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禁断の果実
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投稿者 あやみ 日時 2012 年 2 月 22 日 17:27:50: oZZpvrAh64sJM
 

つれづればな http://turezurebana2009.blog62.fc2.com/blog-entry-75.htmlより転載

- 2012/02/22(Wed) -

神はアダムを、そしてその妻としてイヴを創造した。二人を楽園にすまわせ木という木のにたわわに実るあらゆる果実を食べることを許したが、その中の「智恵の樹」と「生命の樹」の果実だけは禁じられていた。
しかし二人はその果実を蛇にそそのかされて知恵の樹の実を口にしてしまった。すると裸であったことに「気付き」、体をイチジクの葉で覆って隠した。神は怒り、豊かな楽園の実りは枯れて僅かなものとなった。この後二人は飼い、耕し、寒さに耐えながら働き生きることを余儀なくされた。神はこの二人の子孫が「生命の樹」に近寄ることのないよう、炎の剣−雷を置き守らせた。

旧約聖書によれば二人をそそのかしたのは蛇であるが、イスラームの聖典クルアーンでは異なる。
神は自らの代理人として人間を創造することを天使たちに告げた。天使たちは驚き、人間などを創ってはこの世は争いと血にまみれてしまうと嘆いたが、神は土からアーデム(アダムのアラビア語読み)を創り上げた。そして天使たちに命じアダムに万物の名前と意味を教えさせた。さらにアーデムに平伏すよう命ずるとイブリースを除くすべての天使はそれに従った。
イブリースは火、それも煙の無い炭火のような火から創造された存在であった。天使ではなかったものの神へ対する敬虔さから天使の列に加えられていた。「我々が平伏す相手とは、この泥から創られたものなのか? 火から生まれた我の平伏す相手はこれなのか?」イブリースはさらに続ける。「神よ、審判の日まで我に命を与えるならば、このアーデムとその子孫たちの僅かなるものを除いてすべてを悪の道に誘い込み操るであろう。」
神は「行け」と叫ぶ。「これ(イブリース)に従うものすべてに地獄という見返りが与えられよう。」ここでイブリースは天使から悪魔へと堕ちる。
イブリースは自ら吐いた言葉の通り楽園に暮らす二人を誘い禁断の果実を食べさせた。二人は後悔し許しを請うが、その罪は許されたものの楽園から地に追われてしまう。


学問の世界から教典を「解釈」しようとすれば―― 一神教の世界では神とは絶対なるものでありその言葉に背くものは罰を免れない。神が禁じたものを口にすることこそ禁忌であり、禁断の果実とは一つの象徴である―― とこうなる。

逆に神を畏れる者は創世記も失楽園も大洪水もすべて史実ととらえていえる。そのため、禁断の果実が何であったのか、何を象徴しそれを以って何を教えんとしたのかは大きな問題であった。
この果実が何であったかはいずれの教典にも書かれていない。リンゴやイチジクだといわれるのは西洋の画家たちが失楽園物語を描く際にこれらを用いたせいもあるが、地域の伝承や後世の研究からいろいろな果物があげられている。いずれも薬効、或いは毒性をもつ植物である。

近頃の考察では、この禁断の果実は「火」であったという指摘がある。――人間は火を使うことを知りそこから多くの「文明」が生まれた。それにより暮らしが豊かになる反面、争いが絶えず人が人の命を奪う世界をもたらした――

意味深い考察である。さらにギリシア神話をみれば人と火の出会いはプロメテウスによるものとされている。


プロメテウスは天空たるウラノスと大地たるガイアの間にうまれた子供たち、タイタン神族の子孫である。ゼウスも同じ一族から出ているが父親クロノスに殺されそうになったところを逃れて逆に戦いを挑み、これに勝ってタイタン神族を滅ぼした。プロメテウスはタイタン神族の不利を見抜いてゼウス側に付いていたことから生き永らえながらも一族の復習をその胸に潜めていた。ゼウスは人間から火を奪い(氷河期か?)自らの武器である雷を作らせるため火と鍛冶の神であるヘパイストスに預けるが、プロメテウスはヘパイストスの炉から火種を盗み出し人間に与えてしまった。

ゼウスは怒り、プロメテウスを山の頂上に繋ぎハゲタカに肝臓を食らわせた。尚も静まらぬゼウスの怒りは人間たちにも向けられ、地に禍を与えんと神々に命じて「女」を創らせた。男を苦悩させる美しい姿、ずる賢く卑屈な心をもつ「女」にパンドラと名づけ、決して開けてはならない箱とともに地上に遣わした。人類にとって「女」ほど大きな禍はないという(お互いさまである)。開けてはならないと知りつつ、箱はあけられた。出てきたものはこの世のありとあらゆる災禍、そして思わせぶりな希望。


