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電力喪失騒動で露になった“統制経済のしもべ”という日本人の本性 
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/497.html
投稿者 sci 日時 2011 年 4 月 15 日 09:38:39: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://diamond.jp/articles/-/11908
第123回】 2011年4月15日
辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
 

電力喪失騒動で露になった“統制経済のしもべ”という日本人の本性 

 日本人はいつまでも変わることなく、政府による“統制経済のしもべ”であり続けるのだろうか。そして、この素朴な疑問に対して、大手メディアがいっさい議論を起こそうとしないのはなぜなのだろうか。

 私たちは戦後初めて、電力喪失社会に遭遇した。東日本大震災で福島第一原発が世界史に残る事故を起こし、使用不能になった。火力発電施設なども損壊し、他の電力会社も被害をこうむって、電力安定供給という日本の戦後のエネルギー政策の根幹が崩れた。

 震災前の社会の電力使用量を前提にすれば、電力供給量は不足するに決まっている。突然の事態に度を失った東電は、「ほとんど政府に相談のないまま、一部の産業界と話し合っただけ」(経済産業省幹部)で、計画停電に入ってしまった。

 計画停電は、需要家を地域別に大別し、業種特性や電力使用量の大小などお構いなしに、一律に電気を落としてしまう、というあまりに乱暴な方法だったから、社会のあらゆる部分で混乱をきたし、経済活動を低下させるだけでなく、人の命まで脅かしたから、轟々たる批判が起こった。

 政府は、野蛮なる計画停電を原則廃止する代わりに、今度は自らが前面に立つことにした。年間使用量のピークに達する今夏には大停電もありうると海江田万里・経済産業相は警告、石油危機の1973年以来、37年ぶりの電気事業法27条に基づく電力使用制限令の発動も辞さない構えを示した。早くも経産省は、大口需要家は瞬間最大電力を平年に比べ25%減、小口需要家は20%減、という義務を課し、家計には15%の節電を呼びかける。政府による総量規制である。

 計画停電にしろ総量規制にしろ、強制的需要削減政策であることには変わりがない。政府(および東電)による事実上の命令であり、統制経済あるいは計画経済と呼ぶべき政策である。

次のページ>> 統制経済の欠陥に対する経済学者の回答

 その欠陥は、二つある。第一に、ある地域、ある産業、ある企業、くくり方は様々だとしても、それぞれ一律に電力需要を削減してしまうのは、極めて非効率的、非生産的だ。なぜなら、同じ地域内、産業内、企業内には効率性、生産性が異なる事業が混在しているからだ。一律的な対処は、国の経済成長を妨げるのである。

 第二に、政府官僚に権限が集中し、中央集権体制が強化される。本当のところ、現在から今夏に向けての正確な電力供給能力を把握しているのは、政府と東電だけである。したがって、過去の電力使用量との需給ギャップを埋めるべく、各業界や需要家がどれほど節電すればいいのか、量の割り当てには恣意性、裁量性が強く働く。つまり、彼らの思うままである。

 これらの統制経済あるいは計画経済の欠陥克服には、経済学者たちによって、的確な回答がとうに用意されている。市場メカニズムの導入である。

 たとえば、野口悠紀雄・早大ファイナンス総合研究所顧問は、電力料金の引き上げを主張している。それによって、需要家には節電による料金節約というインセンティヴが働く。そのとき重要なのは、需要家の自己判断で節電が行われることである。大口需要家である企業は、電力コストに対して効率性、生産性、収益性が高い事業を継続し、そうではない事業の活動を低下させるだろう。そうすることで、電力需要の抑制と経済成長の維持という両面を満たせる。家庭では当然、もっとも電気料金の高い――つまり、電力使用量がピークに達する――時間帯に節電しようとするだろう。

 また、需要家ごとに最大電力用枠を設定し、それぞれの不足分と余分の枠を相対で取引する、あるいは売買できる市場を整える、という発想はもはや常識とさえ言える。CO2排出権取引と同じ発想の経済取引である。

 あるいは、八田達夫・大阪大学招待教授は、大口需要家ごとに過去のピーク実績に対する削減目標数値を設定して、不足すれば税金をかけ、超過すれば補助金を与えるという仕組みを、提案している。

