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ユーロからドルに戻る危機(田中宇の国際ニュース解説)
http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/402.html
投稿者 JAXVN 日時 2010 年 3 月 02 日 20:20:36: fSuEJ1ZfVg3Og
 

「ユーロからドルに戻る危機

 1980年代ぐらいから、米国の覇権が衰退期に入っていることは、世界の
専門家が認識するところだったが、米国の財政破綻やドル崩壊といった米覇権
の終焉を象徴する事態は、遠い先の10−20年後に起きるかもしれないこと
でしかないと、いつも認識されてきた。しかし2月24日、米国の連銀(FRB

中央銀行)のバーナンキ議長が、米議会下院の金融サービス委員会で、この
従来の常識を吹き飛ばす爆弾発言を行った。

 同議長は「財政赤字の急増によって、米国は間もなく、ギリシャが陥ったよ
うな財政危機(米国債忌避)に見舞われるかもしれない。それは、10年後に
起きるかもしれないことではなく、今すでに市場で悪影響が出ている。米国債
が信用を失って金利が高騰する事態は、今日にでも起こりうる」と述べた。バ
ーナンキは「米国債が売れなくなって金利が高騰しても、連銀がドルを増刷し
て国債を買い支えることは、インフレがひどくなるのでやらない。議会の方で
財政赤字を減らす努力をして(財政破綻を)防いでくれ」とくぎを刺した。

http://www.washingtontimes.com/news/2010/feb/25/bernanke-delivers-warning-on-us-debt/
Bernanke delivers blunt warning on U.S. debt

 この件について、バーナンキが米議会に財政赤字を削減させようと誇大な脅
しをかけたと楽観することも不可能ではない。だが最近、同様の警告があちこ
ちから発せられている。共和党の米上院議員(Judd Gregg)は最近、中国が米
国債を手放す結果、5−7年以内に米国で財政金融の崩壊(financial meltdown

が起きると予測した。先週の記事で紹介した連銀のホエニッヒ理事の論文も
「今後数年以内に米連邦政府の財政赤字が急増し、超インフレになる」と予測
する内容だった。米国の財政金融は、あと何年か持つかもしれないが、もう
すぐ崩壊するかもしれないという不安定な状態にあると考えられる。

http://www.ft.com/cms/s/0/d618a9a4-225b-11df-a93d-00144feab49a.html
US senator warns of `financial meltdown' risk

http://tanakanews.com/100220dollar.php
◆揺らぐドル

 2月28日には、韓国の中央銀行である韓国銀行が「ドルは今後5−10年
は国際基軸通貨であり続けるが、長期的(20−30年以内)に影響力を失う」
とする予測を発表した。「30年以内にドル崩壊」は、常識の範囲内の予測だ
が、それを対米従属の国である韓国の中央銀行が公式に言い出したのは驚きだ。
これは、韓国が対米従属をやめる(多極化に対応して中国を重視する)と宣言
したのに近い。

http://asia.news.yahoo.com/rtrs/20100228/tbs-korea-forex-b8dd11d.html
S.Korea BOK report: dollar status may fade over time

 米国債とドルが崩壊したら、世界の基軸通貨がなくなるが、上記の米当局者
たちの予測にタイミングを合わせるように、IMF専務理事のストロスカーン
は「いずれ、ドルに代わる基軸通貨をIMFが提供する。それはSDR(特別
引出権)と似たものだが、SDRそのものではない」と表明した。IMFは
G20の事務局として機能しており、基軸通貨をめぐる政治決定はG20で行わ
れそうだ。それがいつ、どんなかたちで具現化していくのか、まだ見えてこない

http://abcnews.go.com/Business/wireStory?id=9958995
Head of IMF Proposes New Reserve Currency

