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ケーブル考(銀線のこと)
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1184.html
投稿者 中川隆 日時 2021 年 5 月 09 日 12:09:58: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: よんまるのオーディオメモ _ プロケーブル社の焦点理論は正しいか? 投稿者 中川隆 日時 2020 年 3 月 20 日 18:02:24)

ケーブル考(銀線のこと)

audio identity (designing)宮ア勝己 
Date: 4月 28th, 2015
ケーブル考(銀線のこと・その1)
http://audiosharing.com/blog/?p=16871

銀が銅よりも導体抵抗が低いことは知っていたけれど、
銀のケーブルがあることを知ったのは、すてサウンドに載っていた新藤ラボラトリーの広告だった。
ウェスターン・エレクトリックに銀のケーブルがあった、とそこには書かれていた。

ちょうど同じころ、マークレビンソンが内部配線材に銀を採用したML6が登場した。
マークレビンソンも銀なのか、その偶然にも驚いていた。

しかもである。ステレオサウンド 52号掲載の五味先生のオーディオ巡礼にも銀線のことが出てくる。
       *
たとえばピックアップコードを通常の銅線から銀線に代えると、高域の伸びは輝きをまし、低域もずいぶんレンジの伸びたふくらみを聴かせてくれるのは、今では大方の人が実験しているだろうが、私の知るかぎり、最初にこれを試みたのは岩竹氏であった。
     *
その岩竹氏のMC275を借りて五味先生は鳴らされている。これも52号に書かれている。
     *
拙宅のマッキントッシュMC275の調子がおかしくなったとき、岩竹さんがアンプ内の配線すべて銀線に替えられたアンプを所持されると聞き、試みに拝借した。それをつなぎ替えて鳴らしていたら娘が自分の部屋からやってきて「どうしたの?……どうしてこんなに音がいいの?」オーディオに無関心な娘にもわかったのである。それほど、既製品のままの私のMC275より格段、高低域とも音が伸び、冴え冴えと美しかった。
     *
もうこれだけで充分である。
銀線の音など聴いてもいないのに、銅線よりも銀線となっていた。
http://audiosharing.com/blog/?p=16871


ケーブル考(銀線のこと・その2)
http://audiosharing.com/blog/?p=16877

銀線の良さを認める人がいる一方で、否定的な人がいる。
銀線といっても、さまざまなことを考えれば、あたりまえのことである。

銅線にしてもタフピッチ銅と無酸素銅があり、純度に関しても大きな違いがあり、
熱処理、線径の太さなど、すべてが音に関係しているのだから、
銅線の音に関しても、いわゆるピンキリの状態である。

銀線も、銅線ほどあれこれ選べるわけではないけれど、同じであるのだから。

五味先生が感心された岩竹氏によるマッキントッシュのMC275には、
どの程度の銀線が使われたのかはわからない。
それでも、五味先生が「冴え冴えと美しかった」と書かれているのだから、
銀線の可能性に大きく期待して当然だろう。

もちろん銀線だけで音が決定されるわけではない。
それにマークレビンソンにしても銀線をアンプ内配線に使ったのはML6だけだろう、という反論がある。
確かに銀線使用を大きく謳ったのはML6だけである。

ML7以降は、アンプ回路の設計者も変り、モジュール構成も大きく変更され、
銀線は使われていない、と私も思っていた。

けれどML7のブロックダイアグラムをみると、ML7にも銀線が使われいてることがわかる。
インプットセレクターからボリュウムへの配線に、”Silver Coax”と表記してある。
ブロックダイアグラムに、ふつうそういった仕様に関することは書きこまないにもかかわらず、
そう書きこんであるのだ。
http://audiosharing.com/blog/?p=16877


ケーブル考(銀線のこと・その3)
http://audiosharing.com/blog/?p=16879

マークレビンソンML7に銀線が使われていることを知ったのは、
ステレオサウンド 76号の特集、コントロールアンプの総テストだった。

この特集では試聴だけでなく測定も行い、
さらに各社から回路図も提供してもらい、長島先生による技術解説もやっている。
このときにML7の回路図を見ることができ、”Silver Coax”の文字に目が留ったのだった。

