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郷原信郎:民主党代表選についてと「東京医大第三者委員会に関する一部週刊誌報道」について
http://www.asyura2.com/10/senkyo95/msg/340.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2010 年 9 月 17 日 22:18:42: twUjz/PjYItws
 

2010.9.16
第100回定例記者レク概要
名城大学コンプライアンス研究センター 郷原信郎

今日は村木さんの無罪判決のことと、ちょうど一昨日民主党の代表選挙の結果が出て、菅総理が再選されたので、この2つをテーマにしようと思っていましたが、今日発売の『週間文春』に東京医大の第三者委員会の問題、というよりも私の個人攻撃のような記事が出ていまして、この件について先にコメントをしておきたいと思います。
はっきり言って、何が言いたいのかよく分からない記事ですが、「郷原信郎 第三者委員会で6200万円請求“正義のお値段”」という、極めて誤解を招くミスリーディングな見出しになっていて、私としてはこれは非常に心外ですが、内容を見ますと、まず、報告書を公表したのが7月13日ですが、その3日前に、朝日新聞の夕刊で、報告書のことが報じられたことについて、「検察のリークを批判する郷原氏が自らの情報漏洩を疑われた格好だ」などと、あたかも私が報告書の内容を朝日新聞に漏洩したかのように書かれています。

今日その記事をお配りしましたが、たった25行ほどの短い記事です。その内容というのは、要するに、医局講座制の見直しなど組織の抜本的改革を求める提言をする報告書がまとまり近く公表される、それに関して、医局ごとに主任教授が大きな権限を握ってきたため患者中心の医療を目指す姿勢にならなかった。閉鎖的な組織のあり方が一連の不祥事の背景にある、と指摘しているということを書いてあるだけです。要するに、私が医科大学の問題についてコンプライアンスの観点から指摘していた一般論が書いてあるのと、近く報告書が公表されるということが書いてあるだけです。講座制の下で、教育、研究、診療についての権限が、すべて主任教授に集中していることが患者中心の医療を妨げているのではないか、権限の集中というところに問題があるのではないかということは、この記者レクの場でも何回もお話ししてきました。中には、大相撲の問題に関連づけて、相撲の世界、相撲部屋の世界での親方への権限の集中と似たような問題だということも言ってこともありました。

そして、もう1つの、近く報告書がまとまり公表されるという話も、実は、この記事が出る数日前に、センチュリーハイアットホテルで、東京医大の医学総合研究所の開設記念パーティーが開かれて、その席で私は第三者委員会の委員長として挨拶しました。そのあいさつの中で、東京医大が今危機的な状況にあること、抜本的な改革が必要であること、しかし危機的な状況を乗り越えた組織こそが本当に大きく飛躍できるんだということをお話しし、そして最後に、近く報告書が、厳しい内容のへ報告書がまとまるのでぜひ提言を実行していただきたいということを話しました。

これはマスコミにフルオープンのパーティーで、このときに朝日新聞の記者が来ていて、私も立ち話をしました。要するに、この記者レクの場でも話しているような一般論と、東
京医大のパーティーで私が公言した話、それに何1つ付け加わっていません。それがなぜ情報漏洩だとか、検察の関係で問題になっているリークなどと一緒にされるのか、まったく不可解です。同じようなことを、報告書の内容を説明した理事会の場で言いだした人はいました。こういう疑いがあるんじゃないか。なぜ情報が出るんだということを言いだした人がいました。それに対しては今申し上げたように、しっかり理事会の場で説明したはずです。

