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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32425
「家出掲示板」で他人の家を泊まり歩く/炊き出しに並んだり、タカりまくって食費ゼロ/片道30kmはチャリ圏内/飲み込んで尻から出てきた差し歯も再使用・・・
「最近、おカネが厳しくて･･･」
そんな会話が挨拶がわりになっている読者諸兄も多いだろう。国税庁の民間給与実態統計調査(平成22年度)によると、民間企業で働く人が1年に受け取った給与の平均は412万円で、1989年並みの低水準に留まっている。一方で生活保護を受給している人は今年1月時点で209万人を突破。昨年7月以降、過去最多を更新し続けているのだ。しかし、今回紹介するのは、格差社会のド底辺で逞しく生きるビンボーの達人たちだ。
「今のご時世、0円でも生きていける」---そう語る勝ち組ビンボーとも言うべき彼らの生活は、あなたの人生観を百八十度変えるかもしれない。
★医療費0円のフリーター
「歯医者は贅沢」と語るチョロ氏。歯が9本でも何とかなる〔PHOTO〕岡崎隆夫
「20代の頃から借金生活に突入、ヤクザが家の前に来るというドラマのような修羅場もくぐってきました。現在は家賃3万2500円のボロアパートに住み、知人への借金200万円を毎月返済しています。現在、働いている佐川(急便)の仕事には、交通費を浮かせるために、自宅がある世田谷区から片道1時間半かけて自転車で通勤。
仕事が深夜なので、四十路の体に往復3時間のチャリ通いはしんどいですね。ただ、これも遠距離恋愛中の彼女のためです。借金を返済した暁には、プロポーズすることを決めています。彼女には2歳の連れ子がいるんですが、こいつがとっても可愛くってね。未来の息子のためなら、貧乏生活も苦にならないんですよ」
妙に男前な〝貧乏譚〟を笑いながら語るのは、プロレス雑誌の元編集者で現フリーターの阿修羅チョロ氏(40)だ。シッシッシッ･･･笑いとともに独特な呼吸音が漏れ出す彼の口元を見て、ギョッとしない人はいないだろう。数本を残してほとんどの歯が抜け落ち、口全体が〝穴〟のように見えるのだ。年季の入った黄色い差し歯を指さして、チョロ氏が説明する。
「20代後半の頃に、あるイベントで女子レスラーのミドルキックをモロに食らっちゃったんですよね。その衝撃で前歯が1本半吹っ飛んだんですが、万年金欠だったので歯医者なんて贅沢できるワケない。体には悪いと分かっていながら、アロンアルフアで応急処置的に止めておいたんです。でも、抜けては止め、抜けては止めを繰り返しているうちに、周りの歯がどんどん溶けていきました。その都度、差し歯にしていたんですが、今残っているのは差し歯9本だけ。でも意外と飲み食いには困らないものですよ。歯磨きもラクですし」
現在の月収は手取りで20万円足らずだというが、借金を返済したら自由になるおカネはない。瞬間接着剤による〝医療費ゼロ〟は苦肉の策なのだ。
「泥酔して家に帰ってまどろんでいた時に、誤って抜けた差し歯を飲み込んでしまったことがあるんです。慌てふためきましたが、『歯は溶けないから下から出てくるんじゃないか』と読み、翌日排泄物をチェックしたら、案の定差し歯を発見。湯を沸かして熱湯消毒し、ポリデントに浸けたり、入念に歯磨き粉を付けてブラッシングした後、恐る恐る装着しました。苦かったし、違和感ありまくりでしたね(笑)」
またある時は、道路に水が溢れかえる豪雨の日に差し歯を落とし、泥水の中をズブ濡れで捜索。奇跡的に側溝に流れ落ちる寸前の差し歯をキャッチし、慌てて口に押し込んだ経験もある。「死んでも歯医者には行かない」という意地のなせる業だ。
