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生活防衛のためなら、なりふり構わない! 「超節約族」が増えている?
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/354.html
投稿者 tea 日時 2010 年 12 月 10 日 19:21:29: 1W1IXELjjF6i2
 

友清 哲 氏によると、生活防衛のため「超節約族」が増えているらしい
しかし所得が減少している現実では、この流れが変わりそうもないが
ポイント目当ての返品の増加のように、悪質な消費者の増加は、まるで米国のようである。
格差拡大とネット販売の拡大は、貧すれば鈍するという以上に人間性の劣化を引き起こしているのかもしれない

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX 以下引用 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX
http://diamond.jp/articles/-/10413
  
 一部では客足が好調な業界もあるが、全国紙などが実施する「冬商戦の景況感調査」では、百貨店、スーパーなど多くの企業が「前年並みかもしくはそれを下回りそう」と回答しているの現状だ。
 長引く不況で消費はすっかり停滞している。一度締まった消費者の財布のヒモは、容易に緩められない。10月の全国消費者物価指数は、値動きの大きい生鮮食品を除いた総合指数が、20ヵ月連続マイナスとなった。
 経済全体の需要と供給の差を示す需給ギャップ(GDPギャップ)を見ても、今年7〜9月期はマイナス3.5%(15兆円)となっており、構造不況の様相を呈している。
 しかし、いくら不況とはいえ、モノやサービスを消費せずに生きられる人など、いるはずがない。消費が消えてしまったのではなく、ムダなもの、贅沢 なものを買わずに、生活に最低限必要なものしか買おうとしない「超節約族」が、以前より確実に増えているのだ。こうしたご時世に、商品やサービスの提供側 が新たな消費を喚起するためには、相応のインパクトがなければ難しいだろう。


「クーポン共同購入サービス」に群がる人々」
このサービスは、「超節約族」たちを虜にして離さない。先頭を 独走するグルーポン・ジャパンをはじめ、おおむね順調に集客に成功している。「少しでもお得な買い物を」と節約志向を募らせているユーザーの声を拾ってみ よう。
「半額以下という大幅なダンピングは、文句なしにお得です。それに加え、提供地域が細分化されていることで、ちゃんと自分の生活圏内で使えること がわかりやすく、興味をそそられます。不況で収入が減っていても、なるべく交際費を削りたくないのがホンネですから、家族や友達と食事に出かけるときには とても重宝しています」(クーポン共同購入サービスのユーザー/30代主婦)
 クーポン共同購入サービスの某事業者によれば、こうしたクーポンに敏感なのはやはり女性だという。掲載店舗についても自ずと女性やファミリー層を意識した選択がされている。
「掲載店舗側からすれば、利幅は少なくても大きな宣伝効果が見込めます。また、実際には販売したクーポンの何%かは、利用されずに期限を迎えてし まうことも多いと聞きます。使用されなかったぶんの売り上げはそのまま運営者、あるいは店舗の利益となります。つまり、下手にメディアに広告を打つより も、非常に効率がいいPR法なんですよ」(前出のライター)

「深夜ATMの手数料さえ惜しい!」とネットで節約情報集め

 クーポン共同購入サービスのケースからもわかる通り、インターネット上には「超節約族」たちを魅了する仕掛けがいたるところに転がっている。ウェブをくまなくサーチして、日常生活の随所で「何とかコストカットしよう」と躍起になっている消費者は少なくない。
「案外バカにならないのが、夜、飲み屋をハシゴする際に、コンビニでおカネを下ろすときにかかる時間外手数料。これもよく調べてみると、ネット上 からの手続き1つで口座のグレードをアップでき、時間外手数料が一切無料になる。あるいは、特定のコンビニのみで手数料が発生しない銀行などもあります。 細かいですが、金利にしても比較サイトが山ほどあるから、何も考えずに金融機関を使うのはもったいないですよね」(30代会社員)
 いくら忘年会シーズンと言っても、毎晩のように飲み屋をハシゴする人は、あまりいないだろう。それでも、100〜200円の手数料がかかることさ え躊躇する人は少なくない。「それほど神経を擦り減らすくらいなら、いっそインターネットでサイドビジネスを始めた方が儲かるのでは?」と思ってしまいが ちだが、切実な節約志向は留まることを知らない。
「サンプル配布、商品モニタリングの情報を集めたポータルサイトをあたれば、食料品やコスメ、生活雑貨など様々なものが無料、もしくは格安で手に 入ります。抽選だったり、サービス提供を受けた後にアンケート調査に答えることが義務付けられたりする煩わしさはありますが、家計面では大助かりです ね」(30代主婦)
次のページ>> 商品の返品を繰り返して量販店のポイントを稼ぐ「たくましい主婦」
 この主婦のように、モニタリングやサンプルをうまく利用することは、以前からあった節約法だ。しかし最近では、さらに一歩踏み込んだトレンドが目 立つ。「超節約派」たちの格好のターゲットとなっているのは、「気に入らなければキャッシュバック」「満足できなければ全額返金」とうたうショップや飲食 店である。
商品の返品を繰り返して量販店の
ポイントを稼ぐ「たくましい主婦」
 業者にとって、他店との差別化を図る意味では絶好のフレーズと言えるが、「こうした宣伝文句に無遠慮に食いつくことも節約のキモ」だとこの主婦は語る。
「業者にもよりますが、一度購入した商品を何らかの理由をつけて返品することで、ポイントを稼ぐ手も“流行り”です。現在も某メーカーが電気 シェーバーのキャンペーンで、『使用感に満足できなければ全額返金』というサービスを展開しています。お客は商品を返品しても、家電量販店のポイントだけ は手元に残るので、お得です」(前出の主婦)
 これは節約というより、はっきり言ってモラルに反した行為だ。決して推奨されるべき節約法ではない。個人の節約志向が、ある意味歪んだベクトルへと向かいつつあることには、驚きを隠せない。取材の過程では、こんな声も聞かれた。
「不況だし、映画やドラマのDVDをレンタルショップで借りることは、ほとんどなくなりました。オンライン上にはいくらでも海賊版が転がっていますから、たいていの作品は視聴できてしまうんです。音楽も同様ですね」(40代会社員)
 漫画雑誌を発売前に撮影し、YouTubeに流していた罪で中学生が逮捕された事件は、記憶に新しい。そもそも、本来ならおカネを出して購入すべきコンテンツが、ネット上に違法に氾濫している現実こそが、問題である。
次のページ>> 「モラルなんてそっちのけ」の困った不況の申し子たち
だが多くのユーザーは、それを手にすることに対して罪の意識を感じていないようだ。わざわざ正規ルートで決済しなくても、同じ商品が目の前にタダで落ちているのであれば、それを拾うことに躊躇はないのである。
モラルなんてそっちのけ!
困った“不況の落とし子”たちが増殖
 目線を移せば、なりふり構わない「超節約族」の出現は、消費市場に限ったことではない。「払うべきおカネを払わずに節約しよう」という人は、以前 から増え続けていた。全国で推計26億円にも上ると言われる未納給食費は、そのよい例だろう。子どもの給食費を払わない保護者の大半は、「経済的に苦しい ので、払いたくても払えない」と言い訳をしている。
 まだ完全解決に至っていない「高齢者の死亡無届け騒動」にしても、年金の不正受給を目的とするケースを多く含んでいるであろうことは、自明である。
 そこには、減る一方の給料をはじめ、給料や将来設計に立ちはだかる不安に立ち向かうため、なりふり構ってはいられない人々の姿がある。「何よりも生活を守ることが第一」と考える消費者は、決して少なくない。
 このような思考を持つ「超節約族」に訴求できる商品やサービスを考えつくことは、企業にとっても容易ではなかろう。しかし前述の通り、いくら不況とはいえ、消費がどこかへ消えてしまうわけではない。
 重要なポイントは、不況をきっかけにして、消費者の買い物に対する考え方そのものが、様変わりしてしまったことだろう。そしてこのトレンドは、今 後景気が本格的な回復基調に乗っても、大きく変わらない可能性がある。新たな思考を持つ消費者がマーケットを席巻する日が、近づきつつあるのだ。

