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「東電福島第一原発事故をめぐる、現時点での論点」(冷泉彰彦)
http://www.asyura2.com/11/genpatu8/msg/841.html
投稿者 愛国改善党 日時 2011 年 4 月 09 日 17:33:19: gpdmClaQFBffI
 


 http://ryumurakami.jmm.co.jp/
  

『from 911/USAレポート』第508回

    「東電福島第一原発事故をめぐる、現時点での論点」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)


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 ■ 『from 911/USAレポート』               第50
8回
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━━

「東電福島第一原発事故をめぐる、現時点での論点」

 アメリカでは、ここへ来て日本の原発事故のニュースは一段落してきました。
実は
それどころではなくなってきている、というのが真相です。連邦政府の予算案に
つい
て与野党合意ができず、現時点では「ガバメント・シャットダウン(政府閉鎖)
」と
いう事態が切迫してきたからです。本稿の時点では、ギリギリの時点で「シャッ
トダ
ウンの3日繰り延べ」が模索されています。

 原発事故の報道が一段落したと言いましたが、その前の今週半ばには「ニュー
ヨー
ク・タイムス」が二本ほど、悲観論に基づく記事を載せています。まず6日の水
曜日
にのA1面に出たグランツ記者とブロード記者による『危険な状況が次々に発生
する
日本の原発、米政府は注視』という記事ですが、その前日に日本側が「低濃度」
の汚
染水を海洋に放出したことが問題視されているのに乗じて、日本側の対応を批判
しつ
つ悲観論を展開したものという印象を私は持ちました。

 その「次々に発生する危険」の中身ですが、例えば海水の塩分で冷却系が「詰
まっ
ている」ために1号機の圧力容器内は「再びカラになっている」とか、放水した
水の
重みで格納容器の底部が破損しているとか、科学の常識に反する内容も含まれて
いま
した。また、燃料棒の爆発した破片が周囲に散乱しているという可能性を指摘し
てい
ましたが、これが本当なら大変な問題であり、こちらも無責任な指摘だと思いま
す。
この記事に関しては、NRC(米原子力委員会)の秘密報告書を根拠にしていま
すが、
信頼できるのは「窒素注入の実施についての勧告」という部分だけで、あとは精
度の
低い記事でした。

 翌日7日の同紙は、ワシントンのワルド記者とポラック記者による『事故炉の
炉心、
漏出の可能性を政府筋が指摘』という記事を載せていました。こちらも「2号機
の圧
力容器は底が抜けており、格納容器の底に溶けた燃料が溜まっている。そのため
に、
コンクリートと反応して一酸化炭素の爆発を起こし、放射性物質を散乱させる危
険が
ある」という、これも根拠の薄い超悲観論でした。

 二日続けて、別の記者がそれぞれに憶測を交えた悲観論を伝えた背景には、「
窒素
注入の実施へ」という内容だけでは記事にならないので、考えられるあらゆる悲
観的
なシナリオを書いたということではないか、私はそう見ています。同じような指
摘は
CNNもこの日は繰り返していましたが、やがて信憑性に欠けることが判明する
と沈
静化していきました。こうした一連の「超悲観論」を最後に、アメリカとしては
この
問題は「長期戦モード」に入ったと言えます。その意味で、報道が沈静化してい
った
のは悪い兆候ではないと思うのです。

 以降は、この間、アメリカで日米双方の情報を収集しつつ、専門家とのディス
カッ
ションを繰り返してきた結果をもとに、筆者として「現時点での論点」をまとめ
たも
のです。私自身は専門家ではないので、以降の記事を根拠として個人や法人の判
断を
される場合の責任は負えませんが、議論の一助になればと思い整理してみた次第
です。

<窒素注入をどう見守るべきか?>
 基本的には冷却が成功しつつある中での、通過しなくてはならないステップと
いう
理解が正しいように思います。1号機から3号機については、圧力容器に多少の
損傷
はあるという前提で考えるにしても、例えば1号機の格納容器内の気圧が1.5
まで
下がってきたというのは、沸騰がかなり沈静化しており、水蒸気発生が落ち着い
てき
た証拠と考えることができます。

