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高橋克彦 「緋い記憶」
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/820.html
投稿者 中川隆 日時 2018 年 3 月 01 日 23:28:40: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 映画 震える舌 1980年 松竹 投稿者 中川隆 日時 2016 年 4 月 28 日 23:42:49)


【ホラーサスペンス】緋い記憶 - YouTube 動画
https://www.youtube.com/watch?v=H4gzHEBGe9A


記憶がテーマのホラー・ミステリー高橋克彦さんの「緋い記憶」
http://www1.imaibooks.co.jp/book/mystery/?p=1540

子どもの頃の記憶ってほとんどあいまい。
同じ場面にいたのに、自分の記憶と他の人の記憶が違うってことがよくあるし、
忘れていた記憶が甦ることもある。

この「緋い記憶」(高橋克彦著)もそんな話から始まる。

忘れていた記憶が甦ってくる瞬間の感動、恐怖、おぞましさ・・・
そういうものを描いた、7編(「緋い記憶」「ねじれた記憶」
「言えない記憶」「遠い記憶」「膚の記憶」「霧の記憶」「冥い記憶」)
の短編を収録。
ずっと前に読んでものすごく印象に残っていて、
この度、再読したらやっぱりとても面白かった!

緋い記憶

強烈な印象なのは、やはり、表題の「緋い記憶」。
旧い住宅地図コレクターの友人から、昔の故郷の町が載っている
住宅地図を借りた男。記憶を頼りに子どものころ遊んだ
女の子の家を探すが、どこをどう探しても見つからない。
不審に思った男は、帰郷した際、友人とともにその家を
探すのだが・・・。怖いけど、凄く切ない記憶が甦る。

「言えない記憶」は、サスペンス。
東京で成功した男が、講演会のために故郷に戻ってきた。
講演会では、昔話で会場を沸かせた。
その後は同級生たちが男のために宴席を設けていた。
そこで、こどものころガキ大将だった、上級生も出席。
その上級生は、男に妙なことを訪ねた・・・・
缶けりして遊んだ日の事、嵐の日のこと。
その嵐の日、上級生の妹が行方不明になっていた。
上級生は、妹が行方不明になった日はお前と一緒だったと・・・
男はあらためて、記憶をたどった・・・・。
じわじわとおぞましい記憶が甦る過程がリアル・・・。
ある真相に行きついた時、男は・・・・?

「遠い記憶」は本当に究極のサスペンス。
女の情念があまりにも恐ろしい。
小説家がしばらく東北の方へ取材に行くことになった。
岩手の新聞で情報を得、盛岡にいくことなったのだ。
岩手の新聞に小説など載せたことはないが・・・
小説家はそこが気になった。
だが、編集と盛岡をめぐる内に、妙に懐かしさを
感じ、やがて幼いころに見た景色が甦ってきた。
盛岡はまさに、小説家の故郷だったのだ・・・。
だが小説家は不審を抱く・・・・。
母はなぜかたくなに盛岡を避けたのか・・?
自分が4歳だったとはいえ、なぜ盛岡の全ての記憶を喪失していたのか?
その衝撃の真相とは!

短編ですが、7編すべて読みごたえがあり、大変面白かったです。
でも特にこの3篇が凄く面白く、忘れられなかった作品。

『緋い記憶』
著者:高橋克彦
出版社:文藝春秋(文庫)
価格:¥543(税別)
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%82%E3%81%8B-%E3%81%84%E8%A8%98%E6%86%B6-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%AB%98%E6%A9%8B-%E5%85%8B%E5%BD%A6/dp/4167164051

82年制作の映画「ブレードランナー」は、都市論や物語論などに多くの革新的イメージを与えたものだが、人間てのは記憶のことだというまったく新しい人間観も作り出してしまった。当時の人たちにとってこれは衝撃的だった。我々人間は、自分という確かな個を持っていて、個人として現実の中に生きているのだという考え方があらゆることの根底だったのに、そうではなく、なにを憶えているかが「私」にほかならないといわれてしまったのだ。もし間違った記憶をもたされたなら、その偽りこそが「私」なのだ。立っている地面が突然なくなったみたいなものだ。

