＜原発撤退へ　立地拒否した町で＞京都旧久美浜町（現・京丹後市）　「つくらせなくてよかった」　推進派の元議員ら／関電の世論操作とたたかう
「しんぶん赤旗」　2011年7月14日　４面

　30年以上にわたる住民の反対運動が関西電力の原発建設を断念（2006年3月）に追い込んだ京都府の旧久美浜町（現・京丹後市）。福島第１原発の事故後、原発推進派だった元保守系町議や自民党元役員から安堵（あんど）と関電への不信の声が聞こえてきます。　　　（京都府・難波克典）

　旧久美浜町では、原発建設に執念を燃やす関電が「安全神話」を植え付けるための学習会開催、宣伝・広報活動、原発推進の町政づくりのための選挙介入を行ってきました。久美浜原発計画は1975年5月、関電が事前環境調査を町に申し入れたのが発端です。以来、3800人の集会、有権者の７割を超える請願署名（90年、推進派町議によって不採択）など、建設反対運動は原発推進派との激しいせめぎ合いを続けました。

　原発見学ツアー

　「本当に大丈夫かというと、関電は『技術はどんどん進歩する。今の安全性に加え、時間がたてばたつほど安全になる』という答えをする。信じるしかなかった」と元保守系町議は振り返ります。

　丹後ちりめんなど絹織物業、農業が壊滅する状況のもとで、「『原発も仕方ないか』との思いにつけ込まれ、ふぬけにされた。そのワシらも岡下さんの町長選では、関電の用意周到ぶりには驚かされた」とも言います。

　町長選とは、原発建設反対を訴える革新無所属候補・岡下宗男氏＝のちに日本共産党町議＝が大善戦した97年の選挙です。町長選を前に、事前調査受け入れ促進を求める意見書の強行可決（94年）など推進派の動きが活発化。町は、有名タレントや学者を呼んで原発学習会（95、96年は計８回）や原発見学ツアーを実施しました。

　この背後で「安全神話」を振りまく世論操作を強めたのが関電です。学習会では「放射能は細胞を活性化するから、むしろ体にいい」「原発ができたことで技術系労働者が来て、教育レベルが上がった」と問題発言が続出。講師は、関電副社長が会長の関西原子力懇談会（関原懇）が手配していました。推進派団体機関紙への資料・材料提供も関原懇が行っていました。

　本紙に岡下氏への期待の声を寄せた計画地の反対派住民を関電本社立地環境本部・立地グループの課長が再三訪れ、「目立ったことはしない方がいい」と脅しました。この課長は、計画地に果樹園を作って、町内の「アジト」から頻繁に訪れ、住民と接触を図ることを仕事としていたのです。これらの実態を本紙と「京都民報」が告発。原発問題が大争点となり、岡下氏は得票率42％を獲得し、344票差まで迫りました。

　撤回を申し入れ

　2001年の町長選では、日本共産党町議団長だった堤善信氏が得票率47％を得て大善戦し、原発建設を許さないまま04年4月に久美浜のはか５町が合併して京丹後市が誕生しました。市は06年2月、「旧久美浜町以外の住民に久美浜原発立地の理解を求めていくことは少なからず困難」などを理由に、関電に計画撤回を申し入れました。

　関電は同年3月、「市のご理解が得られないことが明確になった」（関電ホームページ）と断念表明しました。

　原発建設反対の町民は「金は一時、土地は万年」と大看板を立て、たたかいました。

　「その通りだった。福島の事故で、被災者ほったらかしで保身にきゅうきゅうとする東京電力の対応をみているとぞっとする」と元自民党町役員。力を込めてさらに言います。

　「つくらせなくてよかった。原発の危険性、電力会社の体質を見抜いて反対し続け、断念に追い込んだ共産党や反対派の人々の見識、勇気に敬意を表する。丹後は海、山、川と自然エネルギーの宝庫。これからは脱原発へ党派を超えて進むときだ」

