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ベトナム新幹線・否決の教訓/山形浩生(評論家兼業サラリーマン)
http://www.asyura2.com/10/hasan69/msg/248.html
投稿者 gikou89 日時 2010 年 7 月 20 日 00:59:45: xbuVR8gI6Txyk
 

(回答先: 三菱商事小林社長「これから需要側と供給側に世界が分かれる」 投稿者 gikou89 日時 2010 年 7 月 20 日 00:58:37)

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100715-00000001-voice-pol

◇目標は実現できそうですか?◇

 本稿執筆中の6月末、またベトナムに来たところで、なんとベトナム国会で日本の新幹線採用が(僅差ながらも)否決されてしまったというニュース。前号のあとで発表された、菅政権の新成長戦略/国家戦略プロジェクトにおいては、アジア向けのインフラ輸出(「パッケージ型インフラ海外展開」)が目玉の一つだったが、それが早速、壁に突き当たった感じだ。

 ぼくは過去2回のこのコラムで、インフラ輸出についていささか慎重論を述べさせてもらった。だから今回の一件をみて、ほらいったとおりではありませんか、と自慢したいところだが、ぼくも新幹線はガチだと聞いていたので、この結果にはかなり驚いた。

 が、以前に指摘した新幹線についての懸念事項は、やはり指摘されたようだ。ちなみにいまベトナムは深刻な電力不足で、ハノイでも計画停電が続いている。電気もないのに電車なんか走らせられないとの批判もあったとか。電力だってちゃんと整備するから、と国会では説明したようだが、やはり優先順位からいえば新幹線がそんなに高いとはなかなか主張しにくい。そしてなによりもその金額の大きさに、ベトナム国会が難色を示したのが失敗の大きな原因だとされている。

 民主党および菅総理としては、ベトナムへの新幹線輸出の成功を大きくぶち上げて、ほらごらん、われわれの新成長戦略が早速成果を上げた、よってこの路線は正しいから、他の経済政策も安心して任せてね、あ、それと参院選ではよろしく、というような流れにもっていきたかったところだろうが、そうは問屋がなんとやら。期待していた旗振り効果は消えたどころか、政府レベルで握れても不確定要素が残るという、アジアの大規模インフラプロジェクトに付きもののリスクをあらわにしてしまい、やぶへびになった観すらあるのではないか。

 国家戦略プロジェクトでのアジアインフラ受注目標は、2020年までに総額20兆円弱。否決されたベトナムの新幹線は、たぶんこの計算のなかに入っているだろう。これは5兆円くらいのプロジェクトといわれているので、4分の1くらいが揺らいでしまったことになる。目標は実現できそうですか?そしてもちろん、菅政権前に仕込みが十分に済んで当確だったはずのプロジェクトですらこの具合なら、国家戦略プロジェクトの他の部分も大丈夫か、と思ってしまうのは人情だろう。

 そもそも国が経済の成長戦略を立てるのは難しい。とくにそれが産業政策というかたちを取る場合には、日本の成長でもアジアの成長でも、まったく同じ事例がときには産業政策の成功例として挙げられ、別のときには自由放任策の成功例として挙げられる。

◇すぐに結果が出るほど甘くない◇

 産業政策に対する懐疑論は、非常にまっとうなものだ。お役人に将来の成長産業がわかるのであれば、その人は役所なんかやめて、明日のビル・ゲイツになってくれたほうがいい。世界各地で、政府が重点産業を決めてそこにあれこれ補助金を出して支援する例は無数にある。だが歴史的にみても、その成功例はけっして多くない。補助金は通常は悪しき利権につながり、競争を殺し、往々にしてかえってその産業をダメにしてしまう。そしてむろん、補助金と共にあれこれ制約も付いてくるから、自由な発展の余地も狭まる。

 その一方で、国が主導権をとって発展の下地をつくった事例もある。政府が何もするなというわけではない。ただその場合も、既得権者の横暴をなるべく抑え、参入障壁を下げて、民間企業が動きやすい環境をつくることが重要となる。ちなみに新成長戦略のなかで、いちばんそうした効果が期待できるのはデフレ克服で(これについては本誌の他の連載も参照)、これさえうまくいけば、ほかはどうにでもなるくらいなんだが……。

 ベトナムの新幹線自体は、完全にダメといわれたわけではなく、継続審議だ。つまり年末に復活戦はあるし、今回の否決もかなりの僅差だったので、あれこれ説得をする余地はあるだろう。それに日本国内ではもうインフラ需要が衰えてきているので、既存の技術を活かすのに海外展開しようという発想自体は悪くないと思う。インフラ産業は規制の多い業界なので、それがこうしたかたちで海外展開のお墨付きをもらえるのは、活動に自由度を与えるという意味で有益だろう。

 が、それでもすぐに結果が出るほど甘くない。そして結果を出すには、政治的なトップ交渉もさることながら、相手国にとっての基本的なメリットをはっきり示せないとダメだというのが、今回の大きな教訓じゃないかと思う。むろんぼくは、まさにそうした途上国での事業評価に関わる仕事をしているので、これは臆面もない我田引水の議論であることは断っておく。だが、ぼくはこれがいささかもまちがっているとは思わないのだ  

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