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日本の救いはグローバルスタンダードから最も遠いところにあった= 震災で露呈した均一化と集中に頼る国づくりの限界(浜矩子)
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/565.html
投稿者 Orion星人 日時 2011 年 4 月 20 日 10:52:29: ccPhv3kJVUPSc
 

http://diamond.jp/articles/-/11972

 原発事故、電力不足、物流途絶、食品・日用品不足…。大震災に襲われた3月11日以降のこの国の混迷は、われわれに何を突きつけているのか。同志社大学の浜教授は、「均一化」と「集中」をテコに成長だけをひたすら追求してきた国づくりの行き詰まり、そして「多様化」と「分散」への発想大転換の必要性を示していると説く。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長、麻生祐司)

浜 矩子(はま のりこ)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
一橋大学経済学部卒。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長などを経て現職。金融審議会、国税審査会、産業構造審議会特殊貿易措置小委員会等委員、経済産業省独立行政法人評価委員会委員、内閣府PFI推進委員会、共同通信社報道と読者委員会、Blekinge Institute of Technology Advisory Board メンバーなどを歴任。 『グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに 』(岩波書店)『ザ・シティ金融大冒険物語―海賊バンキングとジェントルマン資本主義』 (毎日新聞社)など著書・共著多数。

 「均一化」と「集中」。戦後日本の国づくりの特徴を端的に概念化するならば、この二つの言葉に収斂されるだろう。それは、戦後の焼け野原からの復興、そしてその後の経済成長を支えた“二輪”の概念である。しかし、3月11日に東日本を襲った未曽有の震災と、いまだ出口の見えない福島原発震災は、均一化と集中に依存するこの国のあり方が危機に対していかに脆いかという現実をわれわれに突きつけた。

 大きければ強く効率的であるという均一化の論理のもとに組み立てられたものの多くは、今回の震災で、あっけなく崩れ落ちた。物流システムは各所で機能不全に陥り、大手スーパーチェーンや大手コンビニチェーンはちょっとしたパニック的な購買行動や買い溜めによって食料品や日用品の不足どころか枯渇に陥った。 富と都市機能は東京圏に寄せ集めるという集中は、福島原発事故を機に深刻な電力不足問題を引き起こし、交通インフラの大混乱を招いた。

 私は今、声を大にして提唱したい。均一化ではなく「多様化」、集中ではなく「分散」こそが、復興、いや日本の新興を論じるときの新たな二輪になるべきだ、と。

 大手スーパーやコンビニにモノがないとき、救いの手はどこにあったか。それは、グローバルスタンダードとは無縁なところで生真面目に営んでいた零細個人商店にあった。前世紀の遺物と揶揄されていた、存在を忘れられつつあった零細でローカルなお店に、懐中電灯や乾電池、水やティッシュペーパー、パンはあった。グローバルスタンダードの常識からは最も遠いところで、救いは発見できたのである。

 われわれは、こう信じていた。グローバルジャングルの中で日々運営されている日本経済においては、強いものと大きなもののみが勝ち残っていく、そして日本の(成長の)ためにもそうあるべきだ、と。また、現代はグローバルスタンダードへの収斂の時代であり、均一化と集中のグローバルスタンダードに早く準拠した姿・形を整えないと、落伍してしまう、と。

 しかし、現実にはとうの昔にそのような論理は、時代に合わなくなっていたのではないか。

 世界経済に目を向けても、対外債務国と債権国に色分けされた集中は、債務国の財政危機を顕在化させ、いま是正を余儀なくされている。人・モノ・カネはなかんずく国境を超えるのだから、債権と債務がどこかに集中していても、どんぶり勘定の世界ではゼロであるがゆえに問題ない、それがグローバル時代だという論理には無理があった。メタボなキリギリスを蟻たちは支えきれない。世界各所で国家の財政危機リスクが増大している。

