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大震災後の日本経済 5.これまでの経済ショックとの違い 供給側で生じたショックであるため、総需要を抑制する必要
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/183.html
投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 13 日 20:44:36: 6WQSToHgoAVCQ
 

彼の日本の生産力に関する見積もりが、どの程度正しいかだな

http://diamond.jp/articles/-/12657
 【第5回】 2011年6月13日野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 
野口悠紀雄 大震災後の日本経済5.これまでの経済ショックとの違い 
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を順次掲載。第5回目の今回は、東日本大震災が経済活動に与える影響を、世界経済危機や阪神大震災など、過去の経済ショックと比較する。
ショック後の経済の推移
 本章の最初に述べたように、大災害が経済活動に与える影響には、つぎの2つのものがある。
 第1は、災害によって生産設備や社会資本などが破壊され損傷し、生産力が落ち込むことである。これは、経済の総供給を減少させる。このフェイズ は、通常は震災後の数か月間、あるいは1年程度続く。ただし、今回の東日本大震災では、電力制約が長期にわたって続くと考えられる。
 第2は、復興のために巨額の投資が行なわれることである。投資は、企業の設備投資、住宅投資、社会資本に対する投資の各分野で生じる。これは、需要の増加を意味する。このフェイズは、震災後数か月たってから始まり、数年間続く。
 経済にきわめて大きなショックが生じたとき、どのような過程を辿って回復するかを、概念図として、図表1−4に示す。

 この図において、フェイズ1は、ショックによる経済の落ち込みを示す。フェイズ2は、落ち込みからの回復過程である。このフェイズは、供給面の制 約があるかないかで、大きく変わる。なければ、復興のための投資が有効需要となって経済を拡大させる。しかし、制約があれば、復興投資はクラウディングア ウト(希少資源の奪い合い。混雑による押し出し)を引き起こす。フェイズ3は、最終的な均衡に至る段階である。
 図に示すもののうち、東日本大震災、第一次石油ショック、戦災は、供給面で生じたショックである(阪神大震災は、被害は大きかったが、経済活動には目立った影響を与えなかった)。これに対して、数年前の世界経済危機は、需要面で生じたショックである。
次のページ>>今回は復興投資がケインズ政策にならない
 供給面でショックが生じたときの経済政策は、クラウディングアウトを調整するために、何らかの方法で総需要を抑制するものでなければならない。過去の供給ショックの際に、それがいかなる形で行なわれたかを、図表1−5に示す。

