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何も知らない株主は泣くしかない「政府肝いりの再生ファンド」の正体
http://www.asyura2.com/10/hasan69/msg/749.html
投稿者 gikou89 日時 2010 年 9 月 28 日 07:54:11: xbuVR8gI6Txyk
 

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1268

何も知らない株主は泣くしかない「政府肝いりの再生ファンド」の正体
企業再生支援機構の「金型2社」統合支援に
隠された「これだけの問題点」


9月17日の朝。日本経済新聞朝刊の1面トップに、「政府主導で統合、支援機構が出資 『ものづくりの基礎』守る」という華々しい見出しが踊った。政府主導で、自動車用の金型業界2位の富士テクニカが同3位の宮津製作所を統合するというスクープ記事である。

 しかし、この案件ほど、看板と実態が異なる企業統合は他にない。筆者は経済ジャーナリストとして様々な企業買収案件を目の当たりにしてきたが、これほど株主の利益や経営者の尊厳を無視した、醜い案件はないと感じている。

 一般の読者には、金型産業と言ってもあまり馴染みがないだろう。とても地味な産業だ。

 とはいえ富士と宮津の両社は中小企業の枠を超えている。立派な大企業と言える。付言すれば、富士は株式もジャスダック市場に公開している。とはいえ、両社が抱える従業員数は、ともに400人あまり。完成車メーカーなどに比べれば、知名度は低く、その重要性が軽んじられがちだった。

 もちろん、この合併を主導した経産省同様に、筆者もこの産業を軽視すべきでないと考えている。なぜなら、金型産業は、日本が誇る自動車製造業において、プレス加工によって、そのボディや部品を作り出すために不可欠な金型を製造する産業だからだ。

 専業メーカーは、完成車メーカーやその他の部品メーカーが持たない熟練のノウハウを誇っている。その意味で、金型産業は、日本の国際競争力の底辺を支える産業のひとつなのである。

 しかし、この業界は、リーマンショック以降の世界的な経済危機の中で、存亡の危機に瀕してきた。すでに昨年、業界最大手のオギハラ(群馬県太田市)が、タイ企業の傘下に入り、経済界に衝撃を与えた。すでに中国企業・資本は技術力向上のために、切り売りされた工場に触手を伸ばしており、日本の金型企業に対して買収攻勢をかけてくるリスクも高まる一方となっている。

 経産省は早くから、この事態を憂慮していた。なんとか、金型産業の国際競争力を維持したいと考えていたという。それゆえ、今回の案件を早くから国策として主導し、日本航空(JAL)の再建を担うことで一躍有名になった公的組織の企業再生支援機構(西澤宏繁社長)にお墨付きを与えて、具体策作りを委ねた。

 これを受けて、機構は今年6月頃から、富士、宮津の2社だけでなく、双方のメインバンクの静岡銀行や足利銀行とも具体策作りの交渉を進めてきた。

 実は、筆者の手元には、機構が富士に示した「事業再生計画」案など様々な交渉段階の資料がある。これらをみると、経産省が今回の案件に強い思い入れを持ち、機構がキャスティングボードを握ることを後押ししている様子が浮き彫りになる。

 そして、この案件の正式な発表日となった9月17日の朝、冒頭に記した薔薇色のうたい文句を掲げて、日経新聞が今回の案件を書き立てた。それを機に、会社や政府はここぞとばかりのキャンペーンに打って出た。

 会社発表に呼応して、経済産業省も「極めて大きな意義を持つ」との意見書まで公表するという異例の対応を見せた。まさに、国策の経営統合に対する積極支援の様相を呈したのである。

 しかし、政策というのは、動機さえよければ、何をやってもよいというものではない。特に、政府はどれほど誘惑に駆られても、市場に対する直接的介入は、極力避けるべきである。公正な競争を歪めるリスクが高いからだ。

 特に今回、宮津は2010年2月期で債務超過に転落し、すでに破綻した企業だった。淘汰されるべき企業が政府のテコ入れによって延命し、本来、生き残るべき企業の経営を圧迫し、別の政府支援が必要になるという悪循環を引き起こしては大変だ。


 あえて、政府が、富士と宮津の統合を支援すべきだという社会的コンセンサスはない。その政策を採用する説明責任(アカウンタビリティ)が十分に果たされたとも思えない。

 なにより深刻なのは、中身(スキーム)である。

 実は、これは、業界2位の富士が、破綻した3位の宮津を買収するという単純な買収案件ではない。実は、買収する側の富士も、金融支援も含めた「破綻処理」の対象にされてしまうのである。そして、機構の統合支援とは、その破綻処理の支援に他ならないのだ。

