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投稿者 ダイナモ 日時 2010 年 3 月 08 日 23:01:47: mY9T/8MdR98ug
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100305/213210/

 温暖化ガスを1990年比で25%削減する──。その目標を日本が達成できるのかどうかを論ずる前に、直視しなければならない現実がある。それは日本が環境分野で先進国どころか、欧米勢や中国勢の後塵を拝していることだ。

 実態を明らかにするため、日経ビジネスでは2010年3月1日号で「環境後進国ニッポン」と題した特集を企画した。日経ビジネスオンラインでは、今まさに環境分野で起きているパラダイムシフトの現場をリポートする。
 日本における再生可能エネルギーの代表格と言えば、太陽光だ。シャープや三洋電機が最先端の太陽電池の開発を強化し、発電効率などの技術は世界最高レベルにある。その裏側で、同じ太陽光をエネルギー源にした別の発電方式が、じわじわと存在感を高めている。それが太陽熱発電である。


イー・ソーラーの太陽熱発電プラント「シエラ・サンタワー」

 日本では、政府が太陽光発電の導入量を2020年頃に現状の20倍程度にする目標を掲げ、補助金や電力の固定価格での買い取りといった制度を創設した。こうした状況だけを見ていると、太陽光発電こそが再生可能エネルギーの本命であるかのように見えてしまう。だが、実際は新興国を中心に太陽熱発電が脚光を浴び、本命視されはじめているのだ。

 世界で最も注目されているプロジェクトが、北アフリカのサハラ砂漠で進められようとしている。独シーメンスやスイスのABBなど欧州企業12社が結集した「デザーテック」プロジェクトである。サハラ砂漠に巨大な太陽熱発電所を建設し、直流送電網を使って欧州の都市部に電力を運ぶ。この壮大な計画の総予算は、実に50兆円超に上る。このほか、スペインや米国では、既に数十メガワットクラスの発電所が稼動している。


“枯れた”技術で安定稼働

 太陽熱発電は鏡で太陽光を1カ所に集め、高温で水蒸気を発生させてタービンを回して発電する。主な方式は2つある。1つは「タワートップ式」と呼ばれ、モーターと鏡を組み合わせた「ヘリオスタット」と呼ばれる装置で集めた太陽光を、タワーの頂上にある集光器に集める。集光器には水やオイルなどの液体がポンプで送られ、太陽熱で加熱される。この熱を利用して水蒸気をつくり、タービンを回す。

 もう1つは「トラフ式」と呼ばれる。横長で曲面状の鏡を一列に並べ、その中央に水やオイルなどを流したパイプを通す。こうすることでパイプに熱を集中させてボイラーに運び、蒸気をつくってタービンを回す。どちらの方式も、ボイラーやタービンのように火力発電で実績のある“枯れた”技術を採用しているので、安定して稼働するうえ運用コストも安い。

 設備次第で、太陽光がなくても24時間連続して発電できるメリットもある。蓄熱装置に熱を貯めておけば、夜中でも蒸気タービンを回して発電できる。「同量の電力を発生させる場合は、蓄熱装置は二次電池の10分の1のコストで済む」と、太陽熱発電研究の第一人者である東京工業大学の玉浦裕教授は指摘する。連続運転できるなら、発電量の変動も気にしなくていい。

 太陽熱発電が、これまで普及しなかったのには理由がある。タワー式は太陽光を受ける巨大なタワーを建設する必要があり、発電量を増やそうと鏡を増やすほどタワーが高くなる。このため、どうしても初期投資がかさんでしまったのだ。トラフ式は熱を運ぶパイプを鏡の数だけ張り巡らせる必要があるので、伝達距離が増えて熱の損失が大きくなり、効率がよくない。さらに、どちらの方式も大量の鏡を並べる広大な土地が必要だ。電力需要が多かった先進国や都市部では、広大な敷地の確保は現実的ではない。

 ところが、原油価格の高騰と新興国の経済発展で状況は一変した。電力需要が急増している中国や中東、アフリカといった新興国で太陽熱発電が注目されたのだ。これらの地域は鏡を並べるのに十分な土地があり、しかも日差しが強い。

 発電コストが下がったことも追い風になった。ベンチャー企業が独自の設計で建設コストの低減を進め、発電効率が高い再生可能エネルギー源として売り出し始めたのだ。1キロワット時当たりの発電コストは、太陽光発電の約18セントに対し、太陽熱発電は石油火力発電に匹敵する10セント前後にまで下がった。


砂漠に広がる2万4000枚の鏡

 こうした動きを象徴する発電プラントが、米カリフォルニア州にある。ベンチャー企業の米イー・ソーラーが2009年に設置した実証プラント「シエラ・サンタワー」だ。

 ロサンゼルスから車で北に約2時間のモハーベ砂漠。見渡す限りの砂と低木の間を走る道路沿いに、強い日差しを受けてキラキラと輝く2万4000枚もの鏡が並べられている。どの鏡も太陽を追いかけて刻々と向きと角度を変えながら、中央にそびえたつ高さ約50mものタワーの頂上を眩しく照らす。発電能力は最大5メガワットで、カリフォルニア州南部の約4000世帯に電力を供給している。

 同社のロバート・ローガン上級副社長は、「設計の工夫で建設コストを大幅に引き下げ、しかも発電効率は火力発電と同水準。太陽熱発電は重要な代替エネルギー手段だ」と胸を張る。徹底した部材の削減や、量産部品の流用、鏡を効率よく動作させるソフトウエアの開発など、様々なノウハウが詰まっている。安定した技術と安価な部材を寄せ集めて電力を生む。まさに発想の転換と言っていい(コスト削減の詳細は「日経ビジネス」3月1日号の特集「環境後進国ニッポン」に記載)。

