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日本の災害:復興には「5年かかるかも」(BBC)
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/288.html
投稿者 無段活用 日時 2011 年 3 月 21 日 19:32:32: 2iUYbJALJ4TtU
 

http://www.bbc.co.uk/news/business-12802193

2011年3月21日最終更新05:49GMT

日本の災害:復興には「5年かかるかも」


日本は、2350億ドル(1450億ポンド)[19兆1000億円]の損害を被った、悲惨な地震と津波から復興するには5年の時間が必要と、世界銀行は報告書で述べた。

同銀行は、また、今年の日本の経済成長から0.5%が削り取られたと概算した。

それでも、今年の後半には、再び成長が始まると、同銀行は予測している。

3月11日の地震と津波は、自動車や電子産業の生産ネットワークを混乱に陥れた。

「住宅とインフラへの損害は、類を見ないものだった」と、世界銀行は述べた。

「再建への取り組みが加速するにつれて、それに続く四半期ごとの成長が再び始まるだろう。再建への取り組みは、5年続くかもしれない」と、同銀行は述べた。

同銀行の概算では、損害は1250億ドル[10兆1000億円]から2350億ドル[19兆1000億円]の間となる。


連鎖反応

世界銀行は、また、別の報告書で、東アジアに及ぼす影響を予測している。

「すぐ近い将来、最大の衝撃が、貿易と金融の分野で生じるだろう」と、世界銀行のアジア太平洋地域主任エコノミストのビクラム・ネルー氏は述べている。

地震と津波に襲われた、日本の東北地方には、港湾、製鉄所、自動車や電子部品の製造業の拠点がある。

「特に、自動車や電子産業において、生産ネットワークの混乱によって、問題が続く可能性がある」と、世界銀行は述べた。

この地域に及ぼす他の心配の要因は、東アジア地域の長期債務の約4分の1が円建てであることだ。

円建て長期債務の割合は、中国ではわずか約8%だが、タイでは約60%だ。

日本円が1%高くなると、諸外国が保有する円建て資産に対して、1年間に償還する債務が約2億5000万ドル[203億円]増加すると、その報告書は指摘する。

東アジア地域は、インフレ抑制の努力が続けられており、2011年の経済成長は力強さが抑制されるとの見通しだ。

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(投稿者より)

「日本の復興には5年かかるかも知れない」という、世界銀行の報告の概要を伝えた、イギリスBBCサイトの記事です。誤訳があるかもしれません。ご容赦ください。

交換レートは、1ドル=81円15銭で計算し、上から4桁目を四捨五入しています。

この記事の元になった2部の報告書のうち、1部は日本語で読むことができますので、下に付しておきます。リンク先から英文ページに移動することもできます。

もう1部は英文で、下のリンクから読むことができます。

(The recentearthquake and tsunami in Japan: implications for EastAsia: The World Bank )
http://siteresources.worldbank.org/INTEAPHALFYEARLYUPDATE/Resources/550192-1300567391916/EAP_Update_March2011_japan.pdf?cid=EXTEAPMonth1

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(大震災の影響 ― 日本の成長に対しては「一時的」、堅調な域内経済に対しては「限定的」世界銀行「東アジア大洋州地域報告書」:世界銀行)
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/NEWS/0,,contentMDK:22862905~enableDHL:TRUE~menuPK:34466~pagePK:34370~piPK:34424~theSitePK:4607,00.html

大震災の影響 ― 日本の成長に対しては「一時的」、堅調な域内経済に対しては「限定的」世界銀行「東アジア大洋州地域報告書」

Contact:
シンガポール:
福田千佐子 電話:(省略)
Email(省略)

ワシントン:
Mohamad Al-Arief  電話:(省略)
Email (省略)

シンガポール、2011年3月21日 ― 世界銀行は、大震災と津波により日本の実質GDP成長率は一時的に鈍化するものの、復興努力が進むにつれ、2011年央以降は回復に向かう見込み、と本日発表した「東アジア大洋州地域経済報告書」で指摘している。完全な予測を行うには材料が不十分であるが、日本の過去の実績をみれば、復興努力は迅速に行われ、東アジアの途上国経済に対する影響は短期的かつ限定的なものとなる見通しだ。

