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原発作業員の自己末梢血幹細胞採取は正当化されるか?
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/476.html
投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 09 日 00:09:59: 6WQSToHgoAVCQ
 

rom MRIC

  □ 原発作業員の自己末梢血幹細胞採取は正当化されるか?(前編)

   ■ 谷本哲也:谷口プロジェクト事務局

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 ■from MRIC
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【初めに】
 我々は、今回の福島第一原子力発電所の災害について、原発作業員の方々が不測の
事態の発生により急性放射線症候群に陥ることを危惧し、事前の自己末梢血幹細胞の
採取・保存を3月末から呼びかけて来た(通称、谷口プロジェクト)。この提案に対
し、国内外で賛否両論が巻き起こり、2ヶ月あまり経過した今も決着を見ていない。
このような新しい試みに対してコンセンサスが得られにくいのは当然であり、あらゆ
る角度から十分検討を行った上で、敢えて選択しないとの立場を取ることも十分考え
られる。ただし、原発事故は現在進行形であり、いつまでも議論ばかりしている訳に
は行かないことは、原発作業現場と同様に医療現場で働く人間は十分承知している。
このため、虎の門病院、国立がん研究センター中央病院や日本造血細胞移植学会の関
連施設では、希望者が出た場合は即時に対応可能な態勢を当初からとっており、現在
もそれを維持し続けている。本稿では、谷口プロジェクトが「正当化されるか?」、
という側面から、前編では安全性について、後編では提案後2ヶ月間の経過について
叙述し、皆様の判断材料として提供させて頂く。

【谷口プロジェクトに対する意見公募】
 なお、谷口プロジェクトに対し、意見論文投稿(日本語の場合4000字以内を目安、
他言語も可、MRICもしくは谷口プロジェクトのHP上で掲載、投稿者名は実名で公開と
させて頂きます)及び公開討論会開催に向け登壇者を公募させて頂きます(締め切り
:2011年6月30日、連絡先: savefukushima50@gmail.com )。

【健常人に対する医療介入】
 医療行為において副作用が生じることは避けられない。医療行為以外で勝手に他人
に薬を盛ったりメスを入れたりすれば犯罪となる。患者の病を癒すという目的のため
に、薬物投与の副作用や外科治療等に伴う傷害が医療行為では正当化される。医療行
為による副作用のリスクより、治療効果というベネフィットが上回るという想定で医
療介入が許されるのだ。ところが病気を持たない健常人ではどうだろうか。原発作業
員は基本的に病気を持たない健常人のはずだ。健常人に薬物投与や外科行為などの医
学・医療上の介入が許されるのは、例えば医薬品を開発するためのボランティアだっ
たり、患者に臓器を提供するドナーだったりと、ごく特殊な場合に限り社会的に許容
されている。

【末梢血幹細胞採取とは】
 谷口プロジェクトで行う末梢血幹細胞採取は、血液疾患の治療で健常人ボランティ
アドナーに用いられる手法と同じものだ。かつては骨髄にある造血幹細胞を、全身麻
酔下で骨に穿刺し骨髄を直接取り出す方法が行われてきた。この方法は現在も行われ
ているが、1990年代に入りG-CSFという薬剤による新たな採取法が開発され、この薬
剤を数日間皮下注射した後に、末梢血から血液成分分離装置により採取するという方
法が世界的に普及した。これが末梢血幹細胞採取と呼ばれる方法である。健常人での
G-CSFによる末梢血幹細胞採取それ自体は、日本を含む世界中で、血液疾患患者に対
するボランティアドナーに対して日常的に行われている診療行為である。健常人がボ
ランティアドナーとなった場合、採取後の細胞をそのまま患者に提供する形となる。
採取には当然種々の副作用が生じるが、患者の治療のためのボランティアということ
で、現在では世界中で社会的に許容されている。もちろん、一足飛びに認められた訳
ではなく、数多くの議論や長年のデータの蓄積があった上でのことである。他の多く
の医薬品や医療機器等と同様、日本では世界から年単位のラグがあったものの、血液
疾患患者の血縁者の健常人ドナーからの末梢血幹細胞採取は2000年より保険適応の医
療として認められた。また、2010年には非血縁者間、つまり骨髄バンクドナーでも末
梢血幹細胞採取を行うことが公的に認められた(1,2)。

