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日本国債:市場、不信感高まる 毎日新聞
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/166.html
投稿者 ダイナモ 日時 2011 年 2 月 23 日 08:14:40: mY9T/8MdR98ug
 

http://mainichi.jp/life/today/news/20110223ddm008020020000c.html


 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは22日、日本国債の格付け見通しを「安定的」から、「ネガティブ(弱含み)」に変更した。同社の日本国債の格付けは21段階中3番目の「Aa2」だが、今後引き下げの可能性が高まったことになる。

 同社の国債担当アナリストのトーマス・バーン氏は同日、東京都内で会見。政局の混乱を背景に「(政府が6月までの策定を目指す)税と社会保障の一体改革の先送り(の公算)が十二分に大きいと判断されれば、格下げになる可能性がある」と指摘。「長期的には日本の国債発行が困難となる圧力が高まる可能性がある」とした。

 同日の東京債券市場は、長期金利の指標である新発10年物国債の利回りの終値が1・27%と前日より0・035ポイント低下(国債価格は上昇)した。中東・アフリカの政情不安を受けた株安で、安全資産の国債を買う動きが優勢だったためで、「ムーディーズの影響はほとんどなかった」(アナリスト)という。

 ただ、米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も先月、日本国債を格下げしており、市場では「このまま政治の混迷が続けば、格付け会社もさらに引き下げに動き、長期的には(国債売りを招いて)金利は切り上がっていく」(福永顕人・RBS証券チーフ債券ストラテジスト)との懸念は強い。

 さらに、市場は、予算関連法案の行方にも、重大な関心を持っている。財務省幹部は「市場が『6月の国会会期末までに関連法案が通らないのでは』との見方を強めたら、金利が急上昇してもおかしくはない」と警戒する。混乱の末、成立に持ち込んだとしても、「翌年度の予算も再び混乱すると懸念する外国人が日本売りに動くのではないか」(みずほ証券の土山直樹マーケットエコノミスト)との声が出ている。
 

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コメント
 
01. 2011年2月24日 16:03:34: 5OSV8Up776
自作自演お乙

02. 2011年2月24日 18:48:17: cqRnZH2CUM
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/02/22/012008.php
三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない第90回 バブル崩壊後の政府の負債と家計の資産 前編
2011/02/22 (火) 12:05