「現状の確保、将来の形成」と題した今回の東アジア大洋州地域経済報告書は、今般の大震災発生の数週間前に完成していた。日本での地震と津波の発生を受けて新たに加筆され、主に貿易と金融を中心とする域内への影響について暫定的な分析が行われた。ただし、原子力発電所で生じている不確実性と課題についても言及されている。

「東アジアにおける日本の存在の重要性に鑑みれば、今回の惨事の影響は明らかに域内に現れるだろう。しかし、その影響の規模を正確に予測するには、まだ材料不足だ」と、ヴィクラム・ネルー世界銀行東アジア・大洋州地域担当チーフ・エコノミストは述べている。「現段階では、東アジア地域に与える経済的影響はかなり短期的なものとなる見通しだ。直後の影響として顕著なものは、貿易と金融だろう。日本は、復興の取り組みが加速するにつれ、経済が浮上する見込みだ」

貿易に関しては、1995年に起きた阪神淡路大震災を参考にすると、日本の貿易は数四半期の間減速しただけで、輸入は1年以内に完全に回復し、輸出も震災前の水準の85%までに戻っている。ただし今回の場合、特に自動車とエレクトロニクス産業における生産ネットワークの分断により、問題が長引く可能性がある。

金融面では、東アジア諸国が抱える長期債務のおよそ4分の1が円建てであることに留意が必要である。中国の場合は約8%、タイの場合は約60%と、その割合は国により異なるが、円が1%切り上がる度に、円建て債券に対する域内途上国の年間返済負担額は、およそ2億5千万ドル増えることになる。

同報告書は2010年を振り返り、域内GDPの伸びが9.6%と驚くほど高かったことを特記している。また、域内途上国のうち6か国で7%以上の伸びを示すなど、同地域の成長は多極的になっている。これは概ね、各国の金融・財政刺激策の継続と対外需要の堅実な伸びによるものといえる。2011年と2012年の実質GDP成長率は8%程度に落ち着くものと予測される。

2011年は、インフレ対応が短期的優先課題となるため、経済成長は減速する可能性がある。東アジアの中所得国にとって、インフレを抑制することは難しい政策上の選択を迫られることになる。大量の証券投資の流入と食糧その他の一次産品価格の急騰により、金融政策の舵取りが複雑化しているからだ。マクロ的な調整負担のほとんどは財政政策にかかる模様だが、ここでも、財政赤字の早急な削減と、急務となっているインフラ整備や貧困層への現金給付を含む社会的支援に要する財源確保という問題の狭間に立たされている。
同報告書はまた、同地域が持続的な高成長パスを歩むために、好機をつかみ、課題に対応できるのか、その中長期的な見通しについても検証している。今回の日本での地震と津波は、自然災害に対する脆弱性という東アジアが直面する最大の課題の一つを顕在化させた。東アジア大洋州地域は、地球表面積の半分を占め、全世界人口の59%が住んでおり、世界の自然災害の70%以上が発生している。生産や人口がますます集中する東アジアの主要都市は、極端な天候、海面上昇といった危険にさらされている。各国は、自然災害に対して耐性があり革新的な都市の構築、環境面の持続可能性、気候変動への適応に取り組む必要がある。

世界経済の重心が徐々に東アジアにシフトする中、同地域は新たな責任を引き受け、地球公共財に対するより一層の貢献が求められている。「変化の激しい世界経済環境の中で、マクロ経済の安定のために困難な決断を進んで行うことができれば、東アジアは高成長を続けられるはずだ。同時に、域内経済統合の促進、経済的・社会的な格差の是正、生産ならびに消費における低炭素化の推進といった中期的課題に取り組まなければならない」と、ヴィクラム・ネルー世界銀行東アジア・大洋州地域担当チーフ・エコノミストは強調している。

 

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コメント
 
01. 2011年3月21日 20:56:22: AkfjoVUw82
5年で出来る訳ないだろ、放射能どうすんの ?