旧約やクルアーンの預言と世界に残る神話を混同してはいけない。しかし神話や教典に綴られる比喩がともに史実と重なり合うのは認めねばならない。


イザナギとイザナミの夫婦は日本の島々、そしてたくさんの神たちの親である。まず国産みを終え、そして海や山、草などの万物(の神々)を産むが、火の神カグツチを産む段でイザナミは大火傷を負う。ここでも「火」だ。
火傷に苦しむイザナミからまたも神々が生まれ続ける。養蚕の神、水の神、埴(粘土)の神、そして鍛冶と鉱山の神カナヤマヒコ・カナヤマヒメが生まれた。
イザナミがこと切れるとイザナギは嘆き悲しみその涙からまた神が生まれ、怒りにまかせてカグツチを斬り殺すとその返り血からも神々がうまれた。

亡くした妻を忘れられずにイザナギはイザナミを求めて黄泉国(ヨモツクニ)へとまかる。しかしすでに黄泉の国の食べ物(黄泉戸喫‐ヨモツヘグイ)を口にしているから戻れぬというイザナミは、どうしても戻るようにきかない夫にしばらく待つよう、ただし決して覗かぬようにと告げた。
いくら待っても音沙汰なく、とうとうしびれを切らせたイザナギは櫛の歯を折って火を灯しあたりの様子を伺った。すると見たもの、それは蛆が湧き、体のいたるところに雷がささった(雷神たちが纏わりつく)妻の恐ろしい姿だった。


イザナギの黄泉巡りとオルフェウスの冥界下りは互いに酷似する神話として名高い。
竪琴の名手オルフェウスは亡き妻を求めて冥府に入る。冥王ハデス、そして妃のペルセフォネに妻を返してもらえるよう悲しみの程を竪琴の調にのせて懇願した。胸を打たれた妃は王を説き伏せとうとう許されるが、冥府を出るまで決して妻の姿を振り向いてはいけないと言い渡される。そして見てしまう。


「見るな」「食べるな」は引導。


ペルセフォネは収穫の女神デメテルの娘である。ハデスはペルセフォネに懸想し無理やりに冥府へとさらってきたのだ。娘を奪われたデメテルは怒り狂い地上の実りを絶やしてしまう。ハデスはゼウスに諭されやむなくペルセフォネを返すことを受け入れるが、そのとき冥府のザクロの実を与えられたペルセフォネはその幾粒かを口にしてしまうため地上に戻れなくなる。デメテルの抗議の末に、ペルセフォネは冥府で食べたザクロの実の数を月にかぞえ一年のうちその分をハデスの妻として傍に留まり、その間は地上の実りが枯れることとなった。これは季節の始まりと捉えられ暦の起源とされている。


イザナギが黄泉国から葦原中国にもどり最初に行ったのは禊であった。
水に入り、左目を清めるとその水からアマテラスが、右目を清めるとツクヨミが、そして鼻を清めるとスサノオが生まれた。
アマテラス(天照大神)とツクヨミ(月読命)はそれぞれ太陽と月をつかさどり、それは太陽暦と太陰暦をも象徴している。

スサノオは乱暴狼藉の咎めを受け高天原を追い出され出雲、つまり葦原中国にゆき、そこでやヤマタノオロチ(八岐大蛇)と渡り合いこれを退治する。出雲が豊かな砂鉄の産地であり、ヤマタノオロチがその鉄を求めてこの地に移り住み先住民を脅かした精鉄集団を象徴したものであることを以前の記事で述べたが、オロチすなわち「蛇」が出てくると繋がりが増す。退治とは必ずしも「排する」意味にはならず、この場合は「征する」ととるほうが正しい。スサノオが蛇を征することで鉄を手に入れたように日本において蛇と製鉄の関わりを探せば枚挙に厭いがない。スサノオの子、オオクニヌシの和魂(ニギミタマ)は蛇神であり雷神であり水神でもあるオオモノヌシである。


オルフェウスの妻は蛇に噛まれて冥府に下った。
イヴそしてアダムをたばかったのも蛇であった。
蛇が冬の眠りから醒めるのは春雷の頃、十二節季でいう「啓蟄」、間もなくである。


世界で最も古い製鉄は古代ヒッタイトで行われたとされている。鉄鉱石と炭を一緒に炉の中で加熱する製法で、後の時代に日本で始まる「たたら製鉄」も同様に行われる。脆さの原因となる酸素と結合しやすい鉄は裸火、つまり炎を嫌う。炭火は炎を出さず、しかも炭素と鉄が先に結びつくことで酸素の侵入を阻むことが出来ることをヒッタイト人たちは見出していたのである。
彼らは高度な製鉄技術を外に漏らさなかった。製鉄が世界に広がるのはヒッタイト王国の滅亡を待つことになる。

彼らの製鉄路を覗けば鉄と炭が赤黒く光を放っていたであろう、あたかもザクロの実のように。

ペルセフォネが食べてしまった冥府の果実、ザクロ。トルコ語やペルシャ語でザクロをナールというが、これはアラビア語の「火」を語源としている。火と炎は違う。炎ではなく灼熱した鉄のような火、これこそ悪魔イブリースの元素である。ザクロの粒の色に地獄の業火への恐れを重ねたのか。