 先日、S&P(スタンダード&プアーズ)が日本国債の格付けを引き下げたが、その直後の菅直人首相の国会答弁を読み、筆者は大変驚いた。と言うよりも、言葉を選ばずに言わせて頂くと、笑ってしまった。
『2011年2月1日 ブルームバーグ「菅首相:国内のカネ余り状況や財政健全目標で金利低い状況続く−答弁」菅直人首相は1日午後の衆院予算委で、国内金利が低い状態を保っている理由について、国債の大部分が国内で消化されていることや経済活動が低迷しカネ余り 状況で銀行資金が国債購入に充てられていることを挙げた上、政府の掲げる財政健全化目標も背景にあるとの認識を示した。野田毅氏(自民)に対する答弁。』
「国債の大部分が国内で消化されており、経済活動が低迷し、カネ余り状況で銀行資金が国債購入に充てられている」 ために、日本の国債金利が長期低迷している。日本経済の問題は「国の借金(=政府の負債)」や「財政危機」などではない。デフレ深刻化により、国内の資 金需要が高まらず、企業が投資しようとしないことだ。そんな環境下にありながら、「国の借金」を殊更に騒ぎ立て、政府が緊縮財政(公共投資削減や増税)に 走ろうとするため、民間(企業など)は益々投資意欲をなくし、銀行貸出態度DIがプラス化しているにも関わらず、銀行の過剰貯蓄が拡大していっている。こ の悪循環を断ち切るために、政府は「民間の資金需要を高めるように」支出を拡大せよ。
 以上が、筆者が日本経済に対して提案しているソリューションの骨子である。
 まさか、菅直人首相自ら、筆者と問題認識を共有して頂けるとは思わなかった。本連載も90回を数え、ようやく筆者の主張が「政権」にも浸透したようである。
 などと言いたいところだが、現実にはもちろんそんなことはない。そもそも菅直人首相にしても、自分が何を発言しているのか、その意味については全く理解していないだろう。何しろ、S&Pの格下げ直後、首相自ら、「そういうことには疎い」 と、断言したわけである。
 ちなみに、上記首相の「国債の大部分が国内で消化されており・・・」という国会答弁について報道した新聞社は、ブルームバーグ紙のみであった。 「国の借金!」「財政破綻!」などのフレーズを用い、日本国民を無用に煽り立てている国内の大手紙の新聞記者たちの場合、とてもではないが菅首相の答弁を そのまま記事にするわけにはいかなかったのだろう。あるいは、大手紙の記者でさえも、首相が何を言っているのか、理解できなかったのかも知れない。
 現実の日本は、実質預金残高が増え続ける中、貸出金が減っていくという状況が続いている。すなわち、預金超過額(過剰貯蓄)の拡大だ。図90−1を見ると、日本の過剰貯蓄問題が始まったのが、97年の橋本政権による緊縮財政を切っ掛けにしていることが分かるだろう。
 銀行からの貸出金残高は、03年に底打ちし、その後はジワリジワリと戻していたのだが、リーマンショック(08年)を引き金に、再び減少してしまった。
【図90−1 日本の民間銀行の貸出金・実質預金・預金超過額(単位:兆円)】出典:日本銀行「金融経済統計月報」※預金超過額は「実質預金−貸出金」で計算※09年までは各年末残高。2010年のみ各月末残高。
(1/3の続き)
 銀行は国民などから預金を集め、企業に貸し出し、金利差を稼ぐのが商売だ。実際、日本はデフレが続いているにも関わらず(いや、むしろデフレが続 いているからこそ)実質預金残高は増え続けている。ところが、銀行からの融資(貸出)の方は全く増えない。結果、銀行の手元には「貸し出せない預金」とし ての預金超過額が膨れ上がっていくわけだ。
 企業などがお金(我々の預金)を借りてくれない環境下であろうとも、銀行は預金に対して金利を支払う必要がある。預金超過を放っておくと、銀行は逆ザヤで倒産してしまうことになるだろう。
 結果、銀行はお金を政府に貸し出す、すなわち国債を買うしかない状況が続いている。銀行の預金超過のうち、現在は八割以上が国債で運用されているのである。
 結果的に、日本国債の金利は延々と世界最低を続けている。S&Pが格下げしようと、格上げしようと、銀行の国債購入姿勢にはほとんど影響を与えな い。何しろ、企業の資金需要が高まらず、民間への貸出が増えない以上、銀行は「国債を買うしかない」のである。まさしく、菅直人首相が言うとおり、「国債の大部分が国内で消化されており、経済活動が低迷し、カネ余り状況で銀行資金が国債購入に充てられている」 というわけである。
 ちなみに、菅首相の答弁の最後にある「政府の掲げる財政健全化目標も背景にある」は、S&Pの格下げ同様、今ひとつナンセンスである。なぜなら ば、日本がもし経常収支赤字国で、国内が「過小」貯蓄状態で、かつ民間の資金需要が高まれば、政府が財政健全化目標を掲げていようがいまいが、国債金利は 上昇するはずだからである。
 日本国債の金利が格下げに反応しない理由は、「政府の財政健全化目標」などという定性的なものではない。「銀行の過剰貯蓄が増えている」という、極めて定量的な理由からなのだ。
 「財政健全化目標」や「金融市場の信用」は、過小貯蓄の経常収支赤字国(しかも、経済規模が小さな国)であれば、長期金利に大きな影響を与えるだろう。しかし、日本の場合は的外れもいいところだ。
  さて、ブルームバーグ紙にある菅直人首相の「素晴らしい答弁」を、首相の「耳元でささやいた」のは、果たして誰であろうか。(まさか、菅首相自ら上記答弁を考え付いたなどと思う人はおるまい)
 無論、財務省だ。本連載で繰り返し取り上げている「外国格付け会社宛意見書要旨」を読めば一目瞭然だが、財務省は現在の日本の財政状況について 「正しく理解」している。とはいえ、今回の菅首相の答弁のような内容が日本国民に周知され、社会的に共有されてしまうと、念願の「増税」ができなくなって しまう。
 というわけで、財務省は「今回のS&Pの格下げ」に対しては、特に意見書を送付したりしなかったようである。02年のムーディーズの格下げの際に は、まさしく烈火のごとく怒り、見事なまでに「正しい意見書」を送りつけたわけだが、あれは「なかったこと」にでもなっているのであろうか。
(2/3の続き)
 また、財務省は国会という場において、首相に「極めて正しい答弁」をさせておきながら、返す刀で「四半期毎の『国の借金』発表」を行い、新聞社に コピー&ペーストの記事を書かせている。例えば、1月26日の財務省による「2011年度末 国の借金予想」に関する各紙報道は、以下の通りであった。
『2011年1月26日 朝日新聞「国の借金、最大の997兆円=国民1人783万円―11年度末見込み」』
『2011年1月27日 産経新聞「国の借金、1千兆円に迫る 国民1人当たり783万円 23年度見通し」』
『2011年1月26日 時事通信「国の借金、最大の997兆円=国民1人783万円−11年度末見込み」』
『2011年1月26日 共同通信「国の借金1千兆円に迫る 政府、11年度末見込み」(前略)国民1人当たり約783万円に上る。(後略)』
 上記の通り、朝日新聞、産経新聞、時事通信、共同通信の四紙が、相も変わらず政府の負債を「国の借金」と呼び、かつ「国民1人当たり783万円の借金」 という間違ったフレーズを用いている。すなわち、「政府の負債」を「お金を貸している側」である「国民の借金」と呼ぶ、悪質極まりない印象操作を行ってい るわけだ。
『2011年1月27日 読売新聞「国の借金、1000兆円突破目前」
 国債と借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」(債務残高)が、2011年度末で997兆7098億円となって過去最悪を更新し、1000兆円の大台に迫る見通しであることが26日、財務省の試算で分かった。(後略)』
 なぜか読売新聞だけが、「国民1人当たりの借金」というフレーズを用いていない。財務省から読売新聞に対し、クレームがついたりしないだろうか。他人事ながら、心配になってしまう。
 ちなみに、図90−2は、財務省ではなく日銀統計(資金循環統計)に基づいた、日本国家全体のバランスシートの状況である。
【図90−2 2010年9月末時点 日本国家のバランスシート(単位:兆円)】出典:日本銀行「資金循環統計」※上記資産は「金融資産」のみ。政府の資産・負債は地方団体分を含んでいる。
 図90−2の通り、日本政府(地方自治体含む)の負債残高は、すでに1000兆円を上回っている。だからと言って、国債金利が上昇するわけではない。理由は前述の通り、銀行などの国内金融機関が「過剰貯蓄」で溢れかえっているためである。
 日本政府ではなく、日本国家全体で見ると、我が国は260兆円を超える純資産(=対外純資産)を保有している。この額は、文句なしで世界最大であ る。すなわち、日本は国家全体で見ると、世界最大の対外純資産国、あるいは「債権超過国」ということだ。それにも関わらず、「政府の負債」を「国の借金」 と呼びかえ、あたかも「日本が借金をしている」かのごとき印象を植え付けようとしている財務省やマスコミの罪は、極めて重い。
 ところで、図90−2について説明すると、「ああ、家計の金融資産が1400兆円もあるから、政府はお金を国内で借りることができるのですね」 などと「勘違い」をする人が結構多い。
 なぜこれが勘違いかと言えば、家計の金融資産は銀行などを経由し、すでに国債購入に回っているためである。繰り返しになるが、銀行は「借金」であ る預金について、現金のまま保有することはできない(逆ザヤになるため)。我々の預金の運用先がないのであれば、銀行はそれを国債購入に回すだけの話だ。
 などと説明すると、「じゃあ・・・、政府はもうお金を借りられないのでは・・・」 などと、またまた間違った理解をしてしまう人が、これまた多い。
 実は、この手の混乱した理解をしてしまう人々は、大本から間違えているのだ。そもそも「家計の金融資産があるから、政府が借金をできる」わけではないのである。話はまさに真逆で、「政府が借金をしたから、家計の金融資産が貯まった」というのが真実なのだ。
 来週は、バブル崩壊後の政府の負債(国の借金)と家計の資産の「連動」について解説する。
本ブログの「過剰貯蓄」関連記事はこちら。


03. 2011年2月25日 05:22:29: mOBhm84jvQ

何十年と変わらない、次元の低いアメリカの諜報活動。

知ってか知らずか、まともに取りあげるマスコミ。

こんな手口は飽き飽きしている…事実、マーケットは全くと言って良い程に反応していない。

逆に、中東問題で円が買われちゃってる…(笑)


04. 2011年3月07日 22:20:44: cqRnZH2CUM

日本国債格付けに下押し圧力、AAA維持そろそろ限界=R&I
2011年 03月 7日 19:39 JST

 [東京 7日 ロイター] 格付投資情報センター(R&I)は7日、日本国債(ソブリン)格付け(AAA/格付けの方向性はネガティブ)について、1月に比べて下押し圧力が強まっているとして、引き下げまでの距離が縮まっているとの認識を示した。