それから2番目に、まさに見出しになっている高額報酬、6200万円と書かれていますが、この中で私自身の報酬の部分はごくわずかです。一番大きいのは、記事にも書かれているように調査費用4200万円赤松弁護士を中心とする8人の調査チームが2カ月間行った調査の費用がこれだけの金額に上ったということです。私個人に関する部分としては、この記事にも書いてあるように、当初は、5カ月間で1000万円という契約であった。それは、コンプライアンスに関する研修とか、指導とか、いろいろな問題の指摘とか、検討とか、啓蒙活動とか、体制構築とか、あらゆることを含んだ顧問契約です。それを前提にして、5カ月間、とりわけ第三者委員会の報告書を公表後、これを受けて提言を実行する段階では相当な時間を使うことになるだろうと思ってこういう契約をしていたわけですが。

それが、残念ながらここの場でもお話ししましたが、まったく第三者委員会の報告書の提言が実行できるような状況ではない。抵抗勢力の主任教授の人たちが強く反発していて、とても実行できるような状況ではない。だから、学内でもっとしっかり話をする場を作ってもらうとか、いろいろな手だてを講じたいというふうに言っているにもかかわらず、その機会がまったく与えられない。そういう状況では、当初の契約の目的を達することができない、ということで、私は、8月末に契約期間を1日残して、契約を解消しました。報酬の半額はそれ以前に請求を放棄したもので、顧問契約に関して私が受領した金額は500万です。どうして、あたかも私が6200万という金額を請求したかのような見出しになるのか、非常に不可解ですし、極めて心外です。

この契約による報酬を半額放棄したことに関して、文春の記事では、「その後、郷原氏は抵抗勢力によって改革が進まないとの理由で、報酬1000万円の放棄し、顧問契約を解消した。小誌が取材している間の動きであり、批判に対して先手を打ったと見えなくもない、などと書いてありますが、これもまったくの言いがかりです。先ほど言ったように、私が、この状態では業務の目的が達せられないから、この状態が続くのであれば、契約を解消して、請求も残りの分は放棄させていただきますという通告をしたのは、8月26日です。そして『週刊文春』がこの件で初めて私のところに取材に来たのは8月27日です。8月26日の朝にはすでに通告書を送っています。その8月26日に送った文書というのも『週刊文春』の記者にちゃんと見せています。その間の経緯も説明しています。
ですから、「見えなくもない」などという曖昧な書き方をしているのだと思いますが、恐らく『週刊文春』が言いたいことは、自分たちが取材をして動いていたからその動きを察
知したんじゃないか、それで放棄したんじゃないか、ということだと思いますが、まったく的外れです。私は、『週刊文春』がまさかこんな記事を書くなどとはまったく思ってもいませんでした。『週刊文春』からはこれまでにも、いろいろな問題で私のところにコメントを求めてきましたし、犯罪捜査や刑事司法に関連する問題については懇切丁寧に教えてあげたつもりです。『週刊文春』は毎週1冊、事務所に謹呈本として届いています。取材を受ける何日か前に、『週刊文春』の記者が東京医大の関係で取材を申し入れてきたので、私は、東京医大にどういう問題があるかについて第三者委員会委員長としてのコメントを求めてきたものだとばかり思い、我々の立場に立って取材をしようとしているんだろうと思って、最優先で時間をとって27日金曜日の夕方に取材に応じたのです。
そういう経緯ですから、私が『週刊文春』の動きを知っても、まさか私を批判する記事など書くなどとは思ってもみなかった。それを見越して、批判に対して先手を打つということは考えられません。

なぜ500万円の請求を放棄したのか、それは私のポリシーです。この事務所を維持するために、それ相当のお金もかかります。こういった記者レクをやるセミナールームも基本的には事務所の施設です。私がかなりの時間を費やしている官公庁関係の仕事、総務省の関係とか、国交省、防衛省、横浜市、神奈川県、そういったところは本当にわずかな報酬しかいただいていません。総務省の関係では、年金業務監視委員会委員長、コンプライアンス室長をはじめ、多くの仕事に関わっていますが、今年に入ってから費やしている時間と報酬をざっと計算してみたところ、160時間余りで報酬の総額は約82万円、月平均約9万円、時間あたりにすると約5000円です。官公庁関係からは、決してこの事務所をまかなえるような報酬はいただけない。ですから、あとは、講演料とか、印税のほかは、企業の仕事などで事務所の経費をまかなうことになります。それも、本当に私自身がその依頼者に貢献できたと思えるときに、相手の方もそう思ってもらえたときにそれなりの報酬をいただくというのが私のポリシーです。