02. 2011年3月21日 22:53:52: KpPAdmfwX6

【コラム】1988年に私が想定した大震災、そして今の大震災−Mルイス


 3月18日(ブルームバーグ):1988年。私はウォール街での仕事を辞め、文筆業で生計を立てることにした。取材旅行先に関して記事が書けることを雑誌編集者たちに納得させさえすれば、どこに行っても出張費を出してくれることにわくわくした私は、どこに行きたいかを考え始めた。まず最初に行きたいと思ったのは日本だった。

  そこで私は、もし東京が大地震に見舞われて壊滅したら世界で何が起きるかという記事を編集者に提案した。もちろん私には、東京が地震で崩壊したら何が起きるかなんて分からなかったし、その手掛かりすらなかった。しかし編集者という人間は信じられないほど寛容で、その一人に私は東京に数週間行かせてくれと頼んでみた。そうしたら実現してしまった。

  だが、筆一本で食べていく人生に伴う問題に私はすぐ気が付いた。つまりどこかの時点でお話を書く必要があるということだ。このために有給休暇のつもりだった東京への取材旅行はほどなくして、自分にとっても不合理に思えた疑問に対する答えを必死に探す旅となってしまった。その問いとは、この新しい世界の金融センターが壊滅したら、何が起きるかというものだった。

  私はラッキーだった。日本の政府や金融界にもこの壮大な疑問に答えようとし始めている人たちがいたからだ。旧国土庁に所属していた尾田栄章氏はちょうど、1923年に東京を襲った大震災同様の地震が来たと仮定した研究を終えたばかりだった。(1853年や1782年、1703年などにも大地震が起きている。)

  尾田氏は、地震発生の時間や天候など、さまざまなシナリオに基づいて人命や建物が被る損失を試算した。同氏のリポートを用い、東海銀行に勤務していた日本人エコノミストも地震が経済に与える影響度合いを計算した。

           15万2000人死亡か

  両氏の試算はいずれも衝撃的な数字だった。尾田氏が最もあり得るとするシナリオでは、15万2000人が死亡し、80万棟のビルが倒壊、物的被害は約1兆ドル(約79兆円)。東海銀のエコノミストは金利水準が5ポイント上昇、経済成長が急激に落ちて資産価格が急落すると予想した。しかもこれらすべてが米国で起きると指摘した。

  それがこうした頭の体操から導き出された構図だった。つまり、大地震が来たら日本で多くの人命が失われる一方、復興に向けた海外資産売却によって金融面の痛みは外国が負うというものだ。

  自然災害の高いリスクと常に隣り合わせで生きていかねばならない国にはかなりの災害保険の備えができているが、その保険の売り手はわれわれ外国だということだった。

  当時の研究にはもっと多くの詳細が盛り込まれていたが、ここで全てを振り返るつもりはない。ただ、23年前に想定されたことを実際に現在起きていることと比較するのは興味深い。

ギャップ

  想定されたものと東京が実際に経験した地震は別物だ。本物は東京にかすかな打撃を与えたにすぎない。金融損失額も、今のところは1兆ドルといった数字ではないようだ。ただ1988年当時、原子力発電所で事故が起きるとは誰も思っていなかった。

  今回の地震に対する金融市場の反応もせいぜいが、1988年当時に考えられたシナリオに近いという程度だ。想定では日本政府や民間保険会社が円を確保するためにありとあらゆる外貨建て資産を売り、円が急上昇するというものだった。そして、現実に円は上がっている。しかし、巨額の刺激策と輝ける経済の将来を期待して買われると当時思われていた日本株は、ひどく急落している。

  想定と現実が違ったのには理由がある。市場は1988年ほど、日本経済の将来に期待していない。想定シナリオから派生する金融絡みの最も大きな唯一の疑問点は、日本が資金回帰させたいと考えた場合に米国がどれほどの影響を受けるのかという点だった。今はこれにもう一つの疑問が加わる。それは、日本が資金回帰させたいだけではなく、実際にそうすることが必要になった場合、日本にどれだけ混乱が起きるのかということだ。

