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世界でも日本だけの「民族大移動」が起きる 「東京証券取引所」 記者クラブの異常 牧野 洋  
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/418.html
投稿者 愚民党 日時 2011 年 4 月 09 日 07:56:14: ogcGl0q1DMbpk
 

                   東京証券取引所〔PHOTO〕gettyimages


2011年04月07日(木)

牧野 洋

世界でも日本だけの「民族大移動」が起きる「東京証券取引所」記者クラブの異常

日米貿易摩擦にもなった記者クラブ問題はいまだ根本解決なし


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2394


今月下旬から、上場企業の2011年3月期決算発表が本格化する。およそ1ヵ月に及ぶ決算発表シーズン中、東京証券取引所内がごった返す。いわば「民族大移動」が起きるのだ。

 東証上場企業の担当者が全国各地から一斉に押し寄せ、東京・日本橋兜町にそびえる巨大コンクリートビルである東証の中はまるで満員電車のようになる。新聞やテレビで紹介されることが多く、風物詩にもなっている。

 一方で、「インターネットの時代になぜこんなに非効率なことをやっているの?」と疑問に思う人もいるだろう。個人的にも東証内で上場企業の担当者に会い、「ほかにやり方はないものか」といったぼやき声を聞いたことが何度もある。

 実は、日本を除く主要国では決算発表シーズンに「民族大移動」は起きない。なぜ日本が例外なのか。

 原因は記者クラブである。東証には、主要新聞社やテレビ局の記者によって運営される東証記者クラブがある。証券会社が集中する街である日本橋兜町にちなんで「兜クラブ」と呼ばれる同クラブは、決算発表の一大拠点になっているのだ。

■日米貿易摩擦に発展した記者クラブ問題

 年4回の決算発表シーズンになると、2000社以上に及ぶ上場企業の社長や経理担当役員、広報担当者が兜クラブを訪れ、決算資料を配布すると同時に記者会見する。国内に無数ある記者クラブの中でも、記者会見の開催数では兜クラブは突出した記者クラブといえよう。

 通常、記者は取材先を訪ね、話を聞く。取材先を呼び付けることはめったにない。社説を書くベテランの論説委員が本社で主要官庁幹部の訪問を受け、「ご説明」に応じることはあるが、一般の記者は「ご説明」とは縁がない。

 ところが決算発表は違う。北海道から九州まで、全国各地の上場企業の幹部が実質的に呼び付けられ、一般の記者に対して「ご説明」する。せっかく会見を開いても、東証内があまりに混雑していることから、まともに聞いてもらえないことさえある。

 記者クラブ問題では、首相や官房長官の会見で知られる官邸記者クラブの開放が注目されている。海外メディア記者やフリーランス、雑誌記者に会見が開放されず、記者クラブの閉鎖性の象徴と見なされてきた。それに対抗して今年、フリーランスの記者らが運営する「自由報道協会」も発足している。

 記者クラブ開放問題では兜クラブが元祖である。1990年代の前半の時点ですでに、兜クラブの閉鎖性は日米貿易摩擦にまで発展し、海外メディアへの開放が実現している(詳しくは下山進著『勝負の分かれ目』)。国際的な注目度では兜クラブは群を抜いているからだ。

 兜クラブは、株価に影響を与える決算情報の宝庫である。株式市場がグローバル化しているなかで、世界の投資家が兜クラブ発の情報を注視している。言い換えると、経済通信社を中心とした海外メディアにとって兜クラブに足場を築き、英語でニュースを発信することは至上命題だったのだ。

■取材する方もされる方も迷惑顔

 記者クラブ開放に際しては、官邸記者クラブと同様に兜クラブでも「会見主催権」が焦点になった。東証ではなく兜クラブが会見を主催する建前になっていることから、クラブ員以外のメディアを排除できたためだ。

 東証は今でも兜クラブに場所を提供しているだけであり、「記者会見については何も関与していない」(広報担当者)との立場だ。もちろん決算発表と無関係なわけではなく、上場企業に対し適時情報開示システム「TDネット」上で決算内容を開示するよう義務付けている。

 上場企業はあくまで兜クラブの要請に基づいて東証内で記者会見しているにすぎない。しかも任意である。もっとも、任意とはいっても、実際には兜クラブを無視するわけにはいかず、大半は会見する。兜クラブの中心的存在である日本経済新聞をはじめとする主要メディアを敵に回したくないからだ。ちなみに、最大勢力の日経は数十人に上るクラブ員を抱えている(常駐は10人前後)。

 結果として膨大な"無駄"が生じている。地方に本社を置く企業にしてみれば、大混雑している東証内で待たされる時間に加え、幹部が東証まで出向く時間が機会損失になる。交通費がかかるのは言うまでもない。

 記者側にとっても不満がある。ピーク時には決算発表する企業が1日で数百社に上る。会見が文字通り分刻みで行われるため、注目企業であっても会見を短時間で切り上げざるを得ない。企業側が決算資料を読むだけで予定時間の大半が費やされ、記者が質問する時間がほとんど残らない場合もある。


ニューヨーク証券取引所〔PHOTO〕gettyimages


 日経記者として兜クラブに在籍していた1990年代前半、個人的に次のような体験もあった。

 1人で数十社担当していたため、会見を聞くだけで目が回るほど忙しい。そんなとき、「日経さん、誰か会見を聞いてください」と声をかけられる。注目されていない企業の会見に誰も姿を現さないから、来てくれというのだ。