 政権の政策運営力が低下していることで、財政再建に懸念が出てきたことが主な要因。またAAA格の維持がそろそろ限界にきていると指摘した。

 R&I・チーフアナリストの谷口仁敏氏とチーフアナリストの細田弘氏がロイターの取材に応じた。

 R&Iでは、次の格付け判断材料として、政府の財政改革が予定通りに進むのかを見極める上で、4月の統一地方選挙を受けた政局動向に注目しているが「判断を変えるようなイベントが出てくれば、統一地方選挙を待たずしてアクションを起こす可能性もある」(谷口氏)という。

 日本は産業基盤が強いことに加えて、安定的に経常収支の黒字を確保している。さらに高水準の国債も大半が国内で消化されている点を考えると、日本の信用力はなお高いと指摘。日本国債が格下げになる場合、引き下げ幅は「3ノッチ(段階)ではない」(細田氏)として、1ノッチまたは2ノッチの小幅にとどまる可能性を示唆した。

 R&Iは1月12日、日本の発行体格付けAAA(格付の方向性はネガティブ)の据え置きを確認したが、2月28日に「政局混迷で日本のソブリン信用力に一段と下押し圧力」と題するリポートを発表している。格付け据え置きから、わずか1カ月半後にリポートを公表したことについて「政治の混乱を無視できなくなった」(谷口氏)ため。当初のシナリオでは、税と社会保障の一体改革を見極めた上で2012年度予算編成を踏まえた上で財政再建に向けた取り組みを判断する予定だったが、2011年度予算関連法案の成立が難しい状況になる中、財政再建に向けた政権の政策運営力の低下に対して何らかの警鐘を鳴らす必要性から、リポートを公表に踏み切った。

 R&Iは2000年3月に日本ソブリンに対する格付けAAAを付与。2001年3月に日本ソブリンの格付け方向性をネガティブにして以来、格付けの変更を行っていない。なお、自国のソブリン格付けを引き下げた場合、グローバルに事業展開する格付け会社として世界で初めてのケースになる。

  (ロイターニュース 星裕康 梶本哲史)


https://www.r-i.co.jp/jpn/body/cfp/news_release_A/2011/02/news_release_2011-A-012_01.pdf
信用格付は、原則として発行体から対価を受領して実施したものです。なお、詳細につき
http://www.r-i.co.jp/jpn/policy/policy.htmlをご覧下さい。

2011年2月28日
政局混迷で日本のソブリン信用力に一段と下押し圧力
格下げでも一部の政府系機関以外への影響は限定的

R&Iは、昨年末に最低限度の財政規律を守った2011(平成23)年度政府予算案が固まったのを受けて、今年1月12日、日本ソブリンについて発行体格付AAAを維持した。その上で、6月末までに政権が公表を約束する税制・社会保障一体改革案や、8月の概算要求に始まる2012(平成24)年度予算案の策定プロセスを注視していく構えでいた。
R&Iはソブリンの信用力評価に当たり、財政状況や資金調達環境と並んで政策実行力を重視している。この点に関して1月の見直しの際に「政府の総合的な政策実行力が試されていると言えるが、2009年秋の総選挙で誕生した民主党主導の連立政権は一向に基盤が安定せず、R&Iとして長期的な視野に立つ政策体系の構築・実施を確信できる状況にはない」としていた。
その後の状況を見ると、民主党の党内対立などもあって政局が混迷、2011年度予算関連法案の成立が難しい状況になっている。4月に統一地方選挙を控える中、民主党が求心力を取り戻し政局が早期に安定することは望めそうにない。赤字国債の発行ができず、公共サービスに影響が出るといった問題もさることながら、今後の政治情勢次第では、財政再建のカギを握る税制・社会保障制度改革を進めることが一段と難しくなり、財政再建がこれまで以上に遠のく懸念が強まっている。
日本は政府債務の負担という面で、AAAの維持がそろそろ限界に来ているとR&Iでは判断している。以前からの注目点でもある2012年度の予算編成においては、財政赤字の見かけ上の抑制にとどまらず、税外収入への依存度を低下させられるかなど、質的な改善も重要な評価ポイントだ。ところが、野党の取り込みや閣外協力の取り付けなどに伴う政治的取引の結果、重要な制度改革が先延ばしされ、拡張的な財政スタンスに傾く可能性も出ている。その場合は、格下げが避けられなくなろう。
もっとも、製造業を中心に産業基盤の強さは世界でも依然トップクラスで、安定的に経常収支の黒字を確保している。貯蓄が潤沢で高水準の国債も大半が国内で消化されている。こうした点を考えると、信用力はなお高く、急激に低下していく懸念も乏しいことから、仮に格下げになる場合も小幅にとどまろう。このため、日本ソブリンの格下げが、他の国内発行体の格付に与える影響は、後述のように、一部の政府系機関などを除き限定的なものにとどまると予想している。
政治・経済情勢に加え、金融・資本市場などの動向も注視し、適切な格付アクションを取っていく。


日本のソブリン信用力低下が国内発行体格付、SF商品格付に与える影響

ソブリン信用力の低下が、当該国に所在する発行体の信用力に大きな影響を与える要因として、外貨交換リスク、すなわち、当局が外貨への交換や外国への送金を規制するリスクが高まることが上げられる。しかしながら、R&Iは日本の当局がこうした規制を行うリスクは無視しうるほど小さいと考えており、外貨交換リスクは日本の発行体の格付を制約する要因にならない。仮に日本ソブリンが格下げとなっても、全ての発行体について日本ソブリンの格付が必ずしも上限になることはなく、発行体に与える影響を個別に評価する。
ソブリン格付は「経済のファンダメンタルズ」「政治社会の安定度」をベースに「政策運営力」「財政状態」「資金調達力」を踏まえて、「中央政府の債務返済の確実性」を評価する。
ソブリンの場合、一般に「経済力の低下」「経済・金融システムの混乱」「政治社会の安定度の低下」などを引き金に「政策運営力」が制約され、「財政状態」「資金調達力」が打撃を受けるという過程をたどって信用力が低下することが多い。このような状況下におけるソブリンの格下げは、当該国に所在する多くの発行体の格付に影響する。
しかしながら、日本の「経済のファンダメンタルズ」は、なお強固であり、日本ソブリンに下押し圧力をかけているのは、主として「財政状態」と「政策運営力」である。そのため、原則として、民間事業会社の格付は日本のソブリン格付に制約されないと考えている。
強い規制を受ける金融機関の格付は日本のソブリン格付を超えるのが難しい。また、ソブリン格付を超えない限り格下げの影響は受けない。R&Iは公的サポートを受ける蓋然性の高い金融機関の格付に一定のフロアーを設けているものの、公的サポートを理由とするスタンドアローンの信用力評価からのノッチアップは行っていないためだ。
地方自治体の格付は日本のソブリン格付が上限となるが、ソブリン格付の変動幅に連動して引き下げることは考えていない。地方交付税の算出や様々な制度変更に係わる権限は国にある。地方交付税の不交付団体であったとしても、道路建設などに係わる補助金や負担金は自治体の重要な財源だ。さらに国債消化に支障が生じるようになった場合、地方債も同様の事態に陥る可能性が極めて高い。このため、現行制度のもとでは、交付団体であるか否かにかかわらず、自治体の格付は日本ソブリンに制約される。
一方で、日本ソブリンの格下げが小幅にとどまるのであれば、自治体の統治機構としての機能を維持するために日本政府が自治体を支えようとする意思(政策上の優先順位)と能力(格付水準)が大きく後退するとは考えにくい。自治体自身にも徴税権があり、大幅な制度変更や支援能力の低下がない限り、都道府県・政令市の格付はAA−以上を維持できよう。
政府系機関の格付は日本ソブリンが上限となる。ソブリン信用力の低下は、政府系機関の信用力にネガティブな影響をあたえるが、その度合いは一様でない。政府系機関の格付は「政府が必要な支援を行う可能性(=政府の支援能力と意思)」と「スタンドアローンの信用力」を総合的に評価して付与している。スタンドアローンの信用力についての評価ウエートが高く、かつスタンドアローンの信用力が比較的高い政府系機関については、政府の支援能力が低下しても、現在の格付を維持できるケースも想定される。日本ソブリンが格下げとなった場合、ソブリンと同格としている政府系機関の格下げは避けられないが、その他の機関については、その影響を個別に評価する。


