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懲罰的授業料を苦に、「天才」は自殺を選んだ 韓国式の人材育成
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投稿者 tea 日時 2011 年 1 月 27 日 01:48:21: 1W1IXELjjF6i2
 

厳し過ぎる競争と懲罰で、有為の人材を消耗している様は
昔の日本をさらに極端化したかのようだ


日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>日本と韓国の交差点
懲罰的授業料を苦に、「天才」は自殺を選んだ 韓国式の人材育成に警告か!?

* 2011年1月26日 水曜日
* 趙 章恩

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 韓国で最も優秀な理工系の人材が集まる国立大学KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)の1年生が「成績が良くない」ことを悲観して自殺した。「これは個人の問題ではない。大学や韓国社会が1人の天才を殺した」として社会問題になっている。

 KAISTと言えば、普通の韓国人にとって天才の中の天才が集まる大学というイメージがある。KAISTを舞台に大学生活の苦悩と青春を描いた人気ドラマもあったほど、手の届かないあこがれの大学である。そういえば、KAISTを舞台にしたドラマでも主人公の友達が自殺するという話があった。。。

 KAISTでは毎年のように成績に悩む学生が自殺している。韓国では成績と自殺はきっても切れない関係なのかもしれない。1989年には「幸せは成績順ではないじゃない」という映画が大ヒットしたほどだ。

 ところが今回の自殺は何かが違う。KAISTの学生たちが「これ以上自殺を増やさないでほしい」と立ち上がった。この自殺をきっかけに学生会を中心に「何が問題なのか」というタイトルで学校側と話し合いを行った。成績が良くなくて、自殺を選択するしかないほどに追い詰められた背景には、韓国式人材養成の限界、「科学技術人材を育てる」というKAIST自体の問題点、果てなく続く競争社会の問題点があるからだ。

実業高校出身初のKAIST入学!

 自殺した1年生の彼は実業高校(工業高校)出身であったが、「ロボット天才」として特別にKAISTに入学できた。小学生のころからロボットを制作する能力に優れていて、高校生になるとロボット世界大会で3位、韓国ロボット大会では大賞を獲得したからだ。KAISTには通常、これまた天才が集まると言われている科学高校の中でも成績上位の学生が入学する。一般高校から入学した学生だと、化学、物理、数学など基礎科目の講義についていけないほどレベルが高いと言われている。

 つい1年前、自殺した彼は「実業高校出身初のKAIST入学!」「ロボット天才がKAIST入学!」とテレビや新聞が大々的に報道していた。「韓国もついに高校の成績ではなく能力で人を評価するようになった」、「時代が変わった」と大騒ぎしていた。

年収の3割に達しかねない懲罰的授業料

 しかしKAISTで、彼が持つロボット制作の能力が生かされることはなかった。KAISTは世界的人材を育てることを目標にしており、ほとんどの講義を英語で行う。彼は英語で行われる数学の授業についていくのが大変で、単位を落とした。彼はよく周りの友達に「(特殊な入学ケースだから)がんばらないといけない」、「私が失敗したら実業高校出身者がKAISTに入学できなくなってしまう」、「英語の講義についていけない」、「勉強が大変」と漏らしていたという。

 KAISTは成績が落ちるとその分高い授業料を払わないといけない。「授業料差等徴収制度」(懲罰的授業料)と呼ばれる制度である。1学期の授業料は約 200万ウォンで、他の大学の3分の1程度と安い。しかし、全科目の平均点が3.0以上(4.3満点で)取れなかった場合、0.01点につき6万3000 ウォン(2010年基準)を追加で払わないといけない。2.0点以下の場合は最大600万ウォンを払わないといけない規定になっている。

 自殺した彼の場合は成績が2.0点以下だったため、基本授業料約200万ウォンに600万ウォンが追加された。これは1学期の授業料なので、この後も成績が伸びない場合、年間1600万ウォン近い授業料を払うことになる。これは韓国の大学の中でもっとも高い授業料となる。

 韓国統計庁のデータを見ると、都市勤労者の2010年の月平均所得は4人家族で422万9126ウォンである。1人の子供の年間授業料が1600万ウォンとは、払いきれないほど大きな負担になる。

 彼が自殺したのも、授業料請求の通知が届いた直後だったという。マスコミのスポットライトを浴びて、周囲の期待を背負ってKAISTにやってきただけに、懲罰的授業料がどれだけストレスになっていただろうか。

 学校側は、KAIST学生の平均成績は3.0以上、懲罰的授業料の対象になる学生はそれほど多くないという。だが、学生たちの反応は違っていた。Twitterやネットの掲示板には、こんなコメントが並ぶ。

「成績評価の方式そのものに問題がある。公正な評価になってない」
「興味がある講義はいくつもあるけど成績が落ちるのが怖いので、良い成績がもらえそうな科目しか取らなくなった」
「成績重視だから友達付き合いもなくなった。期待していた大学生活とは全然違う」
「私の周りには奨学金をもらう人より懲罰的授業料を払う人の方が多いのはどうして?」
「懲罰的授業料が高すぎて払えず学校を辞めた学生も多い」
「特殊な分野に才能があり潜在能力を見て入学を許可したからには、学校側はそれに合ったケアをしてあげるべきだった」
 不満が爆発している。

 韓国政府はクリエイティブな人材を育てる、科学技術人材を育てる、としているが、本当にそのような意思があるのだろうか? KAISTは科学技術人材を育てるために設立された国立大学である。ところが、一人ひとりが持っている才能を伸ばす教育をするのではなく、英語、数学の点数によって順位を決める。成績が落ちると、とうてい払えないほどの授業料を請求する。これでは、学生にもっと勉強してもらうという建前の下、大学がお金儲けをしているとしか思えない。

10〜30代の死亡原因の1位は自殺、これでも自己責任?

