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Re: @test
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投稿者 上葉 日時 2010 年 6 月 16 日 05:55:11: CclMy.VRtIjPk
 

(回答先: Re: @test 投稿者 上葉 日時 2010 年 5 月 24 日 09:29:17)

田原総一朗×上杉隆vol.1〜3 | 田原総一朗のニッポン大改革 | 現代ビジネス
田原総一朗×上杉隆vol.1 「私が体験した『政治とカネ』のすべて」 民主党政権も明かせなかった「政界とメディア」最大のタブーに挑戦する | 田原総一朗のニッポン大改革 | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/657


田原総一朗×上杉隆vol.1
「私が体験した『政治とカネ』のすべて」
民主党政権も明かせなかった「政界とメディア」最大のタブーに挑戦する

田原:今日(6月3日)は忙しかったでしょう?

上杉:今、さっきも菅(直人)さんと樽床(伸二)さんの会見にいってきました。

田原:(Twitterに)樽床さんに靴を投げたいなんて書いてましたね。なんでなんですか?

上杉:あ、靴をですか?(笑)

 それは要するに、基本的に認識がまったく甘かったんですよ。僕も意外だったんですが。樽床さんは、ある意味、若手の保守のアニキ分として期待の星ですよね?

 松下政経塾出身のわりには、落選経験もあって、いわば地べたはいつくばったという感じの、いわゆるドブ板も知ってる感じです。

 若手の民主党議員もついて行く人が多い。ぼくも期待をして会見に行って質問したんですけど、鳩山政権、民主党がかかげたマニュフェストの中身をまったく理解していない。

田原:なんで菅さんと樽床さんの会見だったんですか? 

上杉:今日までに立候補を表明した人だけ。

田原:樽床さんは立候補を表明したってことね。

上杉:はい、推薦人集めたと。まだ出してはいないんですけどね。

田原:それでふたりは会見したわけね。

上杉:明日(6月4日)の午前9時までに他に出るかどうかというのはわからないので、不公平感があるかなという感じはするんですが、現時点で推薦人を集めた人だけ会見をした。

田原:マニュフェストを理解してないってどういうことなんですか?

上杉:民主党の173項目のマニュフェストもそうですけど、小沢代表時代の公約、5つの柱、その基本部分・・・たとえば具体的に質問したのは、国民の知る権利、情報公開、開かれた政治を作る、というのが民主党の柱なんですよ。その部分で官房機密費、記者会見のオープン化、情報公開制度は鳩山政権では中途半端になっている。

 樽床さんが仮に政権を取られた場合、それをきちんと、鳩山首相の意向、民主党の公約を守ってやるんですか、と聞いたら、「それについてはいろんな意見があるので、考えてみたい。私はまだ官邸に入ってないのでそのことは知らない」と言ったんです。

田原:マニュフェスト知らない?





上杉:私が質問したあと、民主党会見はオープンですから、フリーランスのJANJANの田中龍作さんという方が、また同じ質問かぶせたんですね。

 これまた「わからない」と。その後、やはりフリーランスの畠山(理仁)さんがもう1回かぶせたんですね。

「これは民主党の公約です。ずっと約束してたのにどうしてそういうことを言うんですか? 方針だけでも示すべきじゃないか」と言ったら、「いろんな方のいろんな意見があるので、様子を見ます」と。それでは今の鳩山政権より後退なんです。ご自身の政策もない、というか自分の党の公約も読まれてないのか、と。

 そういう意味で基本的に立候補するんだったら、それくらいせめて用意してると思っていたから、期待がドンと落ちた。

田原:なんのために立候補したんですか? 何をするんだと言ってましたか?

上杉:マックス・ウェーバーの言葉を引いて。

田原:マックス・ウェーバー!?

上杉:政治というのは情熱で、岩盤に穴をあけるのにトンカチや何かを使った地道にやる作業だと。民主党の若返り、というのと、あとはっきりしないんですが、あたらしい形のシステムというか、意識のもとやりたいと。「世代交代」という言い方をしてましたね。

 今の鳩山、小沢の両氏と、呼び捨てにしながら言ってましたけど、そのやり方ではない民主党を、クリーンな党を見せるんだという言い方をしていました。そのへんは抽象的でわかりにくかったです。田原さんご存じだと思いますが、樽床さんの弁舌は非常に見事なんで、通る声だったんですが、質疑応答の中身となると、不安がよぎる。

 特に沖縄に関しては、合意文書を「踏襲する」という言い方をしながらも、鳩山さんの両院議員総会の昨日の会見の話を、「思いを大切にする」と言ったんです。

田原:思いね。

上杉:ええ、鳩山さんの昨日の会見は事実上「常時駐留なき安保」に戻ってるわけですよね? だからそれも聞いてないのかな。心配だな。





田原:普天間の問題は、樽床さんはどうすると言ってるんですか?

上杉:今言ったように、普天間問題に関しては、鳩山さんが昨日言った思いを大切にすると。あれは、50年先とか言ってましたけど、独立した防衛ですよね、自主防衛というか。

田原:具体的にたとえば、普天間を日米共同声明では辺野古に移すと言いきってるわけですね。ところが沖縄の了解得てないわけだから沖縄には移りませんね。この部分、樽床さんは?

上杉:だから、その部分の認識すらなかったのかなと。最後に、沖縄の地元紙の記者が質問したんですよ。それに対してあいまいな答えだったんですね。だからその記者は繰り返し聞いたんです。でも結局納得できる答えが得られず、そこで会見打ち切りとなったんです。

田原:靴を投げようとしたのは・・・

上杉:ちょうどそのときです。

田原:投げなかったんですね?

上杉:投げなかったです(笑)

田原:なんで投げなかったの?

上杉:今日の靴、ちょっと脱ぎづらくて。

田原:ああそう(笑)。

上杉:それをTwitterでつぶやいたら、「今日はまだ早い、これから勉強して明日変わるかもしれないじゃないか」と。


■記者クラブを怒らせた首相のインタビュー

田原:ところで、最近、「週刊ポスト」で書いてますが、なんで「週刊現代」じゃなくて、「週刊ポスト」でばかり書いているの?

上杉:「週刊現代」は今ここにいる瀬尾さん(現・現代ビジネス編集長)がね、私のこと追い出したんですよ。

田原:追い出した? そうなの?

瀬尾:いえいえ。三顧の礼をもって・・・(笑)

田原:三顧の礼を尽くして追い出したんだね(笑)

瀬尾:フフフ。

上杉:加藤晴之さんという当時の週刊現代編集長にも、追い出されて。

田原:なんで?

上杉:私のこと嫌いだからじゃないですか(笑)。

田原:ハハ。それはそれとして、最近、テレビに上杉さん出てないね。

上杉:だめですね。

田原:なんでですか?

上杉:こちらの理由は端的に、明確に自分でも意識してるんです。2年前くらいから記者クラブ問題というのを言いだしたんですよ。当時、地上波でレギュラーいくつか持っていて。

田原:開放しろと。

上杉:ええ、オープンにしろと。別に記者クラブつぶせとは、1回も言ったことない。

田原:でもオープンにするということは、記者クラブをつぶすということですよ。

上杉:そうですか。

田原:うん、彼らは特別の権限だと思ってるんだから。

上杉:たぶん、記者クラブについては田原さんが最も古く戦った。

田原:いやいや。





上杉:宮澤(喜一)さんでしたっけ? 小渕(恵三)さんでしたっけ? 田原さんがサンプロで電話で結んじゃったの。

田原:あれ、小渕さん。正月に、小渕さんに携帯電話したら出ちゃったわけ。「今サンプロの本番中なんですが、正月だから何か国民にあいさつしませんか」と言ったら、あいさつしちゃったの。

上杉:それでだめなんですか?

田原:それでね、大騒ぎになっちゃった。テレビ朝日を記者クラブから追放するということで大騒ぎになった。

上杉:なんの理由で追放するんですか?

