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日本:債務、人口動態、デフレ(BBC)
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/326.html
投稿者 無段活用 日時 2010 年 12 月 07 日 20:44:33: 2iUYbJALJ4TtU
 

http://www.bbc.co.uk/news/business-11867257

2010年11月30日最終更新12:15GMT

日本:債務、少子高齢化、デフレ

ヒュー・パイム
主任経済記者、BBCニュース、東京

日本の苦悩は3つの"D"に要約される。debt(債務)、demographics(人口動態)、deflation(デフレ)だ。

これらは新しい事象ではないが、融合して有毒な混合物となり、世界有数の経済大国の健康を脅かしている。

日本政府が抱える債務は、他の主要先進国をはるかに上回っている。

粗債務は国内総生産の200%に近く、米国・イギリス・ドイツを上回る。この3国は、いずれもこの割合は100%未満である。

アイルランド・ギリシャ・ポルトガルが、政府債務の程度が高いために、金融市場から手荒く扱われているこの時に、日本はどうやってこれだけたくさんの債務をまかなえるのだろうか?

その答えは日本の人口動態にあり、難問もそこにある。

長年、政府は何の問題もなく、国内の投資家に国債を売ってきた。

リスクを嫌う少額貯蓄者、年金基金、機関投資家は、日本国債(JGBとして知られている)を安心して保有できた。

発行済み国債の約90%は、こういった国内の投資家が保有している。そのため、政府は膨大な債務負担があることを海外市場に気づかれる心配をする必要がなかった。


高齢化する人口

しかし、この状況が数年以内に変わることはあり得るだろうか?

日本の人口は、数年前の1億2500万人をピークに減少しつつあり、2050年までには1億人程度になると、最近の予測データは示す。

同時に、21世紀中頃までに、65歳以上の人々の割合は40%近くにまで上昇することになる。この期間は、年金や医療・介護にかかる費用は増え続けるだろう。

みずほ総合研究所の試算によると、2025年までに、政府支出の約70%が、国債の償還と社会保障の支出に消える。

同総合研究所・シニアエコノミストの山本康雄氏は、「これはとても難しい状況だ。しかし、社会の全ての階層の間で、危機感が共有されていない」と考えている。

日本が転換点に近づいている感覚があるという声が、一般市民から広く上がっているわけではないが、有力な学者や一部の政治家からは聞かれる。

日本経済研究所・研究顧問の小島明氏は、このことについて、次のように述べている。「私たちはいま、分岐点の期間にいる。大きな決断の時だ。」

「私たちは危険な領域に入りつつある。戦後の団塊の世代は引退しつつある。この不均衡の問題を修正するのに、私たちには10年も残されていない。」

サトウ家の家族は、できる限り食事を一緒に楽しむようにしている。両親は引退生活に入っている。

20代の娘は、経営コンサルタントという、申し分のない職についている。

それでも、彼らはみな、数十年先のことや、医療や介護が必要になったときに誰がそのお金を出してくれるのか、心配している。

パイロットを引退した、サトウ・アキヒロ氏は語る。「私たちの未来はとても厳しい。心配なことがたくさんある。とくに年金のことだ。」

人口が減少する一方で、引退した人々の割合は大きくなると、日本政府の財政が問題となる。毎年出る赤字のために資金を供給してくれる十分な貯蓄者は、今後いるだろうか?

「人口の高齢化に伴い、年金受給者が築き上げた貯蓄を使うので、家計の貯蓄率はどんどん低下していくだろう」と、大和証券キャピタル・マーケッツ・ヨーロッパのグラント・ルイス経済研究部長は、結論づける。


「日本国債の市場は、かつてのように、国内貯蓄の堅調な流入に頼ることはできなくなっており、近年見られたよりも、非常に激しく変動する傾向にある。」


物価の下方スパイラル

ところで、日本にはデフレという持病がある。

この10年のうちのかなりの期間、日本は物価がじりじりと下がり続ける現象に耐えてきた。(食料品とエネルギーを除いた消費者物価のことだ。)(コアコアCPIとよばれるものです:投稿者注)

日本はデフレ的思考のワナに嵌ったという感覚がある。企業は常に価格を下げなければならないという圧迫を受けているので、投資に回せるような現金を準備することができない。