99年に「緋い記憶」で直木賞を取った高橋克彦は、こうした、人の存在を脅かす、記憶というものの恐ろしいメカニズムを薬籠中のものとして、かずかずのホラーを作り出してみせた。

子供のころ住んでいた街に、確かにあった廃屋のような家、そこで遊んだ少女、久しぶりに訪れた主人公が訪れてみるとそんな家ははじめからないといわれ…

ひなびた温泉宿に泊まる主人公は、同宿の女性と親しくなる。彼女には小さな子供がいて、自分の子供時代をなんなく思い出すが、次第に記憶は混乱してまるで時間がねじれていくような感覚が襲いかかってくる。

記憶はおうおうにして間違って刻み込まれている。それは思い出すにはつらすぎる本当の記憶を隠すためで、その真の記憶がよみがえるとき変形するのは世界のほうではなく自分という存在だ。そうしてその恐怖は私たち読み手がこの現実世界で知らず知らずのうちに自分をごまかしながら呼吸している毎日そのものだ。

高橋克彦の記憶をめぐる短編は、どれも本当にこわい。

もう目次からしてちょっと恐い

細部は不確かだが忘れられない記憶に主人公は悩まされている

記憶のでティールが次第に明らかになると、なぜか怯えも募ってくる

トラウマだったほどのあの思い出がまるでなかったことのように… (C)高橋克彦/文藝春秋
http://www1.imaibooks.co.jp/book/mystery/?p=1540  

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コメント
 
1. 中川隆[-5585] koaQ7Jey 2018年3月02日 15:24:09 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

【ホラーサスペンス】遠い記憶
https://www.youtube.com/watch?v=2K85coL5ud0
https://www.youtube.com/results?search_query=%E9%AB%98%E6%A9%8B%E5%85%8B%E5%BD%A6+%E9%81%A0%E3%81%84%E8%A8%98%E6%86%B6

高橋克彦『赤い記憶』より「遠い記憶」

男が三十年ぶりに、昔住んだ盛岡を訪ねた。
とはいえ、小学校にあがるまでのことで、
ほとんど記憶がない。思い出探しではなく、
仕事の一環として、やってきたまでのことだ。

母に今回の旅のことを話すと、激しい嫌悪感を
露にした。母は盛岡の話をするのが好きじゃない。
「嫌な思い出がある」いつもそう言って、口をつぐんで
しまう。

取材のために、案内役に地元の女性記者を部下にして、
盛岡を回る。情けないことに、どの光景にも見覚えが
ない。

「三十年ぶりですもの、景色は変わってしますわ、でも、きっとあなたにも思い出の場所があるはずよ」

女に連れられて方々を巡るうちに、男は徐々に、不確かながらも過去の断片を取り戻すことができた。

男は滞在を数日のばすことに決めた。自分のルーツを探ることも目的だが、
故郷なまりの女記者に、徐々に惹かれつつあったことも理由の一つだ。

二人でタクシーに乗って、彼の住んでいた町を探しているうちに、男の脳裏に様々な記憶が蘇ってくる。

「運転手さん、そこ右、そこ左、そう、そのまま」

行き着いた先は、一見の空家だった。男は歓声を挙げる。

「ここだよ!僕は昔ここに住んでいたんだ」

二人は門をくぐり、男は懐かしそうに、空家の中を歩いて回る。

「ここにテーブルがあって、そこには本棚、あそこに小さな絵がかかっていて……」

「ここには?」

女は部屋の一角を指した。

「そこには勉強机が……」

なぜ、幼稚園児の彼に勉強机が用意されていたのだろう……。

「そう、私の机があったの」

男は混乱し、めまいを覚える。

「ここはあたしの家よ」

男には今のテーブルに腰掛け、新聞を読む父の記憶がある。

「わたしの母を抱きにきていたの。スナック勤めの母を、あなたのお父さんが囲っていたのよ」

情景が浮かんでは消える。そうだ、父は度々、この家に彼を連れ出した。
父と愛人が寝室に消えると、少し年上の女の子が、彼をかまってくれていた。
その子の母はとても優しく、少年の頃の彼はこの家に来るのが一番の楽しみだった。

