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ブータン公務員だより お金は「幸せの国」の大切な一要素です「国民総幸福度」はGDPの対立概念にあらず
http://www.asyura2.com/10/kokusai5/msg/717.html
投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 16 日 09:41:27: 6WQSToHgoAVCQ
 

ブータンは野生のトラなど多くの希少生物の貴重な生息圏だから、その保護のために海外から寄付を募るのは間違いではないが、3割がインドなどからの援助というのは北朝鮮的だな
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110610/220679/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>ブータン公務員だよりお金は「幸せの国」の大切な一要素です「国民総幸福度」はGDPの対立概念にあらず
2011年6月16日 木曜日
御手洗 瑞子

 私は、ブータン政府のGross National Happiness Commission(通称:GNHC)というところに、首相フェローとして勤めています。Gross National Happiness(通称:GNH)とは、日本語に訳すと「国民総幸福度」のことです。

ブータンの民族衣装を来た筆者
 ブータンは、GDP(国内総生産)ではなくGNH(国民総幸福度)の最大化を目指すことを国のビジョンとして掲げています。GNHという概念は、1972年にブータンの先代国王が提唱し、以来、ブータンの国づくりの柱になっています。
 私が勤めるGNHCという組織は、政府内で重要政策の統括や省庁間の調整などを行っている組織です。政府が提案する政策が、GNHの理念にかなっている か、GNHにいい影響があるかなどをチェックし、実際に政策がGNHを引き上げるものになるよう担保している組織でもあります。
 GNHという言葉はとてもキャッチーですし、また、今、先進国の多くの人にとって、「ポスト資本主義」の提案のようにも聞こえ、関心を引きつけているように感じます。そして時に、ブータンは、まるで「みんなが幸せな、夢の国」のように語られることがあります。
貧困、所得格差、他国への経済依存
 ただ、実際にGNHを政策に反映する部署であるGNHCの中で働き、ブータンの現状を見ていると、ブータンという国が、決して「夢の国」ではないことに 気が付きます。当たり前かもしれませんが、ブータンも、「現実の国」です。現実の国として、当然のように、課題もあります。それは例えば、貧困であり、所 得格差であり、他国への経済依存であり・・・。

ブータンの子供たち
 そうした現実の国としての多くの課題を抱えながら、ブータン政府は「国民の幸せを一番に考えた政治をするんだ」というビジョンを掲げました。
 小国として多くの課題を抱え、また国際社会の一員としてある程度の近代化はしながら、どうにか「国民の幸せ」を一番に考える政治をしていこうと、日々、手探りで国づくりをしている。
 海外からは「いいなぁ、ブータンは。幸せの国で」と羨望の目で見られることが多い中、国内では、日々多くの困難に直面しながら、現在進行形で、「国民の 幸せ」を最大化するにはどういう政治をしたらよいか、知恵を絞りながら前に進んでいる――。ブータンは、いま、そのような状況にあるように見えます。
「いろいろあるけれど、結局、幸せだよね」
 また、政治だけではなく、人々の暮らしにも、同じことが言えるかと思います。
 ブータンの人々も、生身の人間です。もちろん、人生ですから嫌なこともたくさんあります。ブータン人のコミュニティの中で働き・暮らしていると、彼らは 聖人のような「幸せの民」なのではなく、等身大の人間であることを、感じます。小さなコミュニティ内で、嫉妬や妬みもありますし、怒りたくなることも、な にかを理不尽に思うこともある(ちなみに、ブータンの人は割とよくキレます)。
 でもブータンの人たちは、そういう負の感情を扱うのが、上手です。ネガティブなことが起こっても、ネガティブな感情を抱いても、自分の中でうまく対処し、「まぁ細かいことを挙げたらいろいろあるけれど、結局のところ、幸せだよね」と言えてしまう。
 楽に生きる術を知っているというか、「幸せ上手」であるなぁと感じます。
 この連載記事では、ブータンを「夢の国」として扱うわけでもなく、また「幸せの国と言っているけれど、こんなに課題があるではないか!」とボロを挙げるわけでもなく、
◆ 現実の国として多くの課題を抱えながら、「国民の幸せ」を最大化することを目指した政治をしようと奮闘している、ブータン政府の国づくりの知恵
 