田原:記者クラブは、あれは開放じゃなくて、閉じるほうですから。いっぱい閉じる条件があって、例えば総理大臣に聞くのは順番があるんですね。例えばNHKがやる、日本テレビがやる、またNHK。今度TBSで、またNHKがやると。その順番はずして、突然小渕さんが電話に出てくるっていうのは、要するに記者クラブの違反であると。

上杉:え、でも、小渕さんは田原さんの番組に出る、田原さんと話をすると言ったわけですよね? 総理が。なんで総理がいいって言ってるのに。

田原:総理には文句言えないんでしょうね。だからテレビ朝日に文句を言ったんです。

上杉:本末転倒というか。

田原:だからね、記者クラブというのはある意味では、例えば各省に、あるいは官邸に、権利をとったんですね。権利をとったら今度は守ることになっちゃったんですよ。連合と一緒なんですよ。ぼくは連合という組織は、日本で一番悪い存在だと思ってる。なぜかというと、つまり正社員を守るんですよね。

 連合は、正社員を守るために、派遣労働者とか、非正社員とか(しわ寄せが)出てくるわけね。これと同じように、記者クラブも記者クラブの会員だけを守ろうとしてるの。会員以外はいかに排除するかっていうのが記者クラブでしょうね。


■記者クラブのアパルトヘイト

上杉:さきほども樽床さんに質問した内容もそうなんですけど、国民の「知る権利」、情報公開の立場から考えたら、世界中で普通にジャーナリズムがやっているのは、ときの権力者、為政者の言葉を国民に伝えるために聞きたい、と。

 これ普通ですよね? 田原さんが小渕さんに話をしてくれと言ったら、結果的に国民は田原さんの番組を通して小渕さんの言葉を知るんだから・・・。

田原:記者クラブの特権を踏みにじったということになるんですよ。

上杉:特権、記者クラブって、だって。

田原:特権階級なんですよ。

上杉:でもめざすところは記者ですよね、記者クラブっていうんだから。

田原:うん、記者。

上杉:だったら国民に情報を提供するという・・・

田原:それは記者クラブに入っている人から国民に提供すると。記者クラブに入ってない田原や上杉は、そんなもん人間じゃないと。

上杉:アパルトヘイトですね。

田原:アパルトヘイト。一種の。だけど、今日の樽床さんへの質問の話、みんなフリーの記者ですね? 新聞記者は質問しないですか?

上杉:一番最初がフジテレビの和田圭さん、2番目が僕で、3番目が朝日新聞だったと思いますね。

田原:なるほど。

上杉:ばーっと手を挙げるんですけど。はっきり言っていつも、フリー化された会見の傾向なんですけど、岡田(克也)外務大臣、亀井(静香)金融大臣、亀井さんはフリーだけにしてますけれど、原口(一博)総務大臣もそうですし、あと小沢(一郎)幹事長のときもそうでしたけど、だいたい手を挙げるのってフリーなんですよ。





田原:なんでですか? どうして新聞記者とかテレビの記者は手を挙げないんですか?

上杉:はっきり言って、質問力がないからですね。

田原:質問力ない人を会見によこしてるわけ? 新聞やテレビは。

上杉:何十年も記者クラブ型の質問をされてきたと思うんですよ。事前に幹事社が集めて、こうしましょう、政局がらみでも。そうすると事前に用意した質問なんですよね。例えば、今日、あるテレビ局が世論調査をしたところ、支持率が十何%に低下しました。どう受け止めますかと質問するんです。それって質問するほうが頭使わないんですよ。

 フリーはなんで何回も質問するかというと、さっき言ったように、チェーンクエスチョンと言って、僕が知る権利、情報公開を質問する、樽床さんの答えが不満足だとなった瞬間に、別に打合せも何もしてないんですけど、不満足だと思ったら、次に田中龍作さんが質問するんです。

 そこでまだ不満足だと思ったら畠山さんが質問するんです。他にも手は挙げてます。

田原:なるほど、連携プレーしてるわけだ。

上杉:そうですね、自然に。


■Twitterが怖くて質問できない記者

田原:ところが新聞社やテレビ局は連携プレーをしてない。

上杉:してないどころか、これは傾向として見られたんですけど、例えば「日本テレビです。普天間問題をどう思われますか?」と聞くわけです。カメラ回ると。次、「TBSの誰々です。普天間の問題・・・」って同じ質問するわけですね。

 どうしてかというと夕方のニュースで自分の社のアナウンサーとか記者が質問した絵を使いたいがために、繰り返し聞くんです。

田原:ああ、国民なんてどうでもいいんだ。

上杉:自分の番組のためなんですよ。新聞記者は比較的ないんですけど、質問者を(紙面に)書かないからでしょう。要するにメンツなんですよね。

 それだと、「あ、この人ごまかしたな、じゃあこうやってかぶせてやろう」という訓練がたぶんできなくなる。傾向として、今そういう質問するとTwitterとかUstleamで、記者は晒されてる時代ですから、匿名性の時代と違って攻撃されるんですよ。「この記者はなんてくだらない質問をするんだ」と、ニコニコ動画なんかで。

 そうすると手を挙げなくなっちゃうんですよ。だから、繰り返し繰り返しフリーばっかり当たっちゃうんです。

田原:手挙げないの?

上杉:人数は少ないのに、なぜ多く当たるかというと、みんな挙げてるからです。

田原:新聞記者やテレビの記者は、手を挙げないのに、なんのために来てるんですか? 挙げないってことは何もしゃべんないってことでしょう?

上杉:まあ、前のほうにいる番記者は挙げるんですよ。それは政局的な、先ほど山岡(賢次)さんと会ったけどどうなんですか、とか、国民の生活とあまり関係ない、いわゆる政局の質問をするんです。それ以外は何を質問していいか、わからないのか、基本的に手を挙げないんです。

田原:Twitterなんかが怖いから挙げないと。

上杉:へんな質問できないし、かといって・・・

田原:勉強もしてない?





上杉:勉強もしてないから、難しい。ホントは難しくないんですけどね。普通に疑問に思ったことを聞けばいいだけの話なんです。逆に、そんな単純な質問したら恥ずかしいって思うのかな。そういうわけで質問の度合いが少ないんです。

田原:つまり新聞記者やテレビの記者はだまってるわけ?

上杉:一部ですけど、毎回質問する記者っていうのはかたまっていくんです。ほとんど意味のない、ただ単に観戦しに来てる記者はむしろ記者会見なんて出ないで、入りたいフリーとかネットとか雑誌とか、海外メディアの記者にパスを譲ってくれたらいい。そしたら国民の知る権利からしても、いろんな質問するから・・・。


■日本のメディアには質問力がない

田原:僕はね、非常に不思議に思うのは、例えば総理大臣の番記者っていますね? ほとんど新人のような、若手の記者ですね。

上杉:松田喬和さん(毎日新聞)は違いますね。

田原:毎日新聞だけはベテランが来てる。だからね、総理大臣に鋭い質問できないよね。あれはやっぱり、総理大臣に鋭い質問してはいけないと記者クラブで決まってるのかな。

上杉:訓練の場として使うからじゃないですか。でも一国の総理に対して失礼ですよね。海外の、僕は前「ニューヨークタイムス」にいたんですけど、やっぱりホワイトハウスの大統領に質問する記者って、ほんと長年やっていて。

 ヘレン・トーマスじゃないですけど、彼女のように、クリントンがごまかしたら、「ジョン・F・ケネディのころはそんなことは言わなかった」と、そんなことを言える。その蓄積と、知識と、それまでの見識を総動員して彼女は質問しますよね。

 すると、権力側だって緊張感をもって答える。お互いに磨かれて、国民が見て、「うちの国はこういう問題があるのか」と、「この人はこういう政治家だ」と。見て政治教育になって、メディア・リテラシーになって、民主主義が育つ。日本はそれを放棄してきたわけです。

 メディアが質問力があれだけ弱いと、総理を含めて政治家も、質問に対して耐性がない。

田原:いい加減でいいんだ。

上杉:今回のように批判が来ると耐性がないのでもうダメなんです。本当だったら田原さんみたいなベテランジャーナリストが、総理という最高権力者に質問する機会が1週間に1回でも会見であったら、それは総理にとってもプラスなわけですよね。

田原:それはだけどね、やっぱりね、困ると思う。

上杉:総理がですか?