▼粉飾の間から見える米経済の悪化

 米当局の公式発表によると、米経済は回復基調にあるという。しかし、回復
基調の象徴とされた2月末に発表されたいくつかの経済指標は、よく見るとむ
しろ米経済の継続的悪化を示している。その一つは、米国の預金保険制度であ
るFDICが発表した昨年末時点の米銀行界の業況で、経営難に陥っている銀
行の数は3カ月間に27%増えて702行となり、銀行界の融資総額は前年比
7・5%の減少となっている。景気が回復しているなら銀行融資は増えるはず
なので、この数字は不況の悪化を示唆している。今年は米銀行の破綻も増えそ
うだ。

http://seekingalpha.com/article/190665-recent-stats-indicate-u-s-economic-recovery-was-an-illusion
Recent Stats Indicate U.S. Economic Recovery Was an Illusion

 大手のシティグループでさえ、格付け機関から格下げの方向を示されている。
同行は、預金者から預金の引き出し申請を受けてから引き出し可能になるまで
7日間待たせることがあるという規制を米国の顧客に通知し、預金封鎖を連想
させる事態となっている。(この規制は、シティを含む米国の各銀行の口座
契約の条項として以前から存在しており、シティはその条項の存在を顧客に
示したにすぎないと釈明している)

http://www.americanbankingnews.com/2010/02/22/citibank-disclosure-says-customers-must-provide-7-days-notice-to-make-withdrawal-nyse-c/
Citibank Disclosure Says Customers Must Provide 7 Days Notice to Make
Withdrawal

http://www.reuters.com/article/idUSN0910087820100209
BofA, Citigroup rating outlooks negative-S&P

 米国では、消費の動向を示す消費者信頼感指数も2月分が10・5ポイント
下落して46になり、1983年以来の悪さになった。失業増に加え、金融界
のリスク重視で多くの人のクレジットカード信用枠が小さくなり、消費が減っ
ている。米国のGDPの7割は消費活動で、人々が消費しない傾向を強めると
経済は縮小する。

 最近は雇用の微増が発表されたが、これも背景には、年末年始の連休で、失
業を登録する全米の職業安定所の事務処理が滞り、失業登録したのに統計に反
映されていない人が増えたことがある。2月25日に発表された耐久財受注統
計も、全体的には3%増で、景気回復の兆候とされたが、単価が大きい航空機
の受注がたまたま多かっただけで、交通関連以外では0・6%減だ。特に、景
気に関係する資本財や機械類は3−10%減で、ここでも景気悪化の兆候が示
された。

http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5jMcXvgNEm300w7TMydqu8xE-CnewD9E38BC00
Durable goods orders rise 3 percent in January

▼英ポンドの危険な兆候

 米国と連動するように、英国も財政金融が急速に悪化している。金融主導の
英経済は収縮が続き、1月分は、税収が前年比9%減となった半面、不況を政
府財政出動で補う傾向を強めて政府支出は15%増となり、財政赤字の急増ぶ
りはギリシャよりひどい。英国債や金融界の不良債権を、中央銀行がポンド増
刷で買い支えねばならないので、米欧が量的緩和をやめても英国だけはやめら
れず、ポンドが過剰発行になった結果、インフレが3・5%に上がっている。
危険な兆候だ。

http://www.independent.co.uk/news/business/news/shock-as-british-deficit-equals-that-of-greece-1904129.html
Shock as British deficit equals that of Greece

http://www.marketwatch.com/story/boe-posen-may-have-to-do-more-quantitative-easing-2010-02-24
BOE Posen: May Have To Do More Quantitative Easing

http://www.guardian.co.uk/business/2010/feb/16/inflation-soars-vat-petrol
Inflation soars to 3.5% and prompts Bank letter to Darling

 マスコミは南欧諸国の財政危機を喧伝するが、投資家は静かに英国債を売っ
ている。英国では現与党の労働党は元左翼で緊縮財政をしたがらないが、野党
の保守党は緊縮財政を提唱している。5月の総選挙で保守党が政権をとって緊
縮財政策に転じると、景気が悪化してポンドの対ドル為替が最大30%下落す
る懸念があるとスイスの銀行UBSが警告した。半面、労働党が政権を維持し
た場合は、財政赤字の増加が続き、これまた英国債の格下げなどの悪い事態に
つながる。どちらの党が勝っても国難が去らない。

http://www.ft.com/cms/s/0/b805c3cc-1cb4-11df-8d8e-00144feab49a.html
UK monetary isolation