そして思い出したのが、KEFのModel 105のことだった。
マーク・レヴィンソンは、Model 105に銀線を使うつもりだったのだろうと思っていた。

ステレオサウンド 50号に「マーク・レビンソンのニューライン完成間近」という2ページ見開きの記事がある。
1979年2月、マーク・レヴィンソンが来日して、都内のホテルでデモンストレーションを行っている。
そのときに開発中の製品として発表された中に、KEFのModel 105をベースとしたモデルがある。

このとき発表された製品には、パワーアンプのML3、コントロールアンプのML6の他に、
マークレビンソンとしてはローコストなコントロールアンプML4、
スチューダーのマスターレコーダーA80のトランスポートを使い、
エレクトロニクスをマークレビンソン製におきかえたML5があり、
さらにピラミッドのリボン型トゥイーターT1をベースに、
インピーダンスを4Ωに変更し、振動板にも若干の変更が加えられたモノ、
そしてKEFのスピーカーシステムModel 105をベースに、
ネットワーク、内部配線をモディファイしたというML10がある。

ML4、ML10、ピラミッドのT1は製品化されることはなかった。
ML10の型番は、ML4とは別のローコストなコントロールアンプに使われている。

この時発表されたモノで、私が興味をいちばんもったのはML10だった。
このML10のことを、ML7に銀線が使われているのを知って思い出したのだった。
http://audiosharing.com/blog/?p=16879


Date: 6月 2nd, 2015
ケーブル考(銀線のこと・その4)
http://audiosharing.com/blog/?p=17282

KEFのModel 105というスピーカーシステムは、
同時代の同じイギリスのスピーカーシステムであるスペンドールとくらべると、
音の性格そのものが本質的なところで違っている。

BCIIもBBCモニターの流れを汲むスピーカーとはいえ、
その音の本質は、聴き手に緊張を強いるところは排除されているといえるほど、
全体に艶のあるたっぷりとした響きをともなって聴かせる。

ゆえに瀬川先生はBCIIは、アキュレイトサウンドという括りをされているが、
《厳密な意味では、精確な音の再生と快い音の再生との中間に位置する》と、
「続コンポーネントステレオのすすめ」の中で指摘されている。

Model 105には、そういう面はない。
瀬川先生は《厳格な音の分析者》と表現されている。
そういう性質のスピーカーであり、
このスピーカーシステムの特徴でもあるインジケーターランプを使い、
KEFの指示通りのセッティングを行えば、冷静な音を聴き手の前に展開してくれる。
こういう鳴り方だと、聴き手はやや緊張が強いられるところもなくはない。

瀬川先生はステレオサウンド 45号の試聴記に、
《かなり真面目な作り方なので、組合せの方で例えばEMTとかマークレビンソン等のように艶や味つけをしてやらないと、おもしろみに欠ける傾向がある。ラフな使い方では真価の聴きとりにくいスピーカーだ。》
と書かれている。

そうなのだ、艶、色気がたっぷりしていなくともいい。
そこまでいったらもうKEFのModel 105とはいえなくなる。
だが、わずかな艶とか色気といった、
いわば、それはスピーカーでの演出ということになるのだが、そういった要素を求めたくなる。

そのことが、私の中では銀線と結びついていった。
http://audiosharing.com/blog/?p=17282


Date: 8月 17th, 2016
ケーブル考(銀線のこと・その5)
http://audiosharing.com/blog/?p=20311

1970年代後半、他の国はどうだったのかは知らないが、
少なくとも日本では銀線という文字を、オーディオ雑誌で見かけることが急に増えてきた。

広告では、新藤ラボラトリーが、
ウェスターン・エレクトリックも銀線を使っていた、と謳っていた。

それから木製ホーンで知られていた赤坂工芸は、
オルトフォンのSPU-AEのコイルを銀線に巻き直すサービスを行っていた。
オルトフォンが銀線コイルを使用したSPU-Goldを出すよりも以前のことである。
赤坂工芸の広告には、50ミクロンの銀線を使用、とあるだけで、
詳細はお問い合わせ下さい、とのこと。

どのくらいの価格でやってくれるのかは、なので知らない。
いったんカーリトッジをバラしてコイルをほどき、巻き直すわけだし、
しかもひじょうに細かな作業だから、それほど安くはなかっただろう。