 しかし、買収する側の富士は、前々期まで赤字に苦しんだものの、経営の立て直しに一定の成功を収めて、前期(2010年3月期)は2億9900万円と低水準ながら、最終利益も黒字転換を果たしている。国策によって、潰れたライバル会社の引き取りを強要されなければ、十分に生き残れる可能性がある。

 むしろ、機構が、富士への設備資金の貸し付けや債務保証など、同社そのものの経営の強化に繋がるものに支援を絞り込む計画を立案していれば、これから縷々述べるような様々な問題は生じなかったはずだ。

 いよいよ話を、富士が9月17日に公表した2種類(合計70ページ)の発表資料に移したい。タイトルはそれぞれ、「企業再生支援機構による富士テクニカへの支援決定及び事業譲受のお知らせ」と「企業再生支援機構による支援決定のお知らせ(補足資料)」と冠されている。

 この資料を最初に目にした人は、公表日の朝、新聞で目にした「薔薇色の国策統合」の資料と誤解し、それ以上、きちんと読み込もうと思わなかったのではないだろうか。

 そうとでも考えないと、過去数ヵ月140円前後で推移していた富士の株価が統合の公表後のわずか3日間で2倍を超す297円まで急騰した理由は見当たらない。日経新聞の報道は、この国策を株主にとっても薔薇色の支援であるという大変な誤解を与えた可能性がある。

 政府や機構と立場を異にするはずの経済ジャーナリズムとしては、もう少し冷静で客観的な報道姿勢をとるべきだろう。今回のプランは、それほど曲者である。

 肝心の資料は、タイトルから想像もできないが――しかも、熟読しても容易には理解できないほど難解にしか書いていないが――、その実態は、「破綻処理」であり、富士テクニカの株主責任を厳しく問うものに他ならないことを示している。

 その一端は指摘しておこう。この計画では「事業再生のため」として、大型の第3者割当増資が2件も計画。既存の株主の株主権が大幅に希薄化する。早い話、株主としての発言権が低下してしまうのだ。

 通常ならば、これほど大きく株主権を希薄化させるときは「取引ポストを変更して周知したうえで、上場廃止手続きをとるものだ。

 ただ、今回は、国策であり、「計画上、債務超過を回避するとしているので、一般的な上場廃止手続きを見送った」(ジャスダック市場を統合した大阪証券取引所)というほど乱暴な案件なのである。

 具体的に、株主が最初に受ける仕打ちは、発表資料の「企業再生支援機構による富士テクニカへの支援決定及び事業譲受のお知らせ」の6ページ目までめくって、ようやく目に入る、わずか1行の記載だ。そこには、「平成22年12月1日 株式併合及び単元株式数の変更の効力発生(予定)」と書かれている。


しかも、この記載が何を意味するかは、そこにはまったく書かれていない。それどころか、資料の本編にはそれ以上の記載が存在しないのだ。詳細版の「企業再生支援機構による支援決定のお知らせ(補足資料)」を手にして、その最後に付属した「Appendix」(「付録」の意)を参照しないと、実態がわからない仕組みになっている。

 この41ページの補足資料の40ページ目、つまり最後から2ページ目まで読み進んで、ようやく「株式併合・単元株式数の変更について」という記述がある。「(既存の)10株を1株に併合」するとの説明が存在するのである。単純に言えば、株主が持つ株式は10分の1の価値しか認めないということである。

 こうした富士の杜撰な開示姿勢について、前述の大阪証券取引所は「本来ならば、株主が理解し易いよう、きちんと『株式統合のお知らせ』とか『第3者割当のお知らせ』というタイトルを案件ごとに付けて公表すべきだった」と不快感を露わにする。「市場の番人」である大証も、杜撰な公表事例と苛立っているのである。

 実は、これまでの株主の利益が損なわれるのとは対照的に、富士の株式を格安で手に入れるところがある。他ならぬ、企業再生支援機構だ。

 もはや記述のわかりにくさを細かく紹介することは省略させていただくが、機構はこの株を1株につき7200円で取得する。これにより、機構は富士に約53億円の資本を注入することになる。この取得株価水準について、証券会社では希薄化考慮後で2万3098円から2万8511円の価値があると試算しているとしている。いかに機構にとって有利な株式取得なのか、一目瞭然だろう。