【原発作業員からの採取】
 谷口プロジェクトとは、この末梢血幹細胞採取を原発作業員が自分自身のために行
い、将来の事故に備え保存するという提案だ。各種報道を見る限り、この未曾有の原
発事故の収束の見通しは、残念ながら未だ立っていないと考えざるを得ないだろう。
散発的な小規模の"想定外の"被曝事故はあるものの、今のところ高度の急性放射線症
候群に至るような大事故は発生していない。しかし今後、予定外の汚染水が増える梅
雨時や台風、熱中症が危ぶまれる真夏を無事乗り切り、余震や津波の発生なく工程表
に沿って安定化作業が進められるのか、原発作業員の方々が持つ業務上のリスクを
我々医療者が正確に見積もるのは困難である。一方、谷口プロジェクトを実施した場
合のリスク、安全性はどのくらいあるのだろうか?健常人ボランティアドナーと違い、
原発作業員の場合は、他人に提供するのではなく、自分の将来の不測の事故に備えて、
自分のために細胞を保存することになる。自己末梢血幹細胞採取に伴うリスクは正当
化されるのだろうか?

【谷口プロジェクトの安全性について】
 谷口プロジェクトでは、世界中で数万例以上の健常人に実施され、その安全性が長
年確認されてきたG-CSFを使用する通常の方法(3)と、採取の期間を短縮するために
国内では未承認の薬剤(モゾビル)を併用で用いる方法(4)とを用意している。採
取を行うか否かは戦略の問題だ。G-CSFのみを使うかモゾビルを併用して使うかは戦
術の問題と言える。時間的余裕があれば、5日程度かかるものの前者の標準的な方法
が望ましいと考える。この標準的な方法については、最も専門性を有する日本造血細
胞移植学会からも健常人からの採取ガイドラインが公表されており(5)、日本全国
の専門施設で実施可能な方法である。G-CSFは世界中で健常人では数万人以上、癌患
者も含めれば数千万人以上に長年使用されているごく一般的な薬剤である。

 一方、作業を何日間も離れることは許されないという場合を考慮し、国内未承認の
薬剤を3月の時点では緊急避難的に用意した。この薬剤、モゾビルは、海外では一部
の悪性腫瘍患者で承認され一般的に用いられているものの、健常人への使用は海外で
も適応外の方法となる。本邦での未承認薬の使用には様々な議論、批判がある。モゾ
ビルは比較的新しく開発された薬剤で、健常人での使用経験は限られ(6,7)、癌患
者まで含めても世界で数万人程度までしか使用例がないかもしれない。このため、
G-CSFと比べれば、未知で重篤な副作用が生じる可能性は否定できず、長期的な影響
も不明である。谷口プロジェクトにおいて、万が一モゾビルによる重篤な副作用が生
じた場合は、世間から途方もない非難を受けなければならないだろう。G-CSFを使用
した通常の方法で採取するのか、ある程度のリスクは承知で採取期間短縮を優先させ
モゾビルを使用して採取するのかは、医学的な判断のみではなく、実際の作業状況等
も含めた総合的な判断で選択を行う必要がある。

【副作用の問題】
 使用データが豊富にあるG-CSFの場合、軽度だが多くに見られる副作用は、腰痛、
骨痛、関節痛、筋肉痛、頭痛、発熱、倦怠感などであり、これらは通常の解熱鎮痛剤
などでコントロールされる。また、どの薬剤にもつきものだが、まれにアレルギーに
よるショックが起こることもある。1%未満だが重篤なものとしては、間質性肺炎、狭
心症様発作、脳血管傷害、脾破裂といったものがあり、過去海外で11例の採取関連死
亡が報告されている(8)。重篤な副作用など臨床的に問題となるケースは、もとも
との病気があったり高齢であったりする場合が多く、採取が実施可能かどうかは事前
の検査を入念に行う必要がある(3)。

 モゾビルは2008年に米国で初めて承認され、欧州や韓国などでも既に用いられてい
る。主な副作用は、下痢、悪心、疲労、注射部位反応、頭痛、関節痛、嘔吐、めまい
等だ。また、皮下投与後に、血管迷走神経反応、起立性低血圧症、失神も起こり得る
とされる。重篤な有害事象として、心筋梗塞と肺炎の発生例も報告されている(4)。