《その結果は、まさに筆舌につくしがたいというところです。ただ聴きほれるだけです》
と広告には、そう書いてあった。

この広告から二年半後に、オルトフォンからSPU-Goldが登場している。
なので当時は勝手に想像していた。
赤坂工芸の銀線SPUの音を聴いた人が、オーディオ関係者にいたのかもしれない。
それでオルトフォンに……、そんなふうに想像できなくもなかった。

SPU-Goldはステレオサウンド 61号で、山中先生が紹介されている。
     *
在来のSPUに比べてわずかながら音の鮮度と低域の分解能が向上し、よりアキュレートな音になっているのが新しい魅力である。
     *
この項の(その1)で引用したことと、
SPU-Goldの音の印象は重なってくるし、そのことで銀線のイメージができあがりふくらんでいった。
http://audiosharing.com/blog/?p=20311


ケーブル考(銀線のこと・その6)
http://audiosharing.com/blog/?p=20313

SMEの3012-Rの最初の広告には「限定」の文字があった。
SMEもそれほど売れるとは考えていなかったのかもしれない。
けれど3012-Rは高い評価を得た。

特にステレオサウンド 58号の瀬川先生による紹介記事を読んだならば、
このトーンアームを買っておかなければ、と思ってしまう。
私もそのひとりである。

3012-Rはかなり売れたのだろう。
いつのまにか「限定」の文字がなくなって、販売は継続されていった。
それだけでなく、さらなる限定モデルとして金メッキを施した3012-R Goldを出す。

その後3012-R Proも出してきた。
このトーンアームの内部配線も銀線であり、
ピックアップケーブルも銀線になっていた。

ステレオサウンド試聴室では、
マイクロのSX8000IIに、この3012-R Proを取り付けて、
ケーブルも付属の銀線をリファレンスとしていた。

つまりこのアナログプレーヤーにオルトフォンのSPU-Goldを取り付ければ、
発電コイルから出力ケーブルまで銀線で揃えられる。
いうまでもなくオルトフォンもSMEも、当時はハーマンインターナショナル扱いブランドだった。

ちなみにケーブルの両端についている保護のためのコイルスプリングは外していた。
この部分にアセテートテープ貼ってみる。
これだけでも音は変化する。
さらにこれを取り除くと、その変化はもっと大きくなる。

このコイルスプリングは鉄でできている。
機械的共振と磁性体を取り除くことになる。

銅線でもそうだが、銀線では特に、
このコイルスプリングがあると良さが出難くなる印象を持っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=20313


Date: 10月 9th, 2017
ケーブル考(銀線のこと・その7)
http://audiosharing.com/blog/?p=23910

(その6)で書いているように、
オルトフォンのSPU-Gold、SMEの3012-R Proを組み合わせて、
出力ケーブルも3012-R Pro付属のモノを使えば、
カートリッジの発電コイルからトーンアーム内配線、出力ケーブルまで、
すべて銀線ということになる。

マークレビンソンのML6は、銀線使用ということでも話題になったが、
それはあくまでも内部配線材だけであって、プリント基板のパターンまで銀になっていたわけではない。

マークレビンソンのラインケーブルも銀線のモノもあった。
それらを使ったとしても銀以外の金属が存在しているし、
銀以外の金属の方が割合としても多い。

徹底的に銀を採用したオーディオ機器といえば、
B&Wの創立25周年記念モデルとして登場したSilver Signature 25がある。
(Silver Signature 25も、KEFのModel 107と同じで25周年モデルなのか、と思う)

スピーカーシステムで銀線使用と謳われていれば、
せいぜいが内部配線材が銀線になったくらいだと思いがちだ。
もう少し徹底した場合であれば、ボイスコイルも銀線にするかもしれない。

それ以上となると、かなり実現は困難といえよう。
スピーカーシステムを構成する部品で、信号が通過するところうすべて銀にするには、
接点を含めて、コンデンサーや抵抗のリード線までも銀線とする必要がある。
B&WはSilver Signature 25において、それを実現している(はずである)。

少し曖昧な書き方になったのは、
実物を見たことはあるけれど、その内部まで見たわけではないからだ。
それでも、これ以上、銀ということに徹底したオーディオ機器は、いまのところないはずだ。
http://audiosharing.com/blog/?p=23910