そういう意味で考えたときに、今回のような東京医大のケースは、いくら契約で決められていると言っても、そのまま契約の期間を終了させて、全額の報酬を請求することは、私自身のポリシーに反すると思ったので、残額は請求放棄することにしたものです。『週刊文春』の動きとはまったく関係ありません。

じゃあ、4200万円という調査費用がどうなのかということですが、これは、私が請求したわけではなく、調査チームの赤松弁護士からの請求です。赤松弁護士が請求した4200万円という金額、これは赤松弁護士だけでなく、8人の弁護士の報酬を合計したものですが、これが高いか安いかというと、確かに、一般的な感覚からすると、調査で4000万という金額は高いと思われるかもしれません。しかし、東京医大のいろいろな不祥事について、これまでの内部調査の結果にについて精査し、それから理事会での議論だとか、そういったものに関する資料を全部把握し、そして、29名のヒアリングを行い、ヒ
アリングのレポートを作り、そしてその結果に基づいて調査報告書を作成する、それには大変な時間と労力がかかっています。この調査報告書は、第三者委員会報告書とは別にかなり大部のものが作成されています。ただ、それはヒアリングの生の結果などが書かれているので、聴取対象者との関係で公表はもちろんできないし、学内でもごくごく一部の人、本当にトップのところにしか見ていません、その存在がわかっていないので、19頁の報告書と比較して調査費用が高額という誤解を受けるのだと思います。

そう考えたときに、この記事の中でも私がコメントしているように、尐なくとも大手法律事務所に同じような調査を頼んだときと比べたら相当安いのではないかと思います。
ちなみに、その比較の材料になるのではないかと思える資料を1つお配りしました。今年の5月18日の衆議院の決算行政監視委員会の第1分科会の議事録です。沖縄科学技術研究基盤整備機構というのは沖縄科学技術大学院大学というのを運営しているところで、100%税金で賄われています。ここの入札監視委員会の委員を私は務めているものですから、この問題についていろいろ検討する立場だった。この国会の議事録でパワハラについての調査で、弁護士費用が高額だということが国会で問題にされました。この事案では、1件のパワーハラスメントの事案で、調査費用として、法律事務所に総額5452万円が支払われています。これは、いくら何でも高過ぎるということで、私はその調査の中身や契約内容を精査して、入札監視委員会から機構に対して意見具申をすべきだという意見を述べて、実際に、意見具申も行われています。私も、さすがにたったパワハラ1件で5500万円近くという金額は異常だと思います。す。

これは異常ですけども、弁護士事務所、大手弁護士事務所のタイムチャージという方式だと、尐なくとも、一般の感覚からすると、相当高いと思える金額が一般的に支払われていることは間違いありません。それは官公庁の関係などでもそうです。それと比べると、しかも、赤松弁護士の調査の質の高さを考えると、この4200万という金額が高いとは、私は決して思いません。

それから、報告書の内容に関して、識者コメントのようなものを載せて批判しているわけですが、これもまったく的外れな批判だと思います。「なぜ患者が死んだのかが的確に検証されていない」ということが書いてありますが、そもそもこの報告書、この第三者委員会の目的は何なのかというと、不祥事が相次いだ東京医大の問題を、ガバナンスおよび組織運営の観点から調査検討するということです。医学的な見地から死因を究明するというのは専門外の我々のやることでは絶対にないし、そういう観点からすでに行われていた学内の調査結果に基づいてガバナンス的な観点の調査検討を行ったわけです。それを医療過誤の問題の分析検討をやったように見られること自体がまったく的外れです。この報告書の内容については、私はこれを読んでいただければ分かると思います。