             日本の変化

  この疑問こそが、現実と想定の比較から湧いてくるものだ。当時と現在ではいかに状況が変わってしまったかの表れでもある。1988年の日本は高い貯蓄率や巨額の貿易黒字を抱え、経済と株式市場も活況で、日本が立ち直ることは明らかだった。けれども現在の日本はほとんど絶望を感じる状況だ。

  日本の国内総生産(GDP)に対する債務割合は225%超と、先進国中で最大でギリシャのほぼ2倍。政府は依然として約9000億ドルの米国債を保有しているが、国民から巨額に借り入れ、その一部を米国債購入に充ててきた。人口は高齢化して減少し、貯蓄も減る。これまで日本国債の最大の買い手だった公的年金も、最近は売り手に回った。

  日本がいずれデフォルト(債務不履行)ないし債務再編を迫られるとみていた米ヘッジファンドのヘイマン・アドバイザーズは、3ポイントの金利上昇で、元利払いだけで全ての税収を日本政府が使い切ってしまうと試算している。

           資源豊かだった日本

  地震が起きる前の状況で既に、日本には恐らく多くの外国人に国債を買ってもらう必要があった。そうした外国人は日本の公的年金がよしとする水準をはるかに超える水準の金利を要求するだろうし、実際に上がった。

  1988年の日本には、震災に伴うはるかに高いコストをカバーできる資源があった。当時の大きな疑問は、日本資本への依存が高まりつつあった人々に与える金融の影響だった。

  金融界は落ち着かなくなり、日米間の状況は持続不可能に思えた。だからこそ、米国の雑誌編集者は東京に大地震が来た場合の影響に関心を持ったのだ。今や、日本人自体が実質的に破綻したシステムを維持しようとピリピリしている。

  1988年を振り返ると、金融の世界は最悪の事態を想定する人間にとって脆弱(ぜいじゃく)で不安定に思えたものだが、今日の世界において、安定性はさらに損なわれ、一段と脆弱になったように見える。しかも最悪の事態はまだ起きていない。(マイケル・ルイス)

(マイケル・ルイス氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストで、最新作の「The Big Short」はベストセラー。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

更新日時: 2011/03/18 12:26 JST

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=aJtv0A5.Ghck


03. 2011年3月22日 15:39:44: cqRnZH2CUM
とりあえず計画停電はやめ、付加価値の高い製品の製造を促進したり、
ライフラインの医療機器等への供給を可能にするため
一定以上の消費を行う消費者に対して電気料金値上げを行う方が効率的だ

日経ビジネス オンライントップ>企業・経営>時事深層
経験はなぜ生きなかったのか

* 2011年3月22日 火曜日
* 細田 孝宏,吉野 次郎,加藤 修平,伊藤 正倫,山根 小雪

震災  リスク管理  トヨタ自動車  ソニー  計画停電  電力  地域経済  日産自動車 

震災のスケールは日本企業のリスク管理の想定をはるかに上回った。全国規模の生産停止、物流網の寸断、長期化する停電…。危機対応の「書き直し」を企業に迫ることとなった。

 「いったい、いつになれば操業を再開できるのか…」

 未曾有の震災は、各産業に甚大な影響を及ぼしている。発生から4日経過した3月15日時点でも、東北地方に生産拠点を持つ企業の多くは、再建に向けた動きどころか、被害の全容把握すらできていない。過去に幾度も大きな地震に見舞われてきた日本企業は、地震を「経営上のリスク」と位置づけており、万が一の時の対応策を企業それぞれが持っていたはず、だった。