ケーブル考(銀線のこと・その8)
http://audiosharing.com/blog/?p=23915

久しぶりに買っていた無線と実験の6月号に、
B&Wのスピーカーシステムの記事(柴崎功氏による連載)が載っていたことに気づいた。
Silver Signature 25のネットワークの回路図も載っていたはず、と、
ひっぱり出して開いてみると、載っていた。

ネットワークを構成する部品は、
コンデンサーが三個、コイルが二個、抵抗が一個である。
コンデンサーは三個とも3.3μFである。

これは銀線リードのポリプロピレンコンデンサーが高価なため、
3.3μF一種類しか確保できなかったため、と記事にはある。

そのためネットワークの設計には苦労があったようだ。

ウーファーは28mHのコイルが直列に入るだけの、スロープ特性6dBの構成、
ウーファーに対し、1Ωの抵抗と3.3μFのコンデンサーを直列にしたものが並列に接続されている。

記事には抵抗については触れられていないが、
抵抗は並列接続されていること、
ローパスフィルターを形成しているわけでなく、
ダンピング抵抗として作用することもあってだろう、
どうも銀線リードではないようにも受け取れる。

Silver Signature 25のカタログのスペック欄にも、純銀ワイヤー・インダクター、
純銀リードポリプロピレン・キャパシターとはあるが、
純銀リード・レジスターの記載はない。

トゥイーター用のハイパスフィルターは、
3.3μFのコンデンサーが二個直列に挿入されている。
ふたつのコンデンサーの中点に0.12mHのコイルが並列に接続されている。

トゥイーターは逆相接続となっている。
http://audiosharing.com/blog/?p=23915


ケーブル考(銀線のこと・その9)
http://audiosharing.com/blog/?p=23917

Silver Signature 25は2ウェイのスピーカーシステムで、
砲弾型のトゥイーターがエンクロージュアの上に乗っかるスタイルだ。

このスタイルのB&Wのスピーカーシステムは、
ユニットはインライン配置になっているが、Silver Signature 25はトゥイーターがオフセットしている。

このことはトゥイーターの逆相接続とも関係しているように思える。
銀リードのコンデンサーの容量が3.3μFだけということで、
ネットワークの設計にそうとうに苦労していることが、
トゥイーターのオフセットとも関係しているのではないだろうか。

他の値の容量の銀リードのコンデンサーが用意できていれば、
ネットワークの定数も違ってきたはずだし、
トゥイーターも正相接続で、インライン配置になっていたであろう。

そこまでして銀の使用に徹底的にこだわっているのがSilver Signature 25であり、
銀は導体抵抗の低い金属であるが、そのことだけが、
ここまで銀にこだわらせた理由ではないはずだ。

音的にあきらかなメリットを感じていたからこそ、の、
Silver Signature 25の誕生であったはずである。
(ハンダもやはり銀入りなのだろう)

銀銭の音については、メリットもデメリットもいわれてきている。
それが事実なのかどうかは、ケーブルの音は、それ単体で評できるわけでもなく、
はっきりとしたことは誰にもいえないのだが、
一部否定的な意見としては、本来あるべき音の力がわずかとはいえ損われる──、
そんなふうにいわれている。

もっともこのことさえも、
当時から、銀の純度があまり高くないからだ、という説もあったし、
銅があたりまえのシステムに銀をわずかに持ち込むからであって、
銀線化を徹底していけば、そういう面もなくなる──、
そんなこともいわれていた。
http://audiosharing.com/blog/?p=23917


ケーブル考(銀線のこと・その10)
http://audiosharing.com/blog/?p=23919

瀬川先生がステレオサウンド 52号に書かれたマークレビンソンのML6の音のこと。
     *
 ともかくML6の音は、いままで聴きえたどのプリアンプよりも自然な感じで、それだけに一聴したときの第一印象は、プログラムソースによってはどこか頼りないほど柔らかく聴こえることさえある。ML6からLNPに戻すと、LNPの音にはけっこう硬さのあったことがわかる。よく言えば輪郭鮮明。しかしそれだけに音の中味よりも輪郭のほうが目立ってしまうような傾向もいくらか持っている。
     *
《どこか頼りないほど柔らかく》、
当時の私にとって、この音の表現が、銀線のイメージとすぐさま結びついてしまった。
なにかの広告で読んだのだと記憶しているが、
銀線の音のイメージとして、ML6の《どこか頼りないほど柔らかく》というのが、
ほとんどそのままあったからだ。