我々が第三者委員会を設置する段階で依頼を受けたのは、伊藤前理事長です。伊藤前理事長が『日経メディカル』のインタビューに答えて、こういうふうに第三者委員会の報告書を非常に評価してくれています。第三者委員会でしかエゴの集団は変えられない。ごく
一部とはいえ変わってほしくない、自分の言う通りになってほしいと思っている人たちがいるから、なかなか一朝一夕には解決できないということを言ってくれているわけです。だから、第三者委員会の力を借りて、とにかく外からでもこの組織は変えないと、患者のための医療ができないというのが、これが前理事長の問題意識で、前理事長の依頼によって設置したのが第三者委員会だったわけです。そういう意味では、決して我々は、コンプライアンス関係者、コンプライアンスの専門家だけで勝手に書いたものでも何でもなく、医療の専門家の方にも入っていただいて、我々としては現実的な提案としての第三者委員会の報告書の提言を行ったつもりです。

しかも、事実関係の調査については、私は全幅の信頼を置いている赤松弁護士に依頼したものです。赤松弁護士は、今年に入ってからは、日本郵政のガバナンス問題調査専門委員会、メルシャンの第三者委員会などの調査を総括していますし、それ以外にも、国交省、社会保険庁、農水省などのヤミ専従問題もほとんど一手に引き受けて調査をしてくれた、調査のプロです。私は今回の報告書に関しては、基本的に事実関係の調査はすべて赤松弁護士の調査レポートをそのままの表現を使いました。調査結果に基づくコンプライアンス面からの分析・検討とのところは、私の方でいろいろ資料も収集して、いろいろ私自身が考えて書いたものです。そういう意味で、報告書の品質が悪いとか、報告書がずさんだということは、まったく言われる筋合いはないと思っていますし、もしそう言われる方があったら、私はしっかり公開の場で議論したいと思います。

先ほども言いましたが、こういう見出しを付けることで、何やら金に汚い弁護士のようなイメージを植え付けるというやり方は非常にアンフェアだと思います。記事自体にも、そして取材方法にも、重大な問題があると思います。特に、取材方法に関して言えば、どうもこの記事の狙いは、私を攻撃することにあるようで、見出しにも郷原信郎という名前しか書いてありませんが、しかし、中に書いてあることの中には、調査費用が4200万で高すぎるとか、赤松弁護士の問題が書かれているのに、赤松弁護士のところには一切取材していません。

要するに、自分たちの狙いが郷原だから、別に若干の巻き添えになる赤松弁護士なんかコメントを取らなくていいということかもしれませんが、それはあまりにひどい取材方法じゃないかという気がします。おまけに、元福岡高検検事長の坂井一郎弁護士の名前まで出していますが、坂井弁護士にもまったく取材をしていません。その報酬がいくらという話も、極めて不正確です。こういう記事が代表選の結果が出た直後に出たというのは偶然とは思えないような気もするんですが、いずれにしても、中身的に問題がある、事実と違う
ところはしっかり私なりに指摘していきたいと思います。

