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日本企業の生産能力縮小は、米企業にとって恩恵 さまざまな製品で価格高騰が見込まれる
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/551.html
投稿者 sci 日時 2011 年 4 月 19 日 13:32:29: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110418/219471
日本企業の生産能力縮小は、米企業にとって恩恵 さまざまな製品で価格高騰が見込まれる

2011年4月19日 火曜日
Bloomberg Businessweek

経営  サプライチェーン  東京電力福島第一原子力発電所  輸出  生産能力  東日本大震災  スミスフィールド・フーズ  特需  放射能汚染  タイソン・フーズ 

Jeff Green, Shruti Date Singh and Ian King(Bloomberg News記者)
米国時間2011年4月7日更新「 U.S. Companies Rush to Fill Japan's Supply Gap 」

 3月11日に日本を襲った東日本大震災の影響で、カーナビ向けチップで世界最大手のルネサスエレクトロニクスの生産能力が激減した。同社と競合関係にあるマイクロチップ・テクノロジー(MCHP、アリゾナ州チャンドラー)のスティーブ・サンギCEO(最高経営責任者)は、この事態を受けて、ある手紙を顧客に送った。その手紙でサンギ氏は、ルネサスによる不足分を埋めるためにチップを増産すると約束した。

 同氏はまた、マイクロコントローラーを確保しようとしている企業に対して、こう助言した。「今買っておいた方がいい。さもないと、後でもっと多く支払わねばならなくなる」。そして在庫切れについても警告した。少なくとも12週間分のチップ――平時に求められる在庫の業界水準をはるかに上回っている――を前もって確保しておくようにと顧客に勧めた。サンギ氏は「当社に在庫の注文をする企業は、まず供給を確保すべきだ」とも助言している。

 多くの日本企業の生産能力が低下している現在、米企業はあらゆる製品――エビの養殖に使う魚粉から、固形石鹸や紙の製造に必要な水酸化ナトリウムまで――の高まる需要に応えようとフル回転している。エコノミック・ストラテジー・インスティチュートのクライド・プレストウィッツ・ジュニア社長は「世界的なサプライチェーンの危機を知らせ、企業を目覚めさせるモーニングコールのようなものだ。『もしもし、深刻な途絶状況が起こっています。コスト負担が大きくなるでしょう』といった感じだ。米国に拠点を維持していた企業にとっては都合がいいだろう」と語る。

米国から日本への輸出が増える

 重機を扱う米キャタピラー(CAT)などにとって、日本の再興はビジネスチャンスである。加えて、日本企業の生産力が失われたことで、様々な業界のサプライヤーに大きなチャンスが生まれている。米商務省によれば、2010年に日本企業が米国に売った製品は1203億ドル相当だった。

 日本政府が3月26日に「東京を含む6都県で検査した農産物のうち、牛乳や野菜を含む99品目が、東京電力福島第一原子力発電所から出た放射能に汚染されていることが分かった」と発表して以来、米国から日本への食料輸出が増している。例えば、日本で起こっている商品不足によって、水産加工会社ホールマーク・フィッシャリーズ(オレゴン州チャールストン)の商品価格が上昇している。銀鱈の加工品は現在1ポンド(約454グラム)当たり約9.30ドルで、2010年12月より1ドル値上がりしている。生産担当マネジャーのスコット・アダムズ氏は、「他国の不幸に乗じて稼ごうとしているわけではないが、魚好きの日本人は安全な海域で獲られた魚を求めている」と語った。

 米国最大の食肉加工会社タイソン・フーズ(TSN)のジム・ロホナーCOO(最高業務責任者)は3月30日、「震災後、日本からの需要が急増している。日本からの注文にもっと素早く応じてほしいと要求されている」と明かした。また、世界最大の豚肉加工会社スミスフィールド・フーズ(SFD)でも、日本からの豚肉の需要が増加している。同社最高財務責任者(CFO)のボー・マンリー氏は、「日本では店頭に食肉が本当にわずかしかないことを示している」と言う。

