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オバマ大統領の「金持ち」攻撃の危うさ   米国経済の何が問題なのか?
http://www.asyura2.com/11/hasan71/msg/673.html
投稿者 sci 日時 2011 年 5 月 03 日 07:08:30: 6WQSToHgoAVCQ
 

(2011年5月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

バラク・オバマ大統領が財政赤字の削減について語る時に強調するのは――確信を持って提案するのがこれだけという場合も少なくない――高所得者への増税である。この案は民主党員の間で歓迎されており、大統領は完全に寝返ったわけではなかったのだという喜びの声も上がっている。

 一方、共和党員の反応も同じくらい相変わらずで、これは階級闘争であり経済を破壊するものだと批判している。オバマ氏は美辞麗句を並べているが、民主党は雇用を減らす昔ながらの万能薬が頼りなのだと述べている。

 米国の公的債務の見通しを考えれば、とにかく増税はしないという共和党の主張はかなり無責任である。財政を均衡させるには、やはり歳入を増やさなければならない。
経済政策としても選挙対策としても間違っている「金持ち増税」
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階級闘争の闘士と呼ぶには、オバマ大統領は笑顔が多すぎる〔AFPBB News〕

共和党については、その政治的判断にも疑問符が付く。大統領は、階級闘争の闘士と呼ぶにはあまりにも笑顔が多すぎる(すべての民主党員について同じことが言えるわけではないが)。

 しかし、共和党は道を誤っているかもしれないが、「金持ちから搾り取る」のが優れた経済政策であり、必ず成功する選挙対策でもあるという民主党の考えはいずれも間違っている。この政策は、どちらでもない。

 経済政策としての有効性から吟味してみよう。米国の個人所得税率は、ほかの国々のそれと大きく異なるわけではない。オバマ氏の前任者であるジョージ・ブッシュ氏は、給与所得にかかる連邦個人所得税の最高税率をほぼ40%という水準から35%に引き下げた。オバマ氏はこれを元に戻したいと考えている。

 しかし州の個人所得税、メディケア税、所得の増加に伴って適用されなくなる一部の免税措置、そして最低代替税との相互作用(具体的にどういうものであるかは、聞かないでほしい)などを考え合わせると、オバマ氏がブッシュ減税を廃止しなくとも、最も高い限界税率は既に50%を超えているのである。

 米国の所得税制が変則的なのは、税率が低いからではなく、税率の水準が中程度でありながら税収が非常に少ないからだ。

 米国の納税者が2004年から2008年にかけて納めた連邦所得税の額は、平均すれば所得の12%を少し超える程度だった。所得階層で下位50%に属する世帯の平均税率はざっと3%で、上位50%のそれは14%だった。上位5%の平均税率は21%で、上位1%は23%だった。
道路検問でおむつ袋の中から50万ドル 麻薬取引に関係か、メキシコ

金持ちに増税を強いようとするバラク・オバマ大統領の政策は、経済的にも政治的にも間違っている〔AFPBB News〕

 ただ、ここまでは累進的だが、最高峰では逆累進的になる。最上位0.1%(年150万〜220万ドル以上の所得を得た層)の平均税率は、普通の高所得者層のそれよりわずかながら低かったのだ。

 平均税率と限界税率の間に開きが生じる理由は主に2つある。

 第1の理由は、所得分布の中位層では、住宅ローン金利や雇用主が提供する医療保険の保険料、そして連邦議会が促進させようと選んだそのほかの支出について所得控除が行われていることにある。

 第2の理由は、所得分布の上位層では、キャピタルゲインや配当所得の適用税率が給与所得のそれよりはるかに低くなることに求められる。従って、最高限界税率を引き上げてこのような税体系を修復しようという提案は的外れだ。
必要なのは、課税ベースの拡大なのに・・・

 必要なのは課税ベースの拡大である。これが拡大すれば、税収を増やしながら限界税率を据え置いたり、場合によっては引き下げたりすることが可能になる。ボウルズ・シンプソン委員会(財政責任・改革委員会)やそのほかの調査報告が提案しているのも、まさにこれだ。

 オバマ氏も「租税支出」の削減(すなわち、各種の所得控除額の制限)に先日言及することでこの方向に少し踏み出したが、最高限界税率引き上げに対する力の入れ方に比べれば、重視しているとはとても言えない。