 いうまでもなく、この変化は、震災前から見えていたものだ。しかし、戦後復興の成功体験を引きずる中で、日本はグローバルスタンダードへの追随という無定見のうえに胡坐をかき、変化を避けていたのではないか。すでに均一化と集中で成長を目指すモデルから卒業した経済になっていながら、思考を停止していなかったか。戦後初の選挙による政権交代が実現し、新たに国家運営の任を負った民主党の新成長戦略には当初期待が寄せられたが、ふたを開けてみれば、従来どおり、均一化と集中の発想で描かれたものにすぎなかった。 

 むろん、私も成長や競争の意義を否定しているわけではない。すべてがローカル・零細でないとダメなどと言っているわけでもない。ただ、今、日本人が考慮すべきは、小さいものは小さいものなりに、弱いものは弱いものなりに、強大なるものは強大なるものなりに、日本経済という生態系、グローバルジャングルという生態系の中で、厳然たる役割があるということだと思う。普段は大きなものが大きな顔をしていてよいが、一方で小さくて弱いものも脈々としっかりと役割を果たしている、そのいうなれば共存共栄の生態系の底力、重要性を軽視することの恐ろしさは今回の震災を機に痛感できたはずだ。

さて、復興である。われわれは、“復元”の方向にだけ進むことは避けるべきだ。復興を急ぎたいという気持ちは分かるが、急がば回れである。どんな姿を構築するかという落ち着いた検討が今こそ必要だ。もちろんライフラインの復元は喫緊の課題であり、最優先すべきだ。しかし、それ以外の点では、復元の必要があるもの、新興すべきもの、廃棄すべきものをしっかりと仕分けする必要がある。ゆとりのない現状では大変な作業であることは承知しているが、どうしても復元しなければならないものと、そうでないものの仕分けぐらいはできるだろう。

 そのとき中央がすべてを決めていては、何も変わらない。復興のベクトルを示し、お金を集めて提供する役割は、国が集中的に担ってもいいが、あとは地元で使い途を考えるべきだ。地域社会という、いうなれば小宇宙の中で、大きく強いものと、小さくて弱いものが共存共栄できるパターンを描くべきだ。それに則って、使える金を上手に分かち合えばいい。

 先述した小売の世界を例に上げれば、大手スーパーが個人商店を次々と買収しその領域に浸食していくのではなく、場合によっては棲み分けを考えてもよいのではないか。たとえば、大手スーパーで売っている商品はこれだが、違うものが欲しければあの店(個人商店)に行ってくれとネットワークをお互いに支え合う。強いものは弱いものを支えるが、弱いものも強いものを下支えする。各自治体はそれぞれの小宇宙にマッチしたモノを作っていくために、お金の使い途を考えればよい。

 私は、各々の自治体が自己完結的に活力と多様性と創造性を持った小宇宙となり、その集合体として日本経済が存在できれば、足腰のしっかりした国になると思う。これまでの論理で復元するためだけに補正予算を繰り返し組んでいくことが復興だということであるならば、ただでさえ財政状況の厳しい日本に降り注がれる世界の目がいっそう厳しくなることは必定だ。そうなれば、今回の震災は“非日常”の出来事であるにもかかわらず、過度の円安や金利上昇を招き、われわれの“日常”に侵食してくることだろう。それは亡国の道だ。

 世界を驚嘆させる新しい経済モデルの絵を描き、その財源を確保するためにあらんかぎりのクリエイティビティを発揮する必要がある。増税による税収を償還財源の裏付けとする復興債のようなものも検討に値するだろうし、あるいいは突拍子もなく聞こえるかもしれないが、IMF(国際通貨基金)から復興計画に絞って融資を受けるという可能性だって探ってみてもいいのではないか。また、復興紙幣については、私も基本は慎重な考えだが、これを機に、そのメリット・デメリットを考えてみるのもいいだろう。

 ただし、繰り返すが、議論の大前提はあくまで単なる復元ではない日本新興計画の提示である。そこまでしてはじめて、日本は賢さの鏡となり、あらためて世界のお手本となる可能性を持てるはずだ。(談)
 

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