「そうだった。君のことも思い出したよ。僕は君が好きだったんだ。なんでもっと早く
言ってくれない。人が悪いよ」

「あなたに思い出してもらうことに意味があったのよ」

女は寝室の襖をスッと開いた。
男は、なぜか反射的に顔をふせ、冷や汗をかく。

「目を伏せちゃダメ!あなたしか、あの時なにがあったのか知らないのよ!思い出して!」

「いやだ!そこにはおばちゃんが紐でぶらさがっているんだ!」

幼かったとはいえ、ここまで記憶が失われた理由が分かった気がした。

あの日、男は母に叱られて、家を飛び出した。自然と、足は父の愛人の家に向かっていた。
おばちゃんは優しい。お姉ちゃんにも慰めてもらえる。そう思ったのだろう。
家は静まりかっていて、寝室で、遺体を見つけた。垂れ下がる足に、肩がぶつかって
ブラブラと揺れた。

芯から冷える寒気とともに蘇った。遺体の向こう側の暗がりに、恐怖と憎悪に燃えた目で、私を見つめる母の顔を。
http://occult-atoaji.sakura.ne.jp/?p=8303


2. 中川隆[-5594] koaQ7Jey 2018年3月02日 23:06:01 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

緋(あか)い記憶 (文春文庫)/高橋 克彦


緋い記憶

世帯主の名前までも記入されている住宅地図ってのがあるそうで、昔から毎年出版されているんだそうですよ。少年時代の地元の住宅地図を見たら、自分の知っている家がなく、空き地になっていた。そこに住んでいた少女とも交流があったのに、なぜか? 実はその家は戦前に取り壊されていたと分かって、超ビックリ。

出会った少女が幽霊だったのではなく、自分がその時代に紛れ込んでいた…という方がぴったりくるかな〜と思うけど、どうかしら?

ラストは…うーん、やっぱりはねられて史子の元に逝ってしまったんでしょうか。

ねじれた記憶

高階良子さんの終わりのない夜 とそっくりな作品です。でも、こっちのが先だよ。

今回読み返してみたら、相違点が。高階さんの方は姉、こちらは母でした。
でも大筋は同じ。

作家が30年前に暮らしていた離れがある旅館を突き止め、泊まりに行く。そこで働く静子という女性と恋に落ちるが、実は静子は母だった。
つー、なんともショッキングな内容です。

時間がねじれて、大人の自分が30年前に入り込んでしまったんですね。
お母さんがショックで自殺してしまうのはともかく、自分が自分に殺されるために断崖で待たなくてはいけないって…悲しいよねぇ。


言えない記憶

子供の頃、台風の日にみんなで缶蹴りをした。その日に行方不明になった少女が、川で発見された。しかし少女の兄は、妹が殺されたのではないかと疑っていた。30年後にその謎が明かされる。

が、謎解明かと思いきや、もうひとつ忘れていた恐ろしい記憶が蘇ってきて…ギャーーー!!!
みたいな。
忘れていたかった記憶ってあるかもね。

遠い記憶

30年前に住んでいた盛岡に取材で訪れた。忘れていた幼い頃の記憶が思い出される。自分が住んでいたと思っていた記憶にある家は、父の愛人の家だった。
いやいや、これまた恐ろしい話です。昔の記憶を思いだしたからと言って、誰も幸せにはなれないってところがまた悲しいですね。