 血液成分分離装置を用いた採取(アフェレーシス)は、通常の骨髄採取と異なり、
全身麻酔を必要としない。主な副作用は、全身倦怠感、クエン酸中毒による四肢のし
びれ、めまい、吐き気、嘔吐、一過性の血圧低下、採取後の血小板低下などだ。この
採取法は、ボランティアからの成分献血の際にも広く用いられており、副作用に対す
る対処法は既に確立している(9)。

【白血病発症リスク増加はあるのか】
 一番気になるのは、谷口プロジェクトの実施前または後に福島原発の作業環境下で
被曝した場合の白血病等の造血器疾患発症リスク増加の程度だろう。G-CSFが造血細
胞に作用するからだ。G-CSFを使用した場合の、通常の健常人ボランティアドナーで
の発症リスクは、国内外で長年検討されており(10,11)、国内でも血縁ドナーの
データを長年検討した結果、健常人でのリスク増加はほぼ否定され、前述のとおり昨
年より日本骨髄バンクのボランティアドナーでの実施も認められた(1)。では、原
発作業員ではどうかというと、残念ながらそのようなことを検証したデータはどこに
もない。チェルノブイリの時代には存在しなかった医療技術だ。若干参考になるのは、
癌患者で治療に用いる量の抗癌剤や癌に対する放射線療法とともに、G-CSFを治療で
使用(谷口プロジェクトより低い用量で長期間)した場合、大雑把に言って0.4%程度
の発症リスク増加があるとされていることだ。我々もその研究の第一人者であるデュ
ーク大学のライマン教授に直接見解を確認した(12)。谷口プロジェクトではG-CSF
の使用は高用量だがごく短期間であり、癌患者ではなく健常人、抗癌剤の使用はない、
ということを考慮すると、G-CSF投与に伴う実際のリスク増加はこの0.4%よりはずっ
と低いと予想される。もし影響があるとすれば、通常の健常人ドナーよりも放射線被
曝が加算される分だけわずかにリスクが上昇するかもしれない。ただし、これは数千
人規模を何年も長期間にわたって追跡しても証明することが困難な、理論上のリスク
と思われる。また、100 mSvを超える作業被曝自体で白血病等の発症リスクが上昇す
ること、薬剤の影響は採取終了後の休息期間を長くとればとるほど無くなるというこ
とも指摘しておきたい。

【残された課題】
 谷口プロジェクトには未解決の課題も数々存在する。まず、採取費用の負担だ。政
府、東電、原子力安全委員会などが反対している状況下では、原発作業員個人が負担
しなければならない。また、採取した造血幹細胞は、原発の作業終了後6ヶ月間まで
の保存を予定している。保存にもコストがかかるからだ。さらに長期間の保存の要望
が出た場合の対応は未定である。万が一採取の過程で重篤な副作用が生じた場合の補
償問題も残されている。さらに、最も重要なのは、愛媛大学大学院の谷川武教授が要
望されているような、原発作業員に対する総合的かつ長期的な健康管理体制の構築だ。
しかし、「厚労省に予算化を求めたところ、「『今年は無理。来年来て下さい』と言
われた」とのことで、現時点では難色を示されているという。」との報道がなされて
いるのが現状だ(13)。

(後編に続く) 原発作業員の自己末梢血幹細胞採取は正当化されるか?(後編)

   ■ 谷本哲也:谷口プロジェクト事務局

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 ■from MRIC
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【国内外の反響】
 末梢血幹細胞採取は、血液内科専門医にとってはごく日常的な医療処置だ。しかし、
医師であっても専門外であれば、あまり正確に理解されていないのが実情だ。これは
医療が高度化し進歩が著しい現代に生きる医療者にとって、ある意味やむを得ないこ
とだ。このため4月15日、我々は世界中の一般の医師を広く読者に持つ医学専門誌ラ
ンセットに谷口プロジェクトについて発表し、国内外の多数メディアがそれを報道し
た(14)。また、原発作業員の方々やそのご家族に分かりやすく説明する必要性も
あったことから、5月3日から5日にかけMRICで一般向け解説文を発表した(15)。こ
の文章は、村上龍氏の主催するメールマガジンJMMでも配信された。この反響はすさ
まじく、我々のホームページは平常時で300 visits/day程度なのが、ピーク時には
17,202 visits/dayと50倍以上に増加し、一般の方々から多数の寄付の申し出も頂い
た(注:寄付は現在のところ受け付けておりませんが、この場を借りて皆様に厚く御
礼申し上げます)。また、糸井重里氏(16)、伊東乾氏(17)、池田香代子氏(18)、
江川紹子氏(19)、宮台真司氏(20)など言論人の方々からもコメントを頂いた。

