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朝鮮民主主義人民共和国（朝鮮）へ日本政府が独自に発動している経済制裁が、一三日に再延長された。六回目となる今回は、民主党を中心とする鳩山政権になって初めての延長である。
二〇〇四年、拉致事件解決のカードという名目で「拉致議連」を中心とした議員立法により、二つの制裁法案が成立。送金停止・資産凍結・輸出入規制を可能とする「改正外為法」と、朝鮮船籍の船舶が日本へ入港するのを禁止する「特定船舶入港禁止特別措置法」である。
〇六年七月、政府は朝鮮のロケット発射に対して、日本への「万景峰92号」の入港と航空チャーター便乗り入れの禁止を実施。同年一〇月には核実験が行なわれたため、すべての朝鮮船籍の船舶へと適用対象を拡大し、朝鮮からの輸入を禁止した。
経済制裁は自民党政権下で更新が繰り返され、昨年四月には制裁強化のためとして期間をそれまでの半年から一年へと延長。今回の延長では半年に戻すことが検討されたものの前回を踏襲した。昨年六月には、輸出の全面禁止と人の往来を規制する追加措置を実施。郵便物のやり取りにも規制が行なわれた。こうした結果、日朝間の「人・物・金」の流れがほぼ止まっている。
この経済制裁によって、朝鮮は影響を受けているのだろうか? 私の朝鮮取材は、〇六年の経済制裁発動以降は六回。その際、北部の清津から韓国との軍事境界線に近い開城までのいくつかの地方都市にも滞在した。かつてはどの商店でもかなりの割合を占めていた日本製の食料品や電化製品などは次第に減少し、今ではほとんど姿を消した。そして日本製に代わって、中国製を中心にEU諸国などの商品が並んでいる。
朝鮮への経済制裁は、在日朝鮮人にとっては深刻である。親族・祖国訪問や朝鮮学校へ通う人たちの朝鮮への渡航は航空便を使わざるを得なくなった。「万景峰92号」での渡航の二倍以上の費用が必要だ。中国での乗換えに手間がかかる航空便は肉体的負担が大きく、渡航を断念している高齢者も多い。そのため、渡航者は大幅に減っている。朝鮮で事業をしている在日朝鮮人は、原料・商品のやり取りができないために事業停止や撤退を余儀なくされた。また、化粧品・食料品・ピアノ・中古車などを朝鮮へ輸出した業者が、「不正輸出」として次々と有罪になっている。この経済制裁は、“敵国・朝鮮の人質” のように扱われている在日朝鮮人だけが大きな制約と経済的被害を受けている。
鳩山政権は、自民党内の対朝鮮強硬派が内容を決めた経済制裁をそのまま延長した。こうした鳩山政権の対応は、新たな朝鮮政策を打ち出すための余裕がないからだろう。この政権に対して、朝鮮側が我慢を続けてきたのは確かだ。洪善玉・最高人民会議副議長は、「民主党政権に期待はしていないが、朝日関係を改善する意思があるか見守りたい」と、昨年一〇月に私が行なった単独インタビューで語った。また今月一七日に、宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が共同通信に対して述べたことにも表れている。「自民党時代と違ってわれわれを刺激するような発言は中井洽国家公安委員長を除き、閣僚レベルでは出ていない。（朝鮮高校が）無償化されれば、こちらとしてもやるべきことをやる。期待を崩していない」と、驚くほど柔軟な姿勢を示している。
朝鮮にとって日本の政権交代は、膠着した日朝関係改善の千載一遇のチャンスであるため、鳩山政権批判を控えようとしている。
日本政府は、米朝関係や六カ国協議の推移を待つのではなく、日本独自の外交交渉による関係改善に踏み出すべきである。この時を逃すなら、拉致問題を含む日朝間の諸問題の解決はさらに遠のくだろう。
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