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「植物工場」は本当に効率的か 一問一答で考える農業の未来【JanJan】
http://www.asyura2.com/09/senkyo73/msg/744.html
投稿者 ワヤクチャ 日時 2009 年 10 月 24 日 15:34:12: YdRawkln5F9XQ
 

(回答先: 野菜工場の可能性 投稿者 taked4700 日時 2009 年 10 月 24 日 14:28:04)

「植物工場」は本当に効率的か 一問一答で考える農業の未来【JanJan】
http://www.news.janjan.jp/living/0904/0904211878/1.php

九鬼信

2009/04/24  

このところ、農業の効率向上を図る方策として「植物工場」が、テレビなどで推奨されているが、「植物工場」は幾つもの問題点を抱えているのが実態なのだ。

安易な「農業の工業化」論をはびこらせないために、詳しく点検した。

Q1. 日本の食料自給率が40%と低いのは、農業の工業化が進んでいないためだといわれています。

たとえば植物工場のように、年に10回以上も収穫できるような効率的な生産方式に変えるべきだと報道されていますが、植物工場の実力はどんなものでしょうか。

A1. 植物工場と聞いてみなさんが思い浮かべるイメージは、太陽光の差し込まない閉鎖空間でLED(発光ダイオード)などの人工光だけを使って栽培するものだと思われます。

ですが、こうした閉鎖型の植物工場には、あまり過大な期待をしない方がよいでしょう。植物工場には5つの問題があるからです。

Q2. 5つも問題が、あるんですか。どんな問題ですか?

A2. 1)人工光は光が弱い、2)エネルギーコストが大きい、3)植物の生育スピードは最速でも20日間、4)植物は「動かせない」、5)農産物は安くないと売れない、という問題です。

Q3. 人工光の光が弱いというのはどういうことですか?

A3. たとえば真夏の太陽光は10万ルクス、真冬でも5万ルクスありますが、蛍光灯の明るい室内でも2千ルクス程度です。

いかに暗いか、よく分かるでしょう。

野菜はその名の通り、屋外のサンサンと降り注ぐ太陽の光で育つ作物です。

トマトなどは冬の太陽光(5万ルクス)では物足りないくらいですから、人工光(2千ルクス)では全然足りません。

イネもそうです。

人工光で育てられるのは、暗いところでもどうにか育つレタスくらいです。

植物工場がテレビで紹介されるとき、決まってレタスが登場するのはこのためです。

Q4. でも、イネやトマトを育てている映像を見たことがありますよ。

A4. 金に糸目をつけなければ、イネやトマトも育てることが何とか可能です。

まず、人工光でトマトなどを育てるには、光源をできるだけ野菜に近づけて光を強く当てることが必要です。

ところがそうすると、人工光の発する熱で野菜が焼けてしまいます。

このため冷房が必要になるのですが、これが非常に高くつきます。

やむなく、冷房費を節約するために人工光と野菜の距離をとると、今度は光が弱くなってしまいます。

光を近づけると冷房費が高くつき、冷房費をケチると弱い光でガマンしなければならず、ジレンマに陥ります。

 また、冷房の風もくせ者です。

野菜に冷たい風が当たると生育が悪化してしまうので、構造を工夫する必要があり、工事費が跳ね上がります。こんないろいろな面倒があるので、費用対効果を考えると、イネやトマトを栽培するのは割に合いません。植物工場でレタスの栽培が多いのは、このためです。テレビでよく紹介される地下農園は、「農業のディスプレー(陳列棚)」としての役割があり、コスト度外視で取り組んでいますから、トマトの栽培も可能です。もし商業ベースに乗せようとするなら、トマトのような強光を必要とする野菜の栽培は、無謀といえるでしょう。

Q5. LED(発光ダイオード)ならどうですか?蛍の光にたとえられるほど、熱を発さず、光の変換効率が高いと聞いたことがあります。
A5. 触ってみると分かりますが、実際にはLEDの基盤は、とても熱くなります。どの人工光を使っても、明るいものほど熱くなります。現在、電気を光に変換する効率はどの人工光源でも2割程度です(1ワットあたり130ルーメン程度。100%変換した場合の理論的効率なら1ワットあたり683ルーメン)。つまり、8割は熱となっているということです。遠ざければ光が弱く、近づければ熱い、という人工光の宿命は、LEDも逃れることができません。一定以上の距離を取らないと野菜が焼けてしまうことを考えると、やはり「人工光は光が弱い」ということになってしまいます。

Q6. では、レタスの栽培なら植物工場は露地栽培と比べてずっと効率的に栽培できるのですね。
A6. とても効率的とは言えないと思います。2番目の欠点として指摘した、エネルギーコストが大きすぎるからです。その分、金銭面のコストも非常に大きくなるので、効率的といえるかどうか分かりません。
 露地栽培では太陽の光ですから無料ですし、エネルギーコストもかかりません。畑を耕すだけですから設備費もいりません。ところが植物工場だと人工光源を光らせる電気代も必要ですし、冷房が欠かせないので、その分コストがかかります。エネルギーコストも金銭面のコストも、植物工場は不利だと言えます。

