★阿修羅♪ > 経世済民71 > 498.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
大震災が問いかける日本のインフラが抱える課題 電力・交通の復興計画で「本当に議論すべきこと」
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/498.html
投稿者 sci 日時 2011 年 4 月 15 日 09:43:18: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://diamond.jp/articles/-/11909
TOP経済・時事ポスト3.11の論点 日本と日本人の選択肢

【第5回】 2011年4月15日
 
大震災が問いかける日本のインフラが抱える課題 電力・交通の復興計画で「本当に議論すべきこと」
――山内弘隆・一橋大学大学院教授に聞く 

東日本大震災の発生から1ヵ月が経ち、復興気運が徐々に高まっている。まず早急に建て直さなくてはならないのが、電気や交通などの社会インフラだ。しかし、それらを建て直すための具体的な方策は、なかなか見えてこない。原発事故による電力の供給不足や、企業のサプライチェーンを分断する交通の混乱などが、日本経済に暗い影を落としている。今回の震災で、我々はこれまで日本が誇ってきた社会インフラがかくも災害に弱いという事実を思い知らされた。日本のインフラはどんな課題を抱えているのか。そして、それらを効率的に建て直すためにはどうすればよいのか。交通経済や公共事業に詳しい山内弘隆・一橋大学大学院教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

計画停電で急場はしのげるが
それでも電力が足りないのは明らか


やまうち・ひろたか/一橋大学大学院商学研究科教授。専門は交通経済学、公益事業論、規制の経済学など。1955年生まれ。千葉県出身。慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。中京大学商学部・経済学部専任講師、一橋大学商学部専任講師、助教授、教授を経て、2000年より現職。 運輸政策審議会専門委員(タクシー小委員会委員長代理)、建設省道路審議会専門委員、内閣府PFI推進委員会委員、国土交通省地域住民との協働による地域交通のあり方に関する懇談会座長などを歴任。
――東日本大震災の発生から丸1ヵ月が経った。4月に入り、政府は「東日本大震災復旧復興対策基本法」の概要をまとめたが、復興気運が高まる一方で、そのための具体的な方策はなかなか見えてこない。現状をどう見ているか。

 日本において、これほどインフラの重要性がはっきり問われたことは、過去になかったのではなかろうか。1995年1月に発生した阪神淡路大震災でもライフラインが機能しなくなったが、今回は広域に渡る災害だったため、事態はより深刻だ。

 電気や交通といった社会経済のネットワークに関わるインフラが被害を受けた影響は大きい。今後はこれらの社会インフラを、災害を見据えた現実的な仕組みへと再構築していくことが必要だ。

――とりわけ不安視されているのが、原発事故による電力の供給不足だ。先日、政府や東京電力は、「原則として今後計画停電を実施しない」と発表したが、いずれにせよ夏場に向けての大規模な節電は避けられない。電力不足が企業活動を抑制し、日本経済を落ち込ませる可能性は高い。

 これから夏場に向けて、1日における最大電力需要は、政府見通しによると約6000万キロワット、東京電力の見込みでは5500万キロワットになると言われる。

次のページ>> 電力インフラの建て直しは「調達先の多様化」を視野に

 当初、約4800万キロワットの発電能力を確保すると言っていた東電は、震災の影響で停止していた鹿島火力発電所の一部で発電を再開させるなど、ありとあらゆる手段を講じて供給量を5000万キロワットまで引き上げるとしている。短期的には何とか辻褄を合わせているが、それでも足りないのは明らかだ。

 5000万キロワットの電力でやりくりするとなれば、当面企業は製造現場において計画的に生産システムを分散化したり、オフィスで日常的に節電を続けなければならない。家庭にもより一層の節電努力が求められるだろう。節電によって安定的な電力供給がなされないと、緊急医療機関、信号、鉄道など、生活に欠かせない社会インフラにも支障が出てしまう。

――今回の震災を教訓に、日本はどんな電力供給の仕組みづくりを目指すべきか。

 まずは足もとの課題を解決することが急務だ。政府内では、電力供給の安定化を図るため、東電を国有化して一時的に管理下に置くという処理案が浮上している。また、電気事業規制や関連行政を経産省から分離して、独立の規制機関に委ねるべきだとの提案もある。さらには、発電部門と送電部門を分離して、競争の促進や供給事業者の多様化を促すべきだとの意見も出されている。

 いずれも単純に議論できる問題ではないが、どんな形であれ、有事に対応できる現実的な電力供給の仕組みを考え直すことは必要だ。特に、今回の震災で明らかになったことは、有事への対応には情報の把握が本質的に重要なことであり、供給体制、規制体制ともにこの点を前提として議論されるべきである。

中長期的なエネルギー問題も視野に
電力の調達先を多様化することが必要

 さらにその上で、中長期的なエネルギー問題をどう考えていくかも重要になる。現在の電力系統だけに頼り切った状況があまりにもリスクが大きいということを、今回我々は痛感した。