当時、高校生だったし、銀線の音は聴いたこともなかった。
文字と銀という金属の色からのイメージだけで、なんとなく銀線の音を想像していた時期であった。

それはどこか女性的な音のイメージでもあった。
銀線の音のイメージがそうであったから、
銅線の音は対照的に、私のなかでは男性的な音のイメージを、なんとなく持っていた。

もちろん、銅線、銀線の音は、そう単純なものではないのだが、
それでもどこか銀には、優雅というイメージがついてくるし、
それだけでなくいぶし銀という音の表現からは、
決して前へ前へ、と出しゃばってこない音のイメージとも結びついていた。

Silver Signature 25は、どんな音なのだろうか。
Silver Signature 25も単体で音が鳴るわけではない。

アンプ、プレーヤーと組み合わせなければ音は鳴ってこない。
アナログプレーヤーならば、発電コイルが銀線のモノはあるし、
トーンアームのパイプ内配線も銀線のモノがあるだろうし、
銀線に交換することもできないわけではない。
出力ケーブルも銀線で揃えられる。

音の入口と出口は、銀線で固められる。
けれどアンプとなると、そう簡単にはいかない。
http://audiosharing.com/blog/?p=23919

ケーブル考(銀線のこと・その11)
http://audiosharing.com/blog/?p=23921

マークレビンソンML6のように内部配線をすべて銀線にしたところで、
アンプを構成する部品全体からすれば、それは一部にすぎない。

それでも銀線の音は、アンプの音として反映されるとはいえ、
Silver Signature 25ほどの徹底した銀使用とはいえない。

アンプも抵抗、コンデンサー、トランジスターを銀リードにしたものを部品メーカーに発注する、
電源トランスの巻線を銀線にする、
どれだけのお金がかかるかは検討がつかないが、
ここまでは可能だとしても、プリント基板のパターンを銀にするとなると、
さらに大変なことになろう。

部品点数の極端に少ないアンプ、
具体例としてはFirst WattのSIT1、SIT2ならば、
信号経路を徹底して銀線化していくことはできなくもないだろうが、
一般的な部品点数のアンプでは、まず無理といってもいい。

だから考えるのは、パワーアンプを真空管式として、
出力トランスの二次側コイルを銀線にする、ということだ。

両端に銀によるコイルを持つ閉じた回路(ループ)内は、
スピーカーがSilver Signature 25ならば、ほぼ銀線といえる。

同様にアナログプレーヤーならば、昇圧トランスの一次側巻線を銀線にする。
そうすれば、こちらも両端に銀によるコイルをもつ閉じた回路ができる。

つまり音の入口と出口に、それぞれ閉じた回路をもつシステム、
それもどちらの閉じた回路も銀線によって構成されている。

システムの銀線化は、このあたりが現実的といえる。
http://audiosharing.com/blog/?p=23921


Date: 10月 13th, 2017
ケーブル考(銀線のこと・その12)
http://audiosharing.com/blog/?p=23933

B&Wは、Silver Signature 25の開発時、アンプはどうしていたのだろうか。
銀線使用のアンプで鳴らしていたのか、
それともそんなことは関係なく、
Silver Signature 25以外のスピーカーの開発に使われるアンプだったのか。

Silver Signature 25のころ、日本の輸入元はマランツになっていた。
B&Wの輸入元は、1970年代はラックスだった。
1980年ごろ今井商事にかわり、1983年ごろにナカミチ、その後がマランツである。

1983年に出たステレオサウンド別冊THE BRITISH SOUNDをみても、
当時のB&Wがどんなアンプを使っていたのかは載っていない。
ちなみに当時のKEFはナカミチのセパレートアンプで、
プレーヤーはテクニクスのSP10MK2である。