Q7. しかし植物工場は1年に10回以上も収穫が可能なのに対して、露地栽培では1、2回だけだといいます。生産性の高さでコストを吸収できるのでは?
A7. 生産性の高さがコストを吸収しきれないケースが多いので、注意が必要です。ある企業が中東に販売する予定の野菜工場のケースを見てみましょう。この野菜工場ではレタスを年に12〜14回も収穫できるそうで、1万株を栽培するサイズの工場で50億円の建設費用がかかるそうです。計算すると、レタス1株あたり3571円の建設コストがかかります(10年工場を稼働させた場合)。これに運転コストを考慮すると、レタス1株4000円はかかります。中東の人はお金持ちだからこれでよいのかもしれませんが、これだけ高いレタスを買える日本人は、ほとんどいないでしょう。

 そもそも、「露地野菜では年に1、2回しか収穫できない」というのは誤解を招きやすい表現です。レタスなど特定の野菜なら、確かに適季にしか栽培できませんが、夏には夏野菜、冬には冬野菜を栽培すれば年に何度も収穫できますから、収穫機会は決して少ないわけではありません。
 それに、年に10回以上収穫できるのは何も植物工場だけの専売特許ではありません。通常の温室栽培(太陽光を利用した半閉鎖型栽培)でも十分可能です。温室の建設費は植物工場と比べて桁違いに安いですから、「年に10回以上も収穫できる」くらいでは植物工場は優位に立っているとは言えません。

Q8. 植物工場の強みは、太陽光とは違って光合成に最適な波長の人工光で栽培できることだといわれています。光合成を最大化する波長で栽培すれば、露地栽培や温室栽培よりもさらに効率化できるのでは?
A8. 「植物の生育を最大化させる波長は赤色だ」ということが、よくいわれたりしますね。実のところ、赤色LEDで育つ野菜はレタスくらいのものなのですが。ほとんどの野菜は様々な波長を必要としますし、生育ステージによって必要とする波長も違います。人工光で波長をコントロールするという話は理論的には可能ですが、そうすると光源の購入コストが跳ね上がりますので、現実的ではありません。

 もっと大切な問題があります。それが3番目の問題として指摘した、「植物の生育スピードは最速でも20日間」ということです。レタスは収穫までの時間が非常に短く、生育がとても早い野菜ですが、それでも20日間程度は必要です。この日数は生理学的にどうしても必要です。トマトだと収穫までに90日程度かかります。
 工場というのは、製造スピードを上げることができるから効率化できるのですが、「20日間は野菜の生育に最低必要」という生理学的限界のため、それ以上スピードを上げることができません。植物工場を「工場」と呼ぶことができるのかどうかさえ疑わしくなるのは、製造日数を短縮化できないことが大きな原因となっています。
 仮に将来、遺伝子組換えなどで生育スピードをアップさせることができたとしても、せいぜい2、3割といったところでしょう。植物の生育は大して速めることができない、ということは頭に入れておかなければなりません。

Q9. 日本には世界に誇るべきロボット技術があります。栽培を自動化することで人件費などを削減し、効率化することができるのでは?
A9. それは4番目の問題として指摘した、「植物は動かせない」に関わっています。植物の根は、人間でいえば胃や腸に当たります。いわば「むき出しになった内蔵」ですから、根を動かすと簡単に傷んでしまい、生育が非常に悪くなってしまいます。このため、植物は植えたところから動かせないのです。しかも、育ち上がるまで何十日も同じ場所から動かせないわけですから、非常に広い面積を長期間にわたって奪われてしまいます。

 製造すべきものを動かせないのですから、それを世話する人間か機械の方が動いてやらなければなりません。これが、「工場」の概念と真っ向から矛盾します。
 工場が効率的なのは、製造物がラインの上を流れて、人間や機械が場所を移動せずに済み、同じ作業を繰り返せばよいからです。
 ところが、植物は動かせないから人間か機械が動かなければなりません。機械は、場所を動かさなければならないとなったとたんに、無用の長物になります。機械というのは、場所を固定していないと正確に動くのが非常に難しくなるからです。すると、人間が動かなければなりません。ということは、人件費が高くつきます。植物工場は、手間暇が大変かかって効率が悪くなってしまうことが多いのです。

Q10. しかし、植物工場で高品質な野菜を栽培することで差別化を図り、高価格で販売することが可能なのでは?
A10. それは5つ目の問題、「農作物は基本的に高いと売れない」ということになります。たとえば、トマトの生産価格は1年を通して、だいたい150〜250円/kgくらいです。この倍の値段で売ろうとすれば、市場規模は10分の1以下になるでしょう。高い野菜を買ってくれる好事家は、世の中にはあまりいないのです。
 植物工場では建設費の上に照明代、冷房費などもかさみますから野菜を高く売る必要がありますが、旬の時期には露地栽培の野菜と価格競争しなければならず、そうでない季節でも温室栽培の野菜と価格競争しなければなりません。