 日本の原発事故はまた、北米の液化天然ガスの輸出も増加させるかもしれない。各国の政府が自国のエネルギー政策を再考するからだ。米エネルギー企業アパッチ(APA)のスティーブン・ファリス会長兼CEOは3月28日、投資家に対して「現在の不幸な状況を前提とすると、市場におけるガスへの関心はおそらく3カ月前よりも高まるだろう」との見方を示した。 

 コンサルティング会社ケミカル・マーケット・アソシエイツ(テキサス州ヒューストン)のマーク・エラモ取締役副社長は、ペットボトルに使用するパラキシレンや水酸化ナトリウムの日本の生産拠点は、生産能力が4分の1まで縮小している。これは、ダウケミカル(DOW)やオクシデンタル・ペトロリウム(OXY)といった米化学大手にとってチャンスとなる可能性があると見ている。

 また、アレンビック・グローバル・アドバイザーズ(ニューヨーク)のアナリスト、ハッサン・アーメド氏はこう語る。「日本に拠点を置いていない大手製造業であれば、価格高騰の恩恵を受けるだろう」。

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01. 2011年4月19日 13:47:02: cqRnZH2CUM

http://president.jp.reuters.com/article/2011/04/19/8CB40D20-6572-11E0-9FD5-C8F83E99CD51.php
大前研一の日本のカラクリ ここが大間違い! 日本の原発・節電対策
プレジデント 2011年5.2号

産業も生活も、すべて電力を基盤に成り立つ日本で、即刻対処すべき課題と次に起こる問題とは何か。そしてその解決策は──。

小川 剛=構成 陸上自衛隊/PANA、The Asahi Shimbun/Getty Images、AP/AFLO、ロイター/AFLO=写真

キーワード: 大前研一 大前研一の日本のカラクリ 生活 東日本大震災 経済・金融 自然・環境

福島第一原発の被災に伴う「計画停電」の実施は、首都圏を大混乱に陥れた。産業も生活も、すべて電力を基盤に成り立つ日本で、即刻対処すべき課題と次に起こる問題とは何か。そしてその解決策は──。大前研一がずばり答える。
この国難にどう立ち向かうべきか

