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主権在民である。
この国の主権者は、政治家でも、官僚でも、検察でも、マスコミでもなく、ましてや宗教団体や外国などであろうはずがない。
主権者は、日本国民である。
ひろさちや氏は、日本に近代革命がなかったから江戸・明治・昭和・平成とお殿様と領民の意識がそのまま引き継がれてしまった、と指摘する。
そして、“泣く子と地頭には勝てない”お上意識の呪縛から抜け出せずに、官僚主権を黙認してしまった。
その結果、官僚は思い上がり我こそが正義と主権者をないがしろにして、自目的のために暴政を行ってきた。
それは、ゆうに許容限度を超えて、主権者の堪忍袋の緒を切ってしまった。
今、ことを起こさなければ、この国は本当に滅んでしまう。
ならば今、近代革命を起こせばいい。
平成無血革命である。
今こそ、諸々のタブー ──呪縛を解き放ち、不退転の覚悟を持って公憤をぶちまける時です。
主権者の意思として言うべきことは、堂々と主張する。
そして、その国政を託したのが、鳩山民主党です。
以下、「地獄を生き抜く 魔法の言葉」ひろさちや（宗教思想家）集英社新書から一部転載致します。
〔転載はじめ〕
▼みんなが奴隷になった現代日本
ともかく、現代の日本人は骨の髄まで資本主義的発想に毒されている。毒された結果、日本人は卑屈になった。
企業と労働者の関係においては、企業側は「雇ってやっている」といった意識であり、労働者側は「雇ってもらっている」という意識である。卑屈そのものだ。
労働者は企業の奴隷ではない。なにも「働かせてもらっている」のではない。労働者には働く権利がある。もっとも、労働者が「働いてやっているんだぞ」と威張る必要はないのだが、雇用者と労働者は対等の関係である。対等だということを忘れてはいけない。
では、なぜこのような対等の意識がわれわれに稀薄かといえば、日本に近代革命がなかったからだと思う。江戸時代のお殿様と領民の意識がそのまま明治以後の近代国家に引き継がれてしまった。いや、明治以後の天皇制国家は、江戸時代よりももっと悪質だ。そこでは国民が全員、天皇陛下の「臣民」にされてしまった。「臣民」とは奴隷にほかならない。
いいですか、国民の全員が奴隷なんですよ。首相にしても、元帥や大将、大財閥の御曹子にしたって、みんな奴隷である。もちろん庶民も奴隷だ。
奴隷の中で威張っている奴と、飴を貰っている奴と、鞭で打たれている奴がいたわけだ。
だから、太平洋戦争において徴兵された兵士は、「おまえたちの命は天皇陛下のものである」と教え込まれ、しかも馬以下の扱いをされた。旧陸軍においては、
「きさまらの命は、赤紙一枚で簡単に召集できる。しかし、軍馬は赤紙一枚では徴集できない。したがって、きさまらの命より軍馬のほうが高いのだ」と言われていたそうだ。ひどいものである。
“赤紙”というのは軍の召集令状である。赤色の紙が使われたから、そう呼ばれた。一時期は郵便葉書の料金は一銭五厘であったから、人間（兵士）の命は一銭五厘と言われていた。しかし、軍馬は一銭五厘じゃ買えない。なるほど、人間より馬のほうが値打ちがあった。それが天皇制国家の実態である。なんだか前と同じことを書いてしまった。わたしは戦前の大日本帝国に憎しみを覚えている。だから、こうなってしまう。書いた以上はこのままにしておく。
さて、戦後は、この天皇制国家が企業に形を変えただけである。人間はみんな企業の奴隷になってしまった。なにも労働者だけが奴隷ではない。社長も重役も、管理職も平社員も、パートの社員も派遣社員も、全員が奴隷である。
だから、いじめがあるのだ。いじめとは、奴隷同士のいじめ合いである。自由な人間は他人をいじめない。
奴隷は人間ではない。生物学的にはヒトの遺伝子を持った家畜に等しい存在である。
あるいは商品として売買の対象とされる存在である。日本人は自分の子に、「自分を高く売り込める人間になりなさい」と教えている。学校教育が、企業に高価で買ってもらえる人材をつくる目的で行なわれている。みんなが奴隷であるから、足の引っ張り合いをする。他人を奴隷扱いしたくなる。中国の人民百貨店では、店員がおしゃべりを楽しんでいたが、日本のデパートではそんなことをすれば首になる。客は店員を奴隷扱いする。自分が奴隷だから、他人を奴隷扱いしたいのだ。買い物をするときだけ、束の間の主人顔をしたいのである。
奴隷の反対は自由人である。自由人とはどういう人間か？ わたしは、自由な人間は他人を奴隷扱いできない人間だと思っている。平気で他人を奴隷扱いできる者は、自由人じゃない。
奴隷同士が互いに足の引っ張り合いをして、互いに他人をいじめ合っている。それが現代日本人の姿だ。現代日本には自由人がいませんよね。本当に悲しくなってしまう。
▼自分自身に「主人公」と呼びかけた禅僧
さあ、そこで、われわれはちょっと「魔法の言葉」を呟こう。その「魔法の言葉」は、──「わしは人間やで」──
である。人間であることは奴隷ではないのである。自分は奴隷ではない、という自覚を持とうとするのが、この「魔法の言葉」の目的である。
昔、中国・唐代に師彦（しげん）和尚という禅僧がいた。彼は台州の瑞巌山に住んでいて、毎日、岩の上で坐禅をし、独り言を言う癖があった。その独り言がちょっと変わっている。