おそらく銀線使用のアンプではなさそうである。
ならば、なぜB&Wは銀線の徹底使用を実現しようとしたのだろうか。

無線と実験2017年6月号の柴崎功氏の記事には、
《結婚25周年の銀婚にちなんで、創立25周年記念モデルとして開発された銀づくし》とある。

一方CDジャーナル別冊「オーディオ名機読本」で小原由夫氏は、次のように書かれている。
     *
 テクノロジーや新材料の発展に対して常にアンテナを張っていたバウワースが、後に全力を傾けて取り組んだのが『銀』である。
(中略)
 銀は、地球上のすべての金属の中で、もっとも電気抵抗が低い。つまり、もっとも電気が通りやすい金属である。バウワースにそこに目をつけた。ただし、オーディオに銀を持ち込んだのは、何もバウワースが史上初というわけではない。それこそオーディオの草創期から、銀は電気を伝える導体として様々な形で応用されてきた。しかし、銀が主流となり得ないのは、コストや耐久性、実用性などの点で、とても銅にかなわないからである。さらに、銀固有の音質的クセがあると一部は指摘されていた。
 バウワースは、ここでも意地と信念、こだわりを大いに発揮する。オーディオの先達が決して十全に使いこなしたとは言い難い銀を徹底的に分析し、それをスピーカーを構成するあらゆる伝送路に使ってみよう、と……。バウワースは、寝食を忘れ、夢中になって銀の可能性に取り組んだ。
 しかしバウワースは、自身の手でその思いを全うすることはできなかった。1988年1月、志半ばにして、その65年の生涯に静かに幕を降ろしてしまったのである。
 彼の意地と信念とこだわりは、成就することなくそこで途絶えてしまうかのように見えたが、B&Wの後継者たちによって、彼のイズムは後に見事に花開くことになる。
     *
B&Wは1966年に創立されている。
創立25年は1991年。その三年前にバウワースは亡くなっているわけだ。

バウワースは、いつごろから銀の可能性に取り組みはじめたのかは、
小原由夫氏の文章のどこにも書いてない。

志し半ば、とまで書いてあるから、一年程度はないように思える。
少なくとも数年間は取り組んでいたのだろうか。
http://audiosharing.com/blog/?p=23933


ケーブル考(銀線のこと・その13)
http://audiosharing.com/blog/?p=23939

Silver Signature 25は、どんな音だったのか。
私は聴く機会がなかった。

ステレオサウンドには、
108号で柳沢功力氏が新製品紹介の記事を書かれている。

109号、Components of the year賞に選ばれている。
ここでの山中先生の発言が、個人的にはもっとも興味深いし、
音の片鱗のようなものが伝わってくる。
     *
山中 このスピーカーを聴いたときに、とても驚きました。
 どこにも空白がないというくらい、物凄く密度の濃い音で、中身が非常に詰まっている。しかも、ダイレクトラジエーターのスピーカーで、音圧レベルがかなり高くとれるんですね。
 とくに中高域で、人の声を張り上げるところなど、非常に厳しいソースを鳴らしても、いままで考えられないようなクリアーさで鳴ってしまう。
     *
厳しいソースを、いままで考えられないようなクリアーさで鳴らしてくれるのは、
徹底した銀を使ったことのメリットなのだろうか。
そうとも読めるし、まったく関係ないことともいえるかもしれないが、
私は、銀の徹底使用のメリットだ、と思って読む。

さらに山中先生は、こう発言されている。
     *
山中 とにかく、このスピーカーはコンパクトサイズでありながら、音はビッグスピーカーのそれですよ。ワーグナーがちゃんと聴けるんですから。
     *
《ワーグナーがちゃんと聴ける》、
このひとことだけで、Silver Signature 25が欲しくなってしまう。
http://audiosharing.com/blog/?p=23939


ケーブル考(銀線のこと・その14)
http://audiosharing.com/blog/?p=23941

銀をスピーカーシステム内の信号経路のほとんどに使ったからといって、
ただそれだけで素晴らしいスピーカーシステムができあがるわけではないことは、
承知している──、それでも……、といいたくなるところが銀の魅力かもしれない。