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壊滅的に破損した福島第一原発の原子炉3基。消防庁レスキュー隊により決死の放水活動が展開されたが、復旧の目処は立っていない。(写真=陸上自衛隊/PANA)
東日本大震災で被災した福島第一原発は予断を許さない状況が続いている。その状況自体が1秒ごとに変わるような有り様だから、対応も日替わりメ ニューにならざるをえない。だが、今後の事故処理および復旧の長期化と派生する難題の数々については、まさに国難として覚悟しなければならない。
原発事故に目を奪われてあまり注目されていないが、今回の震災では火力発電所も甚大な被害を被った。東京電力管内では13基、700万キロワットの火力発電所が一斉にダウンしたのである。
地震のときに原子炉は必ず止まるように設計されているから、日本の場合、そのバックアップは火力しかない。よって日本では原発に負けず劣らず、地震 に強い火力発電所をつくってきたはずなのだ。それが簡単に瓦解してしまったのだから、業界全体として大反省のもとに見直さなければならない。
東電は電力不足解消に向け、早期に立ち上げられるガスタービン発電所を新設するなどして全体で4700万キロワット/アワー(平年3月のピーク需要)まで回復させようと準備している。春先はそれで乗り越えられても、問題は電力需要が再び高まる「夏場」である。
東電管内の夏場ピーク時の電力需要は6000万キロワット/アワー。夏までに4700万キロワット/アワーを回復できたとしても差し引き1300万キロワット/アワー、約25%足りない。
他の電力会社から融通してもらおうにも、周波数が違うという問題がある。電力事業の黎明期に東日本では主にヨーロッパ系の50ヘルツ、西日本ではア メリカ系の60ヘルツと、周波数の違う発電機を取り入れたことが不幸の始まりだ。東西の境である糸魚川のフォッサマグナに沿って3つの変電所に周波数変換 所があり、ここを通さないと電力のやり取りはできない。
現状では中部電力と東電が施設を分け合っていて、全部足しても125万キロワット/アワー。両社で半分ずつ取ることになっているから、125を2で 割った数字しか融通できないことになる。しかもこの施設は水力発電だから、夏の天候事象によっては安定的に供給できるかどうかさえわからない。
ほかに補う当てがないわけではない。2007年の新潟県中越沖地震で全面停止していた柏崎刈羽原発では7基の原子炉のうち4基は復旧作業が完了して 稼働しているが、3基はまだ停止したまま。1基で大体100万キロワット/アワーの出力があるから、7基がフル稼働すれば、約300万キロワットのプラス 供給が見込める。今回冷温停止までたどり着いた福島第二の4基が復活すれば、440万キロワットが加わることになる。
このようにして電力をかき集めて5200万キロワット/アワー程度まで持ってこれれば、夏場のピーク時は電力需要を15%カットすればよくなる。25%のディープカットとは天と地の違いで、15%なら「ちょっと暑いけど冷房は28度に」程度で乗り切れる。
しかし柏崎刈羽原発の全面稼働は福島の事故もあって目処が立っていない。新潟県の泉田裕彦知事は「今の段階では東電から提案がないから何ともいえな い、住民が決めること」と言っているが、国難のときだから夏の間だけでも動かしてもらえばだいぶ違ってくる。今回の事故を分析して考えられるすべての安全 対策を講じたうえで、(信頼の失墜した東電ではなく)政府自身がそういう方向に働きかけるべきだろう。
ピーク時の使用量を15%減らす方法

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突然の「計画停電」と節電によって首都圏の交通網は大混乱した。(写真=ロイター/AFLO)
重要なのは節電ではなくピーク時の電力使用量を下げること。そこにだけ集中する。電力需要を15%カットするアイデアはいくらでもある。電力需要が重ならないようにすればいいのだ。
たとえば、企業や工場は操業する曜日を週5日から選択し、計画的にずらして電力消費を平準化する。サマータイムを導入して太陽の力を借りたり、フ レックス勤務制を取り入れて就業時間が重ならないようにしてもいい。また会社の夏休みを7〜9月に分散させるのも効果的。複数の会社が入っている雑居ビル などは、ビル単位で就業時間や休みを合わせるように協力する。
夏の高校野球をやらないというのも重要な提案である。毎年、甲子園大会が行われる時期の午後3時頃が夏場の電力需要のピーク。人口の20%以上を占 める高齢者が冷房の効いた部屋でテレビを見るから、年々このピークが大きくなってきている。そもそも心身ともに過酷な夏に高校野球をやらないというのが一 番で、開催時期を変更するか、思い切って今年は中止にしてもいいのではないか。また今年に限って言えば、夏場は昼間緊急ニュース以外は一切テレビを放映し ない、というところまで追い込まれるかもしれない。
最低15%の電力カットを個人の責任で実践する、というのも大切な視点だ。電力需要が集中する日中のど真ん中には冷房を入れないように努力するだけ でも、大いに貢献できると思う。とにかくピーク時の消費電力を減らせばいいので、寝苦しければ消費電力が少ない夜中に冷房を少しつけたって構わない。そこ を勘違いしてはいけない。
今夏さえ乗り切れば、後はなんとかなる。次の夏までの1年でできることはいろいろあるからだ。新しく立ち上がる火力発電所もあるし、原子炉と違って一度火を落とした火力発電所を再興するのはさほど危険なことではない。
来年以降は、今からケーブルを補強すれば北海道電力から電力をもらうこともできるし、その延長で樺太の豊富な液化天然ガス(LNG)で発電してもら い、ロシアから稚内経由で買電することもできる。東西グリッドの完全接続となると相応の工事費用はかかるが、今回の惨事を踏まえれば世論の支持は得られる だろう。1000万キロワット/アワーの融通ができるようにするには2年の工期と1兆円の工費がかかるという試算もあるが、スイスに本社を置くABBやド イツのシーメンスなど、従来は参入できなかった外国勢を入れれば半額程度にはなるだろう。いずれにせよ東西が電力を貸し借りできる体制を国を挙げて構築す べきだ。
長期的な展望として今後、原子力に頼らない世界を目指すなら、電力の35%を原子力で賄っている日本は「電力35%レス」を甘受しなければならな い。2桁成長しているような新興国で35%削減は非常に厳しいが、日本は経済成長していないので比較的やりやすい。しかし、いかなる場合であっても、産業 や福祉を破壊する「停電」だけは避けなくてはならない。
35%カットともなると、冷暖房の熱漏れを防ぐために家の構造から変える必要がある。住民投票で原子炉を否定した米カリフォルニア州のサクラメント 市では、夜間にヘリコプターが飛んで、どの家からどれくらいの熱が洩れているかを赤外線写真で撮影している。熱漏れのひどい家に対しては改善勧告がなされ て、自己負担で断熱材を貼るなり、窓枠を換えるなりしなければならない。住民全体のそうした取り組みによって、サクラメントでは脱原発を果たしたのであ る。いまではLED電灯への変換を加速する、などの施策も加味することができる。
日本を壊滅させる「計画停電」の愚