【谷口プロジェクトに対する意見公募】
 なお、谷口プロジェクトに対し、意見論文投稿(日本語の場合4000字以内を目安、
他言語も可、MRICもしくは谷口プロジェクトのHP上で掲載、投稿者名は実名で公開と
させて頂きます)及び公開討論会開催に向け登壇者を公募させて頂きます(締め切り
:2011年6月30日、連絡先: savefukushima50@gmail.com )。

【政界の動き】
 さて、谷口プロジェクトについては、国内外で賛否両論あり、2ヶ月が経過した今
も国内のコンセンサスは得られていない。原子力安全委員会は谷口プロジェクトの提
案直後から、「(1)作業員にさらなる精神的、身体的負担をかける、(2)国際機関での
合意がない、(3)十分な国民の理解が得られていない」との理由(21)で反対を続け
ている。4月25日に舛添要一議員が菅直人首相に代表質問した際にも、原子力安全委
員会の見解を根拠に必要ないとの判断が示された(22,23)。他にも、石橋みちひろ
議員(24)、柿沢未途議員(25)、福田衣里子議員(26)、森ゆうこ議員(27)らが
質問を行っているが、いずれも政府からは否定的な見解が出されている。

【国内外の専門家からの反論】
 チェルノブイリ等でも診療にあたったロバート・ゲイル博士は、3月の来日当初は
谷口プロジェクトに賛意を示していたものの、その後何らかの理由により反対に転じ
(28)、5月30日時点で筆者が面会し直接尋ねた際も依然として反対しているとの意
見を頂いた。公開討論を申し込んだところゲイル博士から直接の了承が得られたが、
直前になり時間がないとの理由で何故か突然キャンセルとなった。ただし、ゲイル博
士の弁によれば、谷口プロジェクトに対する博士の見解が、近日医学専門誌ランセッ
トに発表されるとのことであり、我々もその後の福島原発の最新状況を踏まえた追加
論文を準備している。国内の専門家としては、東札幌病院副院長の平山泰生先生から、
コスト面から考えても日本学術会議の見解(不要かつ不適切)が支持される旨の提言
が公表されている(29)。コストに関しては、末梢血幹細胞採取を通常診療で行うと
1件当たり40-50万円程度となり、仮に1000人採取した場合、その実費は単純計算で
5億円程度となる(谷口プロジェクトでは製薬会社等からの寄付により、虎の門病院
で採取した場合の費用負担を1件当たり10万円程度としている)。原発処理にかかる
途方もない費用を考えると、採取費用負担も重大な問題の一つだが、東京電力の2009
年度の広告費が250億円と報道されていることも鑑みる必要があるだろう(30)。な
お、2009年から10年に新型として世界中で流行したインフルエンザA09年型のワクチ
ンでは、国内4社から購入された約3100万人分の国産ワクチン約149億円分が有効期限
切れで廃棄、海外メーカー2社に対しては9900万人分の輸入契約で支払額は違約金も
含め853億円、その輸入ワクチンのほとんどが廃棄されたとの報道がある事実も記憶
に新しい。また、厚労省関係では医系技官の寺谷俊康氏が、「良かれと思っても、思
いつきだけで医療行為をすることは現代においては人体実験や呪術的行為にすぎませ
ん。これまでの医学の歴史をみれば悲惨な事件が起きてきました。」との見解を、
2名の東電社員が250 mSvの上限を超える被曝をしたことが報道された直後の6月3日に
twitter上で示している(31)。

