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「『先程のオーバーランで焦っているのだろう』等と会話をしていた時、ブレーキをかけるような音が聞こえた気がした。と、次の瞬間、大きな縦揺れがあり、いきなり視界がブレた。立っていた乗客達がバランスを崩し、踏ん張ったり、崩れ落ちたりする姿が、終わることのない振動にがくがく揺れる視界の中に映る。
……一つ言えることは、この電車が倒れて、［マンションの］駐車場に突っ込むまでの時間は、ほんの数秒（４〜５秒？）の出来事だったということだけだ。しかし、私が再び目を覚ましたのは、少なくとも事故後数分は経過した後だった。
……視界は薄暗く、所々から光が漏れている様だったが、土埃で煙り見通しが悪かった。その中で少しずつ見えてくる。不自然に折れ曲がった壁やつり革のレール。割れた窓から覗く鉄骨。角度が変わった為に、崩れ落ちた長椅子。その上に横たわる人。気付くと、知らぬ間に『くそっ』という言葉を幾度も繰り返していた。普段はそのような言葉等、使ったりしないのに。
車内は、ものすごい匂いがした。オイルや鉄の焦げた様な匂い（遊園地アトラクションや電車の連結部分のような）。その中にガソリンの匂いが混じっていることに気付いた時、まるで臓腑を冷たい手で撫でられたような感覚の後、ふらふらしていた意識が一瞬にして凝固した」（『ＪＲ福知山線脱線事故―２００５年４月２５日の記憶』１４、１５、１７ページ）。
マンションに突っ込んだ１両目の車内は、「土埃」で煙ったようになった。
このような「土埃」の原因は、一体何か。
脱線事故で「土埃」が、発生するものだろうか。
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