 ブッシュ減税を廃止すれば人々のやる気が損なわれて中小企業もだめになると共和党は主張するが、そんなことを考えなくても、限界税率の引き上げは最善策でないとの結論に至ることになる。

 また、オバマ氏は階級闘争の闘士だなどと考えなくても、「百万長者と億万長者(ミリオネアとビリオネア)」が適正な額の税を納めていないという同氏の主張は、これからなすべき事について有権者を誤解させるものだという結論に至ることになるのだ。

 しかし、有権者と言えば、オバマ大統領のアプローチには一体どのような政治的メリットがあるのだろうか。このアプローチは経済政策としては誤りのように見えるが、選挙対策としては理にかなっているのかもしれない、と読者は思うかもしれない。


 民主党の戦略担当者はコンピューターに打ち込んだデータを精査して、理にかなっているという結論を下した。問題は政治なんだ、バカ者め。「金持ちから搾り取る」という主張は票になる、というわけだ。

 この点については、用心した方が賢明だろう。確かに有権者の大半は、ほかの施策とともに、高所得者層への増税に賛成するかもしれない。だが、民主党が提示する施策をこれ以外に持ち合わせていなければ、有権者もいずれ気がつくだろう。

 そして、結局のところ民主党は金持ちへの増税、あるいは、それほどの金持ちでない階層への増税そのものを目的としていると考えるようになったら、不安を感じるようになるだろう。

 オバマ氏は、有権者がそのような印象を抱くのを避けようとしているが、「百万長者と億万長者」というフレーズをオバマ氏が口にするたびに大喜びしている民主党選出の連邦議会議員たちは、そんな気遣いはしていない。

 中間層(増税しないとオバマ氏が公約した階層)と、民主党のスポークスマンが先日「ウルトラリッチ」と形容した高所得者層の境界線を、大統領が世帯所得25万ドルの水準に設定していることも問題を悪化させている。

 25万ドルでは低すぎる。確かに、1年間でそれほどの金額を稼げる世帯は全体の3%弱にすぎない。だが、公務員と結婚した警察官でもこの水準を超える可能性はある。所得は一生の間に変動するものであり、自分の稼ぎがピークに達している時期にこのレベルを超えた、超えそうだ、あるいは超えるようにしたいという世帯は、3%よりもずっと多いのである。
今も自力で勝ち取った成功を称賛する国

 年収24万ドルの夫婦を中間層と呼ぶ一方で、年収26万ドルの夫婦をマーク・ザッカーバーグやウォーレン・バフェットと税法上同じ階層に入れるというのは、どう考えてもおかしい。

 米国は、不正な手段で大金を稼いでいるとの理由でウォール街の高給取りを嫌っており、彼らに増税して連邦政府の財政赤字圧縮の一助にしようと考えている。だがこの国はまだ、努力、知恵、創意、そして自力で勝ち取った成功を称賛しているのだ。

 この点を忘れているオバマ氏と民主党員たちは危ういと言わねばなるまい。
By Clive Crook
© The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. Please do not cut and


(英エコノミスト誌 2011年4月30日号)

米国の政治家はこの国が抱える真の問題に取り組めずにいる。信じられないかもしれないが、米国は欧州から学ぶことができる。
<米中間選挙>民主党の優位継続、一部世論調査では支持率差が縮小 - 米国

悲観論が渦巻いても、米国経済は力強い回復を遂げてきた〔AFPBB News〕

米国についての悲観論が長期的に正しかったことはほとんどない。米国人が深い絶望感に沈んでいる時、実は経済が復活の間際にあったということが何度もあった。

 インフレに悩まされた1970年代後半、ジミー・カーター大統領がカーディガンを着て悲観的な訴えをした時や、1990年代初めに日本との競争を恐れ、「雇用なき回復」が生じた時のことを考えるといい。

 いずれの時も米国の景気は回復した。1970年代にはポール・ボルカー連邦準備理事会(FRB)議長によるインフレ克服により、1990年代には生産性の向上により、景気は持ち直した。この時の生産性の向上は、日本が停滞した1990年代半ばでさえ、米国の成長率を急上昇させた。

 そうした過去の実績は、今日心に留めておく価値がある。米国人は不満を抱き、国の見通しとそれを改善する政治家の取り組みについて、不満を一層募らせている。
不満を募らせる米国人