何と言っても一番心配されるのは、東京医大の問題は、私は普通の会社や官庁のコンプライアンスの問題とはまったく違うと思って、それなりに思い入れをもってやってきたつもりです。それは、人の生き死ににかかわる問題だからです。だから、普通だったらこれほどまでにこだわらないけども、徹底的に第三者委員会の改革提言の方向を、何とか東京
医大のほうに実現してもらおうと思いました。それが、伊藤前理事長も日経メディカルのインタビューで「エゴの集団」という言葉を遣っていましたが、そういう人たちが理事会のメンバー分からないような具体的な報酬額まで週刊誌に漏洩して批判する、批判記事を書かせるということをやっているわけです。それで本当に患者のための医療ができるのかと。本当に心配です。これはやはり、東京医大を何とかしないといけない。これは本当に多くの患者、家族の人たちのこれからにかかわる問題です。私も東京医大とは契約関係はありませんが、これからも重大な関心を持って見届けていきたいと思っています。
それから本来のテーマの一つの村木判決ですが、無罪という結論はまったく予想外でも何でもない、あまりに当然の結果というふうに受け止めたんですが、私が一番関心があったのは、この判決の中でどこまで検察批判が行われるのか。検察の捜査に関する問題がどこまで指摘されるのかというところでした。ところが、200ページにも上る判決要旨、実質判決書きそのものだと思いますが、これを見ると、どこにも検察批判らしき文言がないんです。全体として、淡々と検察官側の証拠と弁護人側が指摘する証拠との信用性の検討、証拠評価を行っている。その結果、村木さんの共謀を証明するだけの証拠がないという結論を淡々と導いている。

これまでの経過から考えて、いささか拍子抜けしたようなところもなくはないです。しかも、検察官請求証拠の却下決定のときにも、検察捜査の問題、取り調べの問題がいろいろ指摘されていましたし、やはりそもそもこの事件のストーリー自体がおかしかったのではないか。勝手なストーリーを作り上げて、それに合う調書を無理やり取ろうとしたという捜査手法自体に問題があったと私は思っていましたから、そういう見方とか指摘が全然出てこないというのには物足りなさを覚えました。

なぜ裁判所がそのように非常に冷めた、客観的な立場からの判決をして検察批判を一切しなかったのか、その理由として、2つ考えられます。

1つは、検察を刺激したくないというか、検察と裁判所との関係に配慮したということです。今まで特捜が起訴した事件はほとんど有罪だったわけです。一審で無罪でも必ず控訴審ではひっくり返る。そういう意味で、裁判所は特捜事件について検察には非常に甘かった。そういう裁判所の姿勢が今回も基本的には維持されていて、消極判決に必要な範囲の判断だけはしたけども、結局はできる限り検察批判をしたくないという裁判所の考え方の現れだという見方です。

もう1つは、こういう判決こそが、検察の控訴断念、検察が控訴を断念することに持ち込む上でもっとも効果的、まさに戦略的にベターだと考えた。要するに、最大の目標をこの無罪判決を、自分たちの一審で確定させたい、そういう強い目的意識から淡々と証拠評価をする。それだけにとどめた。それ以外のことは一切言わなかった。その方が検察から反論される余地がなくて、検察も控訴しにくいという判断をしたというのがもう1つの可能性として考えられます。

問題は、どっちがメインの理由なのかということですが、やはり、第1の理由もある程度働いていることは否定できないとは思います。従来の検察と裁判所との関係から考えて、やはり裁判所としては必要以上に検察を刺激したくないという配慮は働いているでしょう。しかし、それよりも第2の理由が重要なのではないかという気がしています。私が検察の立場に立って考えたときに、淡々と本当に冷めた言い方で200ページ書かれているのを見て、この判決に対する控訴趣意書を書けと言われるとちょっとつらいだろうなという感じがしました。ですから、いろいろ、今回の村木事件に関して本が出ていますし、新聞などでも書かれているように、検察の捜査にはかなり問題があったと思いますがそういう捜査経過にかかわる問題は検察の方からはいろいろ反論が可能です。自分たちのテリトリーの問題ですから。そういう検察批判を徹底的にやった典型的な例が日歯連事件の村岡氏への一審判決だと思いますが、ああいう判決は批判される余地も大きく、高裁で逆転有罪になってしまいました。そういう意味では、主観的な要素を一切排除して、ある意味では、冷めた目で検察側の証拠と、弁護側の反証を比較した公判廷の供述と、検察段階の供述を比較したけども、それでもやっぱり無罪だよ、と言われた方が、検察にとってはこたえます。この無罪判決に対して控訴するのは、ちょっと、本当に大変だなという感じがします。

