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馬だって「転職」は簡単じゃない。競馬→誘導馬→馬術という成功組。 ナンバーウェブ
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投稿者 BRIAN ENO 日時 2017 年 7 月 09 日 15:58:58: tZW9Ar4r/Y2EU QlJJQU4gRU5P
 


転職=1つの職から他の職に転ずること。職業をかえること。(広辞苑より)」

 「転職」は大変だ。新しい仕事を見つけることも大変だし、新しい職場や内容に慣れるまでは苦労も多い。そして転職は人間だけのことではない。馬の世界にも「転職」が存在する。

 日本において、「馬の仕事」といえば、何を想像するだろう? 時代劇の中なら、乗り物としての馬や農耕馬だった。しかし、現代では、レジャーあるいはスポーツが、馬たちのフィールドだ。なかでもメインフィールドは、間違いなく競馬である。

 競馬はわかりやすい。競馬は迫力がある。そして、楽しんだうえにお金が儲かる(こともある)。しかし、華やかな競馬の世界でスポットライトを浴びることができる馬は、実はそれほど多くはない。

 ましてや、GIレースをいくつも勝って、引退後に種牡馬に「昇進」する馬はごくわずか。血統が重視され、ブラッドスポーツと呼ばれる競馬コミュニティにおいて、種牡馬になることは究極の出世とも言える。しかし、未勝利馬はもちろんのこと、レースをいくつか勝ったくらいでは、種牡馬への道は開かない。
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馬にとっても、転職は簡単じゃない。

 そこで「転職」だ。転職先の1つに「乗用馬」がある。乗馬クラブなどでお客さんを乗せるだけなら、特別速く走る必要はないし、どんな馬にもできそうな仕事に見えるが、実際は違う。

 競走馬に求められるのは、勝つこと。数センチでも構わないから、他の馬より先にゴールを駆け抜けることが全てである。持って生まれた身体能力に加え、闘争心や、騎手の指示に対する瞬時の反応など、様々な要素が兼ね備わってはじめて、トップクラスの競走馬になれる。育成牧場で、トレーニングセンターで、彼らは「競走馬」になるためのトレーニングをひたすら重ねる。

 乗用馬、特に初心者を乗せる馬に求められるのは、安全であること。勝手に走り出したりせず、物音に動じることなく、泰然自若としていることが重要で、競走馬時代とは正反対のことを要求される。

 馬にとって、これは結構ハードルが高い。馬は学習能力が高い動物と言われる。一度覚えたことはなかなか忘れない。「とにかく速く走れ! 他の馬よりも先にゴールを駆け抜けろ!」と教えられてきたのに、「勝手に走るな。ゆっくり歩け。落ち着いていろ」と言われても、そう簡単に受け入れられるものではない


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170709-00828405-number-horse


競馬と最も離れた存在、馬場馬術。

 お客さんを乗せる乗用馬ではなく、さらに一歩進んで、馬術競技に出場する馬を「競技馬」と呼ぶ。

 競技馬になるためには、競技馬としての能力とテクニックが必要だ。国内で多く行われている馬術競技は「障害馬術」と「馬場馬術」。障害馬術は、アリーナの中に設けられた障害物を、決められた順番通りに、落下や拒止などのミスなく早く回ってゴールするものだ。

 馬場馬術は、フィギュアスケートのように、様々なステップを踏んだり、図形を描いたりして、その正確さや美しさを競う。馬術競技の中でも馬場馬術は、競馬と最も離れた存在だ。

 馬場馬術で美しくステップを踏むには、持って生まれた「歩様(ほよう)」が大きく関係する。これは、トレーニングではカバーしきれない部分だ。「歩様」とは、歩き方、肢の動かし方を言う。

 馬場馬術の馬に求められるのは、大きく、滑らかで、優雅な歩様だ。肩の可動域が広く、後肢を大きく踏み込み、全身を使って雄大な歩きを見せると、高い評価を得られる。ある程度トレーニングで改善することはできるが、やはり天性の素質がものを言う。
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今回の主役はクロフネとロジータの子供。

 ここで、主役の登場だ。名前は「オースミイレブン」。名前だけでピンとくる人がいたら、かなりの競馬通だろう。競走馬時代は四位洋文騎手などの手綱で15戦5勝の結果を出した。