 両親や学校関係者らの話しによると、自殺した彼は「競争の中で生き残りたい」、「成功したい」、「後輩に夢を与えたい」という意欲がとても強かったという。

 まだ18歳、19歳という若い子たちが、「成績が落ちた=競争に負けた、人生に失敗した」という心理的負担、「大学で失敗したらもう自分の居場所はない」という恐怖から自殺を選んでいる。韓国統計庁が毎年発表する死亡原因を見ると、2009年の場合、10〜30代の死亡原因の1位は自殺であった。 40〜50代でも死亡原因の2位である。それでも自殺は個人の問題と言えるだろうか。

韓国の偉人、蒋英実は現代には生まれ得ない

 韓国の偉人の一人に、朝鮮中期の科学者であり発明家として大活躍した蒋英実(チャン・ヨンシル)がいる。1441年に世界初とされる測雨器を作って降雨量の観測を始めた。また、天文観測器具である簡儀、日時計、携帯型日時計、自動水時計などを作った人でもある。

 蒋英実は朝鮮時代に最も身分が低い官奴出身であった。ハングルを作った世宗大王は朝鮮の富国強兵のためには科学技術の人材が必要であるとして身分に関係なく人材を抜擢した。蒋英実は身分に関係なくその才能を評価され、王様の絶大な支援を得たことでより才能を花咲かせることができた。

 ヤンバン(貴族)出身で、科挙を合格して、といった枠を越えて人材を抜擢したわけだ。しかし今の韓国には、このような柔軟な人材抜擢、その後才能を発揮できるように支援する仕組みが残っていない気がする。

そこそこ生きていける仕組み、個性を生かせる仕組みを考えてはいかが

 韓国教育科学技術部は科学技術人材養成支援として色々な政策を発表している。ノーベル賞候補を育てるという「Global Ph.D. Fellowship」、「大統領科学奨学生」、「理工学部奨学金」など、授業料や生活費の心配なく研究できるようにするための支援策が相次いでいる。しかし、これらは、万遍なくすべての科目の成績が優秀で、英語もできないといけない(TOEFL iBT 80点以上)。一つの分野においてずば抜けている天才の才能を伸ばすものではない。枠を越えた人材養成とも程遠い。

 李明博大統領は2010年12月、教育技術科学部(韓国の文部省)の2011年業務報告で、「国家科学技術委員会が選択と集中を行い、果敢に予算を配分しないといけない。すべての分野に少しずつ分けていては、どの分野も世界に通用する競争力を持てない」、「昨日を基準に政策を立てては失敗する。10年後のことを考えないといけない」と指摘した。

 日本では物事を進める際に、いつも最悪の場合を想定して、あれもこれも拾い集めては悩む。いっぽう韓国企業は、最高の結果を追い求め、このための競争に追いついてこれない人は見捨てるのが特徴であると感じた。

 優秀な人が実力を発揮してさらに優秀になれるよう集中的に支援する、それをテコに平均点を上げる、それが国土も経済規模も小さい韓国の選択だといった発言であるが、現実はどうだろうか。

 韓国では、ビジネスパーソンとして「そこそこ」生きていくことができるのは、一部の恵まれた人たちである。みんなが「そこそこ」を選択できるようになれば、韓国もやっと先進国に仲間入りしたことになるのかもしれない。

 何か一つでも才能があれば、それをバネに生きていけるよう支援してくれる社会システム、そこそこ生きていけるシステムが定着してほしいと願う。

 日本も新成長戦略として科学技術立国、科学技術人材養成をうたう政策がたくさん発表している。韓国を参考に、競争ばかりではなく、天才が天才として生きていけるよう支援する仕組みも考えてみてはどうだろうか。
■変更履歴
記事掲載当初、1ページ目の終わりから4段落目「韓国等慶弔」としていました。正しくは「韓国統計庁」です。お詫びして訂正します。[2011/01/26 13:30]
このコラムについて
日本と韓国の交差点

 韓国人ジャーナリスト、研究者の趙章恩氏が、日本と韓国の文化・習慣の違い、日本人と韓国人の考え方・モノの見方の違い、を紹介する。同氏は東京大学に留学中。博士課程で「ITがビジネスや社会にどのような影響を及ぼすか」を研究している。
 趙氏は中学・高校時代を日本で過ごした後、韓国で大学を卒業。再び日本に留学して研究を続けている。2つの国の共通性と差異を熟知する。このコラムでは、2つの国に住む人々がより良い関係を築いていくためのヒントを提供する。
 中国に留学する韓国人学生の数が、日本に留学する学生の数を超えた。韓国の厳しい教育競争が背景にあることを、あなたはご存知だろうか?

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著者プロフィール

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

 研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。現在は東京大学社会情報学修士。ソウル在住。日本経済新聞「ネット時評」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。著書に「韓国インターネットの技を盗め」(アスキー)、「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)がある。
 「講演などで日韓を行き交う楽しい日々を送っています。日韓両国で生活した経験を生かし、日韓の社会事情を比較解説する講師として、また韓国のさまざまな情報を分りやすく伝えるジャーナリストとしてもっともっと活躍したいです」。
 「韓国はいつも活気に溢れ、競争が激しい社会。なので変化も速く、2〜3カ月もすると街の表情ががらっと変わってしまいます。こんな話をすると『なんだかきつそうな国〜』と思われがちですが、世話好きな人が多い。電車やバスでは席を譲り合い、かばんを持ってくれる人も多いのです。マンションに住んでいても、おいしいものが手に入れば『おすそ分けするのが当たり前』の人情の国です。みなさん、遊びに来てください!」。
 

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