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県全体への「出荷制限」は、風評被害という二次災害も生んだ。(写真=AP/AFLO)
今回の「計画停電」は政府が打ち出した最悪の対策である。東電がここまで現代の産業社会というものを理解していないとは思わなかったし、東電に泣きつかれて計画停電の即日実施を了承した菅直人政権の危機管理に対する感度の低さにもあきれる。
計画停電はエリア別に個人、法人の区別なく実施されるわけだが、一つのエリアの中には病院もあれば、半導体工場もあれば、コンピュータのサーバーもあるかもしれない。
病院の医療行為に支障をきたすのはもちろんのこと、半導体工場やバイオ工場などでも1日に3時間も電気が止まったらクリーンルームが使えなくなる。 連続稼働しなければ、クリーンルームの清浄度は保てない。休止中に不純物が混入すれば、製品は使い物にならなくなるのだ。コンピュータのサーバーにして も、止める前の1時間と動かした後の2時間は使えないから、計画停電で1日6時間はサーバーが使えないことになる。企業にとっては命取りだ。今後、日本の サーバーの半分くらいは国外に流出するかもしれない。
通勤通学や物流も多大な影響を被った。計画停電の実施が発表された当初、3時間どころか丸1日運休にした鉄道会社もあった。理由は簡単。本来、鉄道 会社は自前の発電施設を持っていなければならない。しかし、戦時中の統制経済など長い月日のうちに自家発電を維持できなくなり、電力は買ったほうが安いし 安心と東電に依存するようになったのだ。発電施設は稼働しないし、燃料も買っていないから、停電になれば電車は動かせないし、踏切も閉められない。結局、 安全最優先で終日運休にせざるをえなかったのだ。
唐突な計画停電の実施、対象地域やグループ分けの混乱ぶり、そして弱い立場にある地域ばかりに集中している不平等な実施状況を見ていると、東電という会社の体質とデタラメぶりがよく表れている。
現状では、震災や津波よりも計画停電のほうが日本経済に与えるダメージは大きい。震災の夜に帰宅難民になった苦い経験があるから、計画停電で鉄道の 運行に影響が出るといって皆早めに帰る。アフター5に食事をしたり、居酒屋で飲んで帰るという雰囲気ではない。会社も自宅待機や早退を認めざるをえないか ら、仕事はガタガタである。私が行く予定だったコンサートも次々と公演中止の知らせが届き、節電に協力するためだと口を揃える。何度も言うが必要なのは節 電ではなく、ピーク時の電力使用を抑えることなのに。
もう一つ、計画停電とともに政府が犯した二次災害ともいえる大失策は、国民にパニックを与えるような発表の仕方をとったことだ。その最たるものが放射線の問題。こちらも勘違いを生み、産業界を混乱させる一因になった。
枝野幸男官房長官は、「どこそこのホウレンソウから国の暫定基準値を超える放射線が検出されたから出荷停止処分にした」と発表した。特別に高い数値 が出た食材ロットだけでなく、福島も茨城も県全体に対して行政命令で出荷制限をかけたから、消費者は両県産とも汚染で危ないという風評で手を出さなくなっ たし、スーパーの棚からも消えた。一方で生産者は丹精込めてつくった安全な農作物や原乳を廃棄しなければならない。大変な被害である。
しかも、出荷制限を発表した後で、「毎日食べ続けると1年間で基準値を超えるという意味で、直ちに健康被害はない」と取ってつけたように言い直すから、国民は不安になる。
要はこう発表すればよかった。「1年間毎日摂取し続けると基準値に達するレベルの数値が検出されたので、毎日食べるのは控えてください。食べる際は 水で洗えば大丈夫です」と。実際、本稿を書いている4月上旬時点では、野菜も牛乳も水も摂取してなんの問題もない放射線レベルに下がっている。
放射線の基準値については、WHO(世界保健機関)が日本政府とは違う見解があると言っている。政府はWHOやIAEA(国際原子力機関)のような 国際的なエキスパートをうまく使うべきだ。彼らの主張を政府が代弁するような形でアナウンスすれば、国民も信用するし、安心できると思う。
避難勧告にしても、福島第一原発から250キロメートル離れた東京でさえ西へ脱出する人が続出したが、確率的には自動車事故に遭う心配をするほうが 先、と私は言いたい。事ほど左様に政府のコミュニケーション機能の不足によって国民の不安と不信が増大、心理的な萎縮が経済の低迷に拍車をかけている。
原発を維持するなら即刻「国有化」せよ