田原:いやいや新聞記者、あるいはテレビの記者たちが。だって何も言えなくなっちゃうじゃない。

上杉:でも、田原さんが質問することのほうが国民からしたらいいじゃないですか。

田原:いや、彼らには国民は関係ないよ。例えばテレビ局の自分の局の記者が質問して答えたのを流すわけでしょ? 僕が質問したのを放送できないじゃない。

上杉:でもけっこう使ってますよね? 例えば小沢さんが、去年の3月3日に、大久保(隆規)さん、公設秘書の逮捕がありましたよね? 4日の会見で、僕も当然ながらオープンになってますから行ったんです。

 そのとき質問したのが、「政治資金管理団体、西松建設の任意団体から入ったときに小沢幹事長は、少なくとも事務所はそれをチェックしなかったんですか?」と。僕も秘書経験があるのですが、普通収支報告書を書くときに名前を書くんですよ、献金先の団体の。書いたときに誰から来たかわかる。

 小沢さんは「善意の献金者についてはノーチェックだ」と言ったんですよ。あ、それ失言だなと思って、仮に外国人や暴力団関係者から献金されたら違法献金ですよねと質問しようとしたら、小沢さんもやっぱりわかっていて、「仮にそれが違法、脱法にあたるんだとしたらお返しします」と言ったんです。

 次の日、新聞朝刊一面全部それでしたね。僕の質問、と書かないけど。

田原:そういうことやるからね、だから上杉さん嫌われるんだわ。

上杉:いえ、いえ(笑)。





田原:なんで上杉の質問なんだと、うちの記者の質問じゃないんだと。彼らは非常に悔しい思いをしながらのっけてるんですよ。


■官房機密費はメディア側の問題だ

上杉:ぼくは構造的な問題だと思うんですよ。あれ書いてるの社会部じゃないですか、社会部は法律上の違法性とか、取材もしてるわけですけど、政治部は永田町で政局ばかり取材してる。記者会見には政治部しかいないんですよ。何人かに「なんで社会部いないんですか、今日こそ追い詰めるチャンスじゃないですか」と聞いたんですよ。

 でもいないんですよ。セクショナリズムで部を超えられない。同じ社なのに。政治資金規正法、公職選挙法とか、政治部は基本的に取材してないのでわかんないんですよ。違法性の部分は彼らは知らない。

 その証拠に終わった後に、僕は会見場で8社ぶらさがれたんです。1コ1コ、解説したんです、今の質問を。当時記者クラブも、向こうのほうが嫌ってなかったから。

田原:まだ嫌われてなかった(笑)。

上杉:解説して、なかには地上波(テレビ)で解説しながら結んだんです。それほどわかってなかったんです。それはみんなで情報を共有すればいいんです。いろんな人が入って、いろんな質問をすればそういう結果になって、いいわけですよね?

田原:でもね、今上杉さんは新聞記者を批判してるけど、いいことじゃないですか、上杉さんにとっては質問するチャンスがあって。新聞記者がバンバン質問したら困っちゃうじゃない、出番なくなっちゃって(笑)

上杉:今記者会見で質問できるのは、民主党の会見と岡田外務大臣と、原口総務大臣と、亀井金融大臣だけなんですよ。

田原:あ、そうなんですか? 総理大臣は?

上杉:総理大臣は1年に1,2回しか開かないので。今回も開かなかったですね。官房長官はウソついて1回も開いてない。

田原:ああ、そうですか。開かれた政治じゃないですね。

上杉:だからこそ、今日あえて樽床さんに質問したんですね。民主党の公約なんだから、そろそろ政権交代して10ヵ月経つので約束を守っていただければと。記者会見のオープン化、そして官房機密費ですよ。

 私個人としては官房機密費はあったほうがいいと思ってるんです。ただアメリカみたいに30年したら公開する、50年したら公開するとなったら抑止力になるんですよね。もらうほうも。たとえ100年先でも、これもらったら、100年後に自分の名誉が傷付けられるんだと思ったらもらわない可能性も高くなる。

 そういう意味では、今までのように記録が残らないというようなかたちじゃなくて、正当に国益とか、国民の利益のために使えばいいという感覚なんですけど。

田原:僕はね、機密費については、必要だと思ってるんですよ。それは何かと言うと、情報提供料ですよ。あるいはスパイですよね。そういう情報提供料としてはあるんでしょうね。ところが、政治家が外遊するときの餞別、勉強会、それから新聞記者、あるいは評論家へのお金になってる、これは問題です。

上杉:僕も正直、配る側は問題ないと思うんですよ。秘書だろうが、政党職員だろうが、海外の人間だろうが、記者、メディア関係者だろうが、配る政治側に問題があるんじゃない。受け取るマスコミ人に最大の問題があるんじゃないかとずっと言ってるんです。

田原:そこがね、僕も実際にそういう体験を何度もしてるんですが、ひたすら怖いんですよ。

上杉:怖い? やっと本題に入りました(笑)。


■名刺がわりに100万円を出した田中角栄

田原:最初カネを提示されたのは田中角栄さんです。目白へ取材に行った。取材が終わった、すると「ちょっと田原君待ってろ」と。大きな金庫があるんですよ。それを開けて封筒を持ってきて、田中角栄って判が押してあるんですよ。「名刺がわり」だと。





上杉:判っていうのは?

田原:名前の下に押してあるわけ。封筒の中に、中身見なかったからわからないですが、100万円くらいだと思う。厚さから見て。

上杉:当時100万円って言ったらすごいですね。

田原:いや50万円かな(笑)、わかんないけど。たぶん100万だと思うけど。これ名刺代わりだと。「田原さん受け取ってくれ、受け取れ」と。怖いですよ。

上杉:名刺代わりってすごいですね。本人ですか?

田原:本人です、もちろん。ひたすら怖い。当時田中さんは自民党のドンだし、ぜんぶ仕切ってる。これを断ったら自民党、まあ田中派の取材はできない。ケンカになると。当時僕は40そこそこだったと思いますね。どうしようか、断ったらケンカになっちゃう。ケンカになったら取材できない。どうしようかと。

 もちろん受け取るわけにはいかない。悩みまして。時間にしたら5分もないと思いますが。で、非常に悩んでそこは実は受け取ったの。返す度胸なかった。そこで付き返す度胸なかったんですよ、ケンカになりますから。受け取って、すぐそのまま麹町にある田中事務所に行きました。

上杉:砂防会館?

田原:そうです。そこで秘書に、それを返したいと。どんな名目でもいいから、僕は受け取らないと、返しました。「なんでこんなもん返すんだ」と言うからね、「いやいやカネは必要なところには要ると思うけど、僕は必要じゃない」と。「こんなカネを受け取ったら田中さんに変な借りができたような気になって具合悪い、だから返す」と。いろいろ言ったけど受け取ってくれました。

上杉:田原さん、そういう経験、何度かあるんですか?

田原:はい。

上杉:私もかつて鳩山邦夫さんの事務所にいたんです。鳩山邦夫さんは、最初は田中さんの秘書でした。当時同僚の秘書は中村喜四郎さんとかです。憶測でモノを言ってはいけないけれど、田原さんが返したお金を、田中さんに戻ってない可能性もあるますよ。

田原:それはわからないけど。

上杉:だから誤解というか、田原さんの名前がいろいろ出てるわけですよ。実はほんとはもらってないのに、もらったことにされちゃうって話があるんですよ。秘書にしたら、帳尻合わせるためには、もらったことにしちゃえばいい。

田原:それ、あるんですよ。実はある政治家に地元で講演頼まれて行ったんですよ。帰りに秘書がお金を渡すんです。僕は受け取れないよ、と受け取らなかった。受け取らなかったら、その政治家に秘書は言わなきゃいけない。当然、政治家から電話がかかってくると思ってた。「いやあ、ああいうカネ受け取ってくれないの困るよ」とかね。かかってこないんですよ。

 そこで、僕はその政治家に電話しました。「実は悪いけど、この間カネ返したんだけど」と言ったら、「えーっ」と。言ってないわけ。

上杉:要するに抜いたわけですね。

田原:まあね。そのときにね、そういうことがあるんだなと思いました。

上杉:僕も秘書経験あるので、僕はそういうことはやってませんけど、当然ながら。要するに抜く人はいるんですよ。秘書の世界も記者の世界も、健全な人もいれば、不健全な人もいっぱいいるわけですね。


■「小僧の使いじゃないんだぜ」

田原:もうひとつ言うとね、中曽根(康弘)さんのときですよ。

上杉:後藤田(正晴)さんですか?