この判決を、検察との勝負を避けた敬遠気味のボールと見るか、あるいはインコースぎりぎりを狙った癖球と見るか、いろいろ見方は分かれるところだと思いますが、私は、むしろ検察にとっては一番打ちにくい球を投げてきた判決というふうに評価してもいいのではないかと思います。それは、自分の気持ちとしてはもっとがんがん検察批判を書いて、この際特捜部の捜査を変えてやるぞというぐらいの気持ちになってもらいたいという気はありますけども、でも、やっぱり、控訴されないということを優先したときには、こういう判決の書き方もありかなという感じがします。

そして、問題は、昨日でしたか、朝日も、読売も、検察が控訴断念へ、と書いていましたが、そんなに簡単に検察が控訴断念できるのかなということを私は思っています。というのは、全然話題に上っていませんが、倉沢氏の事件をどうするのかということです、まず。倉沢氏に対して、先に無罪判決が出ています、4月に。そしてすでに、検察は控訴しています。まったく同じ主張です。検察の主張は。倉沢氏に対しても、村木さんに対しても。同じようなストーリーで、政治案件ということで、倉沢氏がいろいろな働きかけをして、そして、村木さんもいろいろな働きかけを受けて上村氏に指示をしてうその証明書を作らせたというストーリーで起訴された倉沢氏に対して、同じ裁判所が上村氏の単独犯だと認定して無罪という判断して、それに対して検察側がすでに控訴しているわけです。
そして今回も、裁判所は上村氏の単独犯だという認定をして、検察官の共謀という主張を退けたわけです。村木氏の事件と倉沢氏の事件で検察側の主張は完全に共通しています。もし、村木事件について控訴を断念したときには、検察は矛盾した主張はできませんから、村木氏の無罪判決を受け入れる以上、倉沢氏についての控訴は維持できません。ということは、控訴取消をせざるを得なくなります。公訴取消は被告人が死んだとか、いろいろあるわけですが、公訴ではなく、控訴取消、検察官控訴の控訴取消って聞いたことがありません。控訴を間違えてやったということになってしまうわけです。これは非常にやっかいな問題だと思います、検察にとっては。この点のネックがあるので、地検、高検レベルで控訴は無理だという話に仮になったとしても、最後、最高検でぎりぎりまで控訴すべきかどうかの検討が行われるのではないかと思います。

そしてもし、控訴を断念したとき、一審で確定させたときには、今の倉沢事件との関係で控訴取消が問題になるのと同時に、もう1つ検察にとって非常に重大な問題は、この一審判決が検面調書を多数、証拠請求を却下している基本的な考え方です。控訴しないということは、刑訴法321条1項2号の検面調書の特信性を否定する理由とされた考え方に検察は同意したというか、それで仕方がないという判断をしたことになってしまうわけです。今後もほかの裁判所でも、こういう考え方が行われることに対して検察は文句が言えないということになるわけです。それは他の特捜事件に対しても非常に大きな影響を与えるのではないかと思います。

それは別に検察官調書が証拠として使えなくなるということではなく、今までのようなやり方が通用しなくなるということだと思います。今回の検察官証拠の請求を却下した決定でも、取調の状況、供述調書の内容、公判廷での供述の内容との比較という形で、緻密な認定をしています。まともな取り調べ、ちゃんとした信用性のある取り調べをしないと、今回のように特信性を否定されてしまうということだと思います。そういう面で言うと、『検察が危ない』に書いたように、これまでの特捜部の調べのやり方には相当問題があった、相当問題のある取調が行われていたことは間違いないわけですが、それが、今回は、金沢事件のように暴行を働いたとかけがをさせたとか、有形力の行使があったわけではないけれども、取り調べのプロセスが一つ一つ検証されて、しかも、取り調べメモが保管されていない、廃棄されてしまったということもあって、特信性に対して否定的な評価を受けた調書が多かった。そういうことだと思います。ということは、もし今回の裁判所の考え方に対して控訴が行われなくて、この考え方が定着するとしたら、この判決の考え方でも特信性を認めてくれるような取調の方法をしなければいけない、ということだと思います。