質問1 あなたの節約意識は以前より高くなった?
32.7%
あまり変わらない
32.5%
かなり高くなった
29.3%
少し高くなった
4.7%
むしろ低くなった
0.8%
わからない

 

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コメント
 
01. 2010年12月10日 20:58:09: ibwFfuuFfU
「節約情報なんか集めてるヒマがあったら仕事して収入ふやした方がずっといい」、時代は終わった。ほどなく世界中がこうなる。

02. 2010年12月10日 21:58:09: dEqdQrxnL2
目先に引っかかるB層の縮図だな。

03. 2010年12月10日 22:17:31: Zb8cvfeoUc
国民のDQ値が高くなってきた。

04. 2010年12月11日 10:45:56: bETUH2PEKU
>案外バカにならないのが、夜、飲み屋をハシゴする際に・・・

↑あ〜? ギャグなのかね?
こういう手合いは、安売りのチラシを見たらタクシーで買出しに出るような連中なんだろーな…


05. 2010年12月11日 18:17:52: Wpa39bsErw
クルマより自転車、自転車より歩き。
やはり歩くのが一番安くて健康に良い。 
平凡な結論。

リサイクル屋でギターをget。
それに将棋セットを一式。
ギターと将棋でさえ一生かかってもマスター出来ない。
これは安上がりで奥深い趣味である。

古着屋でファッションを揃えれば、安くて
一点ものでバラエティーがあり個性的になる。
ユニクロでさえ、高くて同じモノばかりの
つまらん店になる。

英語ばかりやらないで、
ベトナム語やインドネシア語など
面白そうな言葉を始めてみる、
金もかからず楽しめる。

ワケギの球根を植えてみる。
葉だけ2〜3回収穫し、掘り起こすと
球根が何倍にもなっている。
それを植えると又何倍に・・。


06. 2010年12月11日 23:01:39: Ts2m6xow8Q
節約も結構だがその先にいる人達のことをまず考えるべし。
物を安く買えば作り手、売り手には少しの金しか入らない。それは巡り巡ってあなたにふりかかりあなたの働きも少しの金と成る。いろいろ安くて無駄な物に手を出さずに日本人が一生懸命働いてこしらえた物をなるべく頂くようにしようではありませんか?
人を安く奴隷として使って造ったものを避けて一生懸命に日本人がこしらえたものを
できるだけ買いましょうよ。カップラーメンやら菓子等でも、なるべく小さな日本の会社がつくったものを選びましょう。そういう小さな会社にお金を落としたほうが、銀行やら外国資本に吸い上げられる大資本に自分や国民みんなの労力を巻き上げられるよりよっぽど喜びが国に回り巡るはずです。あなたのお金が小さな会社で働く人たちにそっくりそのままめぐるのです。大企業のものを買えば鬼に搾取されるだけです。

07. 2010年12月12日 10:19:40: cqRnZH2CUM

高い賃金をもらっている人、投資で儲けた人は、積極的に使う、
また米国みたいに、公的な寄付への非課税を増やし
例えば地域の福祉増進への寄付は全額非課税にするなど
もっと民間に溜まっている金を有効に活用するようにしないとまずいね

まずはデフレ解消のため、日銀に一度、市場が驚くほどの量的緩和で
人々にマネタイズの恐怖を思い起こさせた方が良いだろう。
一気に円安とインフレが進めば、インフレ恐怖の投資需要が増えることになる。

重要なのは、国内での投資と消費を増やすことだから、本来なら
規制緩和などで、意欲のある起業家が借金して金を儲けて雇用を増やすという
本来の循環がまた起こることだ。

人為的な規制で賃金を上げたり、やる気のない人間に金をばらまいたりするような愚かなことをしても、長期的には益々景気は悪化するだけだ


08. 2010年12月12日 11:40:27: 2uOv2R3MRs
節約に躍起になっている人たちは収入が頭打ちになった人たち
彼らは時間を節約せずに節約を探すw


09. 2010年12月12日 17:32:50: OU45NNHkXI
この記事は、極めて興味本位で本質をついていないという印象を持った。3流記事である。
何を訴えようとしているのか。何も無い。スポーツ新聞か芸能週刊誌レベルだ。

"「深夜ATMの手数料さえ惜しい!」とネットで節約情報集め"
まったく問題ない。ただしい消費の姿だ。批判する方がおかしい。

"一度購入した商品を何らかの理由をつけて返品することで、ポイントを稼ぐ"
企業が決めたルールに則っているのであれば、とやかく言われる筋合いはない。誰からも批判される義理も無い。
もちろん法律にも違反していない。

”「払うべきおカネを払わずに節約しよう」”
庶民がする範囲などしれたもの。もともとは高額所得者や大金持ちが税の軽減や会計のやりくりをしていた方がさきだろう。ルール(法)に基づくものならば何らやましいことはない。法律に違反するならば話は別。グレーなら個人の判断。最終的には裁判所が判断するが、裁判所も裏金作り、賄賂をしているから、そんなやつらのいうことは聞きたくないという意見は無視できない。