田原:後藤田さんじゃなく、秘書です。秘書の人が僕に持ってきた。たぶん100万だったと思う。それでね「田中角栄さんに返したんだから受け取れないよ」と。田中さんに返したのはとっても便利で、僕にとっては。「田中さんに返したのに中曽根から受け取るわけにいかないよ」と。

上杉:田中角栄さんにすら返した、という。たぶんこの対談を見てる人は、僕ぐらいの世代かそれより下・・・。

田原:あ、わかんない?

上杉:わかんないんですよ。要するに、いまの時代に官房機密費を排除するのは当たり前だと思うんですが、当時は・・・。

田原:当たり前、普通。

上杉:当時は怖いですよね。田原さん、おっしゃるように。やっぱり田中角栄に歯向かった瞬間に、どういうことをされるかわかんない時代なんです。

田原:もうアウトですからね。

上杉:だからこそ、今情報がけっこうあるから、そういうことが抑止力として。極端な話、命狙われたり、そういうことが平気な時代というのは、別に田原さんをフォローするわけじゃないんですけど、ほんとうにそうだったんですよね。

田原:そのときに、「田中さんからも受け取らなかったんで、受け取るわけにいかない」と言ったときに、そしたらね、その秘書さんがね、「小僧の使いじゃないんだぜ」と。

上杉:本末転倒ですね(笑)。

田原:「小僧の使いじゃないんだぜ」と、すごまれて、まずいと思って受け取った。実は、中曽根さんが一番親しい人がいまして、テレビ朝日の専務だった三浦甲子二さんという人。僕は三浦さんのところに持って行って、「三浦さん、悪いけどこれ返してよ」と。すると三浦さんがその場で秘書に電話してくれて、「田原のバカが、カネは要らないからネギくれと言ってる」と。ネギくれなんて言ってないですよ(笑)。

以降 vol.2 へ。

(この対談は6月3日に行いました)





田原総一朗×上杉隆Vol.2「私が見た『機密費』と鳩山マネー」 「政界とメディア」最大のタブーをすべて話す | 田原総一朗のニッポン大改革 | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/672

田原総一朗×上杉隆Vol.2「私が見た『機密費』と鳩山マネー」
「政界とメディア」最大のタブーをすべて話す

こちら はこちらをご覧ください。

田原:その次は安倍晋太郎さんでした。だから、官房機密費じゃなかったかもしれません。

上杉:そうですね、外交機密費もありますね。

田原:安倍晋太郎さんの城代家老というおじいさんがわざわざ下関からやってきて、「安倍がお世話になります、よろしくお願いします」と。下関から来てるでしょ、そこで突き返したら彼が死んじゃうんじゃないかと思ってね。

上杉:(笑)

田原:それでそこは受け取った。でも受け取るわけにいかないんで、安倍さんの部下に返したんです。森喜朗さんです。まだ総理大臣になる前です。森さんは、「俺、運び屋か」と言ったんだけど、「悪いけど返してよ」とお願いしました。

上杉:田原さん、必ずもらった人と違う人に返してるんですけど、なんでですか?

田原:返すって難しいんですよ。つまり、突き返したらケンカですからね。

 その場で返したのは一人あります。これは官房機密費じゃないけど、笹川良一さんです。取材に行ったら、「ちょっと田原さん、相談があるんだ。次の部屋に来てくれ」という。臭いなと思った。

 そしたらね、封筒に入って、これはたぶん半分だな、50万だと思うけど、渡してきた。「田中さんからもらったときも返したので、笹川さんからもらうわけにいかない」と言ったら、笹川さんすごいですね。顔色も変えず、「あんたはえらい、俺のカネを返したのはあんたが初めてだ」と褒められた(笑)。

上杉:渡すほうも受け取りやすいようにいろいろ考えるんです。私も秘書やってたんで、あまりここでは言えませんけど、渡すほうの役割をやってたんです。そういうときは相手が取りやすいように、会食をして、「今日はいろいろありがとうございました」とお土産を渡しながら、そこに御車代とポンと入れておく。

 あとは結婚記念日だとか調べて、そのときに渡したり。これは官房機密費じゃないですよ、子ども手当ですね、鳩山家の。これはまずいかな(笑)。

田原:ハハハ。

上杉:受け取る側としても、取材してるとそういう場面はあります。今はあいつは受け取らないとなっています。でも最初のうちはペーペーですから額は小さいですけど、政治家と会食したとき、官房長官も元官房長官もいた席で、帰りにやっぱりお土産を渡されたんですよ。

 会食のときには、今インターネットもあるし、それに秘書をやっていたのでだいたいどこの料理屋だといくらとわかるので、同額返しの感覚でした。

 割り勘にするという不粋なことはできないから、一人1万5000円くらいかなと思ったら、八重洲の富士屋ホテル行って、同じくらいの商品券とかお土産をこっちも持っていって渡す。足りなかったら次の日に、お土産を買って、事務所や議員会館行って「昨日はご馳走さまでした」とやってたんです。

 ある日、向こうがお土産を出したんですよ。こっちも、そのお土産分も含めたものを出して渡した。帰って来て、家について見たら、底に入ってたんですよ。たぶん50万円ですね。白い封筒に。すぐ秘書に電話して、「すみません、職業上受け取れないんですけど」と言ったら、「いやいや違うんだ、今日はいろいろ教えてもらったから気持ちだ」と。

 「気持ちって言われても、これやられると、次ゴハン食べられなくなるじゃないですか、楽しいゴハンを。だから返しに行きます」と言ったんです。「いいよ、またゆっくり」と言われたんですけど、すぐ返さないとなあなあになるので、その日のうちにもう一回タクシーに乗って、秘書に返しに行きました。

 次の日に性格上はっきりさせないと思って行ったんですよ、政治家のところに。それで「昨日はありがとうございました。職業上そういうのもらえないんですよ」と説明しに行ったら、「はっ?」と。





田原:わかってないわけね。

上杉:渡したことも認識してないのか、とぼけたのかもしれないし、あるいは秘書が気を使ったのかもしれない。ちゃんと本人に返さないと、間で抜いてたりされると誤解がどんどん広がりますね。


■ホテルに現れた着物の女性

田原:もうひとつは、野中(広務)さんです。

上杉:まさに、私が官房機密費のことを書き始めたきっかけが、4月19日のTBS「ニュース23クロス」での松原キャスターとのあの対談ですね。

田原:これは怖かった。小渕さんが倒れたすぐあとですよ。総理大臣は森さんになってました。だけど小渕さんからだと言ってましたね。

 最初は、野中さんから電話がかかってきて、いいお茶が入ったと言うんです。あの人は京都ですからね。そのお茶を持って行きたいと、受け取ってほしいと。僕はいつもホテルのロビーの喫茶店にいますから、そこへお願いしますと言ったんです。そしたら、部屋を取ってくれと言う。僕はちょっとおかしいと思ったんで、いや、喫茶店で結構ですと。

上杉:人の目があったほうがいいですよ。

田原:多分、料亭の女将だと思う、着物を着た女性が紙袋を持っていた。「ちょっと重いですね。お金なら返さなきゃならないから、受け取らない」、「いや、西陣の生地が入りまして」とか押し返す。「でも、お金なら返さなきゃいけない」というと、「いや、絶対違います」と。で、最後は受け取った。隣にトイレがあるんで、そこですぐ確認しました。

 入ってるんですよ、おカネが。こうなると返し方が難しいんです、とっても。

 これね、現役の人だから、いいにくいんで名前はいいませんけど、僕のとっても親しい政治家に「こんなの受け取っちゃったから返したいけど」と(相談した)。返し方がとっても難しいんですよ、本人とケンカしたくないと思うから。「あなた返してくれないか」と頼んだら、「そんなことしたら俺は政治生命が無くなる。冗談じゃない」と逃げる。

 「誰なら返してくれるかな」と聞くと、「日本でいちばん力がある人なら返せるんじゃないか」と。「誰だろう」と聞くと、「日本でいちばん力がある政治家は約1名しかない」と。

上杉:森さんですか?

