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母の木は残った    Mother's  Tree  Remained
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投稿者 愚民党 日時 2011 年 5 月 16 日 03:55:19: ogcGl0q1DMbpk
 


撮影=井出隆久


       舞 踏 者     榊大亮
                         小林恭子
                         鈴木ヱイ子

  海峡の荒々しい波、あるいはオゾン天界の下に雲が、背景として流れる。

  地球の美の前に人類は滅ぶかも知れない予感を、立て軸としてもつ
  鬼道シヤーマン、あるいは、何億光年にある宇宙の壁よりの使者登場。
  彼女は世界のアルプス山脈、雪と氷の山頂の天界を歩行する。
  あのバベルの塔さえも崩壊させた、天からの雷。

  新しいフレンドリー、セレブレーション、協道を伝える音信が波動する。
  古い体制は瓦礫・廃虚となり、心の奥に真の強さがある宇宙の壁よりの使者。
  遍路の修行、脈管の脚。金剛杖に鈴がなり、チベット山脈の静寂。
         (伝 でん) 魂の系譜

  人類未踏の原林その獣道から、宇宙の塵から、地球の土からアフリカに
  誕生した、人類源態登場。彼は樹木で生活していた猿人群に、おさらば
  して、独り挑戦、ふたつ翼で歩きだした若き人。彼は今だ、どのような
  動物になるか知らない、地をはう源態である。

  大地に踏みだした若き男の背中。その、肋骨から女は誕生する予感。
  太陽が隠れた洞窟が開き、あらかじめ登場したのは、太陽が手に持つ
  榊(さかき)だった。彼は樹木を通り抜け羊水に遊泳する。

  やがて新世紀の男は、人類を産み落とした母の木たる古里を思い浮かべ、
  模倣し踊る。人間の想像力と身體言語は、こうして産まれた。
   (大 だい) 二本の足と二本の腕が広がり、首がある神がみが住む里。
          かつて青森にあった巨大な黄金の縄文。それが火の鳥である。

  命の尊厳を愛する幻想の竜神池から、細雪(ささめゆき)のような女登場。
  類の悲しみと喜びを、細い足と一筋の指で、抱擁するかのように。
  豊饒の内面の海は、ゆるやかな線となり、その外側に残像世界が立ち上がる。
彼女は北鎌倉の寺にある墓、渋澤龍彦が呼び出した。

彼が愛した書斎の窓から夜の世界が見える、そして彼が愛した人形が、人知れず
動き出す。祈りによって母を救った女。そのラストワルツは、家族の新しい
生命の出発。下層に死んでいった類へのレクイエム。幻想都市の呼び女。
  その細雪の白銀は、暗黒を照らす逆光線であり、地平線。
  地平線の向こうには、女とおなじ淋しさ優しさがあり、世界には、もう独りの
  自分がいる。やがて女は歩き出す。そして深い内面の榊に出会うだろう。
    (恭 きょう) 共の下は八方に広がり、動物の生命維持の根源たる
            力としての歯がある。宇宙の生命樹に抱かれ,やがて
            臨在をはらむ。NEW CHILDが暗黒に誕生する。
  
   舞台はシンプルに、白黒映画のように。
   舞台という器に、夢のような脳波色彩、脳波映像、イメージ想像力、思いを
   投影し、真水を入れるのは観客である。

   都市の騒音消えて 沈黙の夜空に祈る 33分舞踏
  

-------

1996年12月12日(木)

神奈川県藤沢市藤沢本町 ライブハウス クラジャ


新発意の菩薩の稲・麻・竹・葦の如くにして     十万の刹(くに)に充満せん

舞踏

『母の木は残った』

---

舞台美術  樋口薫


照明  吉原美恵

 
----------------------

観客によって幕が切って落とされた後、宇宙と舞踏
  者の交信が始まる。古来よりの十二支縁起によって、出会った者達は、見えな
  い生命と記憶のつながり、宇宙樹の残像を神龍半印本のように刻むだろう。

  舞踏者は不特定多数の観客のために舞うのではない。自分の心の深い海底にある
  鏡玉に向かって行くのである。その回路は、世界に宇宙に必ず臨在する、もうひ
  とりの自分へと双方に交信している。鏡のように。暗黒舞踏者自身が光である。
  一点の墨が光へと広がる。愛とは何か。せめてもの添木となって。
  あなたとわたしのわたしたちの協道作業としての舞踏創作は、困難に向かって、
  世界に向かって沈黙の宣(のぶ)をするだろう。過去と未来の時間をつなぐ者
  こそ舞踏者である。

  新しい人類、NEW CHILD が、暗黒に生み出される。

  照明する人こそ、暗黒舞踏者である。心臓、内蔵、血管、脈管、肺、呼吸の振幅
  が音楽となる。身體を自由自在に、クラジャという9年間の重い記憶空間に、あ
  ずけよう。クラジャに臨在する華やかで美しい孔雀羊歯のような見えない空気。
  その心の音楽の記憶粒子は舞踏者の添え声となり、励ましてくれるだろう。

  開演30分前、7時半から開演銀行と観客案内は舞監の指示によって、客入れ。
  楽屋とライブ会場 クラジャの連絡回路は舞監の仕事、5分押しはありえない。
  8時ジャストに開演しないと、33分の構成が崩れる。

  遅れてきた来たお客さまは、外で待ってもらい、伝が扉から舞台へと歩行して
  観客の集合幻想と一緒に、幕を切って落とした3分後に、外の客を、舞監が、
  店に誘導する。出入口扉にはける伝と観客の交差も、舞台効果となるだろう。

  大、恭の舞台登場は舞監のタイム無言のアクセス合図によって。
  出入口扉も外宇宙と内宇宙のホースとなり、舞台美術の一環を生成させるだろう。

  舞台照明、客電が全て消え、暗黒時間3分のなかに、ゆっくりと舞踏者は、扉から
  何億光年の外宇宙へと帰還する。楽屋へと登る。楽屋に入るまで沈黙の舞踏歩行。
  伝、恭、大の順で一列歩行。劇場ではなくライブハウス店なので、暗転という
  闇はありえない。静寂の闇は舞踏者の想念力によって産み出す。

構成/演出 塚原勝美


 

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