"年金の不正受給を目的とするケース"
年金がなければ生活できない状況にあれば、多くの人がそうするだろう。きっとこの記事を書いた記者でさえも。きちんと申告して生活保護を受けるのが筋だが、行政もそんなに新設ではない。予算を絞る様に上から指示されているから、親身には対応してくれない。100%ではないが、生存権からすれば一概にあきらかに「悪」とは言えない。



10. 2010年12月12日 21:04:24: mHY843J0vA
>悪質な消費者の増加は、まるで米国

戦後の混乱期もそうでしたが、
単に貧しくなったこと以上に、やはり正規雇用者と、失業者や非正規との賃金格差が開いたこと、そして上は政治家から下は不当生活保護まで、搾取者が労せずして税金で利益を得ている現実は、モラルの低下に拍車をかけるのでしょう


11. 2010年12月12日 21:06:51: mHY843J0vA
ブータンなど途上国の方が、日本人の生活保護世帯よりも圧倒的に貧しいのに幸福度が遥かに高いということが示すように
貧しくても、国民が平等で、人と人との絆が実感できていると、生活満足度は高いようです



12. 2010年12月13日 13:13:34: SABGlaCUaU
>>09 法律に違反してないなら、何をやってもOKだ、
というのは、西洋からやってきた、悪魔の考え方だ、
と私は思っています。

13. 2010年12月13日 18:28:52: pckqLXY8mk
TVから流される「日常」の形はお金がかかる。
それを維持しようとすると この記事の人々のようになるのかな?

一億総中流から ひとりひとりの「日常」が作られそうな気配を感じました。


14. 2010年12月13日 19:03:45: FHVyh15Kso
国民が生活防衛のため消費を切り詰める行為が、結果として消費の減退を招き景気を更に悪化させる、
この「負の連鎖」については、同志社の浜教授と言わずみなが指摘している。(浜教授の話が分かりやすいから名前を挙げただけ)

割り引きクーポンやクレジトカード決済でのポイントも、一見得のようだけど、
サービスを導入している店舗の売上や消費者が費用負担をしているに過ぎない。
「誰が得をしているのか」よーく考えてみる事も大事。
コンビニや一般店舗でsuica使えます、なんてあるけど、客が1回利用するごとに店舗は売上の一部を「吸い上げられる」訳。

国民がちょっとだけ「けちった」だけでも、国全体の消費は落ち込んでしまい、
その逆に、国民にとっては「軽く財布から抜かれている」だけでも、巨額の利益を手にする者も出てくる。


15. 2010年12月14日 00:03:40: cqRnZH2CUM
>貧しくても、国民が平等で、人と人との絆が実感できていると、生活満足度は高いようです

最近の日本人の対人不信感は、世界の中でも高く、
中国人や米国人よりも、実は高いそうだ
本当かどうかは怪しいが
それが投資や経済低迷の原因だという人もいるようだ


16. 2010年12月14日 00:22:21: pckqLXY8mk
>14
クーポンやポイントでも

[全文]【国際金融家へのささやかな個人的対抗方法】 『巨大故に脆い』国際金融家の力 投稿者 あっしら 日時 2002 年 3 月 04 日 14:06:48
http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/208.html

上記投稿の中程
“● クレジットカードはできるだけ使用しない” 
に書かれている仕組みが使われてるんですね。


17. 2010年12月14日 01:05:31: cqRnZH2CUM
>投資や経済低迷

あと雇用システムの変換も心理的に消費削減への大きな影響がありだな


ニッポン人の新しい働き方【第1回】 2010年12月13日石黒 不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

