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白川総裁は「適度な裁量性」を強調 インフレ目標導入論に反論したが・・・ (JB PRESS)
http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/711.html
投稿者 ダイナモ 日時 2010 年 4 月 24 日 15:15:26: mY9T/8MdR98ug
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3328?page=2

白川方明日銀総裁が4月22日、ニューヨーク経済クラブで講演を行った。約1年前、昨年4月23日に同じニューヨークのジャパン・ソサエティで講演した際には、「偽りの夜明け(false dawn)」という一種の警告を発して、大いに注目された。しかし今回は、同じフレーズを用いることはなく、「中央銀行の政策哲学再考」と題された講演の内容は、バブル崩壊・金融危機の再発を防止するためには中央銀行の政策運営には一定の裁量が必要だ、という白川総裁の持論を強調するものになった。国内で再度強まりつつあるインフレ目標導入論に対して、反論を行ったものと解される。

 白川総裁は今回の講演で、日本の1990年バブル崩壊と米国の2007年8月以降の金融危機との類似性を指摘し、次のように述べた。

「日本は、米国に先立つこと10年以上前に危機を経験しましたが、米国を震源地とする今回の世界的な金融危機の展開を見ると、驚くほどの既視感に襲われます。これら2つの出来事には数多くの共通点があります。例えば、バブル崩壊直後の楽観論、重要な政策措置の実施の遅れ、長引く経済の停滞、金融機関に対する反感、規制・監督当局や中央銀行への批判などです」

 その上で、バブル崩壊・金融危機が何度も繰り返される理由について、「リスク管理の甘さ、過大なレバレッジ、大きすぎて潰せない(too big to fail)とみられる金融機関の存在、金融監督の失敗、過度に緩和的な金融政策など、様々なことが挙げられています」と述べて、基本的にはそうした分析に同意しながらも、次のように主張した。

「それら個々の原因だけでは捉えきれない全体論的な視点も必要だと感じています。そのような視点に立った場合、非常に長い時間の中で発生する『自信の循環』とも呼べるものが決定的な役割を果たしていることを強調したいと思います」

「すなわち、成功が自信につながり、それがやがて自信過剰に、あるいは傲慢にさえ変質していきます。自己満足感も高まっていきます。そして、自信過剰の下で生成されたバブルが崩壊すると、自信喪失へと変わり、その後、再生に向けた努力が始まります。こうして、一連の循環が再び動きだしていくのです」

 白川総裁が言いたいのは、要するに、グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長がバブル生成・崩壊の根源にあるものとして指摘した「人間の本性」こそ実は重要で、ただ単に金融緩和が行き過ぎたからバブルが発生するといったような話ではない、ということであろう。筆者もまったく同感である。

 今回の講演はこの先、金融危機の教訓を踏まえた金融政策運営や規制監督のあるべき姿という政策論に足を踏み入れていく。そこで一種の「隠れテーマ」になったのが、冒頭で述べたように、インフレ目標導入論に対する反論である。

 白川総裁は金融政策決定会合終了後の2月18日の記者会見で、インフレ目標採用国ではそうした政策の枠組みについて「反省機運が生まれてきている」と述べるなど(2月19日作成「インフレ目標採用国に『反省機運あり』」参照)、金融政策についての世界の直近の潮流について、何回か説明を行ってきた。インフレ目標を採用していない米国で行われた今回の講演も、その延長線上のものだと理解される。

 「適度な裁量性の重要さ(the importance of a healthy amount of discretionary powers)」を強調する、次のような発言があった。

「インフレーションターゲティングの下では、物価上昇率の目標値と実績値あるいは予想物価上昇率との関係に議論が集中しがちです。その結果、物価以外の形で表れる不均衡への対処を理由に金融政策を変更しようとすれば、それを根拠立てて説明するためのコストは、中央銀行の立場からすると非常に高くなります。エコノミストの関心は、専ら需給ギャップと物価上昇率の関係に集中し、金融面の不均衡(financial imbalances)への関心は限定的なものとなりました。財やサービスの価格変動という形では把握しにくい要素に対しては、関心が薄れるようになりました」

「中央銀行に期待される役割は、物価の安定と1対1には対応しないことも分かってきました。バブルの経験が示すように、物価が安定していても、経済は大きく振幅することがあります。中央銀行に求められていることは、安定的な金融環境(a stable financial environment)を実現することであり、それを通じて持続的な成長を達成することです。物価の安定は、金融環境の安定を構成する重要な要素ですが、これだけに限定されるものではありません。それどころか、短期的な物価の安定に釘付けになると、究極の目的である経済の持続的成長を困難にする可能性すらあります」

「もし、当局の政策行動が機械的なルールに基づいていて、それが市場参加者の行動にあらかじめ織り込まれてしまうと、市場や経済はむしろ最終的には不安定化してしまいます。したがって、少なくともある程度は、時計の振り子を裁量性の方向に戻すことが必要になっているように思われます(I believe it is time to bring the pendulum back, at least to some extent, toward allowing more room for discretionary measures.)」

 ただし、今回の講演については、白川総裁が米国出張に出発するよりも前の時点で内容がおおよそ固まっていたのではないかと推測される。菅直人副総理・財務・経済財政相がインフレ目標の問題で4月20日に踏み込んだ発言をしたこと(4月21日作成「やや高めの『インフレ目標』に傾斜する菅副総理」参照)がどこまで斟酌されたのかは定かでない。政府側の動きが日銀の姿勢に今後一定の影響を及ぼしていく可能性を排除することは難しい。

 白川総裁は今回の講演で、各国中央銀行がバブルの兆候に不安を感じつつも低金利を続けた理由の1つとして、「政治的、経済的、社会的な力学がセントラルバンカーに影響を及ぼすようになり、物価上昇率以外の要素を勘案した金融政策を行うことが次第に難しくなっていったこと」を指摘していた。この発言の中にある「政治的、経済的、社会的な力学」から、中央銀行は決して無縁ではあり得ない。中央銀行は政府から独立しているが、それはあくまで立法措置を通じて実現しているものである。例えば、政府・与党が日銀法を改正して英国型のインフレ目標を導入する場合には、日銀としてはこれを甘受するしかない。

 1年前の白川総裁には、バブル崩壊後の経済動向について、「偽りの夜明け」という表現を用いることによって米国人に警告を発するだけの、一種の余裕があったように思われる。

 しかし、現在も近い将来も、白川総裁にはそうした余裕は生じにくい。参院選に向けたマニフェストづくりが各党で進んでいるが、民主党も、自民党も、みんなの党も、「デフレからの脱却」を柱の1つに掲げる見通しになっている。舛添要一前厚生労働相が旗揚げする新党も、基本理念の1つに「デフレ克服」を掲げるという。
 

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コメント
 
01. 2010年4月24日 15:48:56: eJpJR4SFmM

先物取引やデリバティブなどの金融市場に対しては、利上げ。
企業への融資などの実物市場に対しては、利下げ。

白川総裁としては使い分けたいところだろう。

しかし金融政策だけでは、景気刺激と投機抑制を同時にするのは不可能である。

だから日銀が利下げしているときは、政府が税制などで金融市場の抑制を図らなければならない。

しかし現実に政府のしていることは、証券税制の優遇など金融市場活性化策である。

日銀にだけ責任を押し付けている財政政策を担う政府が間違っている。


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