禁断の果実が比喩するものを「火」とする指摘は重要である。が、決してそこにとどまるものではないはずである。火は製鉄に繋がる。製鉄は農具と武器をもたらす。鉄製農具によって増えた収穫は備蓄され富を産み、国や王が生まれる。鉄製武器は動物を狩るだけではなく、人間にも向けられるようになった。農と武の二つに分かれた製鉄の道は国同士の攻防という形で再び一つになった。剣に対し盾が作られ、鎧で実を固め、馬に蹄鉄を打ち、そして、火薬がうまれる。鉄が火薬を伴い火器となる。

人類と火の出会いを学問の世界では落雷によるものと説いており学会にプロメテウスの出る幕はないのだが、雷を作るヘパイストスの鍛冶床から火種を盗ったのであればそれは落雷を意味しているのだろう。大地と天空の陰陽が引き合い雷が起こる。雨を呼ぶ。闇空を駆けるイカヅチの姿に人々は蛇をみた。


雷と書いてカミナリともイカヅチとも読む。黄泉のイザナミにまとわりついていたのはヤクサノイカヅチ(八の雷)であり、「怒る」の語幹と「チ‐霊」を接続詞「ツ」で繋いだイカヅチは「雷神」を示す。雷神を目の当たりにしたイザナミは恐れをなして逃げ、黄泉国に通じる道「黄泉平坂‐ヨモノヒラサカ」の口を大岩で塞ぎ、それまでなだらかに繋がっていたこの世とあの世に結界が結ばれた。


科学は雷の力の正体を「電気」とし、人はそれを神に頼ることなく自らの手で作る知恵を得た。プロメテウスはまたしても禁をおかしたのか。

電気を作り続けるには絶え間なく燃える火、そのための資源が要るのであった。地から資源を掘り出し足りなくなると力ずくで奪うようになる。その争いは血を流し国を焼き、より力強い武器がつくられた。天使の嘆きはさらに深く、イブリースの笑いのみが聴こえる。

火から生まれたものが人々の暮らしを大きく変えた。日の出から日の入りまで働きづめ、餓えや寒さに苦しみながら短い一生を終えていた人間が命をより長く楽しむようになったという。かつて人々が憧れた「不老不死」が形になりかけているかのようである。禁断の果実が行き着くのはここかもしれない。

長寿であった垂仁天皇はさらなる命を望み、タヂマモリ(但馬守、多遅麻毛理、田道間守)を常世(黄泉国の意であるがここでは大陸?)に遣わして不老不死の木の実を探させた。タヂマモリが十年かけて探し当てたトキジクノカグノコノミ‐非時香果を持ち帰った時には遅かりし、天皇の崩御の後であった。タヂマモリは悲しみ息絶えてしまう。この実はタチバナ‐橘、火の色を持つ蜜柑の祖である。

カグノコノミの「カグ」に「香」の文字が充てられているため「香ぐ」と錯覚しやすい。「カグ」はかぐや姫の音と同じ「カガヤク」から来る。竹取の翁はかぐや姫の残した不老不死の薬を使わず火に焼いた。そこは「天の香具山」であった。なにより、イザナミの産んだ火の神カグツチは「耀ぐ」つ「霊」であった。ふいご祀りで鍛冶の神々に蜜柑を奉納するのは荒ぶる火を畏れてのことである。


悪魔はなおも誘う。教典も、神話も、我々に警告を繰り返す。が、知恵に塞がれた我々の目と耳はそれを認めない。

そして禁断の果実をほおばる。

 

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コメント
 
01. あやみ 2012年2月22日 18:42:07 : oZZpvrAh64sJM : HYZ7qp3e46
訂正

十二節季→二十四節季

はづかしー


02. 2012年2月22日 20:01:23 : REY0vphtHI
たしかに

はずかしー な

いっそ脳みそ全部訂正しろよ


03. okonomono 2012年2月22日 23:06:54 : ufgCmUGS6CG6M : vkFNWdwWeo
>人類と火の出会い

まさに雷のような響きが私のなかでヴァルター・ベンヤミンと共鳴した。
「暴力批判論」もこの記事もおおざっぱにしか理解できないのがとても

かなしー


04. 蒲田の富士山 2012年2月23日 22:11:56 : OoIP2Z8mrhxx6 : xqotRPtXwQ
REYOなんたらって、何様かな。
面倒くさいから、検索しないけど。
あやみ様は、お友達なのだ。
失礼なことを言うなよな。
でも、旧約聖書とかイスラムのことになると、俺もよくわからない。
ごめんね。

05. あやみ 2012年2月24日 00:37:03 : oZZpvrAh64sJM : 40tTPiR3kk
okonomono さま  蒲田の富士山さま

コメント、お気遣い ありがとうございました。

旧約も、日本神話も、いろいろな意味で曲げられてますからややこしいです。
私の筆ではここが限度、すいません。

 


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