膚の記憶

馴染みの居酒屋に行くと高い確率で食中毒になる。原因を確かめていくと、犯人は天然水だった。その水がとれる鍾乳洞の湖水に行ってみると、水底には白骨があり…。

これもまた悲しいお話しです。

霧の記憶

これもちょっと高橋さんの経験談が混ざっている感じですかねぇ。このロンドン時代の話って、他にも使われていた記憶があるけど、なんてタイトルだったかなぁ?
高校生の時にロンドンに一人旅をしていた孝志。当時世話になった倉本が書いた小説は、孝志をモデルに描かれていた。それを読んで、話に出てくる女性は自分の妹ではないかという男性から連絡が入って…。

小説の嘘を見抜いて孝志が調査をするんだけど、真相が分かったとき、嘘をついた倉本よりも自分の方が悪い人間だったのかもしれない、と思う孝志。
うーん、今でもそうかもしれないけど、昔…今からだと40年くらい前のことかな。当時外国に滞在するって、心細かっただろうし。多少嫌なヤツでも嫌いでも、同じ日本人として寄り添って生きていたかったんでしょうね〜なんて事を思ったりします。でも、寂しいんだったら一人旅なんかすんなよ、とも思ったりもしますけどね。

ロンドンは霧の国だから、霧の記憶なんだって、今気づいた。

冥い記憶
これは本当にホラー。

またしても高階良子さんの時の迷路殺人事件 が、この作品とちょっと被る部分があるんですけど。こっちはホラーです。本当に怖いです。

バスツアーに参加する毅。ツアー参加者が自分に向ける非難の視線。記憶にない恐怖。鏡に映らない自分。全てを思い出しても、まだ残る疑問。
う〜ん、怖い。

このシリーズ、漫画化されているものがいくつかあって、読んだことがあるんですけどね。やっぱり小説の方がいいですね。自分で想像する部分があるでしょ、小説って。それがまた怖さを倍増させると思うんですよ。まぁ、漫画を描いている漫画家さんの画力が低いとか、好きな絵柄でないとか、そんなところも多分に含まれてはいるんですけど。

小説を映像化、漫画化するのって、やっぱイマイチなのが多くなっちゃうよね。
https://ameblo.jp/kaoruume/entry-10603402335.html



3. 中川隆[-5593] koaQ7Jey 2018年3月02日 23:08:35 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]

高橋克彦『赤い記憶』より「ねじれた記憶」

男は三十年ぶりに、忌まわしい宿を訪ねた。
幼少時、父に逃げられた母はこの宿で女中として
住み込み、彼を養ってくれていた。

宿帳に名を記すと、番頭がいやらしい笑みを浮かべる。
「お客さん、こんなところでお仕事ですか?それともお楽しみで?」
なるほど、こんな場末の宿なら、そういうサービスを求めて
やってくる客がほとんどかも知れない。
「ああ、じゃあ一人たのむよ」

部屋を訪れたのは、肌の白い、美しい女だった。
彼は母親の面影を重ねる。
女は夫に逃げられ、連れ子がいることを打ち明け、
男は益々、親近感を強めた。
「不思議だね、うちの母も、ちょうどあなたのような年頃に、ここで勤めて僕を養ってくれたんだ」

彼女の息子は、不幸な子供特有の目つきをしていて、
昔の自分を見ているようだった。

男は、この親子と家庭を作るのもいいかもしれない、と思い始める。

夜、身体を交えた後に、男は煙草をふかしながら、女に思いを打ち明ける。
自分の生い立ちがあまりに、その親子と似通っていることを。だから二人を
幸せにできると。彼は自分の名を名乗り、母の名を伝え、子供のころの
おぼろげな思い出を、女に聞かせた。

女は突然に狼狽し、裸のまま嘔吐しながら部屋を抜け出し、そのまま戻ってはこなかった。

男は宿の近くの絶壁で煙草をふかして待つ。
辛すぎて封印していた記憶を振り返る。
母も彼女のように、身体を売っていたこと。
今の自分によく似た男が、母を買ったこと。
その翌朝に、母は首をくくって死んだ。

男は、幼い自分が、母を奪ったその男を、絶壁から突き落としにやってくるのを待っている。
http://occult-atoaji.sakura.ne.jp/?p=8301


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