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日経ビジネス  投資・金融 復興の経済学 懸念は財政、金融政策で名目賃金の上昇を米プリンストン大学 清滝信宏教授
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投稿者 sci 日時 2011 年 4 月 11 日 11:32:29: 6WQSToHgoAVCQ
 

日経ビジネス  投資・金融 復興の経済学 懸念は財政、金融政策で名目賃金の上昇を米プリンストン大学 清滝信宏教授に聞く

2011年4月11日 月曜日
大竹 剛

東日本大震災  クレジットサイクル理論  復興  格付け  デフレ  リーマンショック  レバレッジ 

 地震、津波、原発事故…。東日本大震災が日本経済に及ぼした甚大な影響を、私たち日本人はどのように克服していけばいいのだろうか。世界の学術分野で活躍する学者や専門家たちに、日本復活に向けての提言を聞くのが、この新コラム「復興の経済学」。

 第1回は、米プリンストン大学経済学部の清滝信宏教授。3月21日、ロンドンで話を聞いた。

 この震災が金融市場を通じた世界経済に与える影響は限定的だと言うが、日本政府の対応次第で、中長期的に深刻な影響を与える懸念もあると指摘する。(聞き手はロンドン支局、大竹 剛)
清滝信宏氏
2006年から米プリンストン大学経済学部教授で、2010年から1年間、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの客員教授も兼務。1997年に発表した、企業の純資産の減少が金融・資産市場を通じて経済全体に影響を及ぼしていく過程を解き明かした「クレジットサイクル理論」が特に有名。米ニューヨーク連邦準備銀行の学術顧問も務めている。

 まず、このたびの東日本大震災で被害に遭われた方々に、心からお見舞い申し上げます。

 今回の巨大地震による日本経済への影響は、物的な資本だけでなく、大勢の方が亡くなったり傷ついたり、人的被害の影響が大きい。また、地域社会を含む広い意味での社会資本、東京大学の宇沢弘文名誉教授がいう「社会共通資本」が失われた影響も大きく、短期的には生産と消費は減少することになるでしょう。しかし、中長期的に見れば、資本への投資が進み、生き残った我々が懸命に働いて経験を積み重ね社会共通資本を回復することで、経済の復興は十分可能だと信じています。

 私の専門分野である金融面から、世界経済に与える影響を考えてみました。巨大地震によって日本が受けたダメージが、金融・資産市場を通じて世界的にどのような波及効果を生み出すかという点です。
レバレッジ小さく世界経済への影響は比較的軽微

 製造業など一部の産業では、日本からの中間財の供給や日本の需要に依存しているために影響は大きいでしょう。震災や津波による工場の破損や、福島第1原子力発電所の事故が引き起こした放射能汚染や停電などによる生産の減少は、その典型的な事例です。グローバル企業のサプライチェーンで、上流から下流まで、どこかで日本経済に依存している部分があれば、直接的な影響が及ぶわけです。

 しかし、金融面での世界経済全体への波及という観点では、影響は比較的限られるのではないでしょうか。その1つの理由が、日本は家計の負債や企業の負債、国の対外負債があまり大きくなく、負債のてこ作用(レバレッジ)が小さいからです。そのため、大震災で被害を受けても、金融・資産市場を通じた世界経済への波及効果は限られます。

 中小企業は多少の負債を抱えているでしょうが、家計は住宅ローンを目いっぱい借りているわけではありません。サブプライム問題でリーマンブラザーズが破綻した時のように、被害を受けた際に純資産が大きく落ちて、倒産が倒産を呼んで、世界全体に金融・資産市場を通じて波及するというのは、ありえないでしょう。
リーマンショックよりITバブル崩壊に近い

 例えば、2000〜2001年にIT(情報技術)バブルが崩壊して米ナスダック証券取引所を中心に株価が著しく下落した際、家計や年金基金の資産価値は大幅に減少しました。しかし、下落した資産価値の金額は大きくても、負債比率が低かったので、世界経済への影響は限られました。

