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今日、神戸新聞に芥川賞作家の米谷ふみ子さんの評論が出ていた。おそらく著作権の問題があって電子版には出ていないようだ。無駄かも知れないと思いながら記事情報サイトで検索すると沖縄タイムスでヒットした。
以下は「沖縄タイムス記事情報／G-Search」で検索、貼り付け。
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［評論］／米谷ふみ子／オバマ大統領 就任１年／見えぬ実行力に失望感
2010.01.31 朝刊-1集 13頁 文化 (全1,423字)
米谷ふみ子さん
１年前、オバマ大統領就任式の様子を見た世界中が、とても希望にあふれていた。今は共和党右派を除いてアメリカ全体が消沈してしまっている。過去１年はオバマは大統領見習いのつもりだったのだろうか？ 選挙期間中に約束したことは果たさないままで、彼を支持した若者たち（映画監督マイケル・ムーアも含む）の失望に彼はどう応えるのだろうか？
せっかく安定多数の上院６０議席を民主党が確保しているときに、どうして押しの一手で庶民への約束を果たさなかったのか？ ブッシュ前大統領が自分は「ディサイダー（決定者）」だと言って企業側の“環境保護に反対する”等の悪い規制を次から次と通したのだが、オバマは「前大統領はパルチザンで他党の意見なんか聞かないで国を分けた。自分はバイパルチザン（超党派）にして国を統一したい」という理想を掲げていた。
しかし「社会福祉なんてどうにもならない。金持ちの税金はカット。困っている庶民は助けない」という無情な共和党が、程度の低い小学生のいじめのような揶揄（やゆ）で民主党の議案に絶対に賛成しないことが分かっていても、賛成するまで待つという時間の浪費をオバマはした。庶民のために良いことさえちゅうちょしている。テレビで評論家が「彼はディサイダーではなくてエクスプレイナー（説明者）なんだろう」と皮肉った。
米上院による医療保険改革法案可決後、会見するオバマ大統領（右）。就任１年で苦境が続く
アメリカに５０年住んでいるが、これほど何も実行に移さない（アフガン３万人追加増派を除いて。これは不必要）アメリカの大統領を見たことがない。頭は明晰（めいせき）と定評があるが腰抜けで何も出来ない。テレビで見ているといら立つ。
ケーブルテレビＭＳＮＢＣのシュルツ・ショウで世論調査を発表していたが、「オバマは過去１年、中産階級のために尽くしたか？」という質問に１５％がイエス、８５％がノーと言った。
選挙期間中は、ブッシュの８年で二つの戦争や駄目になった教育、経済、社会福祉を変える（チェンジ）と鼓舞したけれど、ほとんど何も変わっていない。オバマ政権がやっと通した医療保険改革法は市民にはどこにメリットがあるのか十分伝わっておらず、結局は保険会社がもうかるだけではという声もある。また経済も、大銀行に国民の税金から出した援助金は無利子で、庶民が使っているクレジットカードの延滞利子は２０％以上。両党とも金まみれの選挙で金融の規制もままならぬ状態だ。これはブッシュから受け継いだものだが、「チェンジ」と言ったのだから変えるべきだ。
そんなとき、マサチューセッツ州で故ケネデイ上院議員の後釜に共和党のブラウンが当選した。それで、６０議席が割れてしまった。引退する議員もいるので、もっと少なくなる。オバマは絶好のチャンスをミスしたのである。
その上、両党が選挙資金ほしさで企業に遠慮して金融機関規制もできないでいるときに、ブッシュが選んだ最高裁判事たちが、１０３年前に禁じられた企業献金の上限を５対４で取り除いたのである。将来すべてが企業の言うままになり、庶民の利なんて何も無くなり、金持ちがいやが上にも金持ちになり、世界の警察のように振る舞っていたアメリカがやることを世界中がまねをする。お先真っ暗である。
こめたに・ふみこ １９３０年大阪市生まれ。作家。６０年から米国在住。「過越しの祭」で芥川賞受賞。
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