く。しかも雲に隠れていた富士山頂
 までもが見えた。ほとんど神懸りである。すると、緊張しているはずの小泉が
 話しながらスウィングしたと思ったら、フェアウェイの右サイドにグッドショットを
 放った。やはり変人だ。
 その際、首相になる前の麻生太郎もいた。さすがにクレー射撃の元オリンピック選手である、アドレスには時間をかける。ボールの後方から見て、
 ワッグルを繰り返し、アドレス、再び仕切り直しをし、まだ打たない。やっと
 打ったと思ったら、左の林。そのときの麻生の言葉はこうだ。「おーっと、
 左肩が止まっちまったぜ」その後、麻生は首相に就任。その時点で、
 決断のできない言訳の多い首相になることを事前に見抜いていたのは、
 筆者だけだったに違いない。
 (引用ここまで)
 政治とゴルフ。実は、これは日本のメディアの陳腐さがもっとも象徴的に現れるテーマのひとつである。
 「金持ちのスポーツ」「接待」「賭けゴルフ」・・・・・・ その見方を覆すのが、米国大統領とゴルフの関係だ。今回のゴルフダイジェストの原稿には、もっと詳しく米国大統領が登場する。
 是非手に取って、日本のメディアの思考停止を発見してほしい。 (終わり) |