 ニューヨーク・タイムズとCBSニュースが最近実施した世論調査では、7割の人が米国は道を誤っていると回答した。6割近くがバラク・オバマ大統領の経済政策を評価せず、4人に3人が議会の対応はお粗末だと感じている。

 この沈滞ムードの一部は、景気回復の足取りの鈍さを反映したものだ。失業率が下がり続け、株価が3年ぶりの高値に迫る一方で、住宅価格は依然低迷し、ガソリン価格は2008年夏以来の水準へと急騰している。

 だが、これは石油だけの問題ではないし、短期の問題でもない。注意深く世論調査を読み解くと、米国人の不安が今後2〜3年に限らず、もっと先まで広がっていることが見えてくる。巨額の財政赤字を負わされ、中国が脅威となっている中で、生活水準が低迷し、雇用創出が進まない経済状況の暗い未来についての不安だ。

 その証拠に、半数以上の人が、今や世界をリードする経済大国は米国ではなく中国だと考えている。

これらの不安は正当なものだろうか? 明るい面を見るなら、米国ほど固有の長期的利点を多く抱える大国は思い当たらない。中国は、シリコンバレーを手に入れるためなら、どれだけ払うだろう? あるいは、ドイツがアイビーリーグを手に入れるなら?

 だが一方で、米国経済が実際に、克服に時間がかかる長期的弱点を抱えていることも明らかだ。米国人にとっての真の懸念材料は、政治家たち、とりわけ大統領が、こうした根本的な問題にほとんど取り組んでいないことだ。ここで際立つのは3つの失敗だ。
「競争力」という作り話
オバマ大統領、躍進の共和党に協調呼びかけ 米中間選挙

バラク・オバマ大統領は中国に対する「競争力」について語るが・・・〔AFPBB News〕

 第1の失敗は、問題を間違って伝えていることで、これについてはオバマ大統領の罪が特に重い。大統領は米国の課題を語る際に、特に中国に対する「競争力」という枠組みを好んで用いる。

 オバマ大統領は、米国の繁栄は中国に対する「イノべーションの優位、教育の優位、建設の優位」に依拠すると主張する。

 これはほとんどナンセンスだ。米国の繁栄は、他国の生産性の向上ではなく、自国の(実際かなり速い)向上ペースの上に成り立つ。アイデアというものは経済圏から経済圏へと広がっていく。中国が革新を行えば、米国人も利益を得るのだ。

 もちろん、技術革新を促進するためにできることはまだたくさんある。法人税制はひどい状態で、国内投資を阻害している。米国のインフラにはガタが来ているというオバマ大統領の認識は正しい。しかし、大統領が提唱する大きな公共支出と同様、この問題の解決には、時代遅れの資金調達システムの改革が欠かせない。

 「競争力」に関する議論には、作り話が多すぎる。その作り話が、グリーンテクノロジーへの補助金のような見当違いの政策を正当化し、米国の真の課題から国民の目を逸らしているのだ。

 優先度の高い課題として、米国の財政の健全化がある。財政赤字は巨額で、公的債務も多く、急速に増大している。国際比較が可能な指標で計算すると、米国の公的債務は国内総生産(GDP)の90%以上に上っている。

 米国は先進国の中で、日本を除けば、十分な財政再建計画を持たない唯一の経済大国だ。救いは、政治家がようやく注意を向け始めたことだ。最近ワシントンでは、誰もが財政赤字の削減についてしか語らないほどだ。

一方、残念な点――そして、政治家の取り組みに期待が持てない第2の理由――は、どちらの政党にも基本的な妥協をする用意がないということだ。妥協がなければ合意もあり得ない。

 共和党は増税は避けられないということを受け入れるのを拒み、民主党は医療や年金のような社会保障給付支出は減らさざるを得ないということを拒否している。

 実質的な進展は2012年の大統領選の後になる可能性が高い。共和党が来年度予算に過度な歳出削減を要求している現状では、赤字を巡る現在の対立自体が経済を損なう可能性さえある。
成長が雇用を生まない時
1月の米失業率9.0%、予測超える改善