田原:まあね。約1名しかない。前に安倍さんのときにも返してもらっていますからね。電話すると「俺、運び屋じゃないぜ」と断られた。「とにかく頼む」と言っても、「田原さん、そんなことしたら俺、政治生命無くなる」と。

 で、しょうがない、野中さんの事務所へ電話したら、選挙の前でいないんです。それで、京都まで返しに行きました。丁寧な手紙書いて、「お気持ちはありがたい。野中さんの気持ちを傷つける気はまったくありません。ただ、こういうものを受け取るわけにはいかない、田中さんのときも返してる。申し訳ないけども」ということを言い添えて、置いてきました。

 そしたらその晩かな、野中さんから電話が来て、「田原さん、選挙終わったら神楽坂で一杯の飲もうや」と。で、食事しました。で、終わり。

上杉:終わりですか。

田原:一切そのことは言わない。返しに行くときに野中さんに電話したんですよ、「返したい」と。「いや、これは実は田原さんが、小渕さんにとってもいいインタビューをしてくれたお礼なんです」と言う。実際、小渕さんが倒れる直前に沖縄でインタビューをしました。「小渕がそれを感謝してる。竹下(登)も感謝してる。その気持ちなんだ」と。

上杉:でも、小渕さんはそのころ意識はないですよね。渡しやすいように、渡しやすいようにいってるのは野中さんのすごいところです。


■クラブ記者が嵌る先輩記者とのジレンマ

田原:僕は実は怖いんですよ、ほんとに。僕はフリーだからまだいいと思う。新聞記者やテレビの人は返せません。だって先輩たちが前に受け取っているんだもの。上からは「おまえだけ、なんでだ」と言われる。

上杉:そうなんです。今回、取材して分かったのは、先輩たちに下の記者を呼ばせて、その帰り道に一緒に渡すんです。





田原:だからね。

上杉:先輩が取ったときに、その記者って、これはもうジレンマですね。

田原:絶対に困るよ。

上杉:先輩が取って、先輩の目の前で「私はもらえません」と返して、「いいんだ、取れ」となると、先輩に歯向かったことになっちゃう。普通だったら断るのが当たり前なんだけど、政治部の記者クラブのルールだと、上司に歯向かった瞬間にどうなるかというと、基本的には終わりですよ。

田原:終わりです。仲間はずれにされます。他の社にしたら裏切り行為ですから。

上杉:調べたら、朝日新聞の記者は途中から受け取らなくなっているんですよ。そしたら朝日はおかしいってなってるんですよね。あれ、不思議ですよ。

田原:僕がひとつ知っているのは、ある地方紙の東京支局長が本社に帰ることになったので、田中角栄さんのところに挨拶に行ったらカネを渡されたんです。彼は勇気のある記者で断ってきた。返しちゃった。

 そしたら本社の社長が怒鳴って電話してきた。「なんて失礼なことするんだ。冗談じゃない。行って謝罪して受け取ってこい」と。結局、受け取ってきて、彼の送別会のパーティーに使ったんですね。


■ニューヨークタイムズの"2ドル・ルール"

上杉:知らないうちに名前を使われている記者もいっぱいいます。その一方で本当に受け取らないで辞めちゃった記者も何人もいます。でも、受け取らないで辞めるっていうのもおかしな話で、普通、世界中のジャーナリストなら受け取らないのが当たり前のことですね。

 今回、野中さんが、田原さんは受け取っていないといったんですが、日本のマスコミの中で田原さんはすごいなと思うんです。

田原:すごいっていうより、フリーだからできたんです。

上杉:ただ、それも世界で見ると当たり前のことなんですよね。僕はニューヨークタイムズに1999年から2001年までいたんですが、当時ですら、"取材対象者から2ドル以上を超えて物品金銭、便宜供与等を受けてはならない"という"2ドル・ルール"があったんですよ。2ドルといったらスターバックスのコーヒーがぎりぎり入るくらい。

 カフェラテになったらダメなんです。エクストラショットはまずダメ(笑)。それくらい気を遣うんです。 それを超えるとどうなるか。賄賂を受け取ったとされて一発で解雇です。これも70年代からどんどん作ってきたもので、今は1ドルくらいになっているらしいんです。その感覚が日本の記者クラブでは逆になっちゃってますよね。

田原:逆っていうか、先輩を裏切れない仲間を裏切れないと、こういうことになっているんじゃないかな。

上杉:いまテレビに出ている政治部出身のコメンテイターや、論説委員の方、解説委員の方に、いま片っ端からどんどん当たっています。全部ほとんど同じ回答ですね。 まず「そんなものはない」と否定するんですよ。話していると「確かにあるけど、自分は受け取っていない」と言う。

 いろいろ喋って「なぜ知っているのに、それを受け取っていないというんですか」と質問すると、最後は「もう君とは二度と仕事ができない」「こんなことを書くんだったら、君の今後の活動も、これまでの活動に対しても、いっさい信用を与えることはできない」。

 そして「俺の名前は出すな。出した瞬間にどうなるか覚えてろ」「このインタビューはなかったことにする。二度と付き合わない」と。そういう中でフリーの人も全部含めて、受け取っていませんといって出てきたのは田原さんだけですよ。





田原:僕だって、受け取っていませんといったって何の根拠もない。ただ野中さんが言ってくれたんで、僕は半ば迷惑半ば有り難いという感じがあります。
中曽根時代の官房機密費リスト

上杉:アンフェアになってはいけないと思って、今回、田原さんにお渡ししようと持ってきました。一部ですけど、これが田原さんの名前が出てるものです(リストのコピーを2枚取り出す)。ノートの一部ですけど、こんなふうに名前を使われちゃう。秘書からすると、親父からカネを預かった。ところが抜いちゃえば領収書のないカネだし、わからない。

田原:これはいつ頃の?

上杉:これは内閣のやつなんで、ここの名前でわかると思いますよ。この政権時代の人ですね。

田原:中曽根さんだ、完全に。

上杉:そう(笑)。

田原:だから、これは最初いった、三浦さんに返したやつ。

上杉:で、このへんも・・・。

田原:こちらの資料はいつごろですかね?

上杉:このほうが後です。90年代後半のとこですね。

田原:90年代後半。

上杉:これはおそらく最後におっしゃった野中さんの時代のことです。これは渡した側で受け取りリストじゃない。渡しますといって、返ってきた場合もあるかもしれない。だからこそ、それぞれの方に当たってるわけです。

 受け取ってなかったら、いまの田原さんみたいに、受け取ってないよって説明してくれればいいのに、他の人はみんな怒って終わりなんですよ。

 僕も最初フラッシュの取材があった。フラッシュには「それ受け取ってないし、こういうシステムだよ」と答えた。中吊りにも疑惑の人として、上杉隆、三宅久之さんとあともう一人、三人で、ドンと名前が出たわけです。出たけど、受け取ってないからそれは堂々と名前を出して否定できるわけですよ。

 でも他の人が名前を出すなっていうことは、せっかく反論するチャンスなのになんでそんなこというのか、さっぱりわかんないんです。田原さんが考えてどうですか。






田原:そうね、怖いっていうことがあるんでしょう。

上杉:でも、こんな疑惑が掛かったならば、それこそ"政治とカネ"の説明責任じゃないですけど、率先して自分は違うよっていったほうがいいのに、なんで言わないのか。

田原:それはよくわかんないけれど、やっぱりそういう場合、受け取るのが常識だったからじゃないかな。さっきの「こどもの使いじゃないんだぜ」という話は何度もいわれましたよ。むしろ受け取らない私なんか無礼者なんですよ。