05. 2011年3月09日 16:56:23: cqRnZH2CUM
投資家はとっくの昔から注目してるがw
やっとマスコミが気付き始めただけだな

投資家、日本の政治混乱に注目し始める
* 2011年 3月 9日 7:50 JST
  【東京】日本では政治的な内紛から菅政権が揺らいでおり、経済の回復を損ないかねず、投資家の注目を集めつつある。

 政府と野党との国会紛糾を受けて、菅直人首相の支持率は20%を割り込み、与党民主党内部でも内輪もめを生んでいる。
 
 しかし、日本の政治的な混乱はいつものことだと長年静観してきた市場関係者たちも、政治動向、とりわけ予算関連審議のこう着状態に無関心ではいられなくなり始めている。審議が行き詰まれば関連法案を国会通過させられず、総選挙につながりかねないからだ。

 1月27日に日本国債格付けを「AA-」に格下げした米格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は8日、政治的な混乱が経済成長に影響を及ぼし始める恐れがあると述べた。

 S&Pは「日本の政界の不安定さで、日本の短期的な成長見通しが脅かされている」とし、「とりわけ、与野党間の膠着状態の結果、予算関連法案の国会通過が滞るかもしれず、そうなれば、とりわけ今年下半期の成長が阻害されるだろう」と述べた。

 新たな政権交代を懸念するアナリストや投資家も少なくない。

 東京海上アセットマネジメント投信のシニア・ファンドマネジャーは「最も心配なのは菅首相の辞任で、その場合政治が不安定化するだろう」と述べ、「総選挙を回避するのが日本の株価にはプラス」と語った。

 政治的な混乱の最近の犠牲者は前原誠司外相だ。同氏は菅首相が退陣した場合に最有力の後継候補と見られていた。菅首相は8日、新外相として松本剛明外務副大臣を起用すると述べた。

 市場は長年、政治的な混乱よりも中央銀行の日銀に注目してきた。日銀は長い間、超低金利政策を取っており、債券ないし為替市場に影響する突然の措置を講じる公算は皆無に近いとみられてきた。膨大な規模の日本国債市場が安定的とみられているのは、国債が主として国内企業によって保有されており、売却の公算は小さいとみられているからだ。

 一方、株式市場のパフォーマンスは順調と見る投資家も少なくない。アジアやその他世界向けの輸出が強く、政治など国内的な問題から若干隔離されてきたためだ。

 実際、日本の株価は今年これまでに3%上昇し、他のアジア市場よりも好調だ。債券市場も安定的だ。円相場は1ドル=82円前後で、1995年につけた過去最高値79円75銭をわずかに下回っている。

 一部の市場ウォッチャーは、政治的な混乱をきっかけに外国人投資家が円を売り、国債利回りを押し上げて、国債支払い額をさらに割高にするのではないかと懸念している。住信基礎研究所主席研究員の伊藤洋一氏は「将来、円安と国債利回り上昇につながる可能性は高い」と述べている。

 政府にとって最大の障害は、国債発行法案の議会通過だ。4月からの新年度の予算で、借り入れは支出の48%を占める。

 菅首相は38兆2000億円の赤字国債発行関連法案やその他関連法案の議会通過のため支持取り付けが必要だ。同法案は自民党指導の参議院で拒否されるのがほぼ確実な情勢だ。

 モルガン・スタンレーMUFG証券の日本担当チーフ・アナリスト、ロバート・フェルドマン氏は、赤字国債法案は今月中に通過しない公算が大きいため、政府は6月までの20兆円のつなぎ資金調達に頼る必要があろうと述べている。

  一部の政府関係者やエコノミストは、その場合、7月には資金面で行き詰まる恐れがあると述べている。そのシナリオでは基本的な行政機関の運営は政府短期証券の発行などで調達した資金を使う。しかし、義務的でないサービスは一時停止する可能性がある。また法人税減税や子ども手当なども影響を受ける。

 こうした影響は、国民負担を2兆4000億円増やし、来年度の国内総生産(GDP)成長率を0.2ポイント引き下げると第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストはみている。