要するに特捜部の捜査やり方、取調べのやり方を変えればいいわけであって、特捜部が取り調べ中心の捜査ができなくなるということではありません。そのための一番有効適切な方法は取調べの可視化でしょう。可視化をして、どこからどう見られても恥ずかしくない調べをすることが必要だということになるんじゃないですか。

それから、3番目。14日に行われた民主党代表選の結果をどう見るかということですが。私は率直に言って、結局、この菅総理の再選、かなりの大差が付きましたが、それは、菅総理が支持されたということではなく、小沢氏に対するネガティブキャンペーンが功を奏したということではないかと思います。ほとんどの人が、菅支持の理由にしたのは、3カ月で総理大臣を変えるのは早すぎるということと、政治とカネの問題です。結局、「政治とカネ」という言葉が全然明確化されないまま、中身のことを考えないで、呪文のように唱えている。こういう状態で、小沢氏を支持するというのはとんでもない。そんなものを総理大臣にするのはおおよそ考えられない、という雰囲気が具体的な理由もなく広がってしまったのではないか。

私は、かねてから言っているように、別に小沢氏を支持するつもりも、擁護するつもりもありませんし、小沢氏の政治家としての実態は私にもよく分からないところもあります。しかし、具体的に何が問題なのかを明らかにしないままイメージだけでこういうふうに民主党の代表、そして総理大臣を選択してしまっていいのか、そこには非常に大きな問題があるのではないかと思います。菅政権にはどうも官僚主導から脱却するという強い意志、気迫のようなものを感じません。だからこそ、政治とカネの問題を争点にしないで、政治とカネの呪縛を取り払って、本当に官僚主導からの脱却を実現していくための政策論争をしてもらいたかった。菅総理の側にも、もっと思い切った財務省支配を抜け出すための具体的な方策を打ち出してもらいたかった。しかし、結局、そういうことにならないまま、小沢氏に対するネガティブキャンペーンだけで今回の選挙は終わってしまいました。

今後、民主党政権というのは、私は、基本的に財務省主導政権になっていくのではないかという気がします。さっそく、代表選が終わった途端にタイミング良くアドバルーンを上げたのが為替介入です。円も2円ぐらい下がって。85円まで戻った。今後の菅政権の運営に対して国民が期待するような雰囲気が作られたわけですが、本当にそういうことだけで今後の政権運営がうまくいくのかどうか。為替介入というのは、言ってみれば、在庫が限られている栄養剤みたいなものです。それだけで、為替のレートが長期間にわたって円安に誘導できるわけではなし。それで一時的な円高へのぶれを食い止めながら、本当に抜本的な円高対策、今の景気対策、景気刺激策をやっていかないと、恐らく年末ぐらいには同じような状況がきてしまうのではないか。そういう意味で、恐らく菅政権というよりも、財務省主導政権だと思いますが、それがこれから本当に日本の国の今の非常に厳しい状況を救うことができるのかどうか。非常に私は心配しているところです。とりあえず、私からは以上です。  

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コメント
 
01. 2010年9月17日 23:03:00: xPwpZibkjM
>淡々と本当に冷めた言い方で200ページ書かれているのを見て、この判決に対する控訴趣意書を書けと言われるとちょっとつらいだろうなという感じがしました。

 それは郷原氏のような正義感を帯びた人物が考えることであって、カネと権力に心を売った者達には、呼吸をするぐらい簡単なことだと思われる。

 でなければ、いつまでたっても善人が馬鹿をみる世の中が続くのは、説明できない。


02. taked4700 2010年9月18日 00:45:57: 9XFNe/BiX575U : rkz36ijLqn
郷原さんを攻撃する記事が出たのは、郷原さんご自身が指摘されている通り、小沢氏との関係でしょう。または、より正確に言えば、民主党を対米追従勢力が乗っ取るに際して、それに反対を表明するような勢力にあらかじめ警告を与えておきたいということでしょうね。

03. 2010年9月18日 05:12:49: D5ocDWlfSk

        ああ。あの『週間売春』ですか。
        もう何年も読んでません。

.