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704240004575085421703764564.html
Fiscal Tightening Could Sink Pound, UBS Cautions

 2月25日には、米国の著名な投資家であるジム・ロジャーズが「英ポンド
は数週間以内に崩壊する」との予測を発表した数時間後、発表は部下が勝手に
やったものだと釈明して取り消すという事件が起きた。英ポンドの危うさを指
摘する分析者は他にもかなりいる上、実際に3月1日には、財政と金融の悪化
を懸念してポンドが下落している。ポンド崩壊予測は誇張とは思えず、撤回す
る必要はなかった感じだ。

http://ftalphaville.ft.com/blog/2010/02/26/159811/shock-jim-rogers-didnt-say-sterling-shall-collapse/
Shock! Jim Rogers didn't say sterling shall collapse!

http://www.guardian.co.uk/business/2010/feb/26/double-dip-recession-fears
Spectre of double-dip recession looms over UK

http://www.businessweek.com/news/2010-03-01/greece-now-u-k-next-as-scots-ready-for-pound-plunge-update1-.html
Greece Now, U.K. Next as Scots Ready for Pound Plunge

 米英の著名な投資家や分析者は、ドルやポンドの下落を防ぎたい金融界や当
局の意をくんで、英米経済は上向くとか、EUや中国などが悪くなるといった、
本心と異なる分析を表明する時がある(普段は本心に沿って表明するが、当局
に頼まれると歪曲的なことを言って貸しを作るとか)。先週の記事に書いた
ジョージ・ソロスの「金は究極のバブル」発言などがその例だ。

http://tanakanews.com/100220dollar.php
◆揺らぐドル

 この観点からすると、ジム・ロジャーズは英当局から依頼され、いったん表
明したポンド暴落予測を取り消したのかもしれない。最近では、ハーバード大
学教授のケニス・ロゴフが「中国が10年以内に経済危機となり、日本や韓国
にも大打撃を与える」「ユーロは崩壊する」と予測し、欧州とアジアの悪化を
強調することで米英を擁護するという、裏のありそうな発言をしている。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=a4MydrE5VOEM&pos=4
Rogoff Says China Crisis May Trigger Regional Slump

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=aAd.sSfnhpTA&pos=5
Harvard's Rogoff Sees Sovereign Defaults, `Painful' Austerity

▼フォークランド紛争との関係

 英国は最近、アルゼンチンと領土権を争っている英占領地の南大西洋フォー
クランド諸島の周辺で石油探査を開始し、アルゼンチンが英国を非難し、
1982年のフォークランド紛争以来の対立激化となっている。これを、昨今
の英経済の悪化、財政赤字増と増税の必要性、ブラウン政権の不人気と結びつ
けて考えると、英政府は、あえてアルゼンチンとの敵対を増幅させてナショナ
リズムを鼓舞し、増税と福祉切り捨て、経済難に対する英国民の不満をそらそ
うとしているようにも見える。前回戦争時の82年も、英国の失業率は大恐慌
以来の悪さで、サッチャー首相の人気が急落していた。

http://reason.com/blog/2010/02/26/obamas-falklands-neutrality-po
Obama's Falklands Neutrality: Positively Reaganite

 英国はフォークランド紛争を再燃させているが、中南米諸国にとっては、こ
の件が地域の団結と統合を促進する覇権多極化の効果を生んでいる。多極化が
英国の国際影響力を落とすものであることを考えると、この状況は皮肉である。
アルゼンチンは、フォークランド(中南米での呼び名はマルビナス)の領有権
の主張について、中南米のほとんどの国から支持されている。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/8531266.stm
BBC; Americas bloc excluding US and Canada agreed

 中南米は従来「米国の裏庭」であり、歴史的に英国による間接支配の影響も
強い。米国は、中南米の国際組織である米州機構(OAS)を主導していた。
だが中南米諸国は先日、メキシコで開いたサミットで、米国とカナダというア
ングロサクソン勢を除外した、OASに代わる新組織(仮称・中南米カリブ海
諸国共同体)の樹立を決定し、その組織が中南米の地域統合を進めていくこと
を決定した。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2010/feb/25/latin-america-independence
Latin America's path to independence

http://tanakanews.com/080829hegemon.htm
覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク

 同時にこのサミットで、マルビナスをめぐるアルゼンチンの主張を支持する
ことが決議された。OASから除名されていたキューバは大喜びだ。メキシコ
はNAFTAを捨てたことになる。米オバマ政権は、この件に関して隠れ多極
主義的だ。新組織を容認し、アルゼンチンと英国の紛争を仲裁すると言って、
中南米にむしろ宥和策をとっている。

http://blogs.telegraph.co.uk/news/jamescorum/100027451/american-neutrality-on-the-falklands-is-a-symptom-of-us-foreign-policy-drift/
American neutrality on the Falklands is a symptom of US foreign policy
drift

▼ギリシャ救済に乗り出す独仏

 米英は危機が強まっている一方で、欧州のギリシャ危機は解決への方向性が
見え始めている。ドイツとフランスでは、大手民間銀行が買うギリシャ国債に
対し、政府系銀行が債務保証をつけることが検討されている。ギリシャ国債は
投資家に敬遠され、利回りが上がったが、独仏の政府系銀行の債務保証がつく
ことによってリスクが低下し、民間銀行はギリシャ国債が持つ高利回りを低リ
スクで享受でき、喜んで買うようになる。

http://www.ft.com/cms/s/0/a7a677d8-230d-11df-a25f-00144feab49a.html
Germans consider bank rescue for Greece

 独仏などEU諸国では、放漫財政を続けたギリシャを救済することに世論の
強い反対があり、独仏政府が直接にギリシャ国債を買い支えられない。そのた
め、政府系銀行が民間銀行にギリシャ国債の債務保証をつけるという間接的な
やり方で、ギリシャを支援することになった。

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/27/AR2010022701304_pf.html
Germany, France, Dutch to buy Greek bonds: MEP

 同時に、ギリシャの危機は、ゴールドマンサックス(GS)やJPモルガン、
UBS、ドイツ銀行など米欧の大手銀行によって煽られたものであることも
見えてきた。GSなどは、ギリシャ政府が財政赤字の対GDP比率をEUで定
められた3%以下に抑えるため、債券発行の機能を使って財政赤字を隠すこと
に手を貸す一方、この赤字隠しの崩壊を前提にギリシャ国債のCDS(債券破
綻保険)を買い、他の投資家たちがCDSの上昇を見てギリシャ国債の危険性
を察知し危機が拡大していく展開の、元凶を作った。

http://www.nytimes.com/2010/02/25/business/global/25swaps.html
Banks Bet Greek Defaults on Debt They Helped Hide

 GSに率いられた米欧の大手銀行は、08年に同様のCDS購入手法でAIG
やリーマンブラザースを破綻させた前科がある。今後は、ポルトガルやスペイ
ンなど、ギリシャの次に危ないと言われる国々が、同様の攻勢に遭うと予測さ
れる。ギリシャ政府は、米欧銀行の提案を受け、空港使用料や宝くじなどの
政府の財政収入の将来の分を担保とした債券(スワップ)を発行し、これを銀
行に売って収入を先取りしていた。これは事実上、国債発行による財政赤字増
と同じで、2002年以後はEUがこの手法を財政赤字とみなしたが、ギリシ
ャ政府はGSの入れ知恵で01年にこの手法をやっていた。

http://ftalphaville.ft.com/blog/2010/02/25/159011/details-on-those-other-greek-debt-deals/
Details on those other Greek debt deals

 このような背景が暴露されると、真面目なドイツ人がギリシャを助けたくな
いと思うのは当然だ(フランス人はラテン系なので、理解を示すかもしれない
が)。しかし、ギリシャの危機を放置すると、ギリシャはユーロを離脱せざる
を得なくなり、ユーロ全体の信用が落ちてドイツにも甚大な被害を及ぼす。ド
イツ政府は、自国民を刺激せぬよう、こっそりギリシャを救済する必要がある。

http://www.economist.com/world/europe/displaystory.cfm?story_id=15549449
Let the Greeks ruin themselves

▼英国は欧州諸国の暴動を誘発できる?