上杉:このリストの中で認めた方もいらっしゃるんです。認めた方は名前をいってもいいと思うんですけど、評論家の竹村健一さんと俵孝太郎さん、お二方は認めてます。まだ記事に書いていないんで名前は出せないんですが、論説委員でもお一人認めた方がいらっしゃっる。その方は、「確かにそうだった。申し訳ない」とはっきりいってる。

 「それをお返しするかどうかはこれから考える」と話しているんです。

 でも他の方は聞いた私がバカだったみたいな感じで、逆にあんなとんでもないヤツはいないということで、いま怒られてお叱りをいただいているんです。でも秘書ならいいんですが、ジャーナリストは貰っちゃいけないと思うんですよね。


仲間はずれにされた朝日の記者

田原:こうしたことは、小泉さんからなくなったかなと思ってる。

上杉:そうなんです。僕も取材していてあれって気づいたのは、小泉政権からシステムが変わったのかなということ。あと、まったくリストが出てこない政権がひとつだけあるんですよ。それが安倍(晋三)政権なんです。塩崎(恭久)官房長官です。リストはあるのかも知れませんが、まだ出てこない。

田原:だから、小泉さんから変わったんだよ。

上杉:あと、塩崎長官って非常に評判が悪かったじゃないですか。もしかして・・・。

田原:出さないからだ。

上杉:これはもう推測ですけど、出さないから評判悪かった。あれだけ塩崎さんを叩くのは、早くカネ出せといってるんじゃないかと。まだゼロとはいいませんが、2000年代になってから基本的には激減してる。前みたいにリストがどんどんあるという時代ではない。あと、全部シュレッダーにかけられてる政権もありますし。

 1966年に官房長官が国務大臣になって、官房機密費、報償費含めて、ある程度官房長官のところに集まりだしてから、平野長官まで含めると40人官房長官が出ているんですよ。40人のなかで直接配っている人は少ないんですが、秘書は記録を残すんですね。あと関連する役人は、役人のサガとしてやっぱり記録に残すんです。

 これは国民の税金なんです。国民の税金の使途をチェックするのはジャーナリズムの最低の使命だと、タイムズで習いました。その観点からも、外交、国防とか国益、国民の利益のために使われる機密費はいい。だけど、マスコミに賄賂として使われているというのは、出す側じゃなくて受け取る側に問題がある。

田原:野中さんが僕の名前を出してくださって、何人かから皮肉をいわれましたよ、あの新聞を見てね。

上杉:なんで田原さんが皮肉をいわれるんですか。自分だけいい子でいるっていうことですか。

田原:まあ、そういうこともある。そんなとこでへんに堅くならなくたっていいじゃないかっていう言い方なの。

上杉:要するに、取れと(笑)。





田原:うん、まあ取れとはいわないけどね。

上杉:さっきも言いましたが、朝日新聞の記者が受け取らなくなった時期があるんですよ。確かにそのときには秘書会のなかでも混乱を呼びましたね。料理屋や料亭に行って、記者をパーッと飲ませる食わせるするわけです。終わったあとに朝日だけはカネを置いていこうとするんですよ、割り勘ですって。

 無粋だからやめてくださいと、断るんだけど、それを繰り返すわけです。そうすると面倒くさいから、もう朝日を入れるのやめようとなるわけです。

田原:そうなっちゃうな。

上杉:出す側の感覚からすると、受け取らないのは本当に面倒くさい。同時に、あいつはカネじゃ動かないとなったときの手強さはやっぱりある。それはジャーナリストしては当たり前です。田原さんがカネで動かないからこそ、政権側から脅威に感じられたわけです、80年代の半ば、朝ナマ、サンプロのときから。

 その部分が抑止力としてあるからこそ、田原さんはいまの地位にいるわけで、受け取ったら終わりですよ。

田原:まあね。

上杉:メディアの問題なんですけど、受け取ったと思われる人をいま使っているわけですよ。普通だったらコンプライアンスの立場から、うちで使用しているコメンテイターとか評論家、有識者が、税金から取った可能性があると、官房機密費で賄賂を貰っていた可能性がある。

 さらにはもう時効でしょうけど、それが申告されていなかったら所得税法違反で脱税の可能性がある。そうすると、政治とカネだと追及しにくくなる。説明責任だと追及しても、自らに説明責任が掛かっているわけですね。普通、どこの企業も内部調査しますよ。なんで内部調査を全然しないんですかね。

田原:擁護するわけじゃないけど、そういうことが当たり前の世界でそれをやらないっていうのはね、やっぱり仲間はずれにされるからでしょう。

上杉:私も仲間はずれにはされていないけれど、どんどん場所がなくなっている。

田原:半分されているんじゃない(笑)

上杉:もう完全に(笑)。

田原:それが怖い。このリストに出てるのは評論家、フリーの人で、実はこんなの一部なんですね。本当は新聞記者やそういう人が多いですよ。

上杉:調べれば調べるほどびっくりするのは、記者クラブというシステムの中にこれが完全に入り込んでるんですよね。システム維持のために、どうも結果として使われてたんじゃないかと。

田原:そこまではいいませんけどね。新聞やテレビの記者たちは先輩が受け取っているから。先輩が受け取ったときにノーとはいえない、そして仲間が受け取ったときにノーともいえない。両方あるんじゃないかな。

上杉:あとテレビ、新聞の経営幹部は政治部出身が多いですよね。彼らの時代からすると当然ながら常識で、そこをいちいちいうつもりもないですけど、自分たちもやってたんで、下がやることに対しては目をつぶらざるを得ないということもあるんですかね。そうすると内部調査したら、おまえもだっていわれちゃう。

以降 vol.3 へ。

(この対談は6月3日に行いました)





田原総一朗×上杉隆vol.3 「鳩山マネーの秘密と小沢一郎の素顔」 誰も話さなかった「政治とカネ」のすべてを明かす | 田原総一朗のニッポン大改革 | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/673

田原総一朗×上杉隆vol.3 「鳩山マネーの秘密と小沢一郎の素顔」
誰も話さなかった「政治とカネ」のすべてを明かす

vol.1 はこちらをご覧ください。

vol.2 はこちらをご覧ください。

田原:僕は小泉さんから変わったと思ってる。小泉、安倍で変わったんですよ。

上杉:小泉さんから後ろは、正直いってあんまりないんですよ。裏懇で、個別に親しい記者に賄賂みたいに渡す、それはあるんですけど。これはもうどこの国でもある。ただ、半ば組織的にやられていたのは、田原さんおっしゃるように90年代くらい、細川政権くらいですかね。


■岡田克也事務所から逆流する胡蝶蘭

田原:いちばんやってたのは、僕は田中角栄さんだと思うよ。

上杉:70年代初頭。

田原:田中さんの伝統が続いたんでしょうね。

上杉:でも過去のことはしょうがないとしても、いま現在はそういう時代でもないし、世界中のジャーナリズムではやっちゃいけないとなっているんで、せめていま出ている評論家とか論説とか解説の方で、受け取ったと思う方は、自ら番組を降板するか筆を折るのが筋じゃないかなという気がするんですが、どうでしょう。

田原:そこがやっぱり世代の違いでね、上杉さん。僕らの世代だとね、あまりにも常識だったんで、いまになって降りろというのはね・・・。

上杉:静かに降りていただいて引退をする・・・。

田原:時代が変わったんで小泉以後ならね、それはもうはっきりいえますけどね。

上杉:でも、その人たちは過去やったことはやってしまったわけですし、政治も結果責任です。

田原:でもね、その人を見てりゃわかると思う。つまりね、本当に痛いとこは突かないとかね。

上杉:だから取材して当てるとわかるんです。

田原:そうでしょ。

上杉:だって、田原さん以外誰も出てきてないじゃないですか、正直いって。

田原:まあね、うーん。

上杉:永田町とかメディアの仲間内の常識はいいんですよ。ただ、その他大勢の1億何千万人の一般国民からしたら、私たちの税金、汗水流して働いたものを、なんでそんなことに使っているんだと。