リスクをとって事業を拡大するよりも、借金を返済したい気持ちになる要因はどこにでもある。

2000年、日本は量的緩和(QE)として知られる、新たなお金を作り出す試みを初めて行った。

さまざまな結果が生じたが、批評家たちは、小さすぎるし遅すぎると論じた。

米国とイギリスの中央銀行は、デフレが根深くなると何が起こりうるか、という研究事例として、日本を見ていた。

彼らは、日本が起こした間違いを避けたいと願い、大胆な数量緩和政策を実施した。

しかし、野村総合研究所・主任エコノミストのリチャード・クー氏は、米英両政府に警告を発している。

同氏は、大規模な量的緩和を実施したとしても、両国もまた、日本が通ったデフレの道をたどることがあり得ると考えている。

「景気刺激策について米国やイギリスで現在もっぱら語られている、不良債権の整理、量的緩和、ゼロ金利というのは、日本が15年前に経験したことだ。」

「日本の経験から言えることだが、イギリスや米国で起きてきたことは、私たちが経験したことの再現に似ている。政策立案者たちが同じような混乱に陥ったのだ。」

「これが教科書にない、違う病気だったとは、私たちには思いもよらなかった。」

日本企業は十分に心配してこなかったようだが、円高の問題が存在している。

輸出業者は苦闘しており、その一部は通貨の問題のために生産を海外に移しつつある。

しかし、中小企業はそれができずに、輸出売上での利益幅に強い痛手をうけているのを、ただ眺めている。

「私たちは人々を集めて、新しい戦略を練り直すつもりだ。それが、私たちの生き残る道だ」と、食品産業にハイテク検査機器を供給している家族企業・アタゴの3代目社長・雨宮秀行氏は語る。

それでも、従業員を解雇する意思はあるか、との問いに、同氏は首を横に振る。

そんなことは考えられない。それが、従業員を大切にしたいという同氏の思いだ。


雇用機会

それでは、脱出方法はどこにあるだろうか?

日本の閣僚と学者たちは、人口動態の変化を活用することを目標とした、成長戦略に望みをかける。

高齢者の介護は雇用機会を提供し、児童の保育は女性が労働力としての復帰を促進する。

グリーン・テクノロジーもまた、富と雇用を生み出す可能性があるものとして認識されている。

東京の街路では、商店主たちは十分安心しているようだ。

物価の下落は、耐え難いほど厳しい経済的な重荷ではないと感じる商店主もいるようだ。日本の低い犯罪率は、他の多くの国々よりも生活の質がよいことを窺わせる。平均寿命が長い理由の一つである、充実した医療制度も、高く評価されている。

それでも、債務・デフレ・人口動態という、日本が抱える問題に対して、政策立案者や有権者が立ち向かうことは必要であって、これをいつまでも無視してはいけない。

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(投稿者より)

イギリス・BBCのサイトに掲載された、日本経済の評論記事です。発言部分は原文から直接日本語に変えています。誤訳があるかも知れません。ご容赦ください。

記者がわざわざ「粗債務」と書いているので、「純債務」と両方を調べてみました。左が粗債務、右が純債務です。どちらも、2010年12月2日の"OECD Economic Outlook No. 88 Annex Tables"というデータの2010年の数字です。2010年はまだ終わっていないので、予測データでしょうか。

日本:   198.4  114.0
イタリア: 131.3  103.3
米国:    92.8   67.8
イギリス:  81.3   51.3
ドイツ:   79.9   50.5
フランス:  92.4   57.1
カナダ:   84.4   31.4

(OECD Economic Outlook No. 88 Annex Tables)
http://www.oecd.org/document/61/0,3343,en_2649_34573_2483901_1_1_1_1,00.html

ただ、とりあえず言えることは、政府が本当に返さなければならない、本当の意味での借金は、GDPの1年2ヶ月分です。2年分ではありません。騙されてはいけません。また、「(国債発行残高)×0.9=(国民貯蓄の一部分)」であることも忘れてはいけません。国債は、資産活用の一つの形であり、貯蓄の形で眠っている資金を回す仕組みでもあるのです。


日本経済が抱える構造的な問題は、政府債務、人口動態(つまりは、人口減少と少子高齢化)、デフレの3つ。国民はそれに立ち向かえ、とまでは書かれていますが、だからどうしろ、とは何も言っていません。

「雇用機会を増やせと言っている」。しかし、介護・保育・グリーンテクノロジーについての記者の言及は、単に政府発表の又聞きで、誰でも言っていることです。それでも、慎重に読むと、記者独自の視点は見えてきます。