「他にも携帯電話の充電にファストフード店のコンセントを使ったり、仕事後の一杯を100円パックの日本酒『鬼ころし』にしたりで貧乏生活を楽しんでいます。あまり知られていませんが、マ○クはスマイルも0円で、電気代も0円なんですよ(笑)。鬼ころしは激安なのに、一撃でガツンと酔いが回ってくる感じが好きですね。友だちの間では、僕のトレードマークになっています。おいしくはないけど、クセになるんですよね(笑)」
そう言って鬼ころしのストローを歯茎で吸うチョロ氏に、〝レジェンド〟の風格を見た気がした。
★家賃0円の家出生活
「上野公園は新参者に厳しかった」と細田さんは当時を振り返る〔PHOTO〕岡崎隆夫
家出中に知り合った彼女と二人で生活保護を受けながら、渋谷区の6畳一間のボロアパートで同棲生活を送る細田真さん(仮名・25)。今の暮らしに落ち着くまでに、2度家出をしている彼は、最初の家出で4ヵ月にわたるガチホームレス生活を経験。当然ながら〝家賃ゼロ〟の生活だった。
「複数の友人に返すアテもなく借りた4万～5万円単位の借金が30万円をオーバーしたのが原因です。『返せないなら逃げよう』と思って、5000円札を握って衝動的に家を飛び出しました」
公園で野宿をしたり、図書館で昼寝をしたり、ファストフード店の100円コーヒーでひねもす粘ったりする毎日。街頭アンケートのバイトで稼いだ日銭が入ると、ネットカフェへ行き、『家出掲示板』を使って、無料の〝宿泊先〟を確保することもあった。
「ホームレスだった4ヵ月間で、10回以上掲示板で出会った人に泊めてもらいました。『住まいに困ってる人いたら連絡ください』みたいな書き込みを見つけては、連絡を取って泊めてもらうんです。恥ずかしい話、所持金ギリギリでネカフェに入って料金をオーバーし、初対面の人におカネを払いに来てもらったことも何度かありました。
書き込みをしている人は、たいがい〝男〟で、体目当ての人がほとんどなんです。僕は幸い危険な目に遭うことはありませんでしたが、一軒家を持っている男性に招かれた時、その人が20年間〝調教〟してきた3人のオッサンがいてビックリしたことがあります。『夜の相手もしてね』と言われたので、3日目に逃げました(笑)」
たまにバイトを見つけて働いたりもしたが、所持金は常に数百円～数千円。泊まり先を確保できない日も多く、生活はギリギリに切り詰めざるを得なかった。
「基本的に、食事は2日に1食。デパートの試食コーナーに行ったり、炊き出しに並んだこともありました。ボランティアのおばちゃんがいなり寿司と3000円を握らせてくれた時は、その場で号泣しましたね。下着類は主に100円均一のショップで購入。体はネカフェでシャワーを浴びるか、それができない時は公園で足や顔を洗ってました。ただ、どんなに腹が減ってもゴミ漁りだけはしなかった。意識したことはありませんでしたが、最後のプライドだったんでしょうね」
そんなギリギリの生活に疲れ果て、4ヵ月後に実家に帰還。「自身の経験が生かせれば」と、ホームレスの介護や自立支援を助ける施設で不定期で働くが、またも衝動的に2度目の家出を敢行する。
「その頃、飛び込みで働き出した非合法風俗店で出会ったのが、今同棲している彼女なんです。僕も彼女も風俗店のオーナー宅に寄宿していたんですが、お互い不満もあり、二人で駆け落ちしまして。そこから、貧困層のサポート活動をしている活動家の方にメールで連絡を取り、生活保護の段取りをつけてもらって今に至るという感じですね」
現在は二人で月に20万円の生活保護を受給している細田さん。ホームレス生活の辛さを知っているからこそ、何気ない日々のありがたさが身に沁みる。
★光熱費0円のAV男優
1畳のトランクルームに住む〝独房の人〟〔PHOTO〕郡山総一郎
起きて半畳、寝て一畳---。そんな生活を送っているのは、自称「売れないAV男優」のホリオさん(36)だ。高校卒業後に「タダで自動車の免許が取れる」という誘い文句に釣られて自衛隊に入隊し、6年間勤めた後、上京してアルバイトをするがどれも続かず、エロ本に載っていたAV男優の募集広告に応募し、合格。「ジャパニーズドリームを摑んだ!」と喜んだのも束の間、待っていたのは月給13万円の超ビンボー生活だった。