米カリフォルニア州エルセントロの公共職業安定所で職を探す失業中の人びと〔AFPBB News〕

 一方、最大の危険は、政治家がほとんど言及しない分野にある。労働市場である。

 最近の失業率の低下は誤解を招く。これは、急速な雇用創出に、驚くほど小さな労働力人口の拡大(就労意欲を失った人々が求職をしなくなった)が組み合わさった結果なのだ。

 米国の失業者の実に46%、約600万人もの人が6カ月以上も仕事に就けずにいる。最大の原因は弱々しい回復にあるが、米国が紛れもない欧州病――構造的失業――に冒されている兆候もある。

 若年層の失業率は特に高く、若者の失業は長く消えない傷を残す。生産性の力強い向上は、多くの中間熟練職の排除を通じて達成された面がある。さらなる懸念材料は、米国では景気後退のはるか前から水面下で雇用問題が存在していたということだ。特に非熟練労働者が問題だ。

 そうなった原因は、テクノロジーとグローバル化による全体的な変化だけではない。そうした変化はすべての国に影響する。米国の雇用問題の原因には、この国が多くの若年黒人男性を刑務所に送り、彼らの将来の雇用見通しを劇的に悪化させているという事情もある。

 米国は若年・壮年層が労働者と労働力人口に占める割合がG7中で最も低い。学士号を持たない25〜54歳の男性の約25%、高校中退者の35%、黒人の高校中退者の約70%が働いていない。

 非熟練労働者の仕事がないことは、個人の損害を越えて、財政と社会に重大な影響をもたらす。障害者給付の費用は約1200億ドル(GDPの1%以上)に上り、急速に増加している。男性の失業は、結婚率の低下および家族の絆の弱まりと連動する。

 これらすべては、米国の政策課題の中でも、手強い失業問題への取り組みの優先順位が特に高いことを意味する。

 残念なことに、この問題を認識している少数の(左寄りの)政治家は、貿易障壁や、過去の職業を支えて将来のある職業を損なうような産業政策など、見当違いの解決策を打ち出す傾向がある。そうした政策はうまくいかない。政府は、成功者を選び出すことに関しては惨憺たる記録を持っている。

 それよりも、米国はマクロ的な治療を正しく進める必要がある。特に、短期的な引き締めを過度に行わず、中期的な財政と金融の安定化に取り組むことが重要だ。だが同時に、職業訓練の合理化と向上、雇用主が低熟練者を雇い入れることに対するインセンティブの増加など、幅広い労働市場改革も必要だ。
欧州から学べ

 そして、奇妙に思えるかもしれないが、この点で米国は欧州から学べる可能性がある。例えばオランダは、障害者保険を手直しする方法について良い手本になる。低熟練労働者の雇用の減少を食い止めるには、技能向上訓練の改革の推進と、薬物と刑務所への収監についてのより健全なアプローチも必要になるだろう。

 テクノロジーとグローバル化は、先進諸国全体で労働市場を再編し、相対的に低熟練労働者に損害をもたらしている。そのため、米国経済の見通しが明るいと言っても、それは必ずしも米国人全員の明るい未来を意味するわけではない。

 オバマ大統領と反対派はともに、改革のプロセスを形作る手助けができる。だが、嘆かわしいことに、彼らは今のところ、改善よりも改悪の方向に向かっている。
© 2011 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/6488?page=4  

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コメント
 
01. 2011年5月04日 15:28:12: od28IOcvpM
アメリカの財政を何とかする方法はひとつしかない。軍縮だ。
 
世界の警察を気取るなら、世界から税金を取り立てる必要がある。税金を取り立てるには、絶え間なく脅威を創り出だす必要がある。勢力を拡張した挙句財政破綻するのは、帝国の宿命だ。

このまま財政が悪化し、やがて軍事力が弱体化し、米軍は勝てなくなって全部無駄金になるのは目に見えているので、早めに軍国主義をやめるのが得策である。

中国も同様。民間技術開発力、生産力の弱さ、軍事拡張、極端な腐敗、これらを考えれば、早晩(おそらく米国より先に)財政破綻するのは目に見えている。

米中ともに、トカゲの尻尾きりよろしく、帝国の看板を下ろし、下層大衆を切り捨てて、小型の国民国家に転換せざるをえなくなるはずだ。

サイズの小さい自治主体が広域で連合して、規模に比べて安価な集団安全保障をやる。それ以外にポスト工業化社会の国家モデルは、ないと思う。


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