この記事の隠れたキーワードとして、「安心」という言葉を記者は使っています。

日本の投資家は、国債を保有していれば、ひとまず安心でした。確かに、人口動態の変化は、家族の将来に不安を投げかけています。しかし、「従業員を大切にする心」「低い犯罪率」「充実した医療制度」という、日本社会が今まで大切にしてきたものはまだ残っています。

この10年来の新自由主義経済政策によって、日本社会のかなりの部分が浸食されていますが、それを、経済優先から、社会優先に変える。国民が安心して生活できるよう、日本社会が大切にしてきた価値を守る。その方向性で、経済政策を作り直す。

記者はそこまで言っていません。私の勝手な深読みかも知れません。しかし、私にはそう読めました。
 

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コメント
 
01. 2010年12月07日 21:19:30: pWixunM3f8
「国民が安心して生活できるよう、日本社会が大切にしてきた価値を守る」
その為に民主党が政権交代した筈。しかしこの有様、あとは小沢しかいない。
しかしこの一年、日本の闇とゆうものをしっかり見させてもらいました。

02. 2010年12月07日 21:36:24: PPAJr6WqwQ
もし、今の政府部門の債務である国債の発行残高が、民間企業の資本金に置き換わっていたとしたら誰も非難しないだろう。

保有している人にとっては国債も株式も同じ資産である。
発行している者にとってはどちらも広義の負債である。

国債の発行が多いということは、国のかかわりが大きいということだが、減らした分だけ企業の資本金に置き換わらなければ、誰も喜ばない。国債でも持っている人にとっては資産である。国債の発行だけ減っても資産も減ることになるからだ。
だからそれが企業の資本金に置き換わらなければならない。

ただし、資本金が大きくなればよいのではない。
その資本金がそれに見合う生産を上げなければならない。
そうすれば資本に見合う利潤が生まれる。

その利潤が年金の原資になる。
全ての人が平等に株式をもっていれば問題ないがそうはいかないので所得税という形で徴収し再分配する。
それで問題はない。

年齢は関係ない。
労働といっても機械化され省力化が進んでいれば、肉体労働だけが労働ではないからだ。
だから高齢化は大きな問題ではない。

雇用機会も企業の資本金が増える状態になればたくさんの雇用が生まれる。しかもそれは肉体労働ではない。資金配分という投資活動も立派な労働になる。

国の関る事業を民営化し、そしてまずは減税して購買力をつけることから始めればよい。

国債も企業の資本金も広義の債務である。
どちらが悪でどちらが善でもない。


03. 2010年12月07日 22:20:18: 8LQMpSZJfU
 日本政府長期国債はこの30年間で650兆円に急増したが、宗主国の借金漬け浪費依存消費生活を支えるために100兆円から300兆円?というドル建てで貢物を気前よくしてきた。宗主国の繁栄と世界覇権持続に最大に奉仕してきたのが我が極東にある民族であり、またお人良しで属国根性丸出しであった。米国実物資産購入を禁じられ、ひたすら30年間米国債を毎年10兆円以上も巻き上げられてきた。為替介入と称しても円高で毎年数兆円も投じて欧米投機家の餌になった。
 社会的責任の片りんのなき大手企業は、内部留保を空前の244兆円も貯めこむ一方で、150万人の正規切り、150万人の非正規置き換えで、年収300万から年収200万の低所得層を形成させた。需要と供給のギャップを埋めようにも勤労者の所得激減では消費が喚起されない。可処分所得が限定的では、デフレ商品ばかりが購買されて、税収増にはならない。金融(メガバンクなど一円も法人税を払っていない)、保険、不動産への税制優遇をやめるだけでも消費税分は穴埋めできるのではないか。少子高齢化で生産活力が弱まるという問題も、生産人口が仮に毎年2%ずつ減じても、生産性が同じく2%以上の確保できれば、経済の弱体化という話にはならないが、大手企業・中小企業が海外移転し、産業の空洞化が進んだ国内では生産供給力の低下はもはや如何ともしがたいが。

04. 2010年12月08日 10:00:06: Pj82T22SRI
 「闇雲にTPP参加国とのリンクを目指せば、その結果、日本の独自性が失われ、人と人との絆が失われ、日本という国の形が歪んでしまう。日本の進むべき方向をどのように考えているか」

 business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20101207/217436/?ST=print
 と、宇佐見は聞いた。達也は以前、宇佐見から教わった論語の一節を思い出した。