 だが、今回はその前提を明らかに上回る事態となった。
リスク分散したはずが…

 日本を代表するメーカー、トヨタ自動車。本社のある愛知県豊田市を中心とする中部地方に、グループ企業を含め、多くの製造拠点を持つ。

 かねて東海地震への備えを進めており、その1つが東北地方への生産分散だった。中部地方、九州で展開してきた工場を東北にも拡大し、国内3大拠点体制を構築してきた。

 車体メーカーとしてはグループの関東自動車工業に加え、この1月にはセントラル自動車が東北に進出。宮城県大衡(おおひら)村で新工場を稼働させた。神奈川県相模原市にある本社も大衡村に移転する予定で、トヨタの東北重視を象徴する存在だった。2月の工場開所式では、トヨタの張富士夫会長が「東北が国内第3生産拠点としていよいよ本格的に立ち上がる。大いに期待している」と語っていた。東北ではハイブリッド車の部品も生産しており、2010年1月にはグループの電池製造会社も宮城県で生産を始めている。

 皮肉にも、その東北を襲ったのが今回の震災だった。むろんトヨタも東北への拠点分散で油断していたわけではない。地震発生後、すぐに宮崎直樹・常務役員をトップとする「全社初動本部」を立ち上げ、対応に当たった。

 同本部は2007年7月の新潟県中越沖地震でも設置され、トヨタは被災した部品メーカーの復旧支援に動いた。エンジンに欠かせないピストンリングを製造するリケンの支援にも、トヨタは約200人もの人員を派遣。わずか1週間後に生産再開にこぎ着けている。

 リケンを支援したのはトヨタだけではないが、裾野の広い自動車産業は、部品メーカーまでをも視野に入れた危機対応で、大災害が発生しても、長期の生産停止を回避してきた。

 だが、今回の震災は、過去の経験が通用するレベルをはるかに超えるものとなった。14日夜時点では大手自動車メーカーは国内すべての工場を止めた。被災地域が過去にないほど広範囲にわたり、部品の調達に支障を来したことが大きいが、それだけが理由ではない。従業員の安全確保を最優先せざるを得なくなったことに加え、次々と明らかになる壊滅的な被害を前に、操業再開を口にするのもはばかられる「空気」が広がったためだ。

 トヨタは地震発生翌日から現地に救援隊を派遣。14日には食料やおむつなど生活物資を積んだトラックや救援隊を乗せたマイクロバスなどが東北地方の拠点に到着した。ただし、同日時点ではそこまでが精いっぱい。工場の被害状況の把握にも至らなかった。

 一方、日産自動車では今年2月に大災害を念頭に置いた全社規模の訓練を実施したばかり。そのシミュレーション通り、地震発生と同時に対策本部を設置した。志賀俊之COO(最高執行責任者)はエレベーターが停止した横浜本社の21階から階段で8階まで駆け下り、生産担当の今津英敏副社長ら各担当役員が待つ対策本部に飛び込んだ。そのまま情報収集に全力を注いだものの、一部の部品メーカーとは連絡が取れない状態が続いた。

 万全を期して災害に備えていたはずの自動車メーカーですら難しい対応を余儀なくされたのだ。

 地震はエレクトロニクス産業にも深刻な打撃を与えている。

 ソニーグループは宮城県や福島県などにある7カ所の工場が操業を停止した。最も大きな被害を受けたのが、ブルーレイディスクや磁気テープを製造している宮城県多賀城市の工場だ。仙台塩釜港から約1kmの場所にあり、津波で1階部分が浸水した。2階以上に従業員1159人が退避し、眠れぬ夜を過ごした。「これほどの震災はソニーの歴史で初」(広報センター)で、復旧には相当の時間がかかる見通しだ。
「世界一」の防波堤も役に立たず

 ここまで被害が拡大したのは、まず、マグニチュード9.0という過去最大となった地震の規模が、企業のリスク管理の想定をはるかに超えていたからだ。

 「工場は阪神大震災を参考に設計してきた。ただ、今回の地震を受けて、マグニチュード9.0にも耐えられる設計にすべきと考え、担当役員に検討を指示した。防災については、10年先を見越して強化する必要がある」