【日本学術会議等との公開討論会に向けて】
 「わが国の科学者の代表機関」と位置付けられる日本学術会議は、「原子炉事故緊
急対応作業員の自家造血幹細胞事前採取に関する見解」として、「不要かつ不適切」
との声明文を、菅首相に対する舛添議員の代表質問と同日の4月25日に発表した
(32)。我々は、4月28日に日本学術会議の金澤一郎会長に、意見書と公開討論会開
催の申し込みを直接手渡し(33)、開催を検討する旨の返答を頂戴した。しかし、そ
の直後、5月2日になって、「1.議論を行った委員会の名称が間違っていたので、
「放射線の健康への影響と防護分科会」を「基礎医学委員会・総合工学委員会合同放
射線・放射能の利用に伴う課題検討分科会」に修正、2.一部、引用文献が不適切
だったため、当該論文を引用した文章を削除、3.「高度に専門的な知見を含む課題
であるので、日本血液学会内で、倫理的な側面を含めて十分議論され、できれば統一
的見解を示されることを期待する。」ことを追記」(34)との修正が発表された
(17)。なお、削除された文献は前編で紹介したデューク大学のライマン教授のもの
だが(12)、健常人における白血病発症リスクについては一言も触れられていない。
谷口プロジェクトに関わる科学的な議論については、愛媛大学大学院の谷川武教授が
招集役となり、日本学術会議等の専門家を含めた公開討論会の開催準備が進められて
いる(13)。

【国内の他団体からの意見】
 一方、造血幹細胞採取に関しては最も専門性を有する日本造血細胞移植学会から
3月29日付で「福島原子力発電所事故の作業者に対し、今後の長期化する作業に対応
し念のために自己造血幹細胞保存が望ましいとされた場合、学会はその医学的、社会
的妥当性を検討した上協力します。」(35)、国立がん研究センターからは「被ばく
線量が 250 ミリシーベルト以下での職場環境が保たれない場合は、 自己の末梢血幹
細胞を保存しておくことを提案する。」(36)との声明が出されている。日本造血細
胞移植学会は、5月23日にも追加声明を出し(37)、「原子力発電所事故の修復作業
が長期化し、且つ本学会が要望した作業者の放射線被曝に関わる詳細な情報開示が遅
滞している現状において、今後作業者等が高い放射線被曝をする可能性を完全に否定
することは出来ないと判断します。従ってそのような事態が想定される事例を対象と
した自己造血幹細胞採取・保存を可能とする体制を維持します。」とした上で、日本
学術会議の見解に対する反論を公表した。日本学術会議から指名された日本血液学会
からは、現在のところ見解が公表されていない。なお、テロリズム対策の一つとして
海外からの関心も高く、ヨーロッパの専門学会等で谷口プロジェクトが議題の一つと
して大きく取り上げられていることも申し添えておく。

【初めて自己末梢血幹細胞採取を行った原発作業員:鈴木智彦氏】
 このような混沌とした状況の中、週刊ポスト誌6月10日号で、「僕は原発作業員
「精子を取りに行かなくちゃ」衝撃の潜入ルポ」(38)、週間文春誌6月9日号で「最
大のタブーに切り込んだ!原発作業員とヤクザ フクシマ50に暴力団員がいた」(39)
という記事が発表された。これらの原発ルポは、本当の現場を知る者にしか書き得な
い迫力に満ちている。記事を執筆した鈴木智彦氏は、暴力団取材に精通し、「潜入ル
ポ ヤクザの修羅場」(文春新書)や「ヤクザ1000人に会いました!」(宝島社)等
の著者で知られるライターでもある。鈴木氏は虎の門病院に入院し、G-CSFによる自
己末梢血幹細胞採取を無事終了し6月6日退院した。鈴木氏のような人物が谷口プロ
ジェクトの採取第一号となり、人類史上初めて自己末梢血幹細胞の事前採取・保存後
に原発事故作業へ向かう人間となったのは象徴的な出来事である。

【終わりに】
今回の活動を通じ、日本では公開で議論して方針決定する土壌が不十分であるという
事実を我々は痛感した。谷口プロジェクトに対する批判があることは、非公開の会議
や匿名のインターネットメディアなどでは多少見聞きするが、固有名詞が公開されて
いるものは前述のごく一部の有識者に限られている。また、政府答弁などでも反対と
する根拠が不明確であり、反対する真の理由が明示されておらず、議論が尽くされて
いないと感じる。日本では公開の場で徹底的に議論するという習慣が少なく、科学的
議論が必要とされる場合であっても、物事は場の空気で決められることが多い。個人
が決定の主体になることを回避するという文化は、日本の長い歴史の中で育まれた智
恵でもあり、一概に否定する必要はないだろう。平時であればその方がよい場合もあ
る。しかし、日本の行く末を左右するこの非常事態においては、公開の場での議論を
十分に行い、歴史史料として残す必要があると考える。特に反対意見を持つ皆様から
は是非とも実名かつ公開での議論にご参加頂き、あらゆる立場からの意見を踏まえた
上で、日本の将来にとって最善の意志決定がなされることを我々は望んでいる。