 機構と好対照なのは、静岡銀行などの取引先銀行だ。これらの銀行が引き受ける「B種優先株式」は、証券会社の試算で550円から610円程度の価値だが、取得価格は1380円に設定されている。貸し手責任の明確化とか、金融支援といった事情から、機構と明暗が分かれるという。

 発表資料では触れられていない問題も指摘しておこう。

 機構と会社の交渉状況を示す資料でも争点となった問題であり、最後まで、機構が説明責任を果たさなかった問題である。株主利益を保護する観点からも、おざなりにできないので、あえて指摘しておきたい。

 それは、約30億円とされた宮津の買収価格である。なぜ、30億円なのか。実は、すでに退任した当時の富士経営陣や、静岡銀行がそれぞれ執拗に機構に開示を迫ったものの、ついにそのデューデリジェンス(資産査定)は開示されなかったとされている。

 通常の企業買収案件でも、このような不可思議な対応は許されることではない。しかも、今回は政府直轄の機構が公的資金を投入する案件である。より厳密に、きちんとした開示が行われるべきだ。これからでも、やらないよりはよい。株主総会で是非の判断を仰ぐ以上、投資家に対して開示すべきだろう。

 10月末に迫っている富士テクニカの株主総会の動向にも注意を払う必要がありそうだ。

 もうひとつ。株主だけでなく、従業員の立場からみても、業界有数の競争力を誇るとされる富士の三島工場を閉鎖して、生産性が悪いことで知られる宮津の工場を存続させるという再生計画は理解しにくいだろう。転勤や離職を余儀なくされかねない三島工場の従業員は、300人あまりもいるという。

 さらに言えば、あえて「破綻処理」のスキームを採用したばかりに、富士の経営陣が退陣を強いられることも、理不尽と言えなくはない。

 先に述べたように、少なくとも、直前期、同社は黒字を確保していた。こんな国策再編を強行すれば、国策を受け入れる企業と経営陣は激減するはずである。

 繰り返すが、なぜ、公的資金を投入して、富士と宮津を統合し、破綻処理をする必要があったのか、その必然性やメリットは、膨大な公表資料のどこをひっくり返しても説明がない。最大の疑問は残されたままなのだ

最後に強調しておきたいのは、本連載で何度も指摘してきたが、あのJALの更生計画と同じような欠陥が、今回の統合計画にも見受けられるということだ。

 それは、将来の収益が確保できるビジネスモデルの姿が描かれておらず、そのためのリストラクチャリングの道程も見えないという点である。

 機構は来月半ばに更生計画の提出が予定されているPHSのウィルコムの案件では、これといった役割を果たせず、単純に撤退する可能性が強まっていると聞く。

 金型2社、JAL、ウィルコムという3つの案件を鳥瞰すると、今回の再生計画だけでなく、「政府肝いりの企業再生ファンド」「中小企業の救世主」という企業再生支援機構のそもそもの看板も、単なる羊頭狗肉ではないのか、という疑問が膨らんでくる。

 企業再生と政府の役割について、我々は真剣に検証すべき時期を迎えている。財政再建が重要で消費税増税まで視野に入れた議論が不可避な折、これ以上の公的資金(税金)の無駄遣いは許されない。

 菅直人首相、いかがだろうか。
 

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コメント
 
01. 2010年9月29日 22:29:47: MhwqMM5rLU
大手金型メーカーの下には、2次3次の下請け試作金型のメーカーがある。
中小企業から零細企業の下請け金型会社の技術力は、大手金型会社の
技術を凌駕することがある。

その理由は、中小、零細の従業員の宿命である、現場の仕事は
何でもこなさなければならない。これが技術力を高める。

大手の破綻は、さまざまな原因が考えられるが、仕事が分散化し
ロスの発生が大きくなったことも一因だろう。

下請けに依存し、コストカットのみを考え自社の技術力の劣化も
原因だろう。いずれにせよ危機意識が希薄だ。

設計段階から、誤りがあることを一覧して発見するのも
下請けだ。

淘汰されるべき企業は淘汰されるべきであり、生き残るべき
中小零細企業は、それに取って代わるべく経営努力することが
日本の技術力をさらに高める結果となる。

すでに、下請け企業といわれる企業は独自に海外に
進出して販路を拡げているところもある。

後は、経営者の下請け根性の払拭と、政府の資金援助だけである。


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