 一方、1998年に起きたロシア危機では、資産価値の下落はITバブル崩壊よりもずっと小さかったにもかかわらず、米ヘッジファンドなどがレバレッジを猛烈に利かせていたため、ブラジルなど世界へ一気に波及しました。ちょうど、アジア危機があったせいもありますが、世界経済へ強い衝撃を与えました。

 また、2007〜2010年にかけての世界金融危機では、負債比率の高い投資銀行などの金融機関の資産価値が下がったために、負の連鎖反応が大きかったと考えられます。破綻したリーマンブラザーズなどの金融機関は、不良債権の償却が多額だったうえに、レバレッジも大きく、大きな負の連鎖反応が起きたと考えられます。

 今回の東日本大震災の世界経済への影響は、負債のてこ作用が小さいという点で、リーマンショックなどの世界金融危機より、ITバブル崩壊に似ています。世界経済の影響では、天災よりも人災の方が深刻だということかもしれません。

 震災によって保険会社に巨額の支払いが生じることが、金融危機を招くという見方もあるようですが、震災による被害額は大きくても全てが保険でカバーされるわけではありません。今後の経過を見る必要はありますが、私は保険会社への負担増が金融市場へ大きな影響を及ぼすとは考えていません。
最大の懸念は財政悪化による国債の格下げ

 ただし、震災による直接的な世界経済への影響は限定的だとしても、日本政府の対応の如何によっては、中長期的に深刻な影響を与える懸念もあります。むしろ、私にはこちらの方が心配です。先ほど、被害にあった家計、企業、日本全体の負債が比較的小さいと述べましたが、唯一、例外的に巨額の負債を抱えているのが日本政府です。財政再建への取り組みが、震災への対応を契機に遅れるようなことがあってはなりません。

 当面は復興のために財政支出は増加するでしょう。しかし、それもなるべく他の支出を切り詰めることで補うべきです。特に、昨年から議論している税と社会保障の一体改革を中断すべきではありません。復興を優先するという理由で先延ばしする可能性もありますが、それは日本にとって、そして世界経済にとって危険なことだと認識しています。

 中期的な財政再建の見通しが立たなくなると、家計の将来に対する不安が消えないし、国債の格付けがさらに下がる危険があります。政府の中には、格付けが下がることをあまり気にしない方もいますが、日本の格付けが下がれば、銀行など金融機関の格付けも下がり、調達金利が上昇します。それは、海外で活動する日本の企業の格付けにも悪影響を及ぼし、日本の国と企業の金利が全面的に上昇する可能性があります。
近い将来、政府の借金は外国人頼みに

 国債のほとんどは日本国内の投資家に所有されているのだから問題ないと言う人もいますが、いつかは外国人に買ってもらわなければ財政が回らなくなります。最近、家計の貯蓄率は下がっています。それでも、企業の貯蓄率が投資率に比べて高いので、まだ、ほとんどの国債は国内で消化されています。しかし、それは長くは続かないでしょう。

 外国人に頼らなければならなくなる時期が“いつ”訪れるのか、明確には予測できません。しかし、近い将来であることは確かでしょう。今のような1〜1.5%の金利で、10年後も政府がお金を借りられるとは思えません。

 欧州では、ギリシャ危機から財政破綻懸念が伝播し、ポルトガルもEU(欧州連合)に救済を仰ぐかどうかの瀬戸際に立たされています。日本政府の震災対応を注意深く見ている外国人投資家が、「財政再建の見通しが立たなくなった」と判断すれば、財政破綻懸念が日本に飛び火する可能性があります。日本の財政が行き詰まれば、世界経済への悪影響はギリシャ危機の比ではありません。