城繁幸×石黒不二代 対談【前編】「終身雇用・年功序列」は崩れ始めた!“安定”を失った日本人はどう転進すべきか
少子高齢化、グローバル化が進行し、経済は低成長下にある日本。社会や経済環境が大き く変わった今、我々日本人は以前と同じような働き方をしていては、成長どころか安定した生活さえもままならない状況に陥っている。では、現代に相応しい 「新しい日本人の働き方」とはどのようなものなのだろうか。
当連載は、「リスクをとらないことが最大のリスク」と常に変革の必要性を説くネットイヤーグループCEOの石黒不二代氏をナビゲーターに、様々な切り口から新しい時代における日本人の働き方を探っていく。
初回である今回は、人事コンサルタントの城繁幸氏と共に「終身雇用・年功序列が根強い日本における新しい働き方」を考える。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
十数年前は、終身雇用・年功序列に「疑問さえ持たなかった」
――日本の大企業で就業経験のあるお二人ですが、実際に働いていた時は日本的雇用慣行である「終身雇用・年功序列」をどのように感じていましたか。
じょう・しげゆき/人事コンサルティング会社「Joe's Labo」代表取締役。1973年山口県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通に入社。人事部門にて新人事制度導入直後からその運営に携わり、同社退社後に刊行した『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』、『日本型「成果主義」の可能性』で話題に。『若者はなぜ3年で辞めるのか』では若者が職場で感じる閉塞感の原因を探り、大ベストセラーとなる。雇用問題のスペシャリストとした各メディアで積極的な発言を続ける。最近の著書では『7割は課長にさえなれません―終身雇用の幻想』などがある
城 「それが普通」だと思っていましたね。初任給から始まって横並びなのが当たり前だと。実際、そうやってどんどん偉くなった人がたくさんいらっしゃいましたから。
 ですけど、私は人事部出身なので、色々な計算をするなかで疑問が生まれてきましたね。自分達の賃金を計算してみると、我々の世代の賃金カーブは、団塊世代など上の世代より下にシフトするんじゃないか、みたいな(笑)。
石黒 そんな予感ありました?
城 ありましたね。
石黒 私の場合、女性がとにかく就職できない時代だったので、給与に対して疑問を覚えたことはなかったですね。 それに私は性格が大雑把で、お給料の金額を見ないほうなので、とくに気にもしませんでした。ただ、覚えているとすれば、ものすごく少しずつ昇給させていく んだなということです。
「終身雇用」や「年功序列」という言葉も、私がアメリカへ行った後に認識したくらいです。私はちょうど、バブルが崩壊し始めた92年にアメリカの ビジネススクールに入学したのですが、その頃は「日本的な終身雇用・年功序列は会社への忠誠心と帰属意識を高めるよい雇用だ」という授業さえあったんです よ。当時、バブルは崩壊し始めていましたけど、皆がそれに気づくまでに時間がかかるじゃないですか。まさか「失われた10年」になるなんて、アメリカでも 誰も予想していなかったわけです。
 終身雇用・年功序列は「与えられたもの」という側面があり、皆が盲目的に会社に帰属して、何も文句を言わずに働くことが、確かに高度成長期の強み だったと思います。当時は商品ライフサイクルも長かったですから、何か1つのものに向かって邁進するために、すごくよい「正のスパイラル」ができていたと 思うんです。でも、今は昔と環境が大きく違い、正のスパイラルが全くなくなっている。それで、ドタバタしているのが今の日本の姿でしょう。
次のページ>>終身雇用はもはやタテマエ?
城 (正のスパイラルが)崩れちゃうと、終身雇用・年功序列は成り立たないんですよね。
石黒 成り立たないですね。そのスパイラルは、常に成長しているという経済圏でのみ、成り立つわけです。成長す るから長く働くほど給与は上がる、よりたくさんの新入社員が上の人たちの報酬を支える。上に行けば給与は上がるだろう。だから、同じ会社で一生懸命働くこ とが成長を支え、また、成長が給与の増加を促すといういい形の「エコ」が働いていました。その「エコ」は、日本経済全体によい循環と調和を生み出していた んですけどね。
終身雇用はもはやタテマエ?実は、気づかぬうちに崩壊していた!
――2000年前後に大企業などを中心に成果主義が導入されましたが、それでも終身雇用・年功序列が根強く残っていると言われ続けてきました。現在は、どうでしょうか。
石黒 はっきり言って、終身雇用、年功序列はもう崩れていますよね。
城 崩れ始めていますね。
石黒 ただ、日本は労働法によって正社員の厳格な雇用保障が定められているので、アメリカのようにパッケージ化(退職金や手当て、転職の斡旋など)してリストラクチャリングすることはできないですが、でも…実際には同等のことをしてるんですよね。
 失われた10年の後、私が日本に帰ってきて、以前からお客様だった大企業のメーカーの管理職の方から伺ったお話は、早期退職や子会社への出向で3 分の1くらい人を削減したということでした。しかも、今では、その子会社もなくなり…といった事態も起きて、ものすごく地盤が崩れている状態です。年功序 列はまだ根強くありますが、終身雇用、つまり「自分は将来ずっと、この会社にいれば安泰だ」というのは、私はゼロに近いと思ってます。
城 確かに終身雇用って、「保障」という意味では、すでになくなっているんですよね。だけど、まだ建前としては残っているので、企業が例えば「お前はクビだ」って言って辞めさせることはないんですよ。
 だから早期退職を募集したり、人事が圧迫面接をして辞めさせたりとか。そういう建前と裏側の違い、本質との乖離がすごく大きくなってると思います。
石黒 それは、やたら時間ばかりがかかって、あまり意味がない。アメリカでいうパッケージ化された解雇を日本も実質的にはしているわけですから、はっきりと法律で定めたほうがいいのではないでしょうか。
城 絶対にそのほうが合理的だと思います。
次のページ>>早期退職しても受け入れ先がない!?
早期退職しても受け入れ先がない!?「労働の流動性が低い」ことで起こる問題
石黒 ですが、早期退職したとしても、次に就職できるかというと、受け入れ先がないという状態がありますよね。まだ労働の流動性がないので、非常に再就職は難しい。ですから、退職した方は過渡期で大変な時代だと思います。
城 今、まさに過渡期ですよね。
石黒 アメリカは、労働の流動性があるから辞めることができるんですよ。でも、日本の場合、流動性がないから辞められない…。
 とはいえ、経営がにっちもさっちも行かない状態になったら、経営者として「リストラ」を選択するのは、ある意味当たり前ですよね。
「リストラ」か「会社の破綻」か、という究極の選択の場合、経営者としては、よい人材を残して、会社の経営に合わない人には退職パッケージを出し て退職をしてもらうという選択をするでしょう。でも、社会全体がそれを受け入れるには、まだ流動性がないので、実際にお辞めになった方も困っている。それ が、問題を余計に大きくしているんでしょうね。

城 JALの問題を見て、二種類の方がいらっしゃるんですよね。「終身雇用ってもう終わったんだ」って嘆かれてる方と、逆に「ああなるまで守ってもらえるんだ」っていう。これは、誤ったメッセージを発していますよ。
 あと、「生産性が低い」ことを理由に解雇されて、それを不当解雇として何十年も闘っている人がいますが、それを日本では“美談”として持ち上げる 傾向があります。でもそれでは会社にとっても、本人の人生にとってもマイナスのはずです。もっと言えば、日本全体にとってもマイナスなんですよね。皆が損 をしてる状況じゃないかとすごく感じます。
石黒 本当にそう思います。それを不当解雇だというのは、終身雇用と年功序列が正当であった時期が長かったからであって、その固定概念に縛られてしまっているのでしょうね。
 第一、ご本人も自分に合うところで働くほうがずっと幸せであるという意識がない。それは、やっぱり労働の流動性がなく、転職しようと思ってもなかなか受け入れ先がないっていう現状もあると思うんですよ。
城 そうですよね。私は正社員の解雇についてきちんと法制化されれば、それが一番流動性を高めることにつながると思うんですけどね。
グローバルスタンダードに完全に乗り遅れた“村社会・ニッポン”
石黒 日本的雇用慣行が崩壊しつつあるのは、日本が成長していないことが引き金です。ただ、成長していてもそこはメスを入れるべき。成長している時にこそ、生産性は常に気にしなければならないし、一人一人自分も意識を高めないといけません。
次のページ>>日本人は「世界」をもっと意識しなければならない
城 成長のためには、逆に皆がリスクを恐れずにチャレンジできるような流動性が必要ですよね。
石黒 経営者も、一人一人の従業員も考え方を変えるべきです。他国は、例えば、生産基地は当然中国や東南アジアに置いて、研究開発部門は優遇税制をしてる所に置くなどして、グローバルスタンダードの中で皆が闘っています。
 でも、日本はそうじゃないんですよ。日本だけが、この狭い“村社会”の中で、「あの人のお給料はいくらだろう」などと気にしている。海外企業と競争する意識がないと、自分を変えていけないですよね。
城 いい話ですよ(笑)。その通りです、本当に。
石黒 先日あるカンファレンスに参加して、海運業を経営するインドネシアの女性CEOの方と話をしたんですよ。その方からは、「今、CEOが闘うというのは、国内ではなく海外のCEOと闘っているということですよ」と言われました。
 これは、CEOのレベルだけでなく、どのレベルにも当てはまって、多くの人が他国の人と闘ってるという意識を日本人は持つべきです。企業がグローバル化するにつれ、国内外の買収も増えますから、他国のCEOが採用されないとも限らない。
 今の日本のCEOに、それに対抗できる知識や能力があるでしょうか?企業単体としても、日本のスタンダードで歩んできた人たちが、世界のスタンダードで戦う覚悟ができているでしょうか?
 ここ数年相当な議論になっている製造メーカーの工場の派遣問題ですが、これは、工場自体を中国や東南アジアに移転するという判断もあるわけで、し かも、それは90年代から起こっていることです。国内での議論に終始していて、自分が競争していたのは自国の正社員ではなく、他国の工場労働者だったとい うことに後で気づいたとしたら、それこそ不幸なことです。みんなが、目線を上げるべきなのです。
 つまり、今議論している、終身雇用・年功序列の問題は大きいですが、それは本当に日本の中だけの議論なのです。本当なら、他国の企業が何してるかを考えなければいけないのに、日本だけ遅れていて、そういう意識がなさすぎるんですよね。
「グローバル化しよう」という掛け声ではなくて、自分は常に競争にさらされて、他国の企業が何やってるかって事をやっぱりもっとよく理解すべき。そうしたら今までの議論なんて、吹っ飛んじゃうと思うんですけどね。
城 最適な人材、最適なリソース、最適なインフラ、税制などそういうものをすべて加味して経営をしなければならないわけですから。極端なことをいえば、日本の法人税率や規制がどうなっていようが関係ないわけで。
石黒 関係ないですよ。企業経営者が気にするのはPLやキャッシュフローですから。PLをよくしようと思ったら、税率の低いところに行けばいいわけであって、そういう事を積極的にしないといけないですよ。
城 そうですよね。最適な場所は自然にどんどん決まるものですからね。そうなると、少しでも日本の中でお金を落としてもらえるようにしないといけないわけで。
次のページ>>今は「終身雇用・年功序列」という“虚構”に縛られているだけ?
石黒 だから政府にインフラを整えてもらわないと、多くの企業が海外へ流出していきますよ。
城 あと、解雇規制の緩和や金銭解雇、賃下げの話をすると、“お金持ち”の経営者たちの思うツボで、彼らがますます豊かになるんじゃないか、という言い方をされるんです。
石黒 そんな事ないですよ。その人達だって競争にさらされてますから。
城 その通りです。そもそも会社の中にそんな“お金持ちの人”はいません。それに、“自動販売機”みたいなもんなんだってぼくはいつも言ってるんですけどね。
石黒 え、自動販売機って?