小説家の村上春樹氏は、エルサレム賞・受賞のあいさつ「壁と卵」で、多くの反対意
見を押してイスラエル訪問を敢行した理由についてこう語っている。

「なぜなら小説家というものは、どれほどの逆風が吹いたとしても、自分の目で実際
に見た物事や、自分の手で実際に触った物事しか心からは信用できない種族だからで
す。」

谷口プロジェクトには残念ながら小説家はいないのだが、我々も同じ種族に属するよ
うだ。

引用URL
(14) http://www.savefukushima50.org/?p=750&lang=ja
(15) http://www.savefukushima50.org/?page_id=787&lang=ja
(16) http://www.savefukushima50.org/?p=858&lang=ja
(17) http://www.savefukushima50.org/?p=1121&lang=ja
(18) http://www.savefukushima50.org/?p=795&lang=ja
(19) http://www.savefukushima50.org/?p=856&lang=ja
(20) http://www.savefukushima50.org/?p=994&lang=ja
(21) http://www.savefukushima50.org/?p=558&lang=ja
(22) http://www.savefukushima50.org/?p=608&lang=ja
(23) http://www.savefukushima50.org/?p=637&lang=ja
(24) http://www.savefukushima50.org/?p=1116&lang=ja
(25) http://www.savefukushima50.org/?p=1118&lang=ja
(26) http://www.savefukushima50.org/?p=365&lang=ja
(27) http://www.savefukushima50.org/?p=1223&lang=ja
(28) http://www.savefukushima50.org/?p=542&lang=ja
(29) http://www.savefukushima50.org/?p=1160&lang=ja
(30) http://www.savefukushima50.org/?p=967&lang=ja
(31) http://www.savefukushima50.org/?p=1220&lang=ja
(32) http://www.savefukushima50.org/?p=640&lang=ja
(33) http://www.savefukushima50.org/?p=742&lang=ja
(34) http://www.savefukushima50.org/?p=797&lang=ja
(35) http://www.savefukushima50.org/?p=436&lang=ja
(36) http://www.savefukushima50.org/?p=1158&lang=ja
(37) http://www.savefukushima50.org/?p=1014&lang=ja
(38) http://www.savefukushima50.org/?p=1131&lang=ja
(39) http://www.savefukushima50.org/?p=1187&lang=ja

【筆者プロフィール】
谷口プロジェクト事務局
谷本哲也

平成9年九州大学医学部卒
独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査第一部
公益財団法人がん研究会がん研究所嘱託研究員
日本内科学会認定総合内科専門医
日本血液学会認定血液専門医
注:本稿は筆者個人の文責によるものであり、所属団体を代表するものではない。

連絡先:savefukushima50@gmail.com

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コメント
 
01. 2011年6月09日 10:24:29: WwoKGTywbs
本筋とは関係ないところで一言。

「なぜなら小説家というものは、どれほどの逆風が吹いたとしても、自分の目で実際
に見た物事や、自分の手で実際に触った物事しか心からは信用できない種族だからで
す。」

この村上氏の小説家観自体には別に異論は無いが、それならば受賞を拒否した上で、イスラエルを実際に見に行き、血が染み込んだパレスチナの土地を実際に自分の手で触れてくればいいのに…と思ってしまう私はあまのじゃく。

なんか、中国接待旅行に行っていたジャーナリストの言いわけに似ているなあ。


02. 2011年6月09日 11:20:49: FQuprmjf0A
作業員のリクルートが限界に近付いてきている。ゴミマスコミがいかに原発作業員を持ち上げようとも彼らゴミマスコミにはプロパガンダの能力しかない。本当に待遇を改善しようともしない。彼らに人集めの能力はない。

東電は自己の負担を減らすことに腐心するのみ。今のままでは事態が改善する方向は見えない。


03. 2011年6月10日 00:26:18: 9ifGCobs7o
ひとがひとにできることは、そんなにたくさんない。私たちにできるのは血を採って保管することだけ。自費でもなんでも、あなたの幸せに役に立つと思うなら、ここでできます、と読みました。
これはあそこで働かせる人が働く人のために最低限やっておくべきことではないでしょうか。
深刻な被害が起きたあとに、やっておけば…といっても遅いのです。
菅さん、東電さんしっかりして、まだ原子力非常事態宣言中なんでしょ!

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