 父はクロフネ、母はロジータ。両親の名前を聞けば、「あぁ」と思う競馬ファンもいるはずだ。クロフネは芝からダートに転向して、GIのジャパンカップダートを大差のレコード勝ちした伝説の馬。ロジータは牝馬ながら南関東三冠を制した馬で、今も「ロジータ記念」というレースがある。つまりオースミイレブンは、競馬の世界で言うところの「良血(りょうけつ)=血統が良い」なのだ。

 しかし、先にも述べた通り、この程度の競走成績では種牡馬になることは到底望めない。が、彼が父親譲りの芦毛(白い被毛に覆われている)だったことが、彼を次の道へと導いた。

 競馬では、出走馬が本馬場入場する際に、その馬を先導する「誘導馬」という仕事をする馬たちがいる。その多くが元競走馬で、しかも芦毛が多い。芦毛で良血のオースミイレブンはこの仕事にスカウトされ、JRA札幌競馬場の乗馬センターへの「転職」が決まった。2012年のことだ。


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170709-00828405-number-horse&p=2


誘導馬になると同時に、馬術の才能を見出され。

 誘導馬にも、落ち着いていることが求められる。本馬場入場時にエキサイトする競走馬は多い。そこで一緒になって「オレも走る!」と、興奮したら誘導馬失格だ。周りの馬たちが気合十分にコースを駆けていく中、自身はゆっくりと落ち着いて歩かなければならない。それができない馬は誘導馬にはなれない。オースミイレブンは、トレーニング期間を経て、2014年の夏に誘導馬として競馬ファンの前に再び姿を見せた。

 札幌競馬場では、誘導馬としてのトレーニングと同時に、馬場馬術の競技馬としてのトレーニングも受けていた。

 担当したのはJRA職員の間裕(はざま ゆう)。すぐにオースミイレブンに、馬場馬術競技馬としての素質を感じた。ローカル競技にも出てみたところ、悪くない評価をもらった。

 「この馬ならもっと上にいけるかもしれない」

 そう感じた間は、北原広之に連絡した。「いい馬がいるんです。北原さん、乗ってくれませんか?」と。

 東京・世田谷のJRA馬事公苑(現在は改修工事中のため宇都宮市)に勤務する北原は、国内トップクラスの馬場馬術選手だ。過去に全日本選手権を3連覇し、世界選手権にも出場した。トレーナーとして多くの馬を育てた実績もある。その北原も、オースミイレブンの動きに才能を見てとった。2014年の暮れにオースミイレブンは馬事公苑に「転勤」し、馬場馬術競技馬としての本格的なトレーニングがスタートした。
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「どんな馬にも才能がある。それを伸ばすのが仕事」

 北原がオースミイレブンに感じたのは「肢さばきの良さ」。歩き方がスマートで、かつ見栄えがするのだ。これはトレーニングでつくり出せるものではない。とはいえ、パーフェクトだったわけではなく、肢の動かし方に左右の差があった。正確さと美しさを求められる馬場馬術において、左右のアンバランスは大きな欠点だ。

 また、性格にもやや難があった。周りが気になってしまうタイプで、特に初めての場所では本来のパフォーマンスに集中せず、挙動不審になることも多かった。

 北原には、「どんな馬にも才能がある。それを活かして伸ばすのが自分の仕事。目標は常にグランプリクラス」という信念がある。才能を見込んで受け入れた以上、オースミイレブンを競技馬として成功に導かなければならない。

 馬場馬術競技はレベルに応じて、段階的に難しいクラスにステップアップしていくシステムがある。公式戦ではLクラスからスタートして、Mクラス、Sクラスと上がっていき、その先はインターナショナルレベル。セントジョージ賞典クラス、インターメディエイトクラスとレベルが上がり、究極はグランプリだ。

 オリンピックや世界選手権は、グランプリクラスで行われる。インターナショナルレベル以上のクラスで求められる動きは、速く走ることに特化したサラブレッドには難しい。馬術競技が盛んなヨーロッパでは、馬術競技用の品種の、その中でも選ばれた馬たちがこの競技に出てくる。それらの馬たちは、体のつくりも、歩様も、馬場馬術に適している。


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170709-00828405-number-horse&p=3


国内の枠を超えた器で、一足飛びに国際クラスへ。

 馬場馬術の競技馬として再スタートしたオースミイレブンは、順調に競技会で結果を出し、2015年秋には全日本大会のLクラスへの出場権を得た。しかし、意外な結果が待っていた。彼の持ち味である肢を高く上げる歩様が、このクラスではトゥーマッチと評価されたのだ。