YL音響にDG18000Yというトゥイーターがあった。
同社のドライバーの型番はDのあとに数字が並ぶ。
DG18000Yのシリーズには、D18000Yもあった。

Gがつくかつかないのかの違いは、ダイアフラムにある。
DG18000Yは、18mmφの純銀箔のダイアフラムである。
ボイスコイルも当然銀線である。

コンプレッションドライバーのダイアフラムの材質は、
金属系ではアルミが古くから一般的で、チタンやベリリウムなどが使われる。

銀をダイアフラムにしたユニット(ドライバーに限らず)は、あっただろうか。
銀は導体抵抗は低くても、チタンやベリリウムと比較すれば重い金属である。

軽くて剛性の高い材質が使われるのに、
YL音響はあえて、やや重い銀を使っている。
YL音響によれば、銀にした場合、他の材質に比べて約1.5dB程度の感度の低下が生じる、とのこと。

それでもYL音響は、銀を採用している。
DG18000Yは1990年代後半、一本250,000円だった。
D18000Yは175,000円だった。

ダイアフラムを銀にするメリットは、どのあたりにあるのだろうか。
答はDG18000YとD18000Yをじっくり聴いてみれば、ある程度はつかめるだろうが、
もうそんな機会はやってこない。

思うに、銀にはそれだけのオーディオ的魅力がある、ということなのだろう。
DG18000Yの開発者も、そのひとりなのだろう。
銀の魅力にとらわれてしまったのかもしれない。

もしかすると市販するつもりはなく、
ダイアフラムを銀にしたドライバーを試作したのかもしれない。
音を聴いて、製品化しただけなのかも……、という想像もできる。
http://audiosharing.com/blog/?p=23941


Date: 10月 16th, 2017
ケーブル考(銀線のこと・その15)
http://audiosharing.com/blog/?p=23955

セレッションのSL6のトゥイーターのダイアフラムは銅だった。
それまでのイギリスのスピーカーのトゥイーター、スコーカーに使われるドーム型は、
たいていがソフトドームだった。

金属ダイアフラムのハードドームは、イギリスのスピーカーとしては珍しかった。
しかも銅である。
たいていはアルミ。SL6クラスの価格帯のスピーカーであれば、アルミが大半といえた。

セレッションはSL6の開発にあたり、レーザーを使い振動板の振動モードの、
それも動的な解析を行った、と聞いている。
ということは、動的な解析の結果の銅だと考えていい。

SL6はSL600に進化し、
SL6Sに改良されている。
SL6Sでは銅からアルミになっている。

SL6とSL6Sの違いは、トゥイーターのダイアフラムの違いだけなのだろうか。
ネットワークも少しは変更しているのだろうか。
どうだったろうか。

音は違う。
SL6Sの方が改良モデルといわれれば、納得するような音の違いがあった、と記憶している。
やはり銅は、アルミよりも重たいのか、と思うところが、音にあった。
反面、銅のほうが、ある種の粘り的な要素を感じさせるところもあり、
鳴らし込んでいくのであれば、銅の方が面白いかな、と思わせる。

この時だった。
ある人と銀線の話になった。
銅線と銀線の音の違いに何に由来するものなのか、とたずねられた。

「色が違うから」と答えた。
その人は、私が冗談をいっていると思ったようだったが、
私としては、真面目に答えていた。

銅のダイアフラムとアルミのダイアフラムの音の違い、
銅線と銀線の音の違いに、どこか共通するところを感じたから、
「色が違うから」と答えたわけだ。

アルミと銀の色は、銅とははっきりと違う。
http://audiosharing.com/blog/?p=23955  

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コメント
1. 中川隆[-4931] koaQ7Jey 2021年5月09日 15:04:41 : pH7LB4YiqE : NWpMZVlHRmxRT0E=[18] 報告
Date: 10月 25th, 2017
ケーブル考(銀線のこと・その11の補足)
http://audiosharing.com/blog/?p=24040

巻線に銀を使った昇圧トランスは、過去にいくつかあった。
ラックスの8020(ハイインピーダンス用)、8030(ローインピーダンス用)は、
一次巻線に銀を使っている。二次巻線はリッツ線ということだから、おそらく銅であろう。

ダイナベクターDV6Aは、一次、二次巻線ともに銀線のはずだ。
しかもDV6Aの一次巻線には中点タップがあり、上部スイッチにより中点接地が可能。
つまりバランス入力に対応していた。

これらの製品が登場した1970年代後半は、
いまふりかえっても銀線ブームのはじまりだった、といえよう。
http://audiosharing.com/blog/?p=24040