城 自動販売機って、設置する場所(=市場)によってコストや販売価格が決まっているじゃないですか。会社も同 じで、製品の値段や原価は幾らまでかは決まってるわけですよね。その“自動販売機”の前で、「絶対40年間雇い続けなさい」、「最低いくら払いなさい」っ て叫んでも意味がないんですよ。
石黒 それこそ、工場移転の問題にもあてはまるわけですね。それが、今は、本社や開発拠点も視野に入っている。 私は、日本のデフレはある意味仕方ないわけで、日本全体の労働力の平均価値が世界経済の平均価値に比べ相対的に下がっているから調整局面だと思っていま す。付加価値を高めない限り、論理的にはインフレにならないですよ。
今は「終身雇用・年功序列」という“虚構”に縛られているだけ?
――先ほどから「終身雇用・年功序列は崩れ始めている」というお話をされていますが、それに多くの人は気づいていると思いますか。
城 私はまだ「終身雇用・年功序列」という“虚構”に縛られて、目が覚めていない状態だと思います。実はそんなものなくなっているのに、皆まだ気づいていない、ウトウトしてるという段階ではないでしょうか。
 それに、今年の2011年卒業学生の内定率が過去最低というのが、非常に象徴的ですよね。
石黒 それってある意味、若者が中高年正社員の“ツケ”を払ってるわけじゃないですか。市場が変わり、今までと 働き方は変わってきています。もちろん全員ではありませんが、40代、50代など、今までと同じ働き方をしていて新しい市場では生産性が低くなってしまっ ている、しかし、変われない人たちが自らツケを払うべきだと思います。
※【後編】(12月下旬公開予定)では、「なぜ日本人は生産性が低いのか」について考えます。
質問1 日本企業は、終身雇用・年功序列という日本的雇用慣行を辞めるべき?
42.7%
辞めるべき
18.3%
どちらかといえば辞める方がよい
16.9%
辞めないべき
13.4%
どちらかといえば辞めない方がよい
8.7%
どちらともいえない


18. 2010年12月14日 02:33:44: cqRnZH2CUM
貧乏人は無計画に子供を産み、豊かな人間は子供をうまない?
4人に1人は「でき婚」 厚労省の人口動態統計

2010年12月9日 22時03分

 09年中に第1子を産んだ4人に1人が結婚前に妊娠する「できちゃった婚」で、15〜19歳では8割に上ったことが9日、厚生労働省の人口動態統計特殊報告で分かった。

 第2次ベビーブーム期(1971〜74年)以降に生まれた女性の約半数が、30歳の時点で赤ちゃんを産んでいないことも判明、晩産化が進む一方で、年齢が若いほど妊娠を機に結婚する割合が高いことが浮き彫りとなった。

 特殊報告によると、「でき婚」は、統計を取り始めた95年は18・0%だったが徐々に増えて06年(25・6%)をピークにほぼ横ばいとなり、09年は前年より0・2ポイント減り、25・3%だった。09年の10代以外では、20〜24歳で6割、25〜29歳で2割、30歳以降で1割。


19. 2010年12月14日 02:36:25: cqRnZH2CUM

「社会保障で成長」が画餅である理由〜規制と公費投入が、過剰需要を作る

『財政危機と社会保障』の、鈴木亘・学習院大学教授に聞く

* 2010年12月13日 月曜日
* 芹沢 一也

社会保障  生活保護  国民健康保険  第三の道  成長  本 

―― 社会保障を成長産業として捉える、という発想から、菅直人首相が「強い社会保障」なるものを主張しています。

鈴木 亘 (すずき・わたる)
1970年生まれ。上智大学経済学部卒業後、日本銀行入行。98年に退職後、大阪大学大学院博士課程前期課程修了、後期課程単位取得退学(2001年に経済学博士号取得)。現在は学習院大学経済学部経済学科教授。専門は社会保障論、医療経済学、福祉経済学。主な著書に『だまされないための年金・医療・介護入門』(東洋経済新報社、2009年、第9回日経BP、BizTech図書賞)共著に『生活保護の経済分析』(東京大学出版会、第51回日経・経済図書文化賞)などがある。(写真:大槻 純一 以下同)

鈴木 出発点にあるのは「強い財政」なんです。簡単にいうと、消費税引き上げでまず財源を確保し、社会保障分野に投じよう、ということです。そうするとGDPが拡大して税収も上がる、そうなると社会保障にいく分もさらに増える、となって好循環が生まれる。これが「強い社会保障」という考え方です。

 なぜ社会保障が「強く」なりうるのかというと、待機老人や待機児童が生じていることから、介護や保育には需要がたくさんあるのは明らかだと。ではなぜ、市場でそうした需要が満たされないのかといえば、たとえば介護の場合、介護師の給料が非常に低いためになり手がいないからだ。だから、公費を投じて給料を高くして、需要を埋めてやりましょうという考え方ですね。

―― なるほど、だから医療や介護、保育というのは成長産業だと。

鈴木 そうそう、そこに需要があるからというわけです。

―― 話がうますぎるように思えますが、本当なんでしょうか?