田原:それは怒るのは当然です。

上杉:しかも受け取っておいて、なんでテレビとかで偉そうにいってるんだ、政治とカネとか、こんなのは税金の無駄遣いです、と。その人たちにいわれたくないっていうのが人情でしょう。

田原:それはそうですよね。民主党になったんで、僕は鳩山さんにもそのことをいったんだ。やっぱり公開するぞと、いますぐじゃなくとも30年後にとか、こういう約束すりゃあいいんですよ。





上杉:鳩山さんはいったん平野官房長官に全部オープンにしろと指示出したんです。何度も出したのに平野さんが出さない。ところが岡田外務大臣は調査して、上納金は2000年までありましたと、松尾事件でなくなりましたと公表した。それまでは何億円いってました、それ以降はありませんと、会見で発表したんですね。あとは官邸です。

田原:彼はね、ビシッとやる男。

上杉:すごいですね、あの人は。

田原:政治家にしちゃあね、ちょっとそこんとこが堅すぎる。真面目すぎるんだ(笑)。

上杉:海外からすると、岡田さん、やっぱり評判いいですよ。

田原:だからいいんですよ。

上杉:すごい評判いいですね。やっぱりそういうことができる政治家です。

田原:民主党が政権をとって初めて大臣になった人が多いじゃない。なぜか大臣になると議員会館にやたらと胡蝶蘭がくるんだそうです。どの大臣のとこも胡蝶蘭だらけなの。そのときにある大臣に聞いた。ひとつだけ逆流している胡蝶蘭があると。

上杉:えっ?

田原:みんな大臣のとこへ行くじゃない。ところが逆に部屋から出てくる胡蝶蘭がある。岡田は全部返してるんだと(笑)。

上杉:すごい。大臣が胡蝶蘭をもらえるのは、あれ、ご祝儀なんですよね。

田原:僕はね、岡田さんにいったことがある。せっかくきたのを返すのは、それはよくないよと。受け取らないっていえばいいじゃないかと。そしたら「だけどね、田原さん。受け取らないっていったら花屋が儲からない」と。

上杉:ああ。

田原:いっぺん運んできたら、それで渡したことになると。


■鳩山家の子供手当はどこに消えたか?

上杉:僕も秘書時代に、陳情をやったりするとやっぱりお返しが来るわけですよ。でも鳩山邦夫事務所は絶対に受け取っちゃいけなかったんで返しに行くんですよ。返さない後輩もいるわけですよ。そうするとそれに対して・・・。

田原:でも、あの人はお母さんから貰ったカネはどうなってるの?

上杉:えっ?

田原:鳩山邦夫さん。あれ、ちゃんと申告してるの?

上杉:このまえ申告しました。

田原:兄貴は申告しないけど、弟は申告したの?

上杉:二人とも申告して、税金を6億5000万円くらいずつ払いましたね。

田原:だけど、それまでは申告してないでしょ。

上杉:正直な話、申告をしてるとは思っています。あの二人、唐突に、本当に知らなかったといったんじゃないですか。

田原:いや、だけど、お母さんから貰ってることはわかってるでしょ。

上杉:貰ってるのはわかっていても額が違ったんですね。

田原:額は間違っても申告してなかった。

上杉:いや、それは申告してましたよ。

田原:以前から? 1500万円貰って。





上杉:最初は50万円だったんです、個人献金で。

田原:兄貴と弟は額が違うんだ。

上杉:一緒です。

田原:じゃ、1500万円じゃない。

上杉:結果として一緒だったんです。150万円は個人献金の限度額ですよね。もっと前の1996年の改正前は限度額がなかったときもあったわけです。

田原:2002年以後ですよ。

上杉:2002年以降、8年間の分に関しては、貰っていたという額の認識と途中で抜いて本人の手元に・・・。

田原:鳩山邦夫さんへ来る間に誰かが抜いてたんだ。

上杉:抜いてたんです。安子奥様から六甲商会に入ってそこが出すんです。そこからずっと同じ額が来てるから処理してると思っていた。ところが実は間で抜いている人がいたんです。鳩山家で、抜いている人をどうするかという議論になったんですけど、これはもう自分たちが足りない分を払おうと、検察にもいって払おうといって、それで終わったんです。

田原:自分たちが、きちんとしなかったのがよくないんだと。

上杉:やっぱり管理責任です。僕自身は、確かにその部分では脱税で追徴だろうと思うんですね。でも中で働いていた人間からすると、絶対本人は知らなかったよな、抜いたのはあの人だなってわかってますけど。

田原:あ、そう、わかるわけね。それは由紀夫さんも同じことがいえるわけね。

上杉:出てくるのは同じですから。安子さんが指示するところと、その間にポンポンと二つ入るんですけど、そこの人は一緒なんです。その人は逃げているわけですよ。

田原:相当抜いていたわけね。

上杉:とんでもなく抜いてましたね。十数億円、抜いてるんじゃないですか。でも、それを返せといったって、無いと。だったらこれは政治家としての自分たちの責任だということで払ったわけです。別に褒められたことじゃないんですよね、全然。

 で、ついでに申し上げると、官房機密費とは関係なく、鳩山家もそのなかから、いろいろ政治評論家とか、学者さんとか、記者におカネが出てたわけですよね。ピタッと報道が止まっちゃうのは、自分たちも貰ってるから書き様がないわけです。これも官房機密費と同じ構図なのかなと。


首相候補を待たせてピーターパンに行った小沢一郎

田原:でもね、よかったよ。今回のことで、誰ももう貰わないですよ。で、もう出さないと思う。官邸も官房長官も出さない。

上杉:僕は昔から官房機密費はあったほうがいいと思っているんですよ。

田原:もちろん。だからスパイとか、情報提供にはあったほうがいい。問題は、30年後に公開する、これなんです、いちばんいいのは。

上杉:外務省の岡田大臣はこの前決めましたね。

田原:菅さんになったら、僕はいおう、それ。

上杉:正直いって、菅さんはまったくこういうことに関して意識低いですよ。あの人、情報公開とかいいながら全然やらないですし、記者会見だって結局1回もオープンにせずに財務大臣を終わっちゃうんですよ。





田原:明日(6月4日)決まるでしょうけど、官房長官が誰になるか、ですよね。幹事長が誰になるか。ここがポイント。僕はね、小沢色はそう濃くない布陣にすると思う。小沢色が濃ければ濃いほど選挙で負けますよ。選挙までは小沢さんは、きっとあんまり小沢色を濃くしようとは思わない。選挙の後ですよ、どうなるかは。

上杉:小沢さんはどうなんですかね。鳩山さんは小泉さん同様政界引退を決めましたよね。小沢さんも辞めちゃうんじゃないかっていう気もするんです。

田原:僕は小沢さんもよく知ってますけどね、小沢さんというのはよくわかんない政治家ですよ。いろいろ画策をする面もあるし、あっさりやめる面もあるんですよ。具体的にいうとね、例えば、細川護煕内閣のとき、小沢さんがやりたかったことはふたつしかなかったんですね。彼は政策面はいっさい関心がない。

 彼がやりたかったのは社会党の分裂と自民党の分裂なんです。両方とも失敗するんですがね。自民党を分裂させるために、細川さん次に羽田さんじゃなくて、渡辺美智雄さんを据えようとするんです。

 あのとき、小沢さんは渡辺さんに「あなたにする」と言った。渡辺さん、すっかりその気になる。それで、ある日曜日の午前、例えば9時とか10時に、渡辺さんが小沢さんのところに行くことになってた。ところが、当時不眠症だった渡辺さんは、前の晩なかなか眠れなくて、娘さんに睡眠剤を注射してもらう。

 それで翌朝、寝過ごしたんです。で、二人の間に入ったのが、大阪の中山正暉。彼から詳しく聞いたんです。

上杉:中山太郎さんの弟さんですね。

田原:ところが、渡辺さんは寝過ごしちゃった。中山正暉に電話が掛かってきて、これから小沢さんのところに行くんだけど、ちょっと謝ってくれないかと。小沢さんとこに電話したら、ピーターパンというミュージカルを見に行っちゃった。つまり、昼までっていう約束で来ないから行っちゃったと。