 茨城県神栖市の鹿島製作所が被害を受けたダイキン工業の井上礼之会長兼CEO(最高経営責任者)はこう語る。

 津波の規模もケタ違い。テレビで何度も大津波が押し寄せる映像が流された岩手県釜石市。新日本製鉄の釜石製鉄所が冠水して港湾設備も損壊した。
 実はこの釜石は津波に対して万全の備えをしていた。2008年、釜石港に完成した「湾口防波堤」がそれだ。最大水深63mと世界一深い場所からそびえ立つ防波堤で、高潮や津波を防ぐことになっていた。実際、2010年2月に南米チリで発生した大地震による津波が東北沿岸に押し寄せた時、近隣の久慈市などで1mを超える津波が港を洗ったのに対し、釜石市はこれより小規模な津波で済んだ。

 「当市の場合、世界最大水深に設置された湾口防波堤などによって、安全が確保されており津波被害も少ないと認識しております」。釜石市の資料にはこうある。だが、大津波は、その防波堤をやすやすと乗り越え、街と製鉄所をのみ込んだ。

 さらに予測不能だった事態としては原子力発電所の事故を発端とする電力供給問題がある。この影響は長引く。

 住友ゴム工業では地震発生後、連日会議を開き、対応策を協議してきたが、軌道修正を余儀なくされた。電力供給不足のため、時間帯を分けて地域ごとに順番に停電する「計画停電」が明らかになったからだ。

 同社では原料となる合成ゴムを京浜地区のメーカーから調達しているが、ここはひとたび電力が止まれば、工場設備の再稼働には一定の時間を要する。仮に原料メーカーのある地域で計画停電が継続されれば、全国の工場で生産が落ち込むことは避けられない。

 HOYAの浜田宏COOも計画停電の長期化を懸念している。特に光学レンズを製造している昭島工場(東京都昭島市)では大きな影響が出る。ガラス材料を溶解炉で長時間溶かす前工程は、途中で停電が発生するとレンズ塊が作れない。HOYAは、ソニーやキヤノンなどにもデジタルカメラやビデオカメラ用のレンズを供給しており、これも滞ることになる。「計画停電が長引けば家電量販店の店頭からデジカメが消えかねない」(浜田COO)という。
「電力復旧には1年」との見方も

 完成品メーカーは、計画停電の実施によって自社工場の停電時間ばかりではなく、多数ある部品メーカーの停電時間までも考慮に入れて生産計画を立てねばならなくなる。部品切れを避けるためには在庫を余分に持てばいいが、トヨタ生産方式に象徴されるように、在庫部品を極力減らすことで効率経営を実践してきた日本の製造業は難しい対応を迫られることになる。

 立ち直りの気配が見え始めていた日本経済への打撃は大きい。シティグループ証券の村嶋帰一エコノミストが13日夜にまとめた試算では、3月中に岩手、宮城、福島、茨城の4県で生産水準が20〜40%低下すると、同月の鉱工業生産は1.0〜2.0%押し下げられるという。「その後の状況から、経済への悪影響は一段と長引きそうだ」と村嶋エコノミストは語る。

 政府関係者によると、津波の直撃を受けた沿岸部の電力復旧には1年を要する見通しだという。これは内陸部の生産拠点の復興にも大きな影響を与えることになる。

 「全く先を読めなくなった。日本という文明国が突然、終戦直後に戻ってしまったようだ。想像だにしなかったことが起きると戦々恐々としている」

 一変した経営環境を前に、ある自動車メーカーの役員はこうつぶやいた。

 それは製造業にとどまらない。
このコラムについて
時事深層

日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

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著者プロフィール

吉野 次郎 (よしの じろう)

1996年日経BP入社。通信業界の専門誌「日経コミュニケーション」でNTTと新電電の競争や、業界再編成の動きを取材する。2001年に通信と放送業界の専門誌「日経ニューメディア」に移り、地上波のデジタル化や通信と放送の融合をテーマに記事を執筆。2007年から「日経ビジネス」でIT・電機業界やコンテンツ業界を担当する。


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