記者: Toko Sekiguchi and Takashi Nakamichi


06. 2011年3月09日 18:13:17: cqRnZH2CUM
http://diamond.jp/articles/-/11424/votes
上久保誠人【第5回】 2011年3月9日 [立命館大学政策科学部准教授]
日英の財政改革を比較する――なぜ英国債は格付け最高位維持で、日本国債は格下げなのか?
 前原誠司外相が、法律違反である外国人からの政治献金を5年間、合計25万円受け取ったことで辞任した。献金者は前原氏が子どもの頃、世話 になった近所の方だという。これは国益を損ねるような話ではない。受け取ったお金を献金者に返金すればいいだけだ。それなのに前原氏が辞任したのは、些細 なことにヒステリックになる国民に対する「不信感」があるからだ(前連載第65回を参照のこと)。
 今回は、英国と日本の財政改革を、政治と国民の「信頼」に焦点を当てて比較する。
英国の財政改革――英国債は最高格付けを維持した
 ディーヴィッド・キャメロン政権は、ほとんどの省庁の予算の4分の1を削る歳出削減を盛り込んだ財政再建策を提出した。同時に付加価値税(VAT)の増税にも踏み切った。
 また、キャメロン政権は「大きな社会(Big Society)」という国家構想を打ち出した。財政再建で削減される学校、医療、警察、福祉などの国家の役割を、NGOなどの市民が自発的に引き受ける ことで「大きな社会」を創造するという構想だ。これには野党・労働党などから厳しい批判があるが、キャメロン首相は臆することなく、「われわれは政府の 『文化』を変え、一部の強力な既得権益に立ち向かう」と訴えている。
 これは、トニー・ブレア首相が在任時に「政権は国の『文化』にならねばならない」と発言したことと似ている(前連載第25回を参照のこと)。キャメロン首相の財政再建への強い姿勢は、米格付け会社S&Pによる英国債の最高格付け維持につながったという指摘もある。
次のページ>>日本の財政改革――日本国債は格下げされた
 日本の財政赤字は先進国最悪だとされる。民主党政権は「事業仕分け」や、シーリング(概算要求基準)を廃止して政務三役による予算細目の無駄削減 を目指す手法の導入など、財政再建に取り組んできた。だが、政権獲得前に公約した歳出削減額の達成には程遠い結果に終わっている。
 菅内閣による2011年度予算案は、一般会計総額が92兆4116億円と過去最大となった。社会保障関係費が高齢化による自然増などにより過去最 高を更新したことや、マニフェストに含まれる「子ども手当」や農家の戸別所得補償制度の増額、法人実効税率5%引き下げなど新成長戦略が予算に盛り込まれ るなどで、歳出削減が進まなかったからだ。
 歳入面では3年続けて国債が税収を上回る異例の状況が続いている。財政投融資、外国為替資金の両特会や鉄道建設・運輸施設整備支援機構の剰余金をかき集めてなんとか財源を確保したが、これらは11年度限りの財源が多い。税と社会保障の一体改革を早急に進める必要がある。
 しかし、菅内閣の支持率が低迷し、野党は態度を硬化させた。予算関連法案の国会通過の目途は立たない。与謝野馨氏の経財相起用は、菅首相が政局の主導権を取り戻すきっかけとなり得たが、「解散権」を封印するという詰めの甘さが党内の造反を引き起こした(第4回を参照のこと)。税と社会保障の一体改革の先行きが不透明化する中、S&Pは日本国債を格下げした。
日英の財政改革を比較する――「密室」の英国と「民主的」な日本
 英国の財政改革の特徴は「密室」での意思決定だ。英国の予算編成過程は、毎年3月に財務大臣から予算案が発表されるまで、基本的に非公開である。 各省庁が予算要求を出し、財務省との間で調整行う日本と同じプロセスがあるが、一切外部から見えない。また、予算や関連法案の立案に与党は介入しない。さ まざまな業界の要望や学者の意見を聴取する「審議会」もない。
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 予算案は3月に財務大臣から発表されて「密室」から出てきた後、議会で審議されるが、その審議時間は日本の10分の1程度だという。また、日本の 感覚では信じられないことだが、財務大臣の予算案発表時に増税などの新政策も発表され、それが議会での法律成立なしに即日施行することもある。要するに、 英国の首相・財務相は、「密室」で予算編成し、議会での審議をほとんど受けずに決定する権限を持ち、財政改革を強力に推進することができる。
 英国と比較すると、日本の予算編成過程は非常に「民主的」だ。予算編成の過程に、与野党の政治家、各省庁、財界、業界、労組、学者などさまざまな アクターが参加し、それぞれの要求が予算に組み込まれる。しかも、国民はその過程をすべて見ることができる。だが、アクターの要求が入り過ぎるために、首 相・財務相が財政規律維持の指導力を発揮するのは極めて難しい。
英国にあって日本にないもの――政治と国民の「信頼」
 しかし、日本で英国のような「密室」でトップダウンの予算編成を実行したら、瞬く間に「独裁」と猛批判されるだろう。例えば、小沢一郎氏が民主党 幹事長時代に「政務三役への権限集中」「政調会廃止」「幹事長室への陳情一元化」という英国流の意思決定システム導入を目指したが、「小沢支配」と厳しく 叩かれた(前連載第38回を参照のこと)。
 従来、英国と日本の政治家のリーダーシップの差は政治制度の違いと考えられてきた。だから日本では、内閣や党執行部の権限強化のための小選挙区制 導入という選挙制度改革や、政治が省庁を掌握するための副大臣・政務官の導入などの制度改革が行われてきた。しかし、日本では制度が整備されても、その制 度をまともに使うと「独裁」批判を浴びるのだ。問題は政治制度そのものではない。
 むしろ英国と日本の違いは、前連載から論じてきた政治と国民の間の「信頼」の有無ではないか(前連載第65回を参照のこと)。英国では、総選挙で勝利して政権を獲得した政治家を国民が「信頼」し、政治家から成案が出てくるまで落ち着いて待っている。政治家の側も、国民の政策理解力を「信頼」し、「密室」で予算編成してから、堂々と成案を国民の前に出してくる。
次のページ>>財政改革が進まないのは、政治と国民の「信頼」崩壊が原因
 一方、日本では、政治と国民の「信頼」が崩壊している。国民は政治不信なので、政治家は常に監視の対象である。「密室」で物事を進めるなど認めが たいし、政治家が立案する政策も信頼できない。政治家は、国民が感情的になるばかりで政策を理解しようとしないと不信感を募らせている。
 だから、予算編成の過程で国民の歓心を買うパフォーマンスを繰り返す。その結果、予算編成は混乱し、財政改革が進まないのではないだろうか。
質問1 国民は政治を信頼していると思う?
描画中...97.2%
信頼していないと思う
1.5%
わからない
1.2%
信頼していると思う
質問2 政治家は国民を信頼していると思う?
描画中...88.2%
信頼していないと思う
9.2%
わからない
2.6%
信頼していると思う

07. 2011年3月09日 23:36:38: cqRnZH2CUM
白川日銀総裁インタビュー、識者の見方(1)

* 2011年 3月 9日 17:47 JST 
 白川方明日銀総裁は先月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とダウ・ジョーンズ経済通信(DJ)との長時間にわたるインタビューで、デフ レ脱却に足踏みする日本経済のかじ取り役としての日銀の政策を擁護した。WSJ/DJは今回、8人の識者に対して、白川氏がインタビューの中で日銀の過去 の失策を挙げなかったことと、デフレ解消に金融政策ができることは限られているとしたことへの所感を中心にコメントを求めた。
日銀に説明義務はないのか?