 「学んで思わざれば則(すなわ)ちくらし、思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し」

 先達の知識を詰め込むだけで、自分の頭で考えないのなら、何も見えてはこない。自分の価値観で勝手に考えるだけで先達の知識を学ぶことをしないのは危険、ということだ。宇佐見が達也にシンガポール大学を勧め、ジェピーで働くことを勧めた理由は、この孔子の言葉に端的に表されている。

 先達が生涯をかけて考えだした知識を頭に入れただけで、偉大な先達と同じ高見に立ったと誤解してはならない。そんな消化不良の知識を振り回して、何かをしようとしたところで、何もできはしない。それどころか、独断に陥って危険ですらある。

 宇佐見が好んで口にする孔子の言葉に「利を見て義を思う」がある。達也は耳にタコができるほど聞かされた言葉だ。利益なくしてビジネスは成り立たない。だが、利益のために何をしても構わないという考えは間違っている。利益を得るときは、立ち止まって人として踏むべき道を外れていないか考えなくてはならない。手塩にかけて育ててきた愛弟子が、どんな思いで世界を相手に勝負をかけようとしているのか、宇佐見は知りたいのだ。

 「達也」
 と、宇佐見は振り向き様に言った。

 「これからの日本が進むべき方向は何か。その中で、お前は何をしようとしているのだ」
 達也は動じることなく、自分考えを話し始めた。

 「モノ作り大国を目指してきた日本は、徹底したムダの排除と機械化を進めてきました。メーカーの生産性は飛躍的に上昇して、製品価格は50年前の半分以下になってしまいました。この結果、メーカーが作る製品の利益率は4分の1以下に大きく減少しました。

 つまり、50年前の利益を稼ぐには、売り上げを8倍にしなくてはなりません。でも、デフレの下では、生産高は簡単には増えません。だから、メーカーの利益は減る一方なんです。

 先日発表になった労働力調査の数字を見てください。就業者数は6286万人で製造業に従事している人は1057万人と前年と比べてほぼ横ばいです。その一方で、医療,福祉関係は676万人と1年で46万人増加、宿泊業,飲食サービス業も390万人で11万人増加しました。つまり、利益が出ない製造業がますますシュリンクしている様が見て取れます。

 でも依然として就業人口の15%が製造業に従事しています。当然、賃金の低い非正規社員の割合は増える。しかし、医療、教育の価格は上昇しています。足りない分を税金で埋めようとしても、あまりにもコストがかかり過ぎます。でも、日本はそれをしようとしています」

 「明らかに矛盾している。そんな日本に愛想を尽かしたか」
 宇佐見が言った。

 「ボクを育ててくれた国に愛想を尽かすなんてあり得ません。K01の研究所は日本に作りたかったんです。でも、ビジネスをするのにあまりに制約が多すぎるんです。仮に沖縄を経済特区にして、法人税をシンガポールより2%少ない15%にすれば、アジアのハブになれるはずなのに…」

 達也は話を続けた。
 「TPPで農業が壊滅すると言われています。何もしなければ、その通りでしょう。農地は作物をつくる場所と同時に、土地を売れば何千万円の現金にも変わる財産です。地主は、なかなか手放そうとはしません。農業の生産効率は最悪です。フランスがワイン産業を育てるために、さまざまな方策を講じてきたように、日本も農地の流動を促し、官民協力して最先端バイオ技術を活かせる環境さえ出来上がれば、コメや果物、野菜は日本を代表する輸出品になるはずです。いまのような過剰な補助金政策は害をなすだけで、解決にはなりません」 


05. 2010年12月08日 10:04:16: Pj82T22SRI
>10年来の新自由主義経済政策によって、日本社会のかなりの部分が浸食されています

逆だな。
世界経済のシステムが変わったから、日本は新自由主義的な政策を取らざるえなかったし、小泉竹中路線が無ければ、05年以降の経済復調はなかった。
そもそも、福祉切り捨てなんて悠長な批判ができる状況にはならなかったろう

>それを、経済優先から、社会優先に変える。国民が安心して生活できるよう、日本社会が大切にしてきた価値を守る。その方向性で、経済政策を作り直す。

軍事・外交・経済がしっかりして初めて安心できる社会が確立できる。
これまでと違い、個人が何も努力せずに楽ができる社会など来ないことを
まず自覚することが、本当の安心の基盤になるだろう