 私の担当企業であるとはいえ、会見を聞いても記事ならないのは確実。そのうえ、目の前にやらなければならない仕事が山ほどある。そうは言っても誰かが顔を出さなければ会見が始まらない。そもそも会見の主催者は兜クラブであり、同クラブの中心的存在は日経だ。主催者が会見者を無視するわけにはいかない。

 仕方なく会見に出ると、聞き手は迷惑顔な私だけ。待ちかねていた企業幹部2人は、早く終えて騒々しい東証内から抜け出したい気持ちでいっぱいなのか、資料を猛スピードで読み終える。「何か質問は?」と聞かれた私は、間髪入れずに「ありません」と答える・・・・・・。

 何かがおかしい。誰もが同じように思っているのだが、それを変えようという動きはいまだに出てこない。決算発表シーズンに企業に兜クラブで記者会見してもらうことは、日経を中心とした主要メディアにとって簡単には手放せない利権だからだろうか。


■個人投資家も傍聴できるNYの決算発表


 世界最大級の証券取引所であるニューヨーク証券取引所は決算発表シーズンにどんな様子なのか。結論から言えば、混雑は全くなしだ。

 それもそのはず、ニューヨーク証取内には記者クラブはなく、決算発表のために同証取を訪れる上場企業は1社もないのだ。補足しておくと、ヨーロッパでも上場企業が物理的に証券取引所内で決算発表する慣行はない。

 そもそもニューヨーク証取は決算発表と無関係だ。決算発表に際して、アメリカでは上場企業は政府機関の証券取引委員会(SEC)へ決算情報を提出し、専門業者を通じてプレスリリースを電子的に配布する。同時に、投資家向けに電話会議(カンファレンスコール)を開く。同証取を経由せずにすべて終わるのである。


 企業側にとって便利な仕組みだ。幹部は本社から一歩も外に出ずに決算発表を行え、効率的だ。国土が広いアメリカで、各地の企業が決算発表時にニューヨークで記者会見しなければならないとしたら、猛烈に抗議するだろう。

 ニューヨークには、ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルなど主要紙に加え、主要テレビ局も本社を構えている。メディア側にしてみれば、ニューヨークで企業側が記者会見してくれれば都合がいい。

 だが、会見の主催者はメディアではなく企業自身である。メディア側に「会見主催権」といった発想はない。企業側が会見場所を決め、メディア側を呼ぶのである。当たり前だが、メディア側が会見場所へ行くまでの交通費はメディア側が払う。

 ただし、決算発表時に物理的に記者会見する企業は多くない。繰り返しになるが、通常は投資家向け電話会議を行うだけだ。そこには機関投資家や証券アナリストらプロの市場関係者のほか、フリーランスも含め多くの記者を招いている。

 個人投資家でも登録さえすれば自由に傍聴できる。質問はできないものの、インターネット上の「ウェブキャスト」を使ってリアルタイムで決算説明を聞ける。必要ならば、決算発表が終わった後にも何度でも聞き直せる。


■情報を独占したいメディアだけがメリットがある


 決算内容は株価に大きな影響を与えるから、世の中に向けてできるだけ広範に開示するのが望ましい。その点で、上場企業が記者クラブという閉鎖的な状況下で会見するのは合理的ではない。一部の記者に限定して会見し、市場関係者や個人投資家を排除する形になっているからだ。記者1人を相手に"会見"することさえあるのだ。

 対照的に、電話会議やウェブキャストを採用するアメリカ式には利点が多い。1.生の決算情報が個人投資家も含め広範にリアルタイムで伝わる2.企業側は1時間かけてたっぷり決算説明できる3.メディア側は注目企業の決算発表に限って話を聞ける4.企業側もメディア側も物理的な会見場へ移動する必要がない---などだ。

 私は1990年代前半に東京で日本企業の決算発表を取材し、1990年代後半にニューヨークでアメリカ企業の決算発表を取材した。ごった返し状態の東証内で取材した経験があっただけに、ニューヨークでの取材は拍子抜けするほど快適だった。静かなオフィス内で余裕を持って仕事することができたのだ。

 つまり、日本の決算発表システムは記者にとっても重荷なのである。企業側にも「なぜこんな旧態依然としたやり方を続けているのか」といった思いがかねてある。投資家への情報開示促進という点でも問題含みだ。

 だとしたら誰にとってメリットがあるのか。決算情報を独占的に扱いたい日経などの主要メディアだ。

 仮に兜クラブが東証の建物内から追い出されたらどうなるだろうか。どこか別に広大な場所を確保しなければ、決算発表シーズンに企業に対して会見場所を提供できない。すなわち会見を主催できなくなる。

 そうなると、企業側は独自に会見場所を見つけるか、電話会議へ移行するか、どちらかになる。どちらになっても特に問題は起きそうにない。

 地方企業が地元で会見したら、記者にとって別の負担が生まれる。例えば北海道企業が本社で会見したら、記者は東京から北海道まで出張しなければならない。だがそれは本来の姿であり、「取材先との関係正常化」とも言えるだろう。

 決算発表で最も重要な要素は、投資家への情報開示徹底だ。その意味では、電話会議やウェブキャストを採用する企業が増えるのはむしろプラスだろう。インターネットなど最新技術の利用を妨げているのは、記者クラブなのかもしれないのだ。

(敬称略)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2394?page=5


 

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コメント
 
01. 2011年4月09日 09:37:23: cqRnZH2CUM
グローバル企業がNETでの発表に、どんどん変えていけばいいのだが
東京に本社があるから、広報担当者もお祭り気分でやるのかな
終身雇用で企業内失業者対策ってこともあるかもw

02. 2011年4月09日 13:15:32: VauxcezAEQ
由らしむべし知らしむべからず。

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