 ですから、恐らくはこれ以上の「ベント」はやらないで済むという判断がある
のだ
と思います。その一方で、格納容器内の水蒸気量が減って圧力が下がり過ぎると
、反
対に水素濃度が相対的に上がって水素爆発の危険が出てきます。そこで圧力を少
し上
げるために、安定度の高い窒素を注入しているわけですが、格納容器に破損があ
る中
で圧力を上げると、放射性物質が外部に漏れる危険があるわけで、慎重に周囲の
線量
を図りながらゆっくりやっているというのは理解できます。

 ちなみに、2号機だけは、格納容器下部にある圧力抑制室に破損があるという
見方
がされており、1号機・3号機に比べると、より慎重に実施する必要があるので
はと
思います。時間はかかると思いますが、1号機から3号機まで全部この窒素注入
が成
功すると、直接そのために燃料の状態が改善するわけではないのですが、水素爆
発の
危険を下げながら更に冷却を続行できるのだと思います。

<水素爆発は想定外なのか?>
 8日の夜に安全・保安院から「1号機、3号機の水素爆発は想定外」という発
言が
あったようです。ですが、アメリカの専門家によればGEのこのタイプの炉では

「最悪の場合はベントを建屋内」に行って圧力容器の水蒸気爆発を防止するのは
仕様
のようです。何故「建屋内」にベントするのかというと、放射性物質をいきなり
外気
に放出はしたくないからであり、にもかかわらず建屋内での水素濃度が上がって
爆発
する際には、わざと格納容器を守っている建屋のコンクリ構造を上三分の一だけ
「鉄
骨と薄い板」にしてあるので、そこが壊れることで爆発の衝撃波を吸収して建屋
の下
半分を守る、それも設計上の仕様だというのです。

 これは、スタンフォード大学のCISAC(国際安全保障協力センター)の客
員で、
仏アレヴァ社系列の燃料処理企業の現役の幹部、また元IAEAの研究員であっ
たア
ラン・ハンセン氏がハッキリそう発言しており、同氏の示したスライドでは、そ
のプ
ロセスが図示されています。またCNNが3号機の水素爆発を「中継」していた
際に、
宮城県で恐怖感にかられていたキャスターのアンダーソン・クーパーに対して、
リア
ルタイムでMIT=SSP(マサチューセッツ工科大学、セキュリティ研究プロ
グラ
ム)のジム・ウォルシュ研究員が「大丈夫、それは水素爆発だから、それは起き
るよ
うに設計されているのだから」と発言しています。

 今となっては、この二回の水素爆発のために放射性物質が拡散したのは事実で
あり、
安全・保安院としては後悔の念を込めつつ「想定外」と言っているのだと思いま
すが、
ここまでの経過からすれば不可避であったとするしかないと思います。

 後は、2号機の場合です。専門家(例えば前述のハンセン氏)の指摘するよう
に、
現在まで高濃度の汚染水と格闘しているのは水素爆発が圧力抑制室で起きたから
とい
う説明が可能です。仮に事実であれば、1号機、3号機とは「ベント」のタイミ
ング
が異なったからか、あるいは早期に圧力容器に漏れが発生していたのかもしれま
せん。

<3号機の鉄骨構造破損の理由は?>
 ここへ来て無人機による近接撮影を含めた、事故後の各建屋上部の鮮明な映像

ネット上などで閲覧可能になりました。そこで、「3号機の建屋の鉄骨の壊れ方
」が
「1号機とは違う」ことから、いわゆる「プルサーマル」つまり、プルトニウム
混合
のMOX燃料を使っている3号機では、「何か恐ろしい爆発が起きたのではない
か?」
というような憶測が出回っているようです。

 ですが、この件に関しては、水素爆発の火炎温度は2000度ぐらいあるとい
う前
提で、3号機は水素の濃度が相当になっていて1号機よりも激しいものであった
(爆
発の瞬間の映像もそうでした)とすれば、水素爆発でも鉄骨が曲がるということ
はあ
り得ると考えられます。