Date: 11月 14th, 2017
ケーブル考(銀線のこと・その16)
http://audiosharing.com/blog/?p=24241

1980年代の後半になってからだったと記憶しているが、
ラジオ技術にアルミニウム線のことが記事になるようになった。
五十嵐一郎氏が度々書かれていた。

たしかオヤイデが純度の高いアルミの単線を扱うようになったからである。

五十嵐一郎氏の記事、
といってもアルミ線そのものの試聴記事というよりも、
新製品の試聴記事の中で、アルミ線について触れられていたのが主だった、と記憶している。

読みながら、アルミ線の音は、銀線の音にどこか共通するような印象を受けることが、
何度かあった。

ここでの銀線の音というのは、あくまでも私の中だけのものであって、
銀線ほど人によって印象は大きく違っているようだから、
銀線とアルミ線の音に共通するような因子がある感じる人もいれば、
そんなことはないという人もいるだろう。

そのくらい銀線の音の印象は違うのは、
当時銀線と謳われて市場に出廻っていたものは、それこそ千差万別だだったようである。
表面だけ銀という、なかばマガイモノの銀線もあったときいている。

それに銀線の純度もさまざまだったらしい。
もっとも純度が高いから、いい音がするとは思っていないけれど、
銀固有の音は、やはり純度が高いほど出てくるのだろうか。

とにかく五十嵐一郎氏のアルミ線の印象が、
少なくとも私の中では銀線の印象と重なっているところがあり、
そのことが銀線とアルミ線は、色が似ている、ということにつながっていった。
http://audiosharing.com/blog/?p=24241

Date: 11月 15th, 2017
ケーブル考(銀線のこと・その17)
http://audiosharing.com/blog/?p=24251

1980年代後半は、MC型カートリッジの光悦が、
幻の存在のように扱われはじめた時期である。

1970年代のHI-FI STEREO GUIDEに、光悦は掲載されている。
当時は、会社名は武蔵野音響研究所で、光悦が型番だった。

特別に高価なカートリッジではなかった。
1970年代は32,000円だった。
1981年には50,000円と80,000円とがあった。

その光悦が、いつのころからか、高価なカートリッジとなっていった。
光悦そのものについて、ここで書くつもりはない。

ただそのころ光悦は発電コイルに銀クラッド線を採用していた。
銀メッキではない。

光悦のカートリッジもまたラジオ技術で取り上げられることが多かった。
たいてい五十嵐一郎氏が新製品として紹介記事を書かれていた。

そのころのラジオ技術は手元に一冊もないので記憶に頼るしかないが、
銀クラッドの光悦の、五十嵐一郎氏の評価はなかなか良かったはずだ。

銀線と銀クラッド線は違うのはわかっている。
銀クラッド線のケーブルは聴いたことがない。
銀クラッドの光悦も聴いたことがない。

ただ五十嵐一郎氏の文章を読んでいると、
銀線の音を好まれていたるのかも……、と思ったことが何度もある。

実際のところ、どうだったのだろうか。
http://audiosharing.com/blog/?p=24251


Date: 7月 14th, 2019
ケーブル考(銀線のこと・その18)
http://audiosharing.com/blog/?p=29447

オーディオというシステムのなかには、いくつものコイルが存在する。
テープデッキのヘッドにも、コイルは存在する。

銀線採用が謳い文句のようになってきたころ、
ヤマハのカセットデッキのK1も、
メタルテープ対応以外にも、ヘッドの巻線を銀線に変更して、K1aへとモデルチェンジした。

さらにヤマハK1aをベースに、dbx対応としたK1dを出してきた。
K1もK1aもK1dも、ヤマハ独自のセンダストヘッド採用なだが、
K1dのヘッドの巻線が銀線なのかどうかは、いまのところはっきりしない。

K1dの内部は、K1aの内部とほぼ同じである。
dbxのエンコード/デコード用の基板が、
メイン基板の上に増設されているくらいの違いである。

もっともこれは目に見える範囲内だけの違いであって、
ヘッドにも変更が加えられているのかもしれない。

K1dのヘッドは銀線の可能性はある。
http://audiosharing.com/blog/?p=29447

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