「汁男優からのスタートですから、おカネなんてあるわけない。現場で支給される弁当の残りを『明日の朝メシにしていいですか?』なんて言ってもらってきて、食費を浮かせていました。今はコンスタントにAVの仕事が入るので、週5回仕事がある週は、毎日現場の弁当で〝食費0円〟です」
現在彼が住んでいるのは東京某所にある賃料1万6000円(月額)のトランクルーム。たった1畳の超極小空間に生活用品のすべてを詰め込み、寝泊まりしているのだ。
「本来は荷物を置く空間なので人が住んではいけないのですが、管理人がいない夜9時以降は監視する人がいないから、余裕で住めるんです。このあいだ、僕と同じようにここに住んでいる50代のオジサンがベランダのプランターで野菜を育てているのがバレて、さすがに怒られていましたが(笑)。この建物には他の階にトイレがあるので、不自由はないですね」
深夜には少しだけ〝部屋〟からはみ出して体を休めることもある〔PHOTO〕郡山総一郎
1畳で暮らしているだけでも驚きだが、ホリオさんはこの空間で自炊までするというから感服するほかない。
「100円ショップで買った食材をカセットコンロで料理するだけですよ。カルボナーラ・マカロニが最近のお気に入りメニューです。水を捨てに行くのが面倒臭いんで、体に悪いのは分かっているんですがソースは全部飲んじゃいます。でも、火災報知器が鳴っちゃった時は焦りましたね。昼間で換気できなかったのがまずかったのか、建物中にベルが鳴り響いたので、1時間ほど外出して、知らん顔で帰ってきました(笑)」
賃料の1万6000円には光熱費も含まれている。いくら夜更かしして電気を使っても、余分なカネはかからないのだ。携帯の充電もできるし、ドライヤーも使える。とはいえシャワーはないのだが・・・・・・。
「深夜になると、独房にいるような独特の感覚がありますね(笑)。日中はなるべく外に出て時間を潰していますが、この狭い空間が嫌いではないんです」
そう笑うホリオさんは悲愴感もゼロなのだ。
★交際費0円の〝パフォーマー〟
「この地域最速で仕上げること」が似顔絵描きのモットーだ〔PHOTO〕郡山総一郎
人が集まる場所に行って獅子舞を披露したり、似顔絵を描いたりして糊口を凌いでいるのは、埼玉県在住のKさん(35)だ。10年前に友人の店のオープン記念に「何か出し物をやってくれ」と頼まれたのをキッカケに我流で始めた「獅子舞」だったが、その完成度の高さでその後もオファーが切れず、今やKさんの交際費を生み出すツールになった。
「呼んでもらえば老人ホームからライブハウスまで、どこでも行きます。去年は大体50ヵ所で獅子舞をやりました。代金は、最低限そこまでの足代と、ご飯プラスお酒を飲ませてくれればOK。おひねりは、『余裕がある人は出してね』って感じです。似顔絵は1回200円で描かせてもらっていて、これまでの最高は1日50枚。似てる似てないはあまり自信ないですが(苦笑)、『とりあえず早く描く』が信条です」
Kさんは〝パフォーマー〟として稼いでいるワケだが、この程度の収入で生活するのは困窮を極める。ところが、埼玉県某所のKさんの部屋の家賃は、大家との〝お知り合い価格〟で破格の2万円。部屋の棚一面にぎっしり並ぶCDは「レンタル落ちで安くなったものをまとめ買い」し、「飽きたら大量に売り捌く」のが基本だし、階下のリサイクルショップで、洋服や家具もタダ同然の価格で手に入る。
「移動もここから下北沢(世田谷区)辺りぐらいまでなら余裕でチャリンコです(Kさん宅からは約30kmの距離)。『カネがなかったら皿を洗う』じゃないですけど、そういう技術を日々培ってはいるつもり。これからも獅子舞や似顔絵、紙芝居などで食っていくつもりです」
まさに「芸は身を助く」を実践するKさんなのだった。
★食費ほぼ0円のホスト
