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東日本大震災:福島第1原発事故 循環注水冷却、完全移行1週間 収束「天候頼み」
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110709ddm008040012000c.html
毎日新聞 2011年7月9日 東京朝刊
◇水漏れ/余震/台風リスク
東京電力福島第1原発で、浄化した汚染水を原子炉に注水して冷却する「循環注水冷却」へ完全移行して8日で1週間を迎えた。早期の事故収束には、原子炉冷却と汚染水削減の両方の役割を果たす循環注水冷却の安定運転が不可欠。しかし、2カ月弱の突貫工事で建設されただけに、水漏れなどのトラブルや余震、台風のリスクが付きまとう。東日本大震災発生から間もなく4カ月。冷却システムの課題と収束への道筋を探った。【中西拓司、斎藤有香、河内敏康】
「配管回りは4キロもある巨大システム。どんなトラブルが潜んでいるか分からない」。循環注水冷却の一部を担う東芝の担当者はこう語った。浄化システムでは油分離装置(東芝)▽セシウム吸着装置(米キュリオン社)▽除染装置(仏アレバ社)▽塩分除去装置(日立など)−−の四つの過程を経て放射性物質を取り除く。
第1原発内の汚染水は6月末時点で約12万立方メートル。海などへあふれだす恐れがあったが、27日に浄化システムが本格運転し、ぎりぎり間に合った。今月2日には炉心の全冷却水を浄化システムからの処理水だけで賄うことができ、循環注水冷却へ完全移行した。8日までの累積汚染水処理量は1万6815立方メートルとなった。
第1原発では震災後、通常の冷却システムが使えないため、ダムの淡水などを冷却水に使ってきた。しかし、格納容器破損などから放射性物質に汚染された冷却水が建屋内外に流出。一方で汚染水の発生を減らすため冷却水を絞れば、原子炉の温度や圧力が上昇する懸念があり、収束作業の障害になっていた。
東電は事故収束の工程表の中で7月中旬までに「放射線量が着実に減少傾向となっている」ことを目指しており、今後はいかに循環注水冷却のフル稼働を実現するかが課題だ。
東電は1日の汚染水処理量の目標を1200立方メートルと掲げていたが、実際は1000立方メートル強。放射性セシウムを吸い取るフィルター(直径90センチ、高さ2・1メートル)を交換するため停止する必要もあり、浄化システムの稼働率は76%程度にとどまる。稼働率が現状のまま推移した場合、現在の全汚染水を回収できるのは11月上旬、今後80〜90%を確保できた場合は10月下旬になるとみられる。
◇今後1カ月は綱渡り
浄化システムが安定運転すれば、1〜4号機の建屋などにたまる高濃度汚染水は徐々に減っていくことが期待できる。しかし、そのためには台風などによる雨水や地下水の浸透がないことが前提。5日現在、タービン建屋のたまり水の水位は、外部に漏れ出る危険性のある高さから約27〜54センチ下にあり、収束は「天候頼み」(東電の担当者)の側面もある。東電は「台風などで予期せぬ水位の上昇があるかもしれない。水位を約1メートル下までに抑え余裕を持たせたい」と説明する。
また、浄化システムの入る集中廃棄物処理施設は原子炉建屋に比べ耐震性が劣るほか、4キロに及ぶ配管には無数のつなぎ目があり、余震の影響が懸念される。システム自体、汚染水の流れが直列の1ルートしかないため、途中1カ所でも配管の詰まりなどが生じると全システムが止まる弱点もある。
東電は、現在のシステムにバックアップ装置を並列設置して、トラブルや補修交換の際の「迂回(うかい)ルート」にする方針だ。しかし、バックアップが実現するのは8月上旬。今後1カ月間は単一ルートによる綱渡りを強いられることになる。
汚染水処理で生じた高レベル放射性物質を含む汚泥(スラッジ)の処理も頭が痛い課題だ。今月12日までに発生が予測される汚泥は163立方メートルで、年末までに約2000立方メートル(ドラム缶換算で1万本)発生する見通し。放射性セシウムを吸い込んだ使用済みフィルターも12日までに63本出るとみられる。東電は1年で400本出ると見込むが、想定より早いペースで蓄積が進んでいる。
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◆汚染水浄化システムを巡る経緯◆
5月17日 東電が工程表に「循環注水冷却の確立」を明記
6月 9日 東電が汚染水浄化システムを公表
10日 セシウム吸着装置の配管接続部などで水漏れ
11日 同装置でコンピューターのプログラムミス発覚
14〜15日 同装置、除染装置の試運転開始
16日 システム全体の試運転開始。セシウム吸着装置で水漏れ
18日 同装置で、放射線量が部品の交換基準を上回り、停止
21日 除染装置のポンプ停止
22日 セシウム吸着装置で弁の開閉表示ミス
24日 淡水化装置の運転開始
27日 システムが本格稼働。循環注水冷却を開始したが水漏れなどがあり停止
28日 循環注水冷却を再開
29〜30日 水漏れなどのミス相次ぐ
7月 2日 循環注水冷却へ完全移行
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