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3月30日、東京電力の勝俣恒久会長は記者会見を実施、謝罪した。(写真=The Asahi Shimbun/Getty Images)
さて、日本のエネルギー問題、電力事業は今後どうなるのか。私はまず日本の電力業界の構造を変えていくべきだと提案している。日本では電力会社が垂 直方向に「発電」「送電」「配電」という3つの事業を行っている。だが、世界では1980年代のレーガン、サッチャー以降、これら3つは明確に分けられ、 それぞれ規制緩和している。
今回の福島第一原発の事故で、東電だけの問題ではなく、民間企業では原発のリスクは高すぎて背負い切れないことがはっきりした。この先、少なくとも 民間企業では原発はできないだろう。もともといやがる電力会社の背中を押して国策でやっていたわけだから、いまさら驚くには当たらない。
したがって発電部分に関して、35%の原子力を依然として維持したいのであれば、既存の原子炉施設は国が買い取り、必要ならば人材も移して、国策会 社として運営するしかない。国家が発電し、国家がオペレーションをし、国家が安全の責任を持つ。民間の電力会社は火力、水力、その他のクリーンエネルギー に専念する。これで責任体制がはっきりする。発電には民間企業や海外からの参入も認めれば数年で必要な発電量は確保できる。
送電部門に関しては、日本全国を網羅する「送電公社」をつくるというのが私の提案だ。すでに行われている中部電力と東電の交渉は利害調整と地元対策 に難航、なかなか進まない。が、全国の送電網を一手に預かる送電公社のような組織があれば、糸魚川フォッサマグナの東西グリッドの接合は簡単にできていた はずである。全国に9つ(沖縄除く)ある電力会社は、送電事業を手放したがらないから反対は強いだろうが、日本全体の送電をワンネットワークにまとめるの は一つの案だ。日本は東西に長い島国であるから、北海道と沖縄の間には1時間半の時差がある。したがって電力のピークもずれているわけで、送電を一元化す れば東北から南西にピークロード(最大需要量)を相互補填していくことができる。
もう一つの案は、フォッサマグナのところだけを対象とした公営の東西グリッド接続会社をつくること。これまでは東西の電力バランスが取れていたため に融通する必要はあまりなかったが、今後は国家の安全のために500万〜1000万キロワット/アワーぐらいまではやり取できるようにするべきだ。前述し たように費用は1兆円、住民対策を除く工期は2年という試算もあるが、周波数変換が得意なヨーロッパのメーカーなどを入れれば費用は半減すると思われる。 明日はわが身の今ならコンセンサスも取りやすいだろう。
最後の配電事業に関しては、現在の9電力がそのままやればいい。以上が電力事業についての将来像である。
東芝、日立、重工の生き残り策はこれだ

