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森田童子・その感情と感覚の共同幻想
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投稿者 愚民党 日時 2010 年 2 月 06 日 21:33:32: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 海を見たいと思った 森田童子 投稿者 愚民党 日時 2010 年 2 月 06 日 21:23:57)

GOOD BYE グッドバイ
1975年11月 ポリドールから発売

早春にて
君は変わっちゃったネ
まぶしい夏
雨のクロール
地平線
センチメンタル通り
淋しい雲
たんごの節句
驟雨
さよなら ぼくの ともだち

-----------------------------------------------------------

グッドバイのレコードを街のレコード屋さんから
買ったのは1978年5月だった。

大江健三郎の小説に
「遅れてきた青年」があるが、自分はいつも遠回りをして
遅れて発見し参入していくのである。

「共同幻想論」という吉本隆明の本がある。
幻想もまた人間の営みなのである。
森田童子は中島みゆき、坂本龍一、村上龍と同世代。

69年「高校紛争」という社会現象があった。
東京の高校はほとんど大学の学園闘争並みになり
長い髪の少年たちと反戦高校生のデモ隊は高校の校庭から
街頭へと出陣していった。
70年3月の卒業式は全国的に反抗と反乱の旋風が吹き荒れた。

栃木県北部では大田原高校の卒業式反乱が新聞に掲載されていた。
そのとき自分は2年で4月には3年になろうとしていた。

1年間の3分の1は学校に行かず、朝、新聞配達のアルバイトをした後は
マンガを描いて過ごし、夜はNHK教育TVの高校講座を見ながら勉強をしていた。

70年4月になった。
読売新聞に「高校紛争」を追い、総括したかのような連載記事が掲載された。
東京の高校はバリケード封鎖、卒業式反乱の後の残骸が
匂っているかのようだった。
現実とは引き潮の方が重い。
暴れまくって無事卒業した人々には物語を語る爽快感があるだろうが
残された人間には戦乱の後片付けが待っている。荒廃と廃墟の匂い。

「大学解体」がスローガンだったのに
大学へ進学する人々は多かった。そこに欺瞞がすでに内包していた。
「共同幻想」とは、
「もうひとつの空間と場所」を求めることにあった。
それが「内なる優しさ」であったと思う。

それゆえ森田童子の歌は69年を経験しなかった
70年からの引き潮に生きた世代の共同幻想となったのである。
その幻想とは感情と感覚である。それゆえに論理ではなく言葉は
詩的言語とならざるをえない。

引き潮は渚にとどまる物体を沖まで連れ去ってしまう。
引き潮に抵抗し、沖まで流されないためには、
おのれの存在と生の理由をそれぞれ個々が原点をまさぐるしかなかった。
高野悦子「二十歳の原点」も70年以降の文学となった。

経験とは体験をしたから経験ではなく
表現と言葉によって、こだわりの追記をしていくことが経験となる。
何十年かけてもその意味を問うていくのが経験である。
経験とはつまり幻想における応答でもある。
思想とは感情と感覚による身体となる。故郷は思想なのだ。

過去の共同体に埋没しては前に進めないこともある。
しかし50歳を越えた今
貧しい唇から過去の共同体を語る資格が出来たのだと思う。
その資格とは半世紀を生存してきた理由にある。

森田童子・その感情と感覚の共同幻想は、ようやくにして
語られていくのだと思う。

青春途上の死者たちはまだ忘れられていない。
そして青春途上の現有者たちは半世紀を生き延びてきた。
語り部の案内人こそ森田童子である。

海で山で遭難した人々は半世紀を得て故郷という原点に帰還したとき
すぐさまおのれの物語を語ることはない。
沈黙のなかひたすら意味をめぐって自問自答していたその時間が
30年かかったというだけである。

高校生のとき読んだ太宰治の「人間失格」には共有感覚をもった。
森田童子の「グッドバイ」は太宰治の遺作と同じタイトル。

自分の原点は今なお、坂口安吾「堕落論」である。


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