 民主党は政府主導で対1990年比「CO2の25%削減」を掲げており、昨年のエネルギー基本計画でも「脱CO2」色が強まった。その結果、化石燃料の代替として、再生可能エネルギー(長期間枯渇しないエネルギー)による発電と原子力発電の比率を高めることになった。

次のページ>> 有事の際に交通インフラに求められる「リタンダンシー」

今回の震災を機に原発への不信感が募っているため、政府が原発政策の見直しを迫られることは必至だ。とはいえ、原発をすぐに云々するのは現実的に不可能である。事実上、原発を抜きにして日本の電力供給は成り立たない。

 太陽光や風力などをさらに重視することは必要だが、これはケタが違う議論だ。一般消費者も停電の経験からソーラー発電や燃料電池発電に興味を示しているが、これらもそもそも電気がないとちゃんと機能しないし、賄える電力もせいぜい家庭一世帯分の一部だ。原子力発電を再生可能エネルギーで代替するのは、かなり難しい。

 現実的に考えれば、原発や再生可能エネルギーに加え、天然ガス、原油、コジェネレーション(内燃機関、外燃機関などの排熱利用)なども視野に入れて、エネルギー源の多様化、調達先の多様化をできるだけ進めていくべきだろう。つまり、多様な選択肢を確保するという意味でポートフォリオであり、リスクを回避させる意味がある。日本の送発電能力の1割程度はいまだに自家発電であり、ポテンシャルは高い。調達先は色々考えられる。

 ドイツでは、利用者がエネルギーを自由に選び、コストを負担してエコまで視野に入れた電力利用ができるという仕組みをとっており、これは日本も見習うべき部分が多い。日本政府も、電力会社に対して「再生可能エネルギーの全量買取制度」を2012年までに導入する方針を打ち出している。今回の事態を受け、それがより重要性を帯びてくるだろう。

大震災でサプライチェーンに深刻な打撃
交通インフラに求められる「リタンダンシー」

――電力と共に意外な脆さが判明したのが、交通インフラだ。被害が大きかった東北地方の交通網はなかなか復興せず、企業のサプライチェーンを滞らせる要因となっている。日本の交通インフラはどんな課題を抱えているか。

 自動車、IT企業などの工場が被災し、部品供給が遅滞しているという供給サイドの問題については、復旧を待つしかない。より困るのは、交通インフラがダメージを受けたことにより、サプライチェーンの核となる情報や物流が滞っていることだ。東北自動車道は比較的早く復旧したが、首都圏と地方を結ぶ幹線ネットワークが分断され、日本経済に大きな影響を与えた。

次のページ>> 高速道路の打撃が全体に影響する日本の交通インフラ

 そんななか、今回明らかになったのはリタンダンシー(冗長性)の重要性だ。つまり、緊急の必要性はないが、リスクに備えて余分なインフラを確保しておく考え方だ。不幸中の幸いと言うべきか、今回は東北地方の日本海側が被害を免れたので、被災地への石油や物資の移送を、日本海側の道路、鉄道、空港を使って行なうことができた。奥羽本線経由の鉄道貨物や山形空港、花巻空港などが活用された。

 特に空港については、採算がとれない地方空港の存在が問題視されるなか、これまで専門家は福島空港を「ムダの象徴」と言っていた。しかし広く報道されたように、福島空港がなかったら、災害復旧や被災者向けの物流はさらに滞っていただろう。

 だからと言って、不採算の空港がたくさんあってもよいと言うつもりはないが、日本にある空港の3分の1は離島空港であることを考えても、災害時における地域住民のライフラインとしての重要性は大きい。電力と同様、交通インフラについても、「リスク対応」という枠組みのなかで最適値を考えていく必要がある。

高速道路が打撃を受けると全体に影響
交通網の混乱はインフラの弱さだけではない

――震災直後は、被災地の主要な道路が寸断され、現地入りするのがままならないという報道もよく聞かれた。実際のところ、日本の道路網は災害に弱いのだろうか。

 阪神淡路大震災以降、高速道路や幹線道路は補強がなされ、耐震性が随分高くなっている。ただ、技術的な水準は上がっているものの、国の交通計画自体が大災害に十分対応していなかった感は否めない。

 これまで国は、単線の高速道路で日本列島を一直線につなげる交通計画を続けてきた。基本的には高速道路が南北を「背骨」のように走り、それに「肋骨」というべき横断道で東西をカバーするという構造だ。都市部については、中心に環状道路を設けている。

 こういった構造だと、大災害が起きて高速道路がダメージを受けた場合に、他の道路を使って被災地へ赴くことが容易ではない。現在、東名や名神については第二路線をつくっているが、リスク管理のためのリタンダンシーという視点で見れば、対策が全国的に十分とは言えない。今回は震災で「背骨」となる東北自動車道がダメージを受けたため、日本の交通網の弱さが明るみに出た。