 3号機の水素爆発が激しくなった理由ですが、まず「ベント」の際に建屋内に
放出
された水素が多かった可能性があります。その理由としては、MOXの燃料棒を
使用
していたために制御棒の効果が低く、通常の燃料より早期に高温になりジルコニ
ウム
被覆管の損傷と水素の発生が進んでいたということも考えられますが、それも軽
々に
判断はできず、ベントのタイミングやその際の圧力容器内の温度や圧力を見て総
合的
に判断すべきと考えます。

 MOX燃料を燃やしていたという理由で、3号機だけ建屋上部で他とは違うタ
イプ
の高温の爆発が起こるというのは考えにくいと思います。また、使用済燃料プー
ルか
ら800度以上の高熱が出て鉄骨が溶けるというのも、水素爆発以外でそうなる
ので
あれば危機的であり、これも可能性は低いと思われます。残る可能性は水蒸気爆
発で
すが、その場合は温度が低すぎて鉄骨は曲がらないでしょうし、放射線物質の放
出は
危機的なレベルになるわけで、これも違うと思います。

 1号機より規模は大きかったものの、3号機もやはり水素爆発であったという
理解
が妥当ではないでしょうか?

<「石棺化」の問題をどう考えるか?>
 ここへ来て、廃炉処分後の各炉をどうするか、具体的には「石棺化」か「更地
化」
かという論争が始まっています。まず指摘しておきたいのですが、この論争には
やや
イデオロギー的な区別が入っているということです。原子力発電に消極的な立場
から
は、事故の責任問題をハッキリしたいという態度、あるいは事故の記憶を永遠に
形に
とどめて教訓にすべきという発想から、チェルノブイリのような「石棺化」の主
張が
出てきていると見ることができます。一方で、この事故に関する当事者や原発推
進派
の方からは、その逆の理由、つまり「惨めな残骸を残したくない」という理由か

「廃炉の場合は更地化」という主張になるわけです。

 この論争に関しては、論点が足りないという印象があります。まず、即時石棺
化と
いうのは現実問題として不可能です。崩壊熱の放出が下がるまでは、水の循環で
十分
に燃料を冷却することが必要で、こちらには最低で数年は必要である思います。
その
後に完全に燃料を取り出し、更に冷却を続行するのが安全です。その際に、仮に
部分
的に溶融の見られた燃料でも、安全に冷却して形態としても安全な中間貯蔵、安
全な
長期貯蔵にもって行けるような技術なり体制を作ることは避けては通れないよう
に思
います。

 その上で、「モニュメント」として石棺がいいのか更地が良いのかという議論
にな
るわけですが、その場合も「跡地を立ち入り可能にするのか?」という問題が出
てき
ます。土壌の除染は必要と思いますが、その上であえて石棺にして、あえて立ち
入り
禁止にするという判断もあるでしょう。

 その他には跡地利用として色々なオプションがありますが、これは地元の意向
を尊
重すべきだと思います。例えば、完全に自然の姿に戻す、風力発電所にする、緑
地公
園にする、原子力の安全性と危険性を学ぶ「記念館」にするというようなアイデ
ィア、
あるいは大前研一氏のように「立ち入りが嫌がられる場所」ならば、ここに使用
済み
核燃料の「中間貯蔵・永久貯蔵施設」を作るという案も検討されていいと思いま
す。

<脱原発論と中間貯蔵、永久貯蔵>
 その「使用済み核燃料の貯蔵」ですが、とにかく現時点ではむつ市に「中間貯
蔵施
設」が建設中であるだけで、その容量も既に予約でいっぱいなのだそうです。ち
なみ
に、震災後ストップしていた工事を再開する動きもあるようですが、このニュー
スを
聞いて「事故の最中からどんどん原子力関連の工事を再開するのは不謹慎」とい
う印
象を持つとしたら、それは少し違うと思います。

 というのは、仮に今日現在で日本が原発について「即時運転停止、即時全機廃
炉」
を決断したとしても(その場合は日本経済は壊滅しますし、あくまで仮の話です
)、
この「使用済み核燃料の貯蔵問題」は避けて通れないからです。ちなみに、中間
貯蔵
施設というのは、原子炉から取り出してまず1年から2年水を循環させて冷やし
、運
搬可能にしてから更に乾燥した容器内で3年から5年冷やすプロセスのことを言
いま
す。