 欧州では、ギリシャ危機に解決の糸口が見えてきた矢先に、今度はスペイン
へと危機が飛び火し、スペイン国債が売られている。南欧の国債危機はGSな
ど米金融界が仕組んだ面があることと、ドルやポンドも危機なので米英当局は
自国よりユーロ圏が危機だと市場に思ってもらいたいことを合わせて考えると、
国債危機がギリシャからスペインなどに飛び火する背後に、米英の画策がある
と推測できる。

http://www.ft.com/cms/s/0/657c77a4-2484-11df-8be0-00144feab49a.html
Markets poised to punish Spain

 ギリシャでは公務員ストライキや反政府デモが起きているが、こうした国民
の反政府的な動きも、スペインやフランス、ドイツなどに拡大している。日本
や米国は伝統的に、政治危機が国民の暴動に発展しにくいが、欧州は対照的に、
政治危機が暴動につながりやすく、しかも一つの国から他の国々へと暴動が
感染しやすい。

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=ahuQR4YFStHQ
SocGen's Edwards Sees Euro Breakup as Feldstein Predicts Change

 これを「同じ文化圏だから」と考えることもできるが、私流に欧州の歴史を
解釈すると、欧州の覇権国だった英国が、ひょっとすると今でも欧州大陸諸国
で暴動を起こせる諜報ネットワークを維持しているのではないかとも思える。
英国は、フランス革命後のナポレオン戦争で勝って覇権国となり、その後のフ
ランスを傀儡化するとともに、1815年のウィーン会議で、ドイツとイタリ
アの統一と国民国家としての建国を予約している。

http://tanakanews.com/080814hegemon.htm
覇権の起源

 この後、欧州大陸諸国は国民国家としての体裁を整えていったが、同時に英
国は、欧州諸国を相互に敵対させるなど国際的な政治操作を行い、覇権を維持
した。どうやって政治操作したのか不明だが、おそらく諜報網を構築し、諸国
のマスコミや政財官界、右翼(地下社会)などの中に英国のエージェントを入
れ、その国が反英的に台頭してくると、エージェント網を使ってその国を混乱
させる機能を維持したのではないか。この機能が今も継承され、EUを混乱さ
せている可能性がある。

 英政府が20世紀初頭、この機能を使ってロシアを弱体化しようとしたとこ
ろ、英国内の多極主義的な資本家勢力がこれを過剰にやり、「やりすぎ」の結
果、ロシアの革命勢力がソ連を作ることへと誘導し、むしろロシアを強化した
のが、ロシア革命の本質かもしれない。この「やりすぎ」は、米国のネオコン
などが米国の覇権を自滅させているのと同じ手法だ。近代世界史の意外に多く
の部分が、英米内部の「資本と帝国の暗闘」の結果として起きたことなのかも
しれない。EU統合をめぐっても、多極化を望む米資本家が統合を後押しし、
英国の旧帝国派は統合を壊そうとしてギリシャなどの危機を誘発するという暗
闘の図式が推察できる。

▼中国が人民元切り上げのシミュレーション?

 EU統合をめぐる暗闘がどちらの勝ちになるかによって、世界の多極化の今
後の趨勢が変わってくる。南欧の混乱が各国に感染し、EUが瓦解していくと、
ドルに対する資金逃避が続き、米国は延命し、英国は米国を牛耳り続ける。
逆に、独仏主導で南欧諸国の経済混乱がおさまれば、EUはこれを機に政治統
合を加速しようとする。半面、米英の金融財政危機の方が注目されていく。

http://www.economist.com/businessfinance/displaystory.cfm?story_id=15545882
Assessing the risk that Greece's woes herald something far worse