 なんでミュージカルに行くんだと。それで小沢さんに直接聞いた。「そんな重要なとこで、なんであんたね、ピーターパンに行っちゃうんだ」と。実はそのとき、外務大臣だった羽田さんが海外に行ってたんですよ。

 小沢さんは「羽田さんが昼に帰ってくる。帰ってくるまでは自分の権限だが、帰ってきた午後はもう俺に権限はないんだ。だからピーターパンに行ったんだ」と、本人が喋ってるんですよ。本当かねえと思った。

上杉:本当ですか。

田原:だから小沢さんはよくわかんない。

上杉:今回もちょっとわかんないんですよね。

田原:今回もね、朝日新聞と読売新聞が逆なんですね。朝日新聞は、鳩山さんが小沢さんに辞めろといった。読売新聞は小沢さんが鳩山さんをリードしたと。

上杉:取材して、僕はどうもこの件に関しては読売じゃないかと。あるいは、あの人は自
分で鈴を着けても自分のせいにされるのは嫌いますよね、会って鳩山さんが辞めるといっちゃったら、俺が辞めさせたってなるのが嫌だから、小沢さんが仕向けて鳩山さんがそれに乗っかっちゃったのかなと。





田原:そこが難しいのは、小沢さんがやったんだというのは、多分、小沢さん及び小沢さんの側近の人たちの話なんです。小沢さんと側近が本当のことを言っているかどうかわかんないですね。

上杉:また側近も何人もいます。取材をしてても微妙にずれる。それぞれが利害関係というか自己顕示も入ったりして、微妙に話がずれるんですね。なかなか難しい。小沢さんの超側近、小沢事務所の秘書、樋高(剛・衆議院議員)さんとか昔からの秘書仲間ですけど、そういう人たちはいっさい何も喋りませんから。

 いちばん驚いたのは、新進党時代、海部さんを担いで小沢さんが幹事長、鳩山邦夫さんは当時広報局委員長だったんです。僕はその下の事務員をやってたんです。公明党も入ったんで創価学会系の秘書もいる。同じ党だから仲間なわけです。秘書同士って集まると、親父の悪口っていうか愚痴を聞いてもらったり、同じ党の派閥で情報を確認し合うわけですよ。

 情報を確認し合わないと危ないわけですね。それなのに小沢事務所の秘書だけは、いつも聞きに来るんだけど情報を何もいわないわけですね。しかも冗談で、あのジジイがとか何とかいってみんなで笑ってるのに、小沢事務所の秘書だけは一言もそれに入ってこなかった。本当に徹底して忠誠心っていうのがあるんですよね。これはすごいなと思いました。

田原:和歌山出身の中西啓介、彼は小沢さんの本当に超側近だった。小沢一郎ってどういう男って聞いたら、「普通のトップは何かやれというとき一から説明して、だからこれをやれという。

 小沢さんはいきなり十をいう。一から九は、おまえら考えろ」と。で、いっさ説明しない。それで間違えたら、こいつは無能だと。これが小沢一郎だと言ってましたね。

上杉:確かに小沢事務所の秘書って自分で考えますよね。

田原:一から九まで自分で考えなくきゃいけない。

上杉:この前、検察は、小沢事務所で小沢さん指示した、指示したとやりましたけど、あんなのがあり得ないのは、秘書がピラミッドを作ってヒエラルキーができあがって、下の秘書が上の秘書のいうことを聞かなくちゃいけないんです。小沢さんに話ができるような事務所ではありません。

 それを完全にシステムとして作っているんで、下の秘書が小沢さんのことをいうなんてことはあり得ない。それは小沢さんに対しての恐怖じゃなくて、システムに対する恐怖なんですよね。

田原:軍団なんですよ。

上杉:正直いって、あのへんは立花隆さんは完全に間違えているなと思った。小沢さんが指示したって、僕はその光景って見たことないですから。秘書には優しいですからね。


■竹下登が明かした田中軍団の秘密

田原:亀井静香さんが僕にいったことがある。

「田中派っていうのは軍団だ。軍団っていうのはシステムとしてきちんとできてる。つまり上官の命令は必ず聞く。そのかわり上官の命令を聞いていればカネは全部くれる。選挙もみんな応援してくれる。福田派はサロンだ。サロンだから何でもいえるが何もしない。ほっといたら大臣にもなれない、カネも集まらない。だから福田派はみんな自分で集めなくちゃいけない」

 と、こう亀井さんはいってた。





上杉:田原さんのその記事を読んだことある。確か田中派の秘書は汚いって書いてたのかな、僕は実はそこは反論したんです。僕も田中派の秘書の流れを汲むピラミッドの中にいたんですけど、鵜飼いの鵜じゃないですけど下のほうの秘書は自分で取れないんですよ。全部上納するわけですから、軍団は全然汚くなくないと怒ったんですよ。

 一方、清和会の秘書ほど汚い秘書はいない、全部ポケットに入れちゃうんです。

田原:サロンだから、上下関係もないんだから。

上杉:福田派の秘書は上納しないんですよ、抜いちゃうんですよ。

田原:竹下登さんも、「田原さんねえ、田中軍団強いって当たり前だろ。他の派閥の領袖ってたかだか1年間で20億だ」と。「田中派は俺が30億。その上に角さんが15億くらいくれる。2倍以上だ。だから強いんだ」と、自慢してた。

上杉:鳩山由紀夫さんが田中派なんですね。秘書時代に聞いたんですけど、何で自民党を辞めたんですかって聞いたら、由紀夫さんがいちばん言っていたのは、武村さんと一緒に氷代を取りに行ったときに、金丸先生かな、百万円の束をホイホイホイって渡されたらしいですよ。

 そのときは議員ですから受け取ったんですけど、受け取りながら、なんかこれおかしいなと思ったと。そのときの気持ちが最終的にユートピア研究会から離党という動きになった。それは田中派のシステムに対して疑問を持った初めての世代だったと、由紀夫さんはよく話してくれて、ああいう政治はおかしいよと。

田原:例えばね、早坂茂三さんが僕にいってた。鉄道弘済会のキヨスクで売ってる紙袋、あの袋はひと袋で1億入るんだってね。

上杉:ビニールの二重のやつ、あれ5000万じゃないですか。

田原:いや、1億だって早坂さんに教えて貰った。それで「それを俺なんかな、ふた袋持ってな、配りに行くんだ」って。

上杉:いや、これ難しいな、発言が(笑)。あれ、5000万じゃなかったですか。

田原:いや、知りません。僕、持ったことないからわからない。

上杉:ぼくも聞いた話ですけど(笑)、億になるとゴロゴロのトランクになるんです。いや、時代が違うのかな。

田原:時代が違ったって同じだよ。

上杉:1億円、入るかなあ。入りますかね。

田原:いや、わかんない。試したこともないから、わからないけどね。

上杉:僕も試したことないはずですけどね(笑)。

-了-

(この対談は6月3日に行いました)







 どこか自慢気に自分は貰っていない(返した)などといっているが、そのような実態があったにもかかわらず、それを野中広務氏が明かすまで見て見ぬふりをして、国民に伝える務めを一切してこなかったのだから、ジャーナリストを名乗るのも烏滸がましいとしかいいようがない。政治家から賄賂を貰っていたにもかかわらず名乗りでない記者たちを批判してもいるが、彼らは、田原総一朗氏ほど、厚顔無恥ではないというだけのことである。
 また、小泉政権以降はこうしたことはなくなったともいっているが、それが事実だとするならば、メディアを篭絡する手段はほかに幾らでもあるということである。小泉政権をずっと援護しつづけてきた田原氏であれば、その手段をよく知っているはずである(笑)。それに関しては依然としてだんまりを決め込んでいるのだから、やはりジャーナリストではなく、電波芸者としかいいようがない。





◆関連
Togetter - まとめ「マスコミは官房機密費の賄賂漬けでズブズブだった!!『現代ビジネス緊急対談「田原総一朗×上杉隆」 民主党政権について』のツイートをまとめました。」
http://togetter.com/li/26654
 

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