コメント
01. 2011年7月14日 16:45:24: esmsVHFkrM なんだよ、これ。 「つくらせなくてよかった」って、地元自民党議員、保守系議員は原発建設に賛成で関電と一緒に建設推進したんだろう。どの面下げてそんなこといえるんだ。 お前等がつくらせなかったわけじゃまったくない。「反対派住民の皆さんには止めてもらって本当に良かった」、「私たちが間違っていました、すみません」だろう。 こんなこと今しゃあしゃあとして言っているとしたら、まあ実際に言っているんだろうが、自民党という政党とそこに結集した金亡者の地元有力者たちは許しがたい。 この意味で、今や恩讐を越えて自民党も「つくらせなくてよかった」と言っているみたいな記事にして、自民党のいい加減さ、無責任、ずるさをを浮き彫りにした赤旗は知能犯と言うか狡猾だ。そんなこともわからずに、ぬけぬけと今「つくらせなくてよかった」なんて発言している自民党議員は恥の上塗りだ。 だが、共産党にはそんな仕打ちをする権利がある。少なくとも彼らは原発建設にそのとき反対したのだからな。
02. 2011年7月14日 17:45:39: ILiTPGkN7Y 一般の産業は放射能汚染地域から移転できても、観光業は、移転できない。京都は立入禁止の世界遺産となる。
03. 2012年1月11日 21:30:34 : C8f6cc6OxM 私は久美浜の隣の豊岡が故郷です。久美浜に原発ができなくて心の底から良かったと思います。子どものころから久美浜にはよく行きました。あの美しい小天橋の海を初めて見たときの感動は今でも忘れられません。沖に浮かぶ小島まで死にそうになりながら泳ぎきった思い出もあります。今でも帰省するときは必ず行きます。蒲井には子どもを海水浴に連れて行くこともありました。私にとって久美浜も大切な故郷と思っています。その名の通り、いつまでも美しい浜であってほしいと心から願っています。実は昨年の福島第一原発事故まで久美浜原発のことはほとんど考えたことはありませんでした。道路わきに原発に反対する看板があったことや、４〜５年前の同窓会で「久美浜原発が中止になってよかった」と誰かが言っていたことが頭の片隅に残っていました。今回の事故をきっかけに今、原発のことを深く学んでいます。人の命や健康よりも経済優先の政策、電力会社の利益優先の企業論理、「かくし、だまし、ごまかし」で「安全神話」を作り上げて住民をだまし、貧しい地方に金をばらまいて受け入れさせる汚いやり方には心から怒りがわいてきます。日本の政治・経済の病巣が凝縮されているのが、この原発問題です。日本各地の原発立地地域の人々の苦しみを学ぶにつけ、久美浜の人たちもどれほど関電によって苦しめられてきたかを思うと本当に心が痛くなります。すぐ隣の町にいながら、ほとんど何も知らずにいたことを心から恥じています。原発建設を阻止した人々に敬意と感謝の思いでいっぱいです。わが故郷が第二の福島になっていたかもしれません。北但大震災をはじめ大きな地震を何度も経験してきた地域です。日本全体が「地震の巣」であり、いつどこで東日本大震災級の大地震が起こるかもしれません。今起こっても不思議ではないのです。ただでも危険な原発を、よくもこんな地震大国に５４基も作ったものだと思います。狂気の沙汰です。平時でも小さな事故は頻発しています。１年間に報告されたトラブルだけで３００件を超えます。そして、原発から日々生み出される使用済み燃料や放射性廃棄物はいったいどうするのでしょう。未来に大きな負担を残して平気なのか。これほど無責任なことはありません。２月には定期検査で関西電力のすべての原発が止まります。今でも高浜３号基１つしか稼動していないのです。全国でも７基しか動いていないのです。でも、けっして電力不足にはなっていません。原発などなくても十分にやっていけるのです。これからさらに「節電」と「自然エネルギーへの転換」によって十分にやっていけるのです。新幹線や道路や新しい戦闘機に使う金があるのなら、すべての家や学校、ビルなどの屋根や屋上にソーラーパネルをつけるための補助金に回せ！と言いたい。冬場に太陽エネルギーを得にくい日本海側は風力発電や波力発電をもっともっとやればいい。電力会社も本格的に自然エネルギーへの転換を推し進めていけばいい。そして、「電力の自由化」と「発送電分離」を進め、電力の「地産池消」を進めれば、原発なんて全く必要なくなるし、火力発電もどんどん減らしていけるのです。定期検査中の原発を再稼動させなければ、５月には全国のすべての原発が止まります。原発のない社会を築く絶好のチャンスです。

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