◆ 現実の人生の中で、時にいやなことだってあるけれど、「結局は、幸せだよね」と言ってしまう、ブータンの人々の幸せ上手に生きる知恵
を等身大で、具体的に、ご紹介していけたらなと思います。
 ブータンはヒマラヤに位置する小国です。この国で働いていると言うと、こんなことをよく言われます。
「ブータンって、たしか、GNHという尺度を持っている、幸せの国だよね〜」「いまだに国民が、日本の着物に似ている民族衣装を着ているんでしょう?」「テレビで見たけれど、山に囲まれた段々畑に、転々とある伝統的建築の家屋・・・。昔の日本みたいな風景だよね!」
 どれも、その通りです。
ブータンのイメージのウソとホント
 ブータンは、国民の「幸せ」を一番に考えた政治をすることを目指してGNHという独自の尺度を使っています。
 職場や伝統行事の際などでの正装は、民族衣装とされており、男性は「ゴ」、女性は「キラ」と呼ばれる服を着ています。特に男性のゴは、何となく着物(というか、岡っ引きの格好)に似ていて、民族衣装の人であふれる町は、確かに昔の日本を思わせる光景です。
 さらに大臣や次官などの高位に就く人々は、腰から剣を下げることになっており、一部の行政機能は、「ゾン」と呼ばれるお城に入っています。私の上司など は、ゾンにあるオフィスで、民族衣装であるゴに身を包み、腰から剣を下げて、仕事をしています(そして、剣が重くて腰痛になる、と愚痴をこぼしていま す)。
 とても、21世紀とは思えない光景です。
 また、少し市街地から離れると、山がちな立地に段々畑や田んぼがあり、その合間を静かな小道が走ります。時折、転々とある素朴な家々は、近所の方々が集まって建てる手作りの伝統家屋。「わー、ラストサムライみたい!」というのが初めて見たときの感想でした。

ブータンの山並み
 ただ、少し誤解があるかもしれないな、と思う感想もあります。それは例えば、「ブータンは、社会経済発展や近代化をしないで、昔ながらの生活を守ろうとしているんだよね」「ブータンはGDPの向上に反対で、GNHという概念を作ったんだよね〜」といったものです。
 ブータンは、確かにほかの国では見られない昔ながらの面影を残してはいますが、だからといって、社会経済発展や、近代化を放棄しているわけではないのです。また、ブータンは、GDPを否定しているわけでも、ないのです。
社会経済発展は4つの柱の1本
 GNHには、それを支える4つの柱(4 pillars)と呼ばれるものがあります。それは、
1. 持続可能で公正な社会経済発展 (Sustainable and Equitable Socio- Economic Development)
2. 自然環境の保全 (Conservation of the Environment)
3. 文化の維持・促進 (Preservation and Promotion of Culture)
4. よいガバナンス (Good Governance)
 そう、実は、社会経済発展は、GNHの、4つの柱を構成する大切な1本です。GNHを掲げた政治というのは、決して社会経済発展に反対しているわけでは ありません。ただ、ここで重要なのは、ブータンの国づくりが目指すものは、国民の幸福であって、社会経済発展はそれを実現するための一要素にしか過ぎな い、という点です。
 海外のメディアのインタビューを受ける際、ティンレー首相はよく言います。
 「ブータンは、人々の幸せを一番に考えた政治をする。そして、社会経済の発展というのは、その1つの要素。本当に国民の幸せを一番に考えた政治をしよう と思ったら、社会経済の側面だけではなく、包括的にアプローチする必要がある。私たちは、GNHを、GDPに対立する概念だとは思っていない。GDPは、 GNHの一部に過ぎないと思っている」
 ではなぜ、幸せの国を目指すブータンにも社会経済発展は必要なのでしょうか。自然と文化を守りながら、社会経済発展などせず、幸せに暮らしていくという道は、ないのでしょうか。
 実際に政策や財政状況を見てみると、答えが分かります。
 例えばブータンでは、医療も教育も無償で提供されています。ヒマラヤに位置し、山に挟まれ孤立した村も多くあるブータンにおいて、より多くの国民が医療と教育にアクセスできるよう、病院・学校の数を増やし、また、道路も整備しようとしています。
 また、ブータンでは、2007年時点で23%の国民が「貧困線」以下の所得で生活していましたが、政府は、2013年までにこれを15%以下まで引き下げることを目標に掲げ、貧困の削減に勤めています。
 国民の幸せを目指した国づくりにも、やはり、お金はかかるのです。
 一方、ブータン政府の歳入・歳出を見てみると、政府の自主財源だけでは歳出をまかない切れていないことが分かります。