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原発大国フランスのサルコジ大統領が緊急来日し協力を約束した。(写真=AP/AFLO)
次に、原子炉をつくっている3社、東芝、日立、三菱重工はどうすべきか。
ここ数年、日本の輸出産業の花形として注目され、世界最強の原子力産業などと浮かれていたが、よくよく考えてほしい。79年のスリーマイル島の原発 事故以来、アメリカやドイツがつくらなかっただけのことで、彼らが30年間眠っている間に日本とフランスだけが専心してきたにすぎない。今度は日本が30 年、原発をつくれない番になる。国内新設も輸出も難しくなる「苦難の30年」が始まることになる。
問題は30年もつくれないと、エンジニアが離散していなくなってしまうことだ。一度、エンジニアが途絶えてしまうと、次に再生するときには何十年も かかる。私は米国留学時代、MIT(マサチューセッツ工科大学)大学院の原子力工学科に籍を置いたが、当時私の大学院のクラスには“同期の桜”が130人 もいて、世界各国の精鋭が集う花形学科だった。しかし、スリーマイルの事故を経て私がMITの社外取締役になった90年代には途上国の学生ばかりで、その 数は十数人に激減、学部の存在意義はなくなり、原子力工学の看板を環境とかクリーンとかに掛け替えて生き延びるしかなかった。
日本の原子力技術者を維持するためには、東芝は原子力部門をウェスチングハウスという自ら買収した会社にリバース・テーク・オーバー(未上場企業に よる上場企業の買収)させたほうがいいと思う。原子力部門の表看板をウェスチングハウスにして、東芝はその裏方として原発のエンジニアリングや設計、施工 を行う、という形で技術者を維持するのだ。
日立も同様。日立は07年にGEと原子力事業で提携して「日立GEニュークリア・エナジー」という合弁会社を設立した。出資比率は日本では日立 51%・GE49%、アメリカではGE51%・日立49%だが、出資比率を下げてもいいから、どちらも社名から日立を外して表の看板はGEにする。福島第 一原発はGEの設計で、今回の事故もGEに責任があるのだが、「日本の原子炉!」というブランドに墨が塗られた現状では、GEを前面に押し立てて福島原発 の悪夢から距離を置かなければ生き残れないだろう。実際の原発の設計施工は日立のエンジニアがやるにしても、だ。コールオプション(将来の取引についての 約束)を設定し、いつでも日立が51%出資を回復できるよう工夫しておくべきだろう。
東芝も日立も今回の原発事故で数多くの知見を得られるだろうから、従来よりもはるかに強くなる。しかし、一度、汚名を着せられるとそのままでは生き残れないのが原子力の世界なのだ。ここは名を捨てて実を取るつもりで、生き残りを図ってほしい。
三菱重工は加圧水型原子炉(PWR)が強みなので、沸騰水型原子炉(BWR)である福島の事故とは直接関係ない。それでも百歩譲って安全策を取るべきで、技術提携しているフランスの大手原発メーカー、アレバの軒下を借りて事業を続けたほうが得策だと思う。
誇り高き日本の原子力産業にとっては屈辱的な冬籠もり作戦になるが、とにかくエンジニアの芽を絶やさないことが重要だ。現実に原子力開発の作業をこ なせるのは日本勢とフランス勢しかいないので、仕事はある。世界中で新型原子炉の導入は一時的に減速することになるだろうが、中国を筆頭に新興国では原発 推進の余熱は残っている。
世界的な原油高に打つ手はあるのか