 夜間に稼働させることを考慮せず、高価な蓄電池や蓄熱装置も省くといった割り切りもある。実証プラントであるシエラ・サンタワーでは、太陽熱発電が“枯れた”技術の転用であることを示すためか、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が1946年に製造したタービンをオーバーホールして使っている。

 同社は南米や南アフリカ、中国などでも新規プロジェクトを受注し、急成長している。業界内では「(太陽光発電大手の)米ファースト・ソーラーのような存在になるかもしれない」とささやかれている。太陽熱発電で注目されるのは、イー・ソーラーだけではない。米ブライトソースエナジーや中東のアブダビに本拠地を置くトレソル・エナジーなどが、低コストを武器に新興国を中心に勢力を伸ばしている。だが、日本企業は全くと言っていいほど、太陽熱発電には注目していない。


日本発の「ビームダウン」方式が世界へ

 それでも、新しいアイデアで世界市場の一角に食い込もうとする動きが、わずかにある。東京工業大学とコスモ石油、三井造船、コニカミノルタオプトが手がける「ビームダウン」と呼ばれる方式だ。この方式を採用した実証プラントが、既にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国で動き出している。


アブダビ首長国で稼働しているビームダウン方式の太陽熱発電実証プラント

 ビームダウン方式は構造上、発電コストでタワートップ式よりも優れるとされる。大量のヘリオスタットを並べる点ではタワートップと同じだが、タワーの構造が異なる。まず、太陽光をタワーの上部に集めて、そこにある鏡でタワーの下部にある集光器に向けて再反射する。集光器では、熱を集める媒体として使う溶融塩を、タワートップの約450度を上回る約600度にまで熱することができる。このため、効率よく蒸気を発生できる。

 重量が数トンにも達する集熱器をタワーの下に置くので、構造を簡素化できるうえ低コストなのも特徴だ。溶融塩を高所に運ぶためのポンプが不要で、設備の耐久性にも優れる。ビームダウン方式を開発した東工大の玉浦教授は、「建設中の太陽熱発電所の設計者からも、『理論的にはタワートップよりもビームダウンの方が優れている』と言われている」と自信を見せる(技術の詳細はこちら)。


1990年代前半に開発着手も実用化進まず

 玉浦教授がビームダウン方式を開発したのは1990年代前半のことだが、これまで実用化は叶わなかった。それが、なぜ今になってアブダビで花開いたのか。

 実は玉浦教授は、実用化を目指して2006年頃から数々の日本企業に声をかけ、太陽熱発電に関する私的な勉強会を開催してきた。その上で提案書をまとめ、実証プラントを建設するための支援を求めて、何度となく政府に働きかけをしてきた。だが、「いくら世界で太陽熱発電が注目されているかを説明し、日本企業の競争力強化のために支援してほしいと要望しても、なしのつぶてだった」と玉浦教授は言う。

 欧米企業が続々と建設に乗り出しており、すぐにでも実証しないとビームダウン方式が日の目を見ることはなくなる。万策尽きて諦めかけたとき、石油事業でアブダビとの縁が深いコスモ石油から、「アブダビ政府なら投資してくれるかもしれない」と声がかかった。

 アブダビはクリーンテックを国家戦略に据えており、有望な技術には惜しみなくオイルマネーを投じている(詳細はこちらの記事を参照)。玉浦教授は自らアブダビに乗り込み、政府の幹部にビームダウン方式の優位性を訴えたところ、約5億円の出資を取り付けた。コスモ石油も同額の約5億円を拠出し、昨年10月に実証プラントは完成した。

 だが、うまい話ばかりではない。アブダビ政府は資金拠出の条件として、実証プラントで得る特許を譲り渡すよう求めてきたのだ。「一日も早く実証に持ち込み、ビームダウン方式の優位性を広めたい」。玉浦教授はその思いを貫くために、忸怩たる思いで設計図からデータまでの一切をアブダビに渡す決断をした。

 日本政府が2009年度に太陽電池の導入補助に投じた予算は、200億円以上に及ぶ。なぜ、数億円の予算すら太陽熱発電に振り向けられなかったのか。

 背景には、政府内に残る太陽熱へのトラウマがある。政府は1973年の石油ショックを契機に、「サンシャイン計画」と呼ばれる太陽熱発電のプロジェクトをスタートさせた。四国に置いた実証プラントで太陽熱発電の能力を検証したが、思うような結果を得られなかったのだという。それ以来、政府は太陽熱に一切の支援をしていない。こうして、日本発の太陽熱発電技術はアブダビに渡った。


イノベーションを起こすのは先端技術だけではない

 ビームダウン方式は、決して技術的に目新しいものではなく、“枯れた”技術を応用したものだ。イノベーションは必ずしも先端技術だけでもたらされるものではない。最新の技術を用いなくても、顧客を魅了する製品コンセプトや様々な仕掛けを施すことで、市場の評価を得ることはできる。それは「iPod」や「iPhone」で成功した米アップルや、「Nintendo DS」や「Wii」を大ヒットさせた任天堂が証明している。

 だが再生可能エネルギーの分野で日本勢は、過去のトラウマに囚われ、また国内市場や先端技術の追求に固執し、自らの手足を縛っている。その姿は変化から一線を画す「ガラパゴス化」と言っていい。

 もちろん、将来のタネまきとして先端技術を追うことは極めて重要だ。だが、そればかりでは急速に進むパラダイムシフトを生き残れない。太陽熱発電を巡る一連の動きは、ガラパゴス化によって置き去りにされつつある日本の状況を物語っている。
 

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