 露地栽培は「効率が悪い」と誤ったレッテルが貼られていますが、実際には非常に高いコストパフォーマンスを誇っています。種をまいて収穫するだけなので、機械を使わなければタダですし、エネルギーコストもゼロです。機械を多少使っても、温室や植物工場のように機材は高くありませんし、エネルギーコストも桁違いに小さくなります。売値が同じなら、コストを一切かけないに等しい、露地栽培の方が利益を出しやすくなります。

 そんなコストパフォーマンスの高い露地栽培に、温室栽培がどうにか勝てるのは、露地栽培では栽培できない時期に収穫できるからです。いわば、温室栽培は露地栽培が太刀打ちできない「ニッチ」を選んでいるから勝てるわけです。ところで、植物工場も温室栽培と同様に年中栽培できますが、温室栽培と長所が重なってしまい、「ニッチ」とはいえません。温室栽培の方が低コストですから、植物工場は価格面で温室野菜に太刀打ちできません。植物工場で生産した「高い野菜」を買ってくれる好事家は、そう多くないと考えるのが現実的でしょう。

Q11. 植物工場は半導体工場のようにクリーンルームになっていて、病原菌や害虫をシャットアウトできるので病虫害の心配がなく、無農薬で栽培できるといわれています。その点を強調して高価格で販売できるのでは?
A11. 病原菌や害虫をシャットアウトする点が、(完全閉鎖型)植物工場の最大の特徴であり、最大の欠点でもあるといえます。

 まず欠点の方を申し上げると、クリーンな環境を作り出すのに大変無理をしているので、とてもコストがかかるということです。病原菌や害虫を完全にシャットアウトするにはエアーシャワーのような高価な設備が必要になります。それでも病原菌や害虫は忍び込んできます。いったん侵入を許すと、病害虫にとっては「敵のいない無菌状態のパラダイス」ですから、瞬く間に蔓延し、大きな被害を受けます。甘やかされて育った人を「温室栽培」といったりすることがありますが、植物工場の野菜は温室栽培よりずっと甘やかされていますから、病害虫への抵抗力は全くありません。そうなってしまうと、栽培をいったん全部あきらめて、完全消毒して栽培を一からやり直ししなければならず、かなりのコスト負担になります。クリーンな環境を維持するのも高コストなら、病虫害の侵入を許したときの被害も高コストになるのです。

 ですが、「病害虫をシャットアウト」というのは、やはり植物工場の最大の長所でもあります。農業では「苗半生」という言葉があります。小さな苗の間が、その植物の一生を決めるほど、重要な時期なのだという意味です。苗の間にちょっとでも傷ついたり弱ったりすると、栽培期間全般を通じて生育が悪くなります。苗の期間を無事に育て上げることはとても重要なのです。

 完全閉鎖型の植物工場は、苗を無事に育てるには好都合です。病害虫の被害から苗を守れば植物の生育はずっとよくなります。ですので、苗生産に特化した植物工場なら、他の栽培手法が真似できないニッチなところなので、かなり現実的です。人工光だけで無理に頑張ろうとせずに、太陽光もうまく利用するのがよいでしょう。太陽光を利用した半閉鎖型の温室栽培も、植物工場と呼ばれているケースがあります。ただ、これは植物工場というよりは温室栽培の改良型といった方がよいのかもしれませんが。

 以上述べてきたように、植物工場が効率的だ、植物工場を見習え、という昨今のテレビのコメンテーターの発言は、眉に唾をつけて聞いた方がよいでしょう。また、「農業を工業化し、生産効率を上げるべきだ」という似たような主張がありますが、これは植物工場と同様、3つの問題を克服しなければなりません。上記の問答で使った番号でいえば、
3)植物の生育スピードは最速でも20日間
4)植物は「動かせない」
5)農産物は安くないと売れない
の3つです。特に3)、4)の問題は「工業化」と真っ向から矛盾します(A8、A9参照)。製造速度を20日間より短縮することができず、製造物(野菜)を何十日も同じ場所から動かすことができず、機械や人間の方が世話するために動いてやらなければならないというのは、「工業化」の概念と対立してしまう問題です。

 農業を効率的なものにする努力は、確かに今後も重要です。しかし、工業的手法をそのまま農業に適用できるという安直な考え方は、それを安易に信じ込んだ人たちを破産に追い込む危険性があります。
 
「農業の工業化」を主張するテレビのコメンテーターの方々は、どうかこれらの問題を十分に考慮し、意見を開陳してほしいものです。そもそも日本の農業には、きわめて博識で進取の気性に富み、挑戦することを恐れない篤農家が、きら星のようにたくさんいます。農業の工業化はこれまでも当然ながら目指されてきたことであり、だからこそ日本の農業技術は世界的に見ても高い水準にあるのです。もし農業の工業化をうたうなら、せめて従来と同じ轍を踏まないようにする努力が必要だと思われます。
 

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