鈴木 経済学的にみて、まったく間違ってます(笑)。

 成長産業というのは、自動車や電気機械、最近だとITとか情報産業などのように、最初のスタートアップのところで公費が使われることはありますが、いずれ自立して、だまっていても勝手に大きくなっていくものです。みんなが欲しがるから、どんどん成長していくと、これが成長産業ですよね。
公費投入が過剰な需要を呼び込んでいる

鈴木 ところが、医療や介護、保育は、公費をものすごく使っています。医療費の4割は公費の補助です。介護で6割、保育にいたっては8割。需要が満たされないほど大きいのは、このように莫大な公費が投入されるからなのです。

―― 公費ががっぽり投入されるから需要が拡大する、というのは…。
『財政危機と社会保障』鈴木亘著(講談社現代新書)

鈴木 公費によって、利用者がその場で支払う料金が大幅にディスカウントされるからなのです。安いから、需要過多になっているわけです。

 公費投入の比率は全然低くなる兆しはなく、むしろどんどん高まっています。しかも、医療は少しは新規参入の余地がありますが、介護や保育はもう本当に規制産業。こんな環境では、既存の企業側に自立する動機が生まれるわけがないし、そんな産業が成長産業になりうるわけがありません。

―― 自立へのインセンティブがないわけですね。今回はとくに医療の領域に焦点を当てて、そのあたりの問題点をお聞きできればと思います。昨今、健康保険証を持てない人が増えていると報道されますが、医療保険の現状はどうなのでしょうか?

鈴木 医療保険は職域別になっていますが、自動的に保険料が徴収されるサラリーマンには大した問題はありません。問題は国民健康保険です。なぜかといえば、国保は未納が可能だからです。現状、7〜8パーセントの方が未払いです。

 ただし、行政としては保険を提供しないことは法律違反なんです。国民皆保険という原則をとっていますから。一年以上滞納した人には、「被保険者資格証明書」を出すことになりますが、これは病院の窓口で全額10割払わないといけないんですね。あとで7割還付するということになっていますが、実質は無保険の人たちだといってよい。

 それから「短期被保険者証」というのがあって、これはとくに子供がいる世帯に交付するものです。有効期間は6カ月。短期で証明書を交換させて、その都度、保険料を払うように迫る。病院で普通に使えるのですが、でも日本みたいに恥の社会だと、そんな医療保険証を持って病院に行けないわけですよ。子供が熱を出したというときには使われますが、親はそれを使わないので、こういう人たちも実質的には無保険者に近いんですね。
(政府公報はこちら)

―― 7〜8%という数字は深刻な数字でしょうか?

鈴木 わたしは深刻だと思います。というのは、本当に貧困な家庭であれば生活保護になるので、医療扶助で全額払ってもらえるようになります。つまり、保険料滞納者というのは、生活保護までのあいだのエアポケットみたいなところにいる人たちです。これが7〜8パーセントというのはかなり問題です。しかも、国保(国民健康保険)の側には、こうした人たちを放置するインセンティブがあるんですね。

 というのも、この人たちを国保に入れようとすると、完全に減免しなくてはいけなくなる。となると、保険が負担しなくてはいけなくなります。半分は国が払ってくれますが、残りの半分は自治体持ちとなるので、自治体の公費負担が重くなる。

 生活保護になると、国が4分の3の補助金を出してくれるんです。残りの4分の1は東京みたいな不交付団体以外はほぼ完全に交付される。ということは全額持ってくれるわけですね。だから、国保に頼るより、早く生活保護にいってくれ、というインセンティブが(国保側には)働くことになります。

 ところが、なかなか生活保護というのは申請が通りにくい。

―― いわゆる「水際作戦」で、窓口で門前払いにされますからね。

鈴木 そうそう。そうしているうちに、どんどん重篤な病気になってしまう。たとえば、自覚症状のない糖尿病だったり、高血圧の高齢者だったり。放置して悪化してしまえば、個人としても不幸なのはもちろん、社会としてもものすごく医療費がかかり、それは他の人の保険料を引き上げることになる。未納問題は数字的にも深刻ですが、医療コストといった点でも大きな問題があると思います。

―― 長引く不況で非正規雇用が増えるなか、国民健康保険の加入者は増える一方ですよね。となると、いまご説明いただいたような状況は拡大するばかりです。国民皆保険は底が抜けつつあるのでしょうか?

鈴木 年金はもう完全にバケツの底が開いちゃっているんですが、医療ですらいまそうした状況になりつつある。このことは深刻に受け止めなくてはなりません。
刑務所が社会福祉の最後の砦!?

―― 慢性化したり重篤化する前に医療が介入した方が、結果としては医療コストの削減になるわけですよね。そういう志向は、行政にはないのですか。

鈴木 ないんです。完全に縦割り行政で、自分のシマ以外は関係ないので、国保にとっては「生活保護にいってくれ」となる。年金だってそう。国民年金の未納が増えたら、生活保護が増える。だけど、うちの部局には関係ないというわけですから。まったく発想は同じなんですよ。

―― どれにしても厚生労働省なのに。そして、ホームレスが生活保護を申請すると、隣の行政区への片道切符を渡されたりする。うちのテリトリーからいなくなってくれればいいと。

鈴木 自治体はもちろん、厚生労働省も局あって省なしといわれるセクショナリズムの世界なのです。みんな「自分の庭は青く刈っておく。そこから外に出たら、もう奈落の底でも関係ない」発想なんですね。誰もトータルに考える人がいない。本当はそれこそが政治家がやるべきなんだけど、その点、民主党はまったくだめですね。

―― 犯罪学者の浜井浩一さんが、「刑務所が福祉の最後の砦となっている」と言っていますが、そうしたことなんですね。刑務所だけが来るものを拒めない。軽微な犯罪で高齢者や知的障害者がたくさん収容されています。

