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東電処理は会社更生法で――星岳雄、アニル・カシャップ、ウリケ・シェーデ
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/601.html
投稿者 sci 日時 2011 年 4 月 25 日 16:57:12: 6WQSToHgoAVCQ
 

会社更生法適用が、一番フェアで、経営責任の明確化もできるが欠点は時間がかかることだから、いずれにせよ暫定的な対策は政府が行う必要がでてくるだろう
http://diamond.jp/articles/-/12041
東電処理は会社更生法で――星岳雄、アニル・カシャップ、ウリケ・シェーデ
 各紙が伝えるところによると、政府は原発賠償のための保険機構を作る計画らしい。福島第一原子力発電所事故の被害者への賠償を速やかに実施するためだという。また、将来の原発の廃炉のための資金に使う案もある。計画によれば、政府は優先株を引き受ける形で東京電力に資本注入し、その配当金により政府に補償資金を返済していく。新機構は東電をはじめとする原発を保有する各電力会社から毎年保険料を集め、原発事故賠償のための保険を提供する。日本にはすでに原子力損害賠償制度があり、手当てされている賠償金総額はアメリカの同様の保険制度を上回っているが、今回の措置はそれに加えたものになる。以下に論じるようにこの政策には大きな問題がある。

 すぐ分かるように、資本注入と保険機構の仕組みは、危機に陥った大銀行の処理方法にもとづいている。たとえば、日本ではりそな銀行の場合にみられたように、資本注入によって大銀行を救済するのは各国で見られることである。また、多くの国が預金者を保護するために預金保険制度を備えている。たしかに、東電と破綻しつつある大銀行の間には共通点がある。90年代後半日本の多くの銀行がそうであったように、東電も債務超過状態に陥る可能性が高い。東電も巨大な企業であり、電力供給という経済活動に不可欠な役割を担っている。たとえ短期間でも東電が業務を停止することがあれば、経済に莫大な損害をおよぼす。

 しかし、電力会社と銀行の間には根本的な違いがある。銀行救済や保険機構のような仕組みを東電に適用するのは、的外れであるだけでなく、有害になる。銀行は三つの点で他の事業会社と異なる。第一に、銀行の負債の多くは預金など短期負債であり、預金者や他の債権者が銀行がつぶれる可能性があると考えると直ちに引きあげられる性質のものになっている。第二に、銀行の資産のほとんどは貸出金など換金性の低いものである。この負債側と資産側のミスマッチは、もし銀行の債権者がいっせいに返金をもとめたら、銀行はたちまち支払い不能に陥ることを意味する。
次のページ>> JALも重要な大会社だが、会社更生法の下で再建中

 これに対して、東電の負債側はほとんど長期の負債であり、損害賠償も含めて、ただちに支払いを強制できる種類のものではない。さらに、資産側はおもに将来の電力料金収入であり、短期間に大きく変動するものではない。実際、東電は地域独占なのでその収入はよけい確実である。すなわち、銀行に見られる期間構造のミスマッチは、東電にはないのである。

 また、銀行は他の多くの金融機関と様々な金融取引を行っているので、ある銀行が取り付けにあって破綻すれば、その影響はすぐに他の銀行にも及ぶことになる。銀行破たんの懸念は、預金引き出しをより活発にし、金融機関自身も他の金融機関から資金を引き上げるようになる。こうして、金融システム全体が危機に陥ってしまう。だが、東電が破綻したとしても他の電力会社があぶなくなるわけではない。もしも規制緩和を通じて顧客が東電から他の電力会社に移ることになれば、他会社はむしろ得をする。

 日本の銀行は多額の東電株と東電債を保有しているので東電の破綻が金融危機を引き起こすと警告する論者もある。しかし、その場合には、金融規制当局が東電の破綻によって多額の損失を蒙った銀行に対して的確に対処し、場合によっては介入することによって、金融危機を避けることができる。もちろん、多くの銀行はそのような規制当局の介入を嫌って、東電救済案に賛同しているのだろうが。

 東電の破綻処理が必要なら、2003年に大改正されて使いやすくなった会社更生法を使うべきである。そもそも、会社更生法が目的とするのは、債務超過の可能性がある会社の事業の継続価値を損なうことなく、その債務関係をできるだけ公平に調整する仕組みである。現在の東電のような立場に陥った企業のために設計されたと言っても過言ではない。JALも東電同様、重要な大会社であるが、現在会社更生法の下で再建中である。JALにも東電にも金融機関のような特別な破綻処理スキームは必要としないのである。

 電力債は、電気事業法によって特別の地位を与えられ、会社更生法の下でも他の一般公正債権に対して先取特権があるから、もし東電が会社更生法を適用されると、被害者への補償よりも優先されて弁済される、という議論もあるが、これは正確ではない。会社更生法は、債務調整の手続を決めているだけであり、厳格な配分ルールではない。先取特権を持つ債権でも、更生計画では公平性の観点から他の一般更正債権とまとめて一つのクラスにされる場合もしばしばである。重要なのは、公平な更生計画が裁判所の監督の下で慎重に作成されることである。この意味で、会社更生法は融通の利かないルールではなく、公平性を確保するためのプロセスなのである。
次のページ>> 既に存在するモラルハザードを助長

 逆に会社更生法を適用せず、東電そして電力会社を特別扱いするなら、他の重要な企業の経営者にもいざとなれば政府が助けてくれるという甘い期待を持たせることになるだろう。もっと深刻なことには、日本では影響力の大きい企業は失敗しても通常のルールが適用されないのだ、というメッセージを全世界に発信することになってしまうことである。

 東電のケースの金融機関との対比は的確でない点が多いが、ひとつだけ当たっている点がある。預金保険は預金者が銀行を監視するインセンティブを弱めるので、銀行のモラル・ハザードを助長する。その結果、銀行がリスクが取りすぎることがないように、政府が監視する必要が出てくる。こうして、金融業は多くの国で厳しい規制の下に置かれている。

 同様に東電も、原発など安全性が最重要視される業務を行っていることから、もともと政府の厳しい規制下におかれているはずだった。この規制が失敗したことが今回の事故の要因になっていることを忘れてはならない。東電を救済し、今後はさらに手厚い保険を用意することは、既に存在するモラル・ハザードを助長し、安全性・効率性の確保を今まで以上に難しくするだろう。

 すでに存在するモラル・ハザードとその結果としての安全の軽視、発電・送電の両事業にわたる地域独占の問題、そして政府の規制・監督の実効性の低さ。こうした問題は、債務超過と違って、会社更生法が解決できる問題ではない。それらは、東電問題を超えて、全電力会社と電力産業全体の問題として、抜本的な改革が必要とされるだろう。

<執筆者>
◆星岳雄(カリフォルニア大学サン・ディエゴ校、国際関係・環太平洋研究大学院教授)
◆アニル・カシャップ(シカゴ大学ブース・ビジネススクール教授)
◆ウリケ・シェーデ(カリフォルニア大学サン・ディエゴ校、国際関係・環太平洋研究大学院教授)  

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コメント
 
01. 2011年4月26日 10:37:57: C0z8CmnT2A
東電の電気事業さえ残せばよいのだから会社更生法を使えば済む、日本航空と同じように処理すべきだ。
国有化は絶対反対、無駄な費用を作り出し、公務員を増やす、彼らがまともに働くはずがない。
債権者、株主は自己責任を全うすべし。

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