次のページ>> 相互直通運転が多い都市部の鉄道は、危機対応に弱い

 それに対してドイツでは、国内を走る主要な道路がグリッド(格子)状に交わっており、一部が使用不能になっても他の道路へ迂回して、目的地へ行くことが容易な構造になっている。

 縦に長い日本の国土構造からして、現在の交通計画には仕方がない側面もあるが、これを機にリスク管理の重要性を再認識する必要はある。

都市部の鉄道はなぜ危機対応に弱いか
政府は運転再開のリーダーシップをとるべき

――大地震発生直後に、首都圏で大量の帰宅困難者が発生した大きな理由の1つに、全ての鉄道が運休してしまったことがある。JRに至っては、翌日まで全線の運転を見合わせた。鉄道の危機管理体制に問題はなかっただろうか。

 JRの立場を考えると、仕方ない側面はあったと思う。鉄道の基本は運行上の安全性だ。災害が発生した直後に彼らが行なう安全確保のための措置は、目視点検から始まって保線(鉄道や軌道の保守点検)など、多岐に渡る。その後、電車を一駅ずつ走らせて安全確認をし、それが全て終わってやっと運転を再開することができる。

 路線長が圧倒的に長いJRについては、あの短時間ではとても点検を終わらせることができなかったのだろう。夜半過ぎから都営地下鉄、東京メトロ、私鉄が立て続けに運転を再開した一方、JRは翌日まで運休せざるを得なかった。

 今回の震災が大きな課題を投げかけたことは確かだ。改めてわかったことは、都市部の鉄道は路線長が長く、相互直通運転も多くて複雑なため、危機対応に弱いということだ。これはインフラそのものの問題というよりも、むしろ運行システムに関わる問題と言える。

 鉄道各社は、首都圏直下型の地震が起きた際、「どのような事態を想定して鉄道復旧を行なうか」といった具体的なシミュレーションを、以前から行なってきたはずだ。にもかかわらず、いざ大地震が起きるとそのようなシミュレーションが十分に役に立ったとは思わない。

 今後は政府がリーダーシップをとり、災害時に鉄道を動かす区間を直接指示できる体制を、予め構築しておいたほうがよいだろう。

次のページ>> 社会インフラの建て直しには、利益者からの資金徴収も視野に

――今回の震災で被害を被ったり、改善を指摘されている社会インフラを再構築するためには、莫大な費用がかかる。危機的な財政難のなかで、潤沢な資金を用意するためには、どんな方策が考えられるか?

 とりわけ困難なのは、電力インフラの再構築だ。原発の処理費用に加え、放射能漏れについては原子力損害賠償法に基づく損害賠償も発生するからだ。全体として、莫大な資金が必要となる。

 また、道路のような公共インフラとは違い、電力や鉄道は原則として民間企業が運営している。国からの補助金もあるだろうが、基本的には独立採算だ。そのため原発については、東電の経営が危機に陥るほどの費用負担が生じると、「誰がおカネを出すか」で議論が紛糾することになるだろう。

社会インフラを建て直す「3つの方法」
利益者の資金負担も一考の価値あり

 一般的に、社会インフラを新たにつくったり、建て直したりする際の費用負担の方法は、主に3つある。道路のように税金によって賄う方法、鉄道や電力のように利用者から料金を徴収する方法、そして3つめは、間接的受益をする人に負担を求める方法だ。税金については公共事業の性格が強いインフラについて、利用料金の引き上げと徴収については民間が運営するインフラについて行なわれる。

 今後の震災復興にあたって、直接インフラを使用していないものの、そのインフラがあることによって便益を受けている人に一定の資金を負担してもらうという方法は、参考になるかもしれない。たとえば、昭和初期の大阪では、御堂筋線をつくるときに半径700メートル圏内に住んでいる地主から資金を徴収した。これは、「鉄道ができると彼らの生活の利便性や商売上のメリットが増す」という理由による。

 東京でも、現東京メトロ銀座線の三越前駅ができるときに三越が、またJR恵比寿駅ができるときに当時の恵比寿ビール(現サッポロビール)が便益を受けるという理由により、両社がそれぞれインフラの費用を負担している。

 電力にせよ交通にせよ、我々はこの震災でインフラが社会の基盤として極めて重要だということを思い知らされた。インフラは経済学的に言えば「経済の外部効果」を実現する手段だが、それが途絶えることにより、実体経済や社会生活が被る影響は計り知れない。

 その意味でも、インフラの建て直しにおいて、料金の値上げや増税に協力しようと考える余地はあるのではないか。

質問1 日本の社会インフラは信頼できると思う?

43.1%思う36.9%思わない20%どちらとも言えない  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民71掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民71掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