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1000年に一度の地震と津波により、死傷者は2万人を超えた。(写真=AP/AFLO)
原子力が退潮してくれば、化石燃料への依存が高まる可能性は高い。だが、こちらのほうはあまり心配していない。
実は石油の供給量というのは、すべて価格の関数で決まってくる。たとえばブラジルの超深海油田は、バレル当たり100ドル近い生産コストがかかる が、1バレル140ドルになれば十分にペイする。1バレル100ドルを超えてくれば、ほぼ無尽蔵とも言われているオイルシェールやタールサンドなどの資源 開発も進むのだ。
なぜ今まで値段の高い石油資源や類似資源の開発が進まなかったかといえば、石油の値段が下るからだ。苦労して投資、開発した直後に石油価格が下がり、投資・開発会社がひっくり返る――それがこの40年の歴史だった。
値段さえ(高値で)安定すれば石油資源も代替エネルギーもいくらでも出てくる。埋蔵しているとわかっている石油資源だけで今後100年は持つから、 我々世代と次の世代くらいまでは心配ない。値段のかかる石炭のクリーン燃焼もペイするようになれば、200年は化石燃料で持つことになる。
私は、石油価格はむしろ高いほうがいいという考え方だ。1バレル100ドルなら100ドルと世界中で決めてしまって、生産コストが下がったら差額は プールして代替資源の開発に回すような仕掛けをつくればいい。日本は1バレル160ドル程度までなら十分耐えられるし、それに対応する形で、自動車メー カーはひたすら小型化低燃費の車を追求していくことになるだろう。むしろ高い値段で安定してくれたほうが、事業チャンスが広がるという発想を持つべきだ。
現状、中東情勢の悪化で石油価格は上昇しているが、これも心配ない。たとえばイランでは、パーレビ国王が去った後も石油を売り続けた。いかなる体制 に生まれ変わっても石油しか売り物がないのだから、誰かが売る。中東で政変が起きると石油価格が跳ね上がるのは投機の世界の話で、おのずと自制が働いて価 格は落ち着いていくのだ。
食料も同じ。値段さえ決まったら世界中で農作地になる場所は掃いて捨てるほどある。むしろ値段が高くなれば投資を呼び込んで生産性は上がる。これが経済の原則なのである。
安定して高い食料、安定して高いエネルギーというのは日本にとって悪い話ではない。怖いのは乱高下。日本の電力代は世界一高いが、ここから先もそれを甘受して、5年、10年と年限を切って電力安定化のための投資を電気代に乗っけるのは悪いことではない。
これと同時に発電事業への参入を自由化する。異業種からの参入もあるから、9電力は競わなければならなくなる。世界一高い市場なので世界の資源国か ら日本の発電事業に参加したいという声が上がるだろう。発電や送電事業に対する参入規制を解けば、外資がどっと日本にやってきて、電力供給はむしろ安定す るだろう。発電コストも大幅に下がって、電気代は半分になるかもしれない。災い転じて福となす。日本のエネルギー政策を根本的に見直せるのは今しかないの だ。
※すべて雑誌掲載当時


02. 健奘 2011年4月20日 09:34:29: xbDm84QDmOFmc : G0mHLBURW6
大前氏は、今の感性・考え方を前提に議論すると、一流ですね。

しかし、感性が変わること、そして考え方も変わることも視野に入れ、少し俯瞰するような議論は、苦手なようです。

今は、そうした変わり目でしょう。だから、大前氏の議論は、的中しないと思います。


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