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外務官僚たちの太平洋戦争 佐藤元英著  開戦導いた革新派の役割検証:松岡洋右氏ならともかく東郷茂徳氏には荷が重すぎ
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 10 月 01 日 03:25:56: Mo7ApAlflbQ6s
 


外務官僚たちの太平洋戦争 佐藤元英著
開戦導いた革新派の役割検証

 本書は、太平洋戦争開戦と終戦のプロセスのなかで外交官ないし外務官僚たちが果たした役割を明らかにすると銘打っている。なかでも、主な対象として扱っているのがいわゆる外務省革新派である。

 枢軸派あるいは革新派と呼ばれた少壮外務官僚が、陸海軍と協力して、無通告開戦の手続きとシナリオづくりに関わったことを、本書はきわめて説得的に実証している。一般に陸軍に対抗して国際協調路線をとったとの印象がある外務省のなかで、革新派が開戦のプロセスに果たした役割は、著者によって初めて明らかにされた部分が少なくない。この点だけでも、本書を読む価値は十分にある。

 革新派についてと同じくらい、あるいはそれ以上に著者が力を込めて描いているのは、開戦時と終戦時の外相で、革新派と対立した東郷茂徳である。特に、開戦前、戦争回避のために続けられた日米交渉の最終局面で東郷外相が果たした役割についての描写と分析には、迫力がある。時間が限られたなかで東郷外相はあまりに細かく刻んだ交渉タクティクスにこだわりすぎた、と著者はきびしく批判する。むろん著者は、戦争回避の可能性が狭まってゆくなかで東郷がいかに悩み苦しんだかを理解したうえで、あえてきびしい批判を加えているのだろう。

 また、終戦のプロセスに関しても、東郷に対して著者はきびしい目を向ける。ソ連の和平仲介にこだわりすぎたというのである。著者によれば、東郷はソ連の対日参戦の可能性を軽視して、終戦実現のために陸軍を説得することにばかり努力を集中したとされる。それは、そのとおりだろう。でも、徹底抗戦を主張する陸軍を和平に向かわせることなしには、あの時点での終戦は難しかったのではないだろうか。ソ連仲介を選択肢として退けるとすれば、方法は米英に直に和平(降伏)を申し入れることしかなかっただろうが、果たしてそれは可能だっただろうか。こうしたあたりの判断は難しい。

 開戦・終戦には必ずしも直接関係しないかもしれないが、本書を読んで印象に残ったのは、太平洋戦争の「前史としての経済戦争」という捉え方である。著者が特に強調しているのは、アメリカの対日抑止政策としての経済制裁であり、外務省革新派は、この経済制裁を戦争行為に準じたものとして危機感をもって深刻に受け取ったと指摘している。「経済戦争」という視点は、開戦に向かう日本の対外認識を考えるうえで、なかなか示唆に富んでいる。

(NHK出版・1600円)

 さとう・もとえい 49年秋田県生まれ。中央大教授。著書に『近代日本の外交と軍事』(吉田茂賞)など。

《評》帝京大学教授
戸部 良一

[日経新聞9月27日朝刊P.23]

 

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コメント
 
1. 2015年10月01日 16:38:16 : w3M1BHSquE
開戦にせよ終戦にせよ、日本の国家の方針を決定したには 最高戦争指導会議 である そしてその構成は
首相、外相、海相、陸相(以上 政府側)、そして陸軍参謀総長、海軍軍令部総長(以上軍部側)と言う事であるが
海相(海軍大臣)と 陸相(陸軍大臣)は、必ず軍人側から出される訳であるから
実質的には 政府から出されている人間は、首相と外相の二人のみ 残り4人は軍部側の人間であり
軍部に都合の悪い決定は まず出来ない こういうシステムになっていた訳だから外相一人を責めても仕方ないのだ

ただ、終戦の時だけは、時の海軍大臣 米内光政だけが この時は和平派に回ったため、終戦か戦争継続か
3対3の互角になって 延々と議論は決着つかず、昭和天皇による断が下されたと言う訳である
( しかし、その聖断が下ってもなお 壮絶な葛藤が続いたのも事実であり、玉音放送まで 様々な抵抗が有った )

つまりこの、軍人4人 民間人2人 という最高戦争指導会議の構成自体が 軍部の好き勝手な事ができる体制であり
しかも この終戦時の総理大臣 鈴木貫太郎でさえ軍人出身、純粋に民間出身は 外相だった東郷茂徳ただ一人
外相(外務大臣)だけを責めたって仕方ない事である

とは言え、昭和6年から始まる満州事変からの 軍部の暴走には、時の外相 松岡洋右の役割は大きく
「軍部やマスコミと結託した軍国主義への扇動」 は、明らかにこの男の責任は 極めて重大であり
“昭和天皇が最も忌み嫌った男”と言われるゆえんでもある
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B2%A1%E6%B4%8B%E5%8F%B3

本当に断罪すべきはこの 「松岡洋右」 である 「東郷茂徳」 にだってもちろん責任はあるが
東郷が外相となった時期ではもはや どうすることも出来なかったと言っても 過言は無いでしょう。


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