鈴木 それがいまの日本の福祉の姿です。

―― 他方で、医療というと医師不足も最近話題です。

鈴木 正確には「医師の偏在」です。開業医はたくさんいます。問題は病院の勤務医がすごく不足していること。しかも地方、あるいは、外科や産婦人科、小児科が少ない。

 理由は簡単で、開業医が得、病院が損だからですよ。病院の勤務医がどんどん辞めて、開業医になってしまう。もうそれに尽きます。問題は不足というより、配分の問題なんです。なぜそのような問題が起きるのかというと、これも簡単な話で、開業医が得だから。病院が損だからです。ではどうして、病院ってそんなに損なのか。

 まず、診療報酬がついこの間の2008年の改定まで、小泉政権の2002年からずっと下げられてきたんですね。そうしたなか、病院が一番下げられた。日本医師会は開業医の団体で、ここが大騒ぎをするので開業医の報酬はいじれない。でも下げなければいけないということで、病院はどんどん下げられたわけですね。そうすると病院の収入が減りますので、医師の給料に回せる分が少なくなる。

鈴木 それから、開業医は診療時間が決まっていますよね。ところが病院は基本的に夜間も受けつけているし、救急病院に指定されると否応なく診療しなくてはいけない。だから終わりがないわけですよ。しかも、最近は子どもの医療費はタダとか、むちゃなことをやっていますので、夜になってもどんどん親が連れて来ます。「コンビニ受診」と言われますが、その受け皿になっているのは全部、病院です。

 そうなると、給料は安いわ、夜昼ないシフトで働かされるわで、こんなことやっていられるかと、みんな思うわけですね。なおかつ、重篤な患者は開業医が病院に回す。当然、死亡する確率も高くなる。そうなると、訴訟リスクにさらされることになる。

 そんなにリスクも背負って、過剰な労働をしていれば、普通の業界だったら給料が高くないと割が合わないんだけれども、でも開業医の方が高いんですよね。このような三重苦のような状況では、誰が病院なんか勤めるか、ということになりますよ。

―― 医師の供給バランスが崩れる理由には、需要過多という側面もあると。

鈴木 医療の場合、公費が4割入っています。そのため、日本の医療は利用者からすると異常に安い。老人が1割負担、なんていう国はないですよ!
医療費は「パケット放題」状態

―― ほかの国はどんな感じなんですか?

鈴木 たとえば、アメリカにはメディケアという高齢者を対象とした公的医療保険制度がありますが、自己負担率は約3割です。オバマの医療保険改革が手本にしたスイスはもっと高く、3割強という割合です。老人だって容赦ないんですよ。

 だいたい老人は一般と同じですよ。だって病気になるリスクはむしろ高いわけですから。しかも子供はタダですからね。こんなばかなことをやっている国はないと思いますよ。

 ということで、医療費が非常に安い。安いがゆえにどんどん来ちゃう。しかも、日本の場合には高額療養費制度というのがあって、1カ月に払う上限の金額が決まっている。いうなれば、「パケット通信し放題」みたいな状況です。モラルハザードを起こし放題なんです。

―― では、どう解決していけばよいのでしょうか?

鈴木 公費を減らして、負担すべきものは負担してもらう。シンプルにそれしかありません。

 こういうと、すぐ「弱者が苦しむ」からといって反対の声が上がるけれども、弱者に対する所得再分配はまた別途に考えるべきです。そうすると、自動的に健全な方向にいくと思うんですよ。

―― 端的に言えば、値段を正常化せよと?

鈴木 そうです。そうすれば、納得のいかない医療に対しては「こんなに保険料を払っていて、自己負担も高いのに、何だここの医療は」という反応が出てきます。

 いまは安いがゆえに需要過多となる一方で、高齢の開業医が新しい技術革新を身につけずにやっていても、誰も文句を言わない。たとえば、アレルギーも知らずに鼻水だけパイプで吸う耳鼻科の医者がいるんですよ。ちゃんとした病院に行くと、これはアレルギー性鼻炎だからといってぱっと治るのですが。

―― いまって要するに、マッサージ店のバイトのお姉さんも、非常に技術の高いマッサージ師も、同じ金額でやらされている、みたいな状況ですか?

鈴木 まさにそう。だから神の手をもった「ドクターK」みたいな医者も、よぼよぼで手が震えているおじいさん医師も、みんな同じ値段。これは大問題です。上か下かどちらに合わせるかというと、下に合わせるしかない。成績のいい子と悪い子、どちらに合わせるかって、悪い子に合わせるしかないでしょう。それとまったく同じですね。

―― 典型的な「悪平等」なんですね。それでは技術を上げていこうというインセンティブは生まれない。

鈴木 そうなんですよ。それがやっぱり経済の基本的な仕組みですよね、努力する者が勝つというね。そこを否定しているんですから、成長産業に欠かせない技術革新が生まれるわけがない。競争相手もいなければ、努力することの価値もないのだから、成長する産業のはずがないでしょう、ということです。

―― 公費の抑制や規制緩和によって、医療に市場原理を持ち込もうとしたのは小泉政権だったけれども、民主党の第三の道は小泉政治の否定ですからね。

鈴木 そうそう。だから、民主党はやたらと公費をつけようとするんですね。

 小泉首相のときは社会保障費を減らしたのではなく、抑制したんですね。社会保障費の伸びの角度を少し変えたくらいの話だった。それが民主党になって、その反動として社会保障費の大盤振る舞いをしています。

 しかもここには、いまや二重の問題があります。税金を上げて公費をつけるという「強い社会保障」は、経済原理としてわたしは間違いだと思っているんですが、でも一応は税金を上げるので、これ以上は財政の傷を深めることはなかった。ところが、先の参院選で消費税のアップが不可能になった。でも、公費はつけたいということで、もう財政的にもつじつまが全然合わないわけです。こうなると、公費の安易な投入は財政的に不可能です。
「我慢してくれ」とはっきり言えるか

―― そうすると、公費を抑えるためにはどうするか、ということを考えねばならなくなりますね。

鈴木 ええ、そこから、ふたたび規制緩和をして新規参入を促すとか、そういう発想をとらざるをえなくなっていくでしょうね。

 そして、公費が減るとレント(独占・寡占による超過利潤)が発生しなくなりますから、開業医の業界団体である日本医師会などが政治力を使う機会もなくなっていくし、業界が官僚の天下りも引き受けられない、となって、状況が好転していく可能性があります。

 そのためにも、わたしは公費を財政のロジックを使って事業仕分けすべきだと思います。

―― ただ、社会保障費の抑制や保険料負担の増大というのは、メディアを先頭に大々的な批判が起こりますね。

鈴木 一律で減らしますという話にすると、それがたとえ1割であっても、国民全体が一枚岩となって反対する可能性が高いですね。けれど、医療の現状をみれば、たくさんの低所得者の方たちが無保険状態になって困っています。他方で大きな資産をもっていたり、多くの所得がある高齢者でも1割しか負担していません。

 私は「低所得者に対する再分配をしっかりやりますから、高所得者や中所得者は少し我慢してください」とはっきりいうべきだと思います。それこそが、政権交代で民主党に国民が期待した姿勢ではないでしょうか。

(聞き手:芹沢 一也 SYNODOS主宰)

このコラムは「日経ビジネス アソシエ」の連載記事「インテリブリッジ」と連動しております。記事中では、話者の思考をより深く読み解くための書籍リストと解説も掲載しています。

このコラムについて
脱・幼稚者で行こう!

