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再び悲劇に見舞われたポーランド 〜過去の惨事と向き合う契機に〜
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投稿者 まりお 日時 2010 年 4 月 13 日 20:20:36: igp8wnzHgZSDs
 

(回答先: ロシア西部でポーランド大統領機が着陸失敗、87人死亡(worldtimes) 投稿者 卑弥弓 日時 2010 年 4 月 10 日 18:34:39)

どんな国にとっても、大統領と中央銀行総裁、軍首脳、その他80人以上の政官界の要人を失うことは国家的な悲劇だろう。

 ポーランドにとっては、ショックは特に激しい。今回の事故は即座に、ポーランドが過去100年間に苦しめられてきた多くの悲劇――第1次世界大戦、第2次世界大戦、ナチスによる占領、ユダヤ人のホロコースト、40年間に及ぶソビエトの覇権――を想起させるからだ。

 さらに悪いことに、ロシア領スモレンスク近郊で起きた飛行機墜落事故の犠牲となったレフ・カチンスキ大統領らは、とりわけ痛ましい任務に向かう途中で命を落とした。

 大統領一行はカチンの森など十数カ所でポーランド軍将校ら2万2000人が旧ソ連の内務人民委員部(秘密警察)に殺された大量虐殺事件の70周年追悼式典に出席するため、現地に向かっていた。アレクサンデル・クワシニェフスキ元ポーランド大統領が事故後に語ったように、「カチンの森は呪われた場所」なのである。

 ポーランド人たちは墜落事故の知らせを嘆き悲しみ、花とロウソク、そして教会での追悼ミサという、ポーランド人にはひどく馴染み深い儀式で死者を弔っている。

 第2次世界大戦は言うまでもなく、共産主義の記憶がない比較的若い人々でさえ、どう振る舞うべきかよく分かっている。ポーランドの暦でクリスマスと復活祭の次に重要な聖日は11月1日の万聖節で、この日は数百万人のポーランド人が一緒に追悼の意を示すために家族の墓地を訪れる。

 ポーランドの歴史ある墓地に掲げられた標識が示す通り、「国家とはその土地であり、その墓」なのだ。


要人の死を乗り切る強い公的制度

 だが、今回の悲劇は20世紀の悲劇とは異なる状況下で起きた。当時、ポーランド人は抑圧や不確実性、または、その両方に苦しめられていた。

 今、この国は過去200年間で最も長い繁栄期にある。民主主義、生活水準の向上、そして北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)への加盟がはっきりした目的意識を生んだ。

 何より重要なことは、ポーランドは今、国の中枢を担う要人の一部の死をも乗り切れる強い公的制度を備えた国だということだ。カチンスキ氏の死の直後、憲法に則って、下院議長のブロニスワフ・コモロフスキ氏が大統領代行に就任した。軍と中央銀行でも、新たにトップが任命された。国家機構は円滑に機能している。

 大統領選挙は大幅に前倒しされ、6月末までに実施されることになった。これまでは今秋に実施される大統領選で、カチンスキ氏が、ドナルド・トゥスク首相率いる中道右派の最大与党「市民プラットフォーム」の大統領候補であるコモロフスキ氏と戦うことになると見られていた。

 カチンスキ氏を支持していた保守派政党「法と正義」は今後、別の大統領候補の擁立を模索することになる。その候補は、レフ・カチンスキ氏の双子の兄弟で、前首相のヤロスワフ・カチンスキ氏かもしれない。カチンスキ陣営は、国民の同情を得られるだろう。だが、それでもやはりコモロフスキ氏が勝つ公算が大きい。

 これは、何も変わらないという意味ではない。墜落した飛行機にカチンスキ大統領と同乗していた要人には、保守派の味方が大勢含まれていた。法と正義は彼らの代わりを見つけるのに苦労するだろう。

 このことは、短期的には法と正義と対立する政党を利するかもしれない。長期的にはポーランドの政治そのものが苦しむことになる。過去の戦争と他国への移住で弱まったこの国のエリート層は、政治的な影響なしに、これだけ多大な損失に耐え切れるほど大きくないのである。


ロシア・ポーランド関係の改善に期待

 ポーランドとロシアの関係にも変化が生じるかもしれない。事故後の対応がうまくなされれば、両国関係のためになるだろう。今のところ見られる兆候は有望だ。4月11日には、トゥスク首相とロシアのウラジーミル・プーチン首相が一緒に墜落現場で花を捧げるという胸を打つ場面があった。

 また、カチンスキ氏の死によって、ロシアに対して強硬姿勢を取る人物がポーランド大統領府から去ったことになる。トゥスク首相はかねて、カチンスキ氏より柔軟だった。もしトゥスク首相が推すコモロフスキ氏が大統領の座に就けば、両国関係の緊張はもう少し緩和するかもしれない。

 しかし、両国とも、ポーランド大統領と随行団がカチンの森から数キロしか離れていない場所で死ぬという恐ろしい皮肉を避けて通ることはできないだろう。ロシア政府とポーランド政府の和解は、両国がカチンの森の大量虐殺事件に対するアプローチで歩み寄って初めて可能になる。

 ソ連最後の指導者であるミハイル・ゴルバチョフ氏とボリス・エリツィン元ロシア大統領は、大量虐殺に対するソ連の関与を認めたものの、ロシアはその後、公文書の閲覧などについて協力を渋ってきた。

 1940年に起きた出来事と今回の飛行機墜落事故の間に直接的な関係はない。だが、今回の惨事を巡って一緒に作業することが過去の問題と対処するうえでのより良い協調に発展していけば、命を落としたばかりの人々への手向けになるはずだ。


By Stefan Wagstyl in London  

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