 インターナショナルクラスに上がれば評価されるはずのこの歩様が、国内クラスではむしろマイナスに作用してしまった。しかし、北原が見据えているのは国内クラスではなく、最高レベルのグランプリ。最終目標のために必要な歩様の良さを、ここでつぶすわけにはいかない。

 北原は国内で結果を出すことを捨てて、次のステップに進む決断をした。しかし、肢を高く上げられるからといって、全ての要素が上のクラスに通用するわけではない。他の部分を強化して、全体のレベルを引き上げなければ、上のクラスにチャレンジすることさえままならない。

 馬術競技において、馬はパートナーだ。けれど、言葉が通じない馬に対して、技術的なことを説いても、精神論を語っても、「馬の耳に念仏」である。彼らに求めていることを伝えるには、理論に基づいた的確な指示を出し、少しでもうまくいったらほめることしかない。

 繰り返すが、馬は学習能力が高い。ほめられれば「この指示の時には、この動きをすれば良い」ということを理解する。その小さな積み重ねだ。うまくいかない日が続いても、ひたすら繰り返す。ひょんなきっかけで光が見えてくることもある。せっかくうまくいっていたことが、突然できなくなることもある。そんなときは、ひたすら我慢して、時には敢えて、もっと前の段階まで戻ってやり直すこともある。それが生き物である馬とともに行うスポーツの難しさであり、醍醐味でもある。
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世界での初戦は「激辛デビュー」だった。

 オースミイレブンが北原の元に来てから2年半。北原とオースミイレブンは現在、インターナショナルクラスの第一関門であるセントジョージ賞典に挑戦している。

 最初は散々だった。インターナショナルクラス初挑戦の試合で、北原はウォームアップから強めに追い込み、オースミイレブンもそれに応えて切れのある動きを見せた。「このままいけば、いいパフォーマンスができる」と、北原は思ったという。

 しかし、そういうわけにはいかなかった。オースミイレブンはウォームアップの時点でいっぱいいっぱいになってしまっていたが、北原それに気付かなかった。競技アリーナに入場するなり、腰を高くして後ろ肢を蹴り上げるしぐさを繰り返し、北原の望む動きからはほど遠い状態だった。

 ちゃんと運動をさせようと焦る北原の指示は強くなり、それにオースミイレブンが反抗する……という悪循環。それ以上、馬に勝手なことをさせないように、無難に演技をこなすのが精一杯だった。

 北原曰く、「ほろ苦どころか、激辛のセントジョージ賞典デビュー」となった。その後、調整を重ね、何度かこのクラスの競技に出場して、少しずつ安定した成績を出せるようになってきた。


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170709-00828405-number-horse&p=4


競走馬として勝ち組ではなかったが……。

 今の具体的な目標は7月中旬の内国産馬場馬術選手権。元競走馬や日本で乗用馬として生産された馬のための大会で、セントジョージ賞典クラスで行われる。

 ランキング上位から15頭がエントリーしている中で、オースミイレブンは現在ランキング7位。何年もこの競技に出場し続けているベテラン馬たちを相手に、どこまで戦えるか。北原がどこまでオースミイレブンの力を引き出せるか。

 以前、間が北原に言ったことがある。「内国産馬選手権で勝てると思って北原さんに託したので、まずはそれを実現してください。その先も、行けるところまで行ってほしいと思っています」と。

 「どの馬でもグランプリに行ける可能性を秘めていると思ってやっているけれど、サラブレッドでそこまで行くのは簡単じゃないんだよ。わかっているだろ」と北原は笑って答えたが、彼自身が誰よりもそれを期待している。

 「転職」は大変だ。そもそもそれは馬の意志ではなく、馬にとってはありがた迷惑な話かもしれない。けれど人は、馬の才能を信じ、それを伸ばすことに全力を尽くす。競走馬として大成しなかった馬にも、別の世界で花開く可能性がある。

 競走馬としては「勝ち組」とは言えないが、自分を信じて、伸ばしてくれようとする「上司」に出会えたオースミイレブンは、たぶん「転職成功組」だ。
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(「オリンピックPRESS」北野あづさ = 文)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170709-00828405-number-horse&p=5

 

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