次のページ>> 市場メカニズム導入議論を無視する政府、電力業界、産業界、大手


 供給側の論理による啓蒙活動に頼ることなく、強制命令に依存することなく、需要側の創意と工夫に働きかける市場メカニズムの導入こそ、先進国の経済政策である。そもそも、大震災前の電力需要量と供給量を前提として規制を行う発想がおかしい。市場メカニズムを機能させることで、新しい需給の均衡点を探り続けることがあるべき姿ではないのか――。

 これらの経済学者たちの指摘、提案は、市場経済の基本そのものであり、極めて論理的、合理的である。

 ところが、電力喪失騒動の中で、政策決定権を握る政府民主党、供給当事者である電力業界、需要当事者である産業界いずれも、彼らの指摘、提案を議論するどころか、耳を貸す気配さえない。無視である。

 そして、大手メディア――日本経済新聞も朝日新聞もNHKも、まったく取り上げない。根拠が今一つ不確かな予想電力不足量を示し、それを削減ノルマと受け止めて、業界ごと企業ごとに節電に走る必死のありよう、そのアイディアを実にきめ細かに記事中に取り上げるのみで、政府による電力統制経済へのいささかの疑問もない。

 電力喪失――繰り返すが、実態はわからない――騒動のなかで、彼らは一体となって救国運動に傾き、あえて思考停止にすら陥っているように見える。

 なぜなのだろう。

 野口早大ファイナンス総合研究所顧問が、このダイヤモンド・オンラインで、電力料金引き上げによる価格メカニズム導入を主張した際には、多数の反対メールが寄せられた。その多くは、「これほどの不祥事を起こした東電を、料金値上げによって助けることになるのは許せない」という感情的反発である。

次のページ>> 統制経済を素直に受け入れる極めて不思議な国民、社会

料金引き上げ分は税金として政府収入とするといった制度設計を行えば、この問題は解決する。また何より、料金引き上げの目的は需要家に節電を促すことにあるのだが、未曽有の不祥事が巻き起こした世論の感情のうねりには、論理的、合理的説明は通用しない。そもそも、政府に国民を説明、説得するという姿勢が薄く、それどころか迎合し、流されてしまう。読者という名の国民を抱える大手メディアも同じ構造なのだろう。

 一方、自動車業界が自主的にいち早く輪番制を導入するなど、産業界が極めて政府、東電に従順に、それも業界単位で共同歩調を揃え、需要削減指令に従うのを見て、小峰隆夫・法政大学教授は、「日本は計画経済に極めて親和性の高い社会なのだと改めて思う。業界ごとに行動するのはカルテル的行為だから、市場経済からは遠い。だが、危機に際しては誰もそんな指摘はしない。批判となって跳ね返ってくるのがわかっているからだろう」と言う。

 確かに、現在の熱狂的ともいえる産業界の節電運動を見れば、ハードルが高いといわれる25%以上もの需要削減をあっさりと実現してしまうのではないか、とも思えてしまう。

 仮に、電力需給に市場メカニズムを導入しても、最初からうまく機能するはずもなく、市場整備のために制度設計、運営にさまざまな修正、工夫を凝らさなければならない。それが市場経済の本質そのものなのだが、「そんな面倒なことをやるよりも、危機に際しては一致団結して乗り越える方が先だ、というメンタリティが働くのが日本社会」(経団連副会長)なのである。

 かくて、経済学者たちの主張は、蟷螂の斧に終わる。

 東電福島第一原発が世界の原子力事業で最悪の事故を起こしたのは、地域独占事業体たる電力会社が、経済産業省と結びつき、2003年に敷かれたはずの総発電の分離、自由化路線を事実上封じ込め、秘密裏に、自己の都合の良いように政策を展開した――つまり、事実上の計画経済にこそ原因があることを、私たちは指摘、批判する一方で、電力統制は素直に受け入れる。極めて不思議な国民、社会である。  

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コメント
 
01. 2011年4月17日 02:14:34: 6kuobrWeYc
市場経済?
供給がほぼ独占状態の電力会社に市場もへったくれもないでしょう。

消費者からすれば「選べない」。
その点から言っても「市場原理」云々は成り立たない。


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