06. 2010年12月08日 15:39:44: IOzibbQO0w
WSJ【社説】日本の金融緩和の憂鬱
2010年 12月 7日 20:24 JST

 米連邦準備理事会(FRB)による新たな量的緩和の成果が待たれるなか、もうひとつの先進国、日本の金融緩和に目を向け、早期判定を下すことが可能だ。しかし、最近日本で起きていることは、景気回復の呼び水としての金融政策の役割について、さらに言えはその役割の欠如について、厳しい現実を突き付けている。


Bloomberg News
白川日銀総裁
 日銀は今年、事実上のゼロ金利政策への復帰から幾つかの量的緩和措置に至るまで、一連の緩和措置を発表した。今のところ、期待通りの結果は得られていない。10月の消費者物価指数はプラス0.2%とわずかながら上昇したが、上昇要因のほぼ半分はたばこの値上げによるものだった。日本が完全にデフレから脱却したと見る向きはない。

 経済成長も、7−9月期の国内総生産(GDP)は年率で4.4%の伸びとなったが、数字が示すほどの勢いはない。「エコカー減税」の期限切れを前に消費者が車の買い替えを前倒ししたためと思われる。企業の設備投資も弱いままだ。

 問題は、いつものことだが、日銀がどれだけ多くの紙幣を印刷しようと、経済に需要がない、ということだ。銀行は、企業家が投資について態度を決めかねていることを知っている。小規模な企業の景況感は最近若干上向いたものの、依然として弱い。また銀行も、利子をほとんどつけない膨大な預金を抱え、日銀の資金を必要としていない。

 他のさらに野心的な日銀のプログラムも、効果的とは限らない。日銀は先週、10月に発表した5兆円の包括的な金融緩和政策に基づき、社債の買い入れオファーを行った。今回は、なんとかカネを経済に回すことができた。日銀の買い入れ期待を背景に、ここ数週間の利回りは低下基調をたどり、買い入れを前に社債発行に踏み切る企業も増えた。しかし、これではまだ「成功」とは呼べないだろう。企業の借り手の多くは、設備過剰に悩まされている重工業などの大企業だ。

 長期融資と同様、中小企業の借り入れが増えている兆しはほとんどない。銀行が、日銀が誘発した社債価格の上昇をうまく利用して一部保有分を売却することで得たキャッシュをどうするのかも不透明だ。危険なのは、銀行が単に国債を買い続けた場合、デフレ退治どころか、デフレをさらに悪化させる可能性があることだ。

 とはいうものの、日銀が成長の火付け役になり損ねていることは、さほど悪いことではないかもしれない。今後、日本政府内での経済論議で、日銀に「物価安定」と「成長」の2つの使命を与えることで恒常的な緩和措置を強いる一部の国会党派の要求に直面すれば、日銀の独立性に影響が及ぶ。とりわけ米国のように、このような試みがなされている国では、2つの使命を追う中銀はひとつも得らないということが結局のところ、明らかになっている。

 むしろ、日銀のリフレ失敗は、成長を阻害する多くの日本の政策についての議論の糸口とするべきだ。ここ数週間、これに関して極めて多くの例が示された。日本の当局は、上場株式の配当や譲渡益への税率を20%と倍に引き上げる方向で検討している。これは、偶然にも、上場投資信託(ETF)の買い入れを通じて資産価格を押し上げる日銀の政策と相反するものだ。

 先週時点で、日本政府内では、40%と国際的に高水準の法人税実効税率について、5%の引き下げさえ「受け入れられない」との声が上がり、法人減税を目指す当初の姿勢から後退している。規制緩和の象徴ともいえる郵政改革も行き詰まっている。しかもそのうえ、一部の政治家は、地球温暖化対策として環境税 ―すでに世界で有数の二酸化炭素(CO2)排出の少ない経済への新たな負担― を検討しているようだ。

 このような政策では、雇用と成長を押し上げる投資に多くの企業が躊躇し続けているのは驚くに値しない。日銀がヘリコプターから撒き続けるカネを企業幹部と企業家が使い始めるまで、日銀券は、あてもなく、木の葉のように地上に舞い落ちるだけだ。

 日本がこの問題に取り組んでいる間に、ほかの国は ―とりわけ米政府は― いくつかの教訓を得られる。最も重要な教訓は、どんなに金融を緩和したとしても、真の成長を後押しできるのは、投資と企業家が報われる政策が取られた時のみ、ということだ。


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