 どうして「中間」なのかというと、その後でないと「再処理」はできない(暖
かい
うちは放射線が出るので)ということと、仮に「再処理」をしないという場合は
、千
年とか1万年単位の「永久貯蔵」となり、別の安全基準での貯蔵施設が必要にな
るか
らです。

 ということは「安全」の見地から「脱原発」を主張している人こそ、「中間貯
蔵」
や「永久貯蔵」の施設づくりには「場所探し」を含めて、積極的な関与をすべき
だと
いうことになります。こうした貯蔵施設にも反対するようであれば、その人の脱
原発
論はあくまで抽象論だということになると思います。

 今回の窒素注入が上手くいって、放射性物質の漏出を増やさずに各格納容器内
の圧
力をコントロールできれば、更に温度を下げ、線量を下げて、循環冷却を安定的
に続
けるための工事を進めることになるのではないかと思います。一難去ってまた一
難と
いうような「難所」は、まだまだあるのだと思いますが、とりあえずここを乗り
切れ
ば、いい意味で「長期戦モード」になってゆく、そう考えて良いように思います

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビ
ア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わ
った
か』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』
など
がある。最新刊『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』(阪急コミュニケー
ショ
ンズ)( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484102145/jmm05-22 )


(私のコメント)
幸運で持っているだけなのか、第二、第三の危機が起こるのか。いずれにせよ、日本の専門家、技術者の叡智で、さすがと言える処置をしてもらいたい。各種陰謀論も参考にして早急に手を打ってもらいたい。  

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コメント
 
01. 2011年4月09日 18:08:45: fyEA9mJ6lA
なんとも楽観的に過ぎる議論のように見える。 1号炉の温度上昇をどのように考えるべきなのかが良く判らない。 順調に温度・圧力共に下がっていると思ったのに、7日から急激に温度が上昇してきた。 1号炉の燃料棒はウラン235だが、燃料棒の破損が大きいのか、それとも議論の中に出てきているように、冷却に海水を使ったために塩が固着して冷却効果を妨げているのか。 温度が300℃を超えると設計基準を上回ることになるが、8日時点での発表数値では260℃。 3号炉のMOXも心配だが、今は1号炉の温度上昇が気がかりではないのか。 アメリカ連邦政府の予算問題は板違いの話しだが、福島原発に関するアメリカでの議論ということになれば、全く無関係とも言いかねる。 現状のままで冷却安定に達するという前提で議論しているから、更地化かモニュメントとしての石棺化というようなのんびりした話しになるのじゃないか。 原発推進派としては更地化を希望しているらしいが、日本人としては原発はもうこりごりということだろうに。 石棺化か水棺かの議論の方が現状に合致していると思う。 N.T  

02. 2011年4月09日 18:57:19: pEgCpfCxXY
石棺化も水棺化も、その作業を行う無数の人員が
たとえばチェルノブイリを参考にいえば
80万人が二十年後までに癌で死ぬ、
彼らの平均寿命が45才になったりする、
そういう政治判断が日本で下せるかというと疑問だ。
更地にするのだってやはり作業する人員がこうなるなら
だれもしないだろう。
焼け石に水そして海へ湖へ汚染水漏出沈殿作戦しながら
水蒸気爆発まちの、
人類史上類例ない大災害じゃないのか。
命を最優先とするなら、総員海外へ撤退、難民化でないのか。
飛散している放射性物質による放射線による被曝は
間違いなく、修復の追いつかぬ速度で細胞の染色体を痛めつけてる。

03. 2011年4月09日 19:24:15: xgqbPzVrTk
http://www.houseoffoust.com/fukushima/fukushima.html

これが現実


04. 2011年4月10日 09:03:48: Dc1BijpWHQ
このまま幸運にも安定冷却に至って、廃炉に持って行けるといいのだが。
まだ五分五分ではないのだろうか。どこも一所懸命だと思うが最も真心から熱心
に取り組んでくれているのはどこだろう。神の恵みと御力がありますように。

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