04. 2010年9月19日 00:35:23: IZU8DIwE5M
郷原信郎氏は検察官出身者としては特異な存在なのか。
本来は検察官出身者といったら郷原信朗氏などが標準的なものであろう。
それなのに国民にとっては、いい意味での『変わり者』になっている。
何が正しくて、どこが間違っているのか、分けが分からなくなった時、郷原信朗氏などの存在が、暗夜に一灯をともしてくれる。貴重でかけがえのない方である。

05. 2010年9月19日 16:08:47: n8t99pskXA
  郷原氏の「検察控訴断念の場合」の指摘から、「取調べの可視化」に向けた重要な意味を持つこ
とがわかりました。検察が今後「取調べの可視化」に追い込まれていく、重大な岐路に立っていると
思います。

>そしてもし、控訴を断念したとき、一審で確定させたときには、今の倉沢事件との関係で控訴取消
が問題になるのと同時に、もう1つ検察にとって非常に重大な問題は、この一審判決が検面調書を
多数、証拠請求を却下している基本的な考え方です。控訴しないということは、刑訴法321条1項
2号の検面調書の特信性を否定する理由とされた考え方に検察は同意したというか、それで仕方が
ないという判断をしたことになってしまうわけです。今後もほかの裁判所でも、こういう考え方が行われ
ることに対して検察は文句が言えないということになるわけです。それは他の特捜事件に対しても非常に大きな影響を与えるのではないかと思います。<

>もし今回の裁判所の考え方に対して控訴が行われなくて、この考え方が定着するとしたら、この
判決の考え方でも特信性を認めてくれるような取調の方法をしなければいけない、ということだと
思います。<


 村木氏裁判も、当初は政治家を陥れようとした特捜検察の暴走であったはずで、小沢氏関連の
訴訟も全く同様な展開が期待できます。今後、小沢氏側が無罪を勝ち取ることが、民主主義確立
の基礎になると思います。小沢氏側勝利により、少しづつでも司法改革が進むことを期待します。


06. 2011年8月05日 01:06:19: uVEtjAuRKg
東京医大・茨城医療センターの医師です。
週刊文春の記事は知りませんでした。この記事自体と直接の関係がないのでKYな投稿かとも思うのですが、内部の者として一言。

私は東京医大卒ではないので、大学本体や本院のことについては、人づてでしか聞いたことがありません。ですが、私も意思を10年以上やってきた身ですので、ちょっと働けば噂も含めて「なんか腐った所だな」ぐらいのことはわかります。更に、本院で働いていた医師や学生や卒業生の話を聞くと、想像を超えるひどさのようです。そもそもああいう報告書を出されること自体がどれほど恥ずかしいことか、理事会や教授会は全く分かっていない。
内部の「改革」も、はっきり言いましょう、形だけ整えてお茶を濁そうという意識がミエミエです。職員は白けています。

そういう所なので、茨城医療センターの不正請求問題、八王子医療センターの肝移植問題を含め、すべて対抗する勢力(たぶん理事)からのリークで問題が表面化しています。
内部でもロクな説明会はなく、職員に対する説明責任も全く果たしていません。
私自身は、茨城医療センターはそこまで悪い病院だとは思ってません。さっさと東京医大の傘下を抜けて身売りするか、独立するのが最良と思っています。ま、非現実的ですが。
そういうところなので、お金は損したかもしれませんが、降りちゃってよ簡単じゃないでしょうかね。


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