 ブータン政府の歳入において自主財源からの収入は7割程度で、残り3割は、インド政府を始めとした他国からの援助に依存しています。
 しかし、ブータンのような、インド、中国という大国に挟まれた立地の小国にとって、このように経済的に他国に依存することは、大きなリスクでもありま す。外交上の自由が制限されることはもちろん、いつ引き揚げられるとも知れない他国からの経済援助に依存することは、財政上も持続可能とは言い難いためで す。
 このためブータンは、より持続可能な形で「国民の幸せ」を目指す政治をするために、自国内の産業を育成し、経済的にも自立することを目指しています。
政府の計画通りにものが進まない
 そうは言っても、ここはブータン。
 政府が「産業育成!」「経済的自立!」と言っていても、現場で働くのはのんびりおっとりしたブータンの人たち。
「そんなに毎日遅くまで働けないよ〜」「家族との時間がしっかり持てないと、幸せじゃなくなっちゃう」「そんなに頑張らなくてもいいんじゃない?」と、のんびりした空気が漂います。
 このため、政府の計画通りにものが進まないことなどしょっちゅう。むしろ計画通りにものが進むことの方が珍しいくらいです。
 この国が経済的に自立するためには、産業を育成しなければならない。そのために、現在様々な取り組みが行われており、官僚も、民間企業も、いつもより少しだけ余計に、がんばらなくてはならない。
 しかし多くのブータンの人々は、これまで以上には働きたくはない。計画は進まない。計画が進んでいないからと言って、「ちゃんとこれを達成しよう!」と 言うと、人々のワークライフバランスは少し悪くなり、家族と過ごす時間なども減り、ブータンの人々が肌で感じる体感の「幸せ度」は下がってしまう。
「まぁ、確かに仕事は終わってないけど・・・。しょうがないよ、もう17時だし、帰らなくちゃ。家族との時間が減るなんて、俺いやだよ」そう言われてしまうと、それ以上なかなか押し切れない。
 そんなジレンマが、この産業育成の取り組みにはあります。
 このジレンマは、重要政策を統括し産業育成も担当しているGNHCの長官にとって、大きな悩みの種でもあります。GNHの思想を政策に反映させ具体的にGNHを上げていくこと、そしてブータンを経済的自立に向けて引っ張っていくことの両方が、彼の使命です。
「子どもを育てることを想像してみろ」
 彼と夕食をしていた際、いつもこのジレンマに悩んでいる長官に、少し極端な質問をしてみたことがあります。
「いっそのこと開き直って、経済的に自立しない、寄付に頼って生きる国になる、というオプションはないのだろうか。世界のどこにもない、ユートピアをつくる。でも経済的に自立はできないので、珍しいものとして保全するために、寄付をしてください、というような・・・」
 ふだん物腰の柔らかい長官は、このときばかりは強い口調でキッパリと言いました。
「それはあり得ない。ブータンは、自分の足で立てるようにならなければいけないんだ。自分の子どもを育てることを想像してみるといい。本当に、その子に幸 せな人生を送ってもらいたいと思ったら、将来自分で仕事をして生活していけるように育てようと思うだろう。国だって、同じなんだ。ブータンの国民の幸せの ことを考えたら、ブータンが国として、自分の足で立てるようにすることを、僕たちは考えなくちゃいけないんだ」
 そして、小さな声で、こう付け加えました。
「僕たちにとってはね、僕たちの国王が、学校を建ててください、病院を建ててください、お金をくださいと、ほかの国に頭を下げるのを見てるのだって、辛いんだ」
 この話は、例えば、事業の採算の話と、似ているなぁとも感じます。採算など考えないからできる仕事の面白さ、というものもあるとは思います。だけれど、そういう事業は、一時的に喜ばれても、長続きしない。
 ブータンは、ましてや国です。一時的に国民がハッピーになれば、それでいいというものではない。ずっとずっと、国として成り立ち、国民が幸せに暮らせる 環境を、提供し続けること。それが国の仕事だとしたら、まさしく国は、国が自立し、持続的に財政を保てる形で、「幸せの国」を成り立たせることを、考えな くてはいけない。
現実の国として成り立たせる
 ブータンはGNH(国民総幸福度)の最大化を目指す、幸せの国として知られています。その独自性を紹介するためにも、他の国と違う部分が強調されるので、「国民の幸せを最大化することを一番に考えている」「自然・文化を保とうとしている」という面が強調されます。
 しかしブータンにとって、知恵の絞りどころは、実はそれらを「財政的に成り立つ形」で実現する、ということではないかと思います。そうではないと、持続可能には、ならない。
 しかもブータンの場合には、国として財政的に成り立つようにするために産業を強化するといっても、やみくもに産業発展させられるわけでもありません。たとえば、山を切り崩して工場を建てたら、自然をこわしてしまう。
 自然を破壊しないようにしながら、伝統文化を壊さないようにしながら、人のワークライフバランスを保ちながら、産業も育成し、国として自立可能な形で「幸せの国」を実現する。
 そこにこそ難しさがあり、また、知恵が生きる場所でもあるのだろうと、感じます。
 では、そんなブータンが、自立可能な形で「幸せの国」を実現するために、どんな産業政策を取っているのでしょうか。
 それについては、はまた今度。


筆者が勤務するGNHCの建物(右)と入口にある表示板
ブータン公務員だより
ブータンを「夢の国」として扱うわけでもなく、また「幸せの国と言っているけれど、こんなに課題があるではないか!」とあら探しをするわけでもない。「多 くの課題を抱えながら、『国民の幸せ』を最大化することを目指すブータン政府の国づくりの知恵」「いやなことだってあるけれど、『結局は、幸せだよね』と 言ってしまうブータンの人々の幸せ上手に生きる知恵」を紹介する
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御手洗 瑞子(みたらい・たまこ)
ブータン政府 Gross National Happiness Commission (GNHC)首相フェロー東京生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年9月より現職。ブログは「ブータンてきとう日記」。好きなものは、温泉と公園とおいしい和食。
 

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