 政府は復興への支出を賄うために、子ども手当の見直しなど対策を講じようとしていますが、年金や消費税など、もっと大きな課題に手をつけないとダメです。消費税については数年間にわたって、毎年1%ずつ引き上げるくらいのことをしてもよいと思います。震災で被害を受けたという短期的な要素で格付けが下がることはないでしょう。しかし、短期的な震災対応に目を奪われ、中長期の財政再建への道筋を立てることを疎かにしては、日本の将来が危うくなります。
復興への士気を高める金融政策を

 震災後の対応を見ていると、政府は何かと“政治主導”をアピールしたいのでしょうが、もっと官僚の能力を生かすべきです。日本の優秀な官僚のなかには、大震災で被害にあった人のために働きたいと思っている人が大勢いるでしょう。政府はもう少し官僚に実務を任して、力を発揮できるようにしたら良いと思います。

 その点、比較的うまく機能したのが、中央銀行である日本銀行です。日銀は政府から独立していて、阪神大震災の教訓から迅速に行動できたのは幸いでした。まずは取り付け騒ぎなどが起きないよう、金融システムの維持のために即座に多額の資金供給を実施したことは評価できます。

 ただ、私は日銀にも不満があります。デフレ対策に、もっと力を注ぐべきだと思うからです。インフレを起こすのは論外ですが、デフレが続くのもやはり良くありません。デフレを止めるために、国債だけではなく、ETF(上場投資信託)やREIT(リート=不動産投資信託)をなど、実物資産をもっと買ってもよいと思います。

 短期的な震災対策を超えて中長期的に、日銀にもっとデフレ対策に力を注いでほしいと願うのは、それが日本人の勤労意欲にかかわるからです。名目賃金が過去20年、ほとんど上昇していないというのは言語道断でしょう。

 これから日本人は、今まで以上に前向きな気持ちで働いていかなければなりません。その時、賃金が上昇しないような状況で、復興への士気が高まるでしょうか。せめて毎年1〜2%程度の賃金上昇を維持するような政策運営をしてほしいところです。
若者を積極採用することが復興の活力に

 日本経済の再建は、日本人一人ひとりの士気にかかっています。海外から見て今回感じたことの1つは、日本は現場に近い中間層に、技能、人格、責任感ともに優れた人が多いということです。日本的経営、組織の強みは、若い人を仕事を通じて訓練し、技能を身につけた多くの人々が、様々な決定に参加することだと思います。しかし、過去20年間、不況で多くの企業や官庁が採用を絞ったために、こうした強みが薄れてきているように思います。

 しかも、今回、東北地方を中心にたくさんの方が亡くなられました。それによって失われた技能も多いことでしょう。日本経済の強さは、人本主義にあると思います。失われた技能を再び育てていくためにも、もう一度、日本的組織の優れたところに戻って、若い人を積極的に採用し、訓練して、より多くの権限を与えてはどうでしょうか。それこそが、復興に向けた大きな力になるはずです。
このコラムについて
復興の経済学

地震、津波、原発事故…。東日本大震災が日本経済に及ぼした影響ははかり知れません。この未曾有の災害の影響を、私たち日本人はどのように克服していけばいいのでしょうか。これまでの経験も前例も役に立たないこの事態に対処するには、あらゆる知見を総動員し、ベストの選択をし続けなければならないでしょう。このコラムでは、経済学の分野で活躍する学者や専門家たちに、日本復活に向けての提言を聞いていきます。

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コメント
 
01. 2011年4月11日 14:36:01: mxesNqJnNM
復興はちびちびやらずにドバーンと100兆円ぐらいやるべし
そうして日本経済全体を立て直さない限り、復興も財政再建も出来ない
復興増税など論外、日本経済の更なる地盤沈下を見るだけだ
過去二度の消費税増税の折、経済は落ち込み、税収も減った
何にも知らない経済学者だな、恥を知れ

02. 2011年4月11日 14:40:22: mxesNqJnNM
親愛なる阿修羅の仲間よ
こんなでたらめ投稿を見過ごしていてはいけない

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