シカゴ大学ブース・ビジネススクールのアニル・カシャップ教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・環太平洋研究大学院の星岳雄教授

 白川総裁は、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビュー記事で、日銀は世界に先駆けて実験的な金融政策を断行し、バブル崩壊後の日本がデフ レスパイラルに陥るのを阻止した、と評価している。だが、これは事実に反しており、日銀による歴史の書き換えとしか言いようがない。いまの政府の経済政策 運営に関する迷走ぶりを考えれば、日銀に同情すべき点は多々ある。しかし、だからといって日銀が日本経済の停滞に加担した責任を問わなくてよいということ にはならない。白川総裁はインタビュアーの「15年間にわたるデフレとの戦いで日銀が犯した誤りを一つ上げるとすればなにか?」という質問への答えを避け たが、ここ15年の経済状況を客観的に振り返れば、この質問に答えることは難しいことではない。 

 まず、インタビューでは明らかにされなかった二つの事実を指摘しよう。第一に、日銀はその目的である「物価安定」を達成できなかった。もし、日銀が 法的独立性を獲得した1998年から現在まで、日銀が安定した物価上昇率と考える1%程度で物価上昇が続いたとすれば、現在の物価水準は18%ほど高く なっていたはずである。この計算では、物価安定を0%から2%で物価が上昇する状態とする日銀の定義を使っているが、この目標は各国の中央銀行の中で最も 低いものである。その低い目標でさえ、達成するのに失敗してきたのである。インフレ率がもう少し高かったら(あるいはデフレ退治に成功していれば)資金コ ストの低下が経済に好影響を与えただろう。もちろん、インフレのみによって経済成長の問題が解決できると論じるつもりはないが、助けにはなったはずであ る。

 第二に、1990年代後半からの日本経済の最大の問題は、金融システムの機能不全にあった。銀行は不良債権の抜本的処理を怠り、ゾンビ企業を救済 し、景気がよくなるまで問題を隠し続けようとした。ゾンビ企業が生きながらえることによって、企業間の競争は歪められ、健全企業は拡大を妨げられた。こう した経済の新陳代謝の減退が日本経済を停滞させた。この問題に対して日銀が何らかの政策を行ったとすれば、それはゼロ金利を一日も早く終了して、金利によ る調整機能を回復させる試みだった。たとえば、2000年8月に時期尚早と批判されつつもゼロ金利政策を解除したのは、最も顕著な例である。もっと賢明な 政策は銀行監督に関する当時の政府の無策を指摘して、できることなら金融庁と協力して銀行に不良債権処理を迫ることだっただろう。金融を引き締めるのでは なく、デフレ脱却のために金融政策を一層緩和するほうが、経済を刺激し、構造変化をむしろ容易にしたと考えられる。

 日銀の評価はこのような事実に基づいて行わなければならない。もし、日銀が白川総裁のインタビュー記事にみられるような自画自賛を続けるつもりなら、次の二つの質問に明快な解答を示す必要がある。

 1.「13年以上もの長期を考えるならインフレの主因は金融政策である」という命題を受け入れるか否か?この命題は先進国の中央銀行ならどこでも受け入れ ているものだと考えられる。もし、日銀がこの命題を受け入れないのであれば、それに代わる長期インフレ率に関する理論が必要である。

 2.政府は独立した中央銀行が目標を達成できない状態を何年くらい容認すべきなのか?日銀が物価安定目標の未達成について何も説明義務がないようなそぶりをするなら、その独立性が脅かされてしまうのも仕方ないのではあるまいか。
デフレは「貨幣的現象」にほかならない

エール大学の浜田宏一教授

 総裁のインタービュー記事は、わたしには不思議とか言いようのない日銀の金融政策の背景が何かを知るのに有益だった。

 第一に、最近の日本経済のマクロパフォーマンスは、先進国、中堅国、途上国を含めた世界最悪に近いといってよいだろう。成長率でみても、過剰設備の 大きさでみても各国に遅れている。日本の鉱工業生産にいたっては、リーマン・ショック以降、米、英、ユーロ圏本国よりはるかに大きな落ち込みを体験してい る。火の粉が降りかかってきた日本のほうが、火の粉を発生させた国より大きく傷ついたのだ。

 日本の失業は5%程度におさまっているかに見えるが、それは表向きだけのことである。「雇用調整助成金」の制度があるので、企業は助成金を得て解雇 をできるだけ控えようとする。その結果、多数の潜在失業者を社内に抱え込んでいる。学習院大学の岩田規紀久男教授は、このような潜在失業を考慮に入れる と、日本の現状の真の失業率は13%や14%に達すると指摘している。日本の失業率はアメリカのそれより高いということになる。

 したがって、日本銀行のトップによる日本の金融政策の弁護は、あたかも毎回サッカーで負けているチームの監督が、それでも日本チームは選手をできる だけ抑制しているので、試合には負けても(バブルに巻き込まれて)選手が転ばないチームにしたので褒めてほしい、他国も見習うべきだといっているように聞 こえる。これまで日銀総裁が無神経になれるのは、1998年の新日銀法の施行以来、日銀総裁は金融政策の成果に関してほとんどなんら責任を負わず、また日 銀の独立性が金融政策の手段の用い方に関する独立性だけでなく、金融政策目標の選択まで日銀にあるシステムに安住しているからだ。

 インタビューでの第一の質問は、「白川総裁は間違いをしていないのか」だった。とんでもない、間違いの連続だった。諸先進国の中央銀行はリーマン危 機に対して包括的量的緩和で答えたのに、日本銀行は黙視を続けた。そして円の実効実質為替レートは30%近く跳ね上がった。近頃総裁は「包括的量的緩和」 の意味がようやく分かったような講演をしているが、日本銀行のやる量的緩和は、「あまりにも小さく、あまりに遅い」ものだった。その証拠に、デフレや超円高が続いている。

 デフレも円高も財の通貨に対する相対価格、他通貨に対する相対価格の問題だ。これらはフリードマンがよく言った「貨幣的現象」にほかならない。そし てその値を是正するための手段は貨幣政策しかない。したがって、インタビュー中の第二の質問に対しては、「もちろん、金融政策は正しいやり方で行われれば 大いに有効。デフレや円高に実物要因も影響するが、金融政策がすぐ施行できてすぐ効果が現れるのに対して、実物要因を是正するには時間がかかるし困難なこ ともある」という答えになる。

 デフレが貨幣的現象であることを否定することにより、白川総裁はミルトン・フリードマンの学説に背いた。また金融政策が為替レートを通じて景気に影 響することを無視することにより、白川総裁はシカゴの国際金融論の伝統であるハリー・ジョンソンの「国際収支、為替レートへの貨幣的接近」をも忘れ去って しまった。
インフレ目標を導入すべき