「主人公」（おい、主人公！）
「諾（だく）」（はい）
「星星著」（せいせいじやく）（しっかり目を醒ましておれよ！）
「諾」（はい）
「他時異日、人の瞞を受くること莫れ」（これから後も、他人に瞞されてはいかんぞ！）
「諾諾」（はい、はい）
※一部現代漢字文字に変えています
師彦和尚はこのような自問自答を日課としていた。そして、これ以外、生涯一言も説法をしなかったと伝えられる。
まあ、わたしの「魔法の言葉」は、これと同工異曲である。だから、読者がもしも格調の高いほうを好まれるのであれば、師彦和尚の「主人公！」を「魔法の言葉」にされるとよい。
わたしの「わしは人間やで」は、いささか高尚さに欠ける。
でもね、前に述べたように、「魔法の言葉」というのは自己を説得するためのものである。他人を説得するための「言葉の魔法」ではない。そうすると、格調なんてどうだっていいのだ。分かりやすいことが第一だ。
現代社会において、読者が会社で非人間的に扱われる。それは日常茶飯事であって、別段珍しいことではない。問題は、そのとき読者はどうするか？ である。
反応は二つあるはずだ。一つは卑屈になること。もう一つは、反抗することである。
大部分の人は卑屈になる。女房が病気になった。あるいは子どもでもいい。あなたが人間であれば、会社を休んで女房や子どものそばにいてやる。少なくとも五時になれば、残業なんかしないでさっさと退社して家に帰る。人間であればそうするはずだ。
でも、奴隷だから、そんなことはできない。上司だって奴隷だから、あなたが、
「あのう、子どもが病気なんです。だから早く退社させてください」
と言えば、「ああ、そう。帰りなさい。そして、あしたからは会社に来る必要はないよ」と応ずるであろう。そんなことは分かっているだけに、あなたは人間らしく振る舞うことができない。卑屈になるだけだ。
（あーあ、すまじきものは宮仕え）
と、心の中で呟くだけ。それが大部分のサラリーマン（という名の奴隷）のレスポンスである。
もう一つのレスポンスは反抗である。ある日、あなたの堪忍袋の緒が切れて、
「こんな会社、辞めてやらあ──」
と辞表を提出する。そういう人もいる。もっとも、そういう人は百人に一人、いや千人に一人、いやいや万人に一人しかいませんがね……。
▼日本を悪くしたのは自民党である
いずれの反応も落第である。卑屈になってはいけないし、自棄になってもいけない。
あなたが自棄になれば、日本の社会では生きていけなくなる。辞表を叩き付けても、あなたに能力があれば別の会社に採用されるかもしれないが、その別の会社も奴隷ばかりで構成されているから、またまた辞表を叩き付けるよりほかないのだ。
だいたいにおいて、現代日本は生きにくい社会だ。人間が奴隷にされていたのは、戦前は国家奴隷で戦後は会社奴隷、戦前も戦後も同じであるが、昔の日本は大半の人が農業や漁業などの第一次産業に従事していた。農業や漁業の場合、変人や奇人でもなんとかなる。人付き合いが少々悪かろうが、「あいつは、米を作らせたらすどい奴だ」と周囲の人間も認めざるを得ない人がいたのである。製造業や建設業は第二次産業であるが、ここでも腕のいい大工などに偏屈な人間が多かった。
ところが、商業やサービス業は第三次産業である。会社のサラリーマンのほとんどは第三次産業に属している。ここでは、人付き合いの悪いのは致命傷になってしまう。
いま、引きこもりやうつ病が大きな問題になっている。考えてみれば、昔の日本に引きこもりの人やうつ病の人がいなかったわけではない。わたしの小学校の時代（敗戦直後のころ）にも不登校の子はいた。また、わたしの親戚にも引きこもりの人がいて、一家の主人のくせに他人と会おうともしないのだ。親戚の者が訪ねて行くと、本人は押入れに隠れてしまうという。それでも問題にならなかった。人々はそんなことは問題にしなかったからである。人間だもの、人嫌いの者がいたってあたりまえだと思っていたのですよ。
だが、会社奴隷ばかりの世の中になると、奴隷だから引きこもりやうつは許されない。みんなにこにこ、対人関係のベテランでなければ、上等な奴隷にはなれないのだ。
おかしな世の中になってしまった。いや、困った世の中にしてしまったのだ。その責任は誰にあるか？ 責任論をやり始めると厄介だが、わたしは責任はすべて自民党にあると思っている。戦後の日本でずっと政権の座にあったのは自民党なんだから、自民党が責任をとるべきだ。そういう自民党を選んだ国民も悪いと言うのは、「言葉の魔法」だ。国民全部が悪いのではない。自民党に投票した人だけが悪いのだ。わたしは五十年間、一度も自民党に投票しなかった。だから、わたしには責任はない。
▼奴隷解放の宣言
あまり政治の問題に深入りしたくない。
大事なのは「魔法の言葉」である。
われわれが奴隷とされ、非人間的な状況の中で生きることを余儀なくされているこの日本の社会において、「わしは人間やで」といった「魔法の言葉」を呟くことが、大きなレジスタンス（抵抗）になるとわたしは信じている。……p-145
〔転載おわり〕
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