6畳一間に男二人の生活も「慣れれば大丈夫」という翠さん〔PHOTO〕岡崎隆夫
「給料をもらっても、毎月、手元に残るのは1万～2万円。生活レベルでいったら、うちの店で最下層でしょうね」
そう苦笑するのは、20人近いホストが在籍する新宿・歌舞伎町『CLUB EDEN』のホスト、琥珀翠さん(23)。ホスト歴は8ヵ月で、6畳一間の寮の一室に同僚と二人で暮らしている。現在の月給は20万円前後だが、「数百万円の借金の返済に追われている」ため、赤貧洗うがごとし。食事は基本1日2食。2食入りで90円の『チャーハンの素』で炒めたご飯や、5食で300円のインスタント麵が主食だが、一方で月の半分は、先輩やお客さんにご飯をタカって腹を満たしている。
「タカリの極意ですか? 先輩とご飯に行く場合は、最初に新人を誘っておいて、先輩に『○○とご飯行くんですけど、どうですか?』って誘いますね。先輩も新入りの前ではいい顔したいから断りづらいじゃないですか(笑)。あとはどんなに泥酔しても、奢ってもらう日は最後まで先輩の酒に付き合う。可愛がってもらう基本ですね」
自炊とタカリを組み合わせ、「週300円で食費を賄うことも可能です」というのだから、さすがは腐ってもホストだ。
★美容代0円のモデル
東京都在住で、モデルや占い師として活躍するしらゆきすみれさん(年齢ヒミツ)だが、その生活は楽ではない。
「もっぱら移動は自転車と市が運行している無料バスですね。飲み会も外でやると1回に3000円は飛んでいくので、友人を集めて宅飲みしています。その時に活躍する大きなソファは、市の無料リサイクルの抽選で当たったものです。猫も血統書付きの猫ですが、子猫の時に知り合いから引き取ったのでタダでした」
職業柄、美容代が嵩むのでは・・・・・・と思いきや、地道な方法で節約している。
「脱毛やフェイシャルエステのお店に行って施術を受けてアンケートを書くと、謝礼がもらえるバイトがあるんです。ネットで申し込んで、エステ代は自分の財布から払うのですが、謝礼をもらう時に、一緒に返ってきます。それと、これは裏技ですが、ドラッグストアに勤めている友人から、サンプルや試供品を大量に横流ししてもらっています。化粧品や乳液からボディソープ、制汗剤まで手に入るので、ここ数年、美容代は実質0円です」
この美貌で美容代0円･･･。ビンボーな女性がみすぼらしかった時代は、すでに終わったのかもしれない。
★巣ごもりで食費0円のクリエイター
「どんな人の家でも、お歳暮やお中元、結婚式の引き出物など、人から頂いたりした食料が眠っているもの。それを処分するために、週末を利用して『猛吹雪で家から出られない』といった設定にするんです。僕は〝山小屋作戦〟と呼んでいますが、これで家に埋もれている食料品を一掃できて、食費もまったく掛からない。一石二鳥なんですよ」
そう語るのは、クリエイター集団『ホイチョイ・プロダクションズ』のブレーン、草場滋さん(44)。さすがはクリエイターらしい発想だが、これまで紹介していた〝ビンボーな面々〟とは違うのに、なぜ節約生活を?
「だってゲームみたいで楽しいじゃないですか(笑)。何事も楽しんでやるのがモットーなんですよ。そんな僕にとって、街の図書館は〝無料のツタヤ〟。大きな図書館では最新の本はもちろん、CDやDVDも貸してくれるんです。在庫がなくてもリクエストしておけば他の図書館から取り寄せてくれるし、3週間以上もレンタルできる。絶対におトクです。
もう一つオススメしたいのは交通費のカット。東京に住んでいるなら、山手線の内側の移動は歩いたほうがいい。考えごとをしながら歩くと考えもまとまるし、いい店も発見できる。タクシーも通らないような道に面白い店があったりするんですよ」
ゼロは無限の可能性を秘めている。意識を変えれば、ビンボー生活は驚くほど豊かに変わるのだ。
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