学習院大学の岩田規久男教授

 デフレは日本銀行の金融政策のせいである。白川総裁は「量的緩和にはデフレ脱却の効果はなかった」というが、予想インフレ率は量的緩和開始以降上昇 し、量的緩和が解除された2006年3月には、1%まで上昇していた。予想インフレ率は量的緩和が解除されると低下し始め、白川氏が総裁になってから4カ 月後には0%まで低下し、リーマン・ショック以後はマイナスである。

 2004年以降の回帰分析によれば、量的緩和により日本の予想インフレ率が1%ポイント上がると、円はドルに対して11円安くなり、日経平均株価は 1000円上昇し、予想実質金利も低下する。これらの効果によりデフレから脱却できる。白川総裁は「生産性の低下がデフレをもたらしている」というが、日 本よりも生産性の高い国も低い国もインフレであり、デフレと生産性低下とは関係がない。

 インフレ目標を採用し、量的緩和を進めれば、デフレを脱却できるのである。
遅れたデフレ対策

法政大学大学院の小峰隆夫教授

 白川総裁のインタビューについて、大きく二つの点についてコメントしたい。一つは、過去20年前後の日本の金融政策をどう評価するかということであり、もう一つは、現在日本が直面しているデフレの原因をどう考えるかということである。

 まず、金融政策の評価については、私は、日本銀行が、デフレ対策として革新的な金融政策を世界に先駆けて実施してきたといいう点については、白川総 裁に同意する。しかし私は、日本の金融政策が、非伝統的な分野にどんどん踏み込んでいったのは、その前の時期に金融政策の対応が不適切であったことによっ て、そうせざるを得なかったからだと考えている。

 不適切な対応だったと考えるのは次の三つである。第一は、85年以降のバブルの発生期に金融を緩和し過ぎたことだが、この点は白川総裁も同意しているようだ。これは、資産価格の上昇を意識しなかったからではなく、円レートの上昇を意識しすぎたからだったと思われる。

 第二は、バブルが崩壊してからの金融緩和が遅れたことだ。90年1月以降株価が下落してからも金融の引き締めは続き、緩和に転じたのは91年7月であった。緩和の理由も、資産価格の下落およびその景気への影響に配慮したというわけではなく、単に金利水準の調整というものであった。

 第三は、デフレ傾向が現われてから、デフレ防止のために金融を緩和するまでの遅れがあったことだ。現在、日本銀行は事実上、消費者物価1%を物価安 定の目標としている。この基準に基づいて考えると、消費者物価は94年4月頃から1%以下の上昇率が続いていた。しかし、物価の下落を意識して金利を引き 下げたのは、95年9月だった。その後も物価の下落が続いたが、追加的な緩和措置が取られたのは、98年9月であった。

 もっと早くデフレに取り組んでいれば、世界に先駆けて革新的な金融政策を行う必要はなかったのかもしれない。

 次に、現在のデフレの原因については、私は、デフレの原因が複合的なものであり、金融政策だけに責任があるわけではないという点で、白川総裁に同意する。しかし、白川総裁が近年のぜい弱な消費や投資の一因として人口の変化を上げている点については同意できない。

 まず、人口要因が影響するのは、需要か供給かという問題がある。私は、人口要因が経済を制約するのは、労働力、貯蓄などを通じた供給面だと考えてい るのだが、仮に、人口要因が需要面に現れるとしても、その影響は小さい。非常に単純に考えて、消費の増加率は、人口の伸びと一人当たり消費の伸びの和であ る。人口の伸びがマイナスになれば当然消費の伸びは低くなる。しかし、2011年2月に公表された2010年の国勢調査によると、2000年から2010 年にかけてはむしろ人口は増えているのだから、この面では消費が停滞する理由にはならない。

 生産年齢人口の減少が消費を減らしているという説もある。確かに、生産年齢人口は2000年から2010年にかけて年率平均で0.5%程度減少して いる。仮に、生産年齢人口だけが消費の主体だとすると、日本の消費は人口要因で0.5%減少する。これはかなり大きい。しかし、年少人口も老年人口の人も 消費はゼロではないのだから、人口要因はせいぜい0.2〜0.3%であろう。これはそれほど大きいとは言えない。

 私は、人口要因の影響は、需給ギャップが解消した将来の時点で、供給面から現れるものだと考えている。

(続く)

白川日銀総裁インタビュー、識者の見方(2)

* 2011年 3月 9日 18:24 JST 

 白川方明日銀総裁は先月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とダウ・ジョーンズ経済通信(DJ)との長時間にわたるインタビューで、デフレ脱却 に足踏みする日本経済のかじ取り役としての日銀の政策を擁護した。WSJ/DJは今回、8人の識者に対して、白川氏がインタビューの中で日銀の過去の失策 を挙げなかったことと、デフレ解消に金融政策ができることは限られているとしたことへの所感を中心にコメントを求めた。
負の遺産と闘う白川氏

京都大学の翁邦雄教授

 白川総裁はインタビューで自身の考え方を概ね率直に語っていると思う。白川総裁が指摘しているように、日本銀行が様々な革新的な金融政策を先駆的に実行してきた「孤独なフロントランナー」であったことはその後の各国の経験から今や明らかだし、日本経済の構造的問題に伴うデフレーションからの脱却は金融政策だけではできない、という診断にも同意する。しかし、読者の関心は共感より違和感にあるだろうから、以下では違和感について述べる。

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白川方明日銀総裁
Reuters

白川方明日銀総裁
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白川方明日銀総裁

 インタビューで白川総裁は、日本銀行の過去の政策のミステークについて問われて、しばらく沈黙した後、バブル生成期の超金融緩和の長期化のみを挙げている。しかし、日本銀行が国内外で「革新的な金融政策のフロントランナー」という認識をもたれてこなかった大きな理由は、2000年8月のゼロ金利解除にあるのではないか。

 白川総裁はコメントしていないが、短期金利が0.25%上がってもそれが実体経済に与える直接的影響は微々たるものだし、(世間にはうまく伝わらなかったが)ゼロ金利解除には、金融市場の機能を回復させ金融緩和体制を持続させやすい形に立て直す、という狙いがあったなどの理由から、ミステークとまではいえない、という議論もありうるだろう。

 しかし、数字的には微調整であっても、この政策は政府の議決延期請求権の行使という騒動まで引き起こすことになった。本来、政府も対立を際立たせるよりは「金融緩和体制を持続させるためのゼロ金利解除」という見解を共有する方が国益に適っていた筈だが、そうはならず、派手な対立で世界の注目を集めたうえでゼロ金利は解除された。このことは、インフレファイターであった速水総裁(当時)の言動とあいまって「日本銀行は超タカ派的」という認識を世界に強く刷り込むことになった。