今回は復興投資がケインズ政策にならない
 東日本大震災の場合には、つぎのような経路を辿ると考えられる(図表1−4の1)。
 まずフェイズ1において生じた工場等の生産設備の損傷は、被災地の生産活動を減少させただけでなく、製造業のサプライチェーンに被害を与え、被災 地以外の生産活動をも麻痺させた。自動車の場合、海外生産拠点の生産にも影響を与えた。したがって、震災後の国内総生産(GDP)は、落ち込むことにな る。しかし、ここからの復旧はかなり早期に行なわれるだろう。
 そして、フェイズ2において、復興のための投資が増加する。これが有効需要となって経済を拡大するだろうと期待する向きがある。
 しかし、問題は、電力制約が解決できないことだ。このため、GDPは、震災前より低い水準で頭打ちになるだろう。
 経済全体では供給余力があり、全体的な需給ギャップがあるとしても、ボトルネックがあれば、生産は拡大しないのだ。今回は、電力制約がボトルネッ クになる。このため、生産設備の復旧が進んでも、生産力が回復しないと考えられる。電力制約は主として夏の期間の問題であり、しかも東日本に限って生じて いる。それにもかかわらず、東日本の経済活動の規模が大きいため、日本全体としての問題になってしまうのである。
 このような制約があるため、復興需要は、有効需要にならない。つまり、ケインズ的な乗数過程が生じることはなく、経済は拡大しない。
 増加した復興需要は、超過需要になってしまう。つまり、クラウディングアウトが起きる。このため、金利上昇、円高などによって、有効需要が調整されなければならない。
 復興のための財政支出が国債でファイナンスされるなら、金利が上昇する。これによって、復興投資が遅れることになる。また、金利上昇は円高を引き 起こし、輸入の増加や生産拠点の海外移転をもたらす。輸入が増えれば総供給が増加するため、超過需要は緩和される。また、生産拠点の海外移転は、復興投資 を国内でなく海外で行なうことを意味するので、これによっても超過需要が緩和される。
 金利上昇を抑制するために日銀引受の国債が発行されれば、インフレが引き起こされて、消費が強制的に削減される。
 新設原発が困難であるため、電力制約は長期にわたって日本経済を束縛するだろう。したがって、フェイズ3におけるGDPは、震災前より低い水準に留まるだろう。
阪神大震災の復興投資は巨大なケインズ政策だった
 1995年1月に起こった阪神大震災は、東日本大震災の半分程度の大きな被害をもたらした。しかし、被害地が地理的に限定されていたため、経済活動に与えた影響は、東日本大震災とはかなり異なるものだった(図表1−4の3)。『平成7年年次経済報告(経済白書)』によれば、被害額は、名目GDPの約2%に及んだ。しかし、都市地域であったため、生産設備の損傷は大きくなかった。また、企業が余剰設備や余剰在庫を抱えていたため、インフレ圧力も回避された。
 このため、フェイズ1においては、震災地で生産や消費が落ち込んだものの、全国的な影響はなかった。白書は、「マクロの経済指標では、一月は被災地域の減少を中心に全国でも明らかに落ち込みがみられたものの、二月以降はほぼ震災前の水準にまで戻った」としている。
 これは、データでも確かめられる。鉱工業生産指数は、94年12月の95.1から95年1月の92.6に低下したものの、3月には早くも95.5 に回復した。GDPの減少は、日本全体ではまったく見られなかった。それどころか、県民所得統計における兵庫県の数値はおろか、神戸市の数値さえ95年度 に低下しなかった。
 つまり、阪神大震災は、供給面のショックにはならなかったのである。
 このため、フェイズ2の復興過程において、復興投資が巨大なケインズ政策として機能した。
 経済白書によれば、毀損されたストックを再建するための復興需要は、被害額の復元分だけでなく、耐震構造の見直しに伴う新規需要もあった。このため、GDPの2%を超える規模となった。だから、震災は経済にプラスに働いたのだ。
 これは、被災地域が限定されていたため、生産設備の損傷が大きくなく、しかも、被災地以外との生産代替が迅速に行なわれたからだ。そのため、乗数過程が働く余地があったのである。
 また、経済環境もこれを可能にした。
 まず、貯蓄率が高かった。国民経済計算ベースの家計貯蓄率は、96年度には10.4%だった(2007年度では1.7%)。また、95年度の国債 発行額は、当初予算の12.6兆円から増加して実績は21.2兆円となったものの、公債依存度は28%に留まった。したがって、金融市場に圧迫を与えるこ とはなかった。そのため、復興投資がクラウディングアウトを引き起こして金利が上昇するような状況ではなかったのだ。実際、金利は95年春頃から急激に低 下を続けていた。
 また、震災後しばらくの間円高が続いて輸入が増えたことも、国内の供給制約を緩和した。
 結局、阪神大震災のときにはクラウディングアウトは発生しなかったのだ。
次のページ>>石油ショック時には総需要抑制策がとられた
石油ショック時には総需要抑制策がとられた
 1973年秋に生じた第一次石油ショックも、供給面で生じたショックだ(図表1−4の4)。このときは、石油輸出国機構(OPEC)加盟の中東産 油国が原油生産の削減とイスラエル支援国への禁輸措置をとったので、石油の供給に制約が生じた。このため、需要抑制が必要となり、「総需要抑制策」がとら れ、74年度予算で公共事業などの支出が削減された。また、金融引き締めが行なわれた。さらに、石油使用抑制のため、エレベータの休止や照明の節減などが 行なわれた。今回の状況はこのときと似ている。