 「誰かのせいにする。そこで考えを止める」−−我々はつい、こうした「幼稚」な道筋にはまってしまう。そこから抜けて冷静な議論をするには、あらかじめ知っておきたい、考えておきたい材料や課題がある。しかし、それらは研究機関や専門家の中では常識でも、メディアに分かりやすい形で出てくることがなかなかない。
 この企画は、若手研究者をつなぎ、「知のプラットフォーム」を謳うグループ、SYNODOS(リンクはこちら)を主催する芹沢一也氏に、アカデミックの先端で活躍する若手研究者と我々を接続してもらおうというものだ。現代の中で求められる「知」を、くだけた対話によって手に入れ、「幼稚」から脱出する手がかりをつかもう。

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著者プロフィール

芹沢 一也(せりざわ・かずや)

1968年東京生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。SYNODOS代表。専門は近代日本思想史、現代社会論。犯罪や狂気をめぐる歴史と現代社会との関わりを思想史的、社会学的に読み解いている。著書に『 から解放される権力』(新曜社)。『狂気と犯罪』『ホラーハウス社会』(ともに講談社+α新書)、『暴走するセキュリティ』(洋泉社新書)、浜井浩一との共著に『犯罪不安社会』(光文社新書)、編著に『時代がつくる「狂気」』(朝日選書)。高桑和己との共編著に『フーコーの後で』(慶應義塾大学出版会)。監修に『革命待望!』(ポプラ社)。


20. 2010年12月14日 11:46:55: MgGCBYbBUM
アメリカの奴隷国である日本で楽をしたいのであれば小泉、竹中の真似をすることだ

21. 2010年12月15日 07:12:17: iyuEKjmQ3Q
価格戦争は暴走する [単行本]
エレン・ラペル・シェル (著), 楡井 浩一 (翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
100円ショップ、格安ブランド、量販店にファストフード―価格破壊は、時に企業努力の賜物として美談にすらなる。だが、それは本当にお買い得なのか。なぜそれほどの値下げが可能なのか。われわれはなぜ「激安」に踊らされてしまうのか。本書は、安売りチェーン発祥の地アメリカで、価格戦争がいかなる進化を遂げてきたかをたどる。その魔の手はいまや日本のみならず世界に広がり、経済・社会・文化を蝕みつつある。際限のない値下げ戦争がもたらすのは、格差の増大、賃金デフレ、経済破綻…いずれもすでに起こっている現実だ。緻密な取材から「価格の真実」とその驚くべき罠を暴き出す。全米を震撼させた話題のノンフィクション。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
シェル,エレン・ラペル
アメリカの調査ジャーナリスト。Atlantic Monthly誌を中心に、New York Times、Washington Post等、多数のメディアに執筆。ボストン大学でジャーナリズム講座教授も務める

楡井 浩一
1951年生まれ。英米ノンフィクション翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報
単行本: 349ページ
出版社: 筑摩書房 (2010/12/11)
ISBN-10: 4480864075
ISBN-13: 978-4480864079
発売日: 2010/12/11
商品の寸法: 18.6 x 13 x 2.4 cm

http://www.amazon.co.jp/%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AF%E6%9A%B4%E8%B5%B0%E3%81%99%E3%82%8B-%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB/dp/4480864075/ref=sr_1_8?ie=UTF8&qid=1292364623&sr=8-8


22. 2010年12月16日 12:43:15: FLqTKfM4UQ
非正規雇用、失業者、多重債務者、無年金などは節約しないと乞食になるからね。
貯金ゼロでは失業したら餓死しかねない。
種まき用の種を蓄えておかないと種まきはできない。
イソップ童話のアリとキリギリスの例えだ。
しかし節約しているつもりで、節約できないものもある。
いわゆる中毒性があるものだ。
酒、タバコ、ギャンブル、風俗は典型だが、携帯電話やネットもこれに入る。
携帯電話はやれスマートフォンだなんだと楽しいサービスを利用している
とけっこうな請求をされる。
ネットでホリエモンのライブドア株が儲かるという情報を見て、サラ金で
金を借りてライブドア株を購入したらパーになり債務だけが残った人もいる。
携帯ネットは歓楽街やスリと同じでうかつだと有り金を巻き上げられる。
携帯電話を持たないと仕事や生活が成り立たないケースを除くと、
安い中古テレフォンカードを購入して公衆電話で電話するのが節約法かな?

23. 2010年12月16日 12:59:22: FLqTKfM4UQ
ただし節約しすぎて栄養失調で脚気や結核になって死んだでは本末転倒
なので、安いビタミン剤やビタミンを含む食事をして栄養失調にはならない
ように気を付けるべきだと思う。
また貧乏人は歯の治療に金をかけることができず、貧乏な歯抜けも最近は増加の傾向にあるので、貧乏人は歯磨きを毎日よくして虫歯や歯槽膿漏を予防するべきだ。
貧乏人がパチンコや競馬に使う金があれば歯磨き粉と歯ブラシは購入できる。

24. 2010年12月16日 13:17:50: FLqTKfM4UQ
あと貧乏人はやれ経済発展だのバブルだのといった言葉に踊ったらいけない。
バブルに踊った人の多くは自殺、夜逃げ、乞食が末路である。
不況は台風と同じく到来するものであり、「永遠のバブル」などありえない
からである。
一時期はあれだけ儲かっていた会社やお店があっさり倒産するのが世の中だ。
詐欺師の経済学者やIT経営者が「IT景気は本物だ!IT株を買えば誰もが
億万長者になれる」とマスコミやネットで叫んでも、それは利益目的の詐欺
なのであって真実ではない。
政治家が「私が総理になったらすぐに好景気になります」と言っても、
それは左右の政治家を問わずガマの油売りである。
お布施をすれば金持ちになれますと叫ぶ新興宗教もあるが、そういうのに
限って信者は貧乏で破産が相次いでおり詐欺である。
年金を払っていても社会保険庁の公務員が横領していたらアウトだし、
銀行に預金していても銀行が倒産したらアウトだ。
貧乏人はこうした不測の事態を考えて生きないと路傍の白骨死体になりかねない。


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