 最近、JPモルガンのトップは「ギリシャよりカリフォルニアの財政危機の
方が危ない」と言い出している。彼は「ギリシャの危機でEUが解体していく
ことはない」とも述べており、EUが立ち直って米英の方が危機になる見通し
を示唆している。

http://www.telegraph.co.uk/finance/financetopics/financialcrisis/7326772/California-is-a-greater-risk-than-Greece-warns-JP-Morgan-chief.html
California is a greater risk than Greece, warns JP Morgan chief

 ジョージ・ソロスの基金は、短期的にはユーロ下落を予測し、下落を煽って
儲けを拡大しようとしているが、いずれユーロの危機が米国の公社債市場に飛
び火し、米国はインフレになって金が高騰するとも予測している。

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703795004575087741848074392.html
Hedge Funds Try 'Career Trade' Against Euro

 以前から米国の金融崩壊を予測してきたマーク・ファーバーは「米当局が覇
権崩壊を防ごうとして社会を混乱させ『汚い戦争』になる。都会は危ないので
農村に引っ越しておけ。お札の価値がなくなるので金地金に変えておけ。食糧
の争奪戦になるので農地を買っておけ」と言っている。

http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/banking_and_finance/article7035913.ece
'Buy farmland and Gold,' advises Dr Doom

 中国政府は、ドル崩壊に備え、人民元を切り上げる際の国内輸出産業への影
響力をシミュレーションしたと報じられている。繊維や靴の製造など、国際競
争が激しい労働集約型の産業は薄利なので、人民元の対ドル為替が1%上がる
ごとに利益も1%失われ、人民元を3−5%切り上げたら赤字になる企業が多
いとわかった。人民元の大幅切り上げは無理だという話である。

http://www.reuters.com/article/idUSTRE61P0GU20100226
China conducts yuan rise "stress tests": report

 しかしその一方で、中国は急ピッチで高付加価値型のハイテク産業が拡大し
ている。人民元を切り上げて利益が失われる労働集約型の産業は、もはや中国
に必要ないともいえる。広東省の党書記が一昨年、僻地からの出稼ぎ労働者に
雇用を確保するための労働集約型産業を切り捨て、ハイテク産業を重視したい
と表明し、北京政府と衝突したことが思い出される。すでに、中国の労働集約
型産業は内陸部に移転し、今年の旧正月明けには、広州市まで出てくる労働者
が減り、人手不足が起きているという。中国の産業構造は急速に変化しており、
人民元を切り上げてもそれほど悪影響はないとも思える。

http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/eo20100226a1.html
Free yuan without the fuss

http://www.atimes.com/atimes/China/JK26Ad01.html
Regions won't dance to Beijing's tune

http://www.ft.com/cms/s/0/a08bc2f4-2228-11df-9a72-00144feab49a.html
China faces shortages of migrant workers

 これまで見たことがないような新たな延命策を米英が打ち出さない限り、今
年中か、遅くとも1−2年以内に、世界経済の崩壊的な大転換が起こりそうだ。
この崩壊過程で、イスラエルとイランとの中東大戦争や、グルジアとロシア
の再戦争(ロシアの影響力増大で終わるだろう)などが起きるかもしれない。」

http://tanakanews.com/100302dollar.htm
 

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コメント
 
01. 2010年3月03日 17:36:48
恐ろしい、資本主義は崩壊だ。その後にはネオ共産主義が復活するか。それとも市場原理を維持したうえでの社会民主主義が定着するか。社民主義がのぞましいと思うがどうだろう。こんなスケールのでかい話には付いていけないな。自民党なんか
完全に消えてなくなるな。民主党もちょぼちょぼだけどな

02. 2010年3月03日 18:09:14
田中宇って10年くらい前からドル暴落ネタで食ってるけど、実現しないよね。
金融危機になるとドル買われるし。
一種の作家だから面白ければいいんだけど。本気にしちゃだめよ。

03. 2010年3月04日 13:51:09
田中氏って、よく金とって記事書いてるなぁ、と自分は思います。
02さんと同様な感想です。あと、最近のキーワードは米国の隠れ多極主義かな。
三流物書きですね。2ちゃんにスレがあるので紹介しときます。

田中宇 part 25
http://society6.2ch.net/test/read.cgi/kokusai/1262684873/


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