 この刷り込みは日本銀行にとって大きな負の遺産として作用した。日本銀行がデフレとの闘いで知恵を絞り、実践したさまざまな先駆的政策も、つねに「インフレファイターである日本銀行にとっては不本意な政策」と受け取られ割り引かれる傾向があり、そうしたネガティブな期待は政策効果を弱める方向に作用した。 2000年当時ゼロ金利解除に極めて懐疑的だった(と筆者が感じている)白川総裁がなぜこの苦い経験に全く言及しなかったのかは分からない。むしろ、その教訓は2010年10月の予想外の包括的緩和導入などで、市場の期待を超えた緩和に向けて白川総裁を駆り立てた一因のように感じている。
量的緩和の理論と実践

アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートのビンセント・ラインハート・レジデント・スカラー

 2002年当時、米連邦準備理事会(FRB)の理事だったベン・バーナンキ氏は、経済学者ミルトン・フリードマン氏を主賓とする会合でスピーチした。バーナンキ氏は、大恐慌でのFRBの役割について公に謝罪した。3月1日付のウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された日銀総裁の長大なインタビューからすると、白川総裁も、日銀の政策への批判に関して、バーナンキ氏からの謝罪を期待していることだろう。

 私は、2004年に発表され、日銀批判を行った学術論文をバーナンキ氏と共同で執筆したひとりである。FRBを含む他の中央銀行が同じような厳しい状況に対処しているのを目にした後では、白川総裁が不満を感じるのは当然だと思う。とりわけ、主な論点である「量的緩和」は、理論上はよくみえるものの、民主的な中央銀行によって実施されると欠点を持つ政策なのである。

 まず、理論についてだ。中央銀行のバランスシートの規模と構成が、金利政策の直接的な効果を超える影響を金融市場と経済にもたらす、との考えに基づくのが量的緩和だ。日銀やFRBが政府証券の買い入れを行うと、それら証券の利回りが押し下げられ、準備預金などを原資とする資金が市中の銀行に供給されて、銀行はそれを自らの資産購入に充てることができる。これは、政策金利の抑制が続くとのシグナルになり、消費を刺激する。

 第二に、問題点についてだ。量的緩和が効果を上げるためには、中央銀行が量的緩和にコミットしていることを市場に信じさせる必要がある。当局がすぐにその政策をやめる、もしくは逆の政策に転じると投資家が思えば、長期金利はほとんど動かないし、余剰資金の有効活用も望めない。理論で見過ごされているのは、日銀など主要な中央銀行の金融政策が、委員会によって決定されるということだ。個々の委員は常に同じ見識を持つわけではない。判断のバランスは時間とともに変わる可能性がある。民主的な決定プロセスにおいては、ある時点の決定がどうであろうと、将来どうなるかは分からない。従って、政策ステートメントは安全策をとって妥協に傾く、つまり、政策ステートメントは一時的なものとなり、長期的で確かなコミットメントを前提とした政策効果を削ぐことになる。

 中央銀行が政策ルールに従うことで、この民主主義の欠点に伴う悪影響を抑えることは可能だ。日銀は結局、2001年、物価が下落している間は政策金利をゼロにすると約束した。FRBはまだそうする気配はない。

 明らかに、理論を実践するのは、見かけよりも難しいのだ。
日銀の「他人の不幸は蜜の味」

米ウィリアムズ・カレッジのケン・カットナー教授

 日銀は、「他人の不幸は蜜の味」と言う資格が少しだけある。白川氏が指摘する通り、最近の経験は、デフレを止めるのがいかに困難かを示している――金融システムをキャッシュ漬けにするだけではない、それ以上のことをしなければならないのだ。

 日銀は、日本の銀行破綻による影響を食い止める措置を取ったという点で、米連邦預金保険公社と功績を分かち合うに値する。そして白川氏は、「量的緩和」や民間証券の購入といった非伝統的政策において、日銀はパイオニアであると言う権利がある。さらに重要なのは、デフレの収束が明確になるまでゼロ金利を続けるとした2001年の日銀のコミットメントである。

 しかしながら、日銀の政策が「少なすぎ、遅すぎる」という批判は、少なくとも10年前の政策についてはあてはまる。1989年に株式市場のバブルが崩壊、91年に経済が縮小し始めた。それでも日銀は慎重な利下げにとどまり、インフレ率がマイナス圏に入ったにもかかわらず、1995年までの実質金利は 1%から2%の圏内にあった。

 量的緩和が始まったのは2001年――景気の低迷が始まってから10年、デフレが始まって6年が経過していた。リーマン・ブラザーズ破綻から数カ月で数千億ドルの住宅ローン担保証券(MBS)やコマーシャル・ペーパー(CP)を購入した米連邦準備理事会(FRB)と異なり、日銀の資産購入はほとんどすべてがリスクフリーの国債だった。2004年のピーク時には、株式購入は日銀のバランスシートのわずか1.4%、資産担保証券(ABS)は0.2%に過ぎなかった。

 2008年の金融危機のスピードが速く、FRBが迅速な対応を取らざるを得なかったのはもちろんだ。しかし、1990年代の日本の経験は、断固たる行動の重要性をFRB当局者に痛感させた。白川氏もこの教訓を学んだと思われる。日銀は、2008年の米国の危機に際し、15年前の自国の危機よりも迅速に対応したことで称賛に値する。

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特集:白川日銀総裁インタビュー

 日銀の白川方明総裁がウォール・ストリート・ジャーナルとダウ・ジョーンズ経済通信のインタビューで、日銀批判に反論。2008年の就任以来、各国中銀総裁きっての理論家かつ実務通として、非伝統的な施策を含む金融政策をリードしてきた白川氏がデフレ対策などを語った。一問一答も含めさまざまな切り口でインタビューの内容を紹介する。

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未就職者が1000人超=公認会計士試験合格者
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早期に営業益1兆円へ=新興国と環境車に重点−トヨタ経営指針
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白川日銀総裁インタビュー、識者の見方(2)
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早期に営業益1兆円へ=新興国と環境車に重点−トヨタ経営指針

 
世界経済 
中国の債務増大、インフレ対応余地の縮小を示唆

 中国政府が新たに公表したデータによると、中国政府の債務は他の主要国と比較して依然低い水準にある。だが、公式データには地方政府や多くの国営金融機関の債務は反映されておらず、それらを含めると中国政府にとってインフレ対策の余地が限られていることがうかがえる。

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【コラム】ドル支配の終わりが近い理由
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S&P、アジア諸国のインフレ高進を警告
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【バロンズ】ブラジル市場に戻るのは尚早 - インフレ抑制策の効果も第4四半期以降に
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【NewsBrief】原油相場、一時106.95ドル-リビア情勢の長期化織り込み
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各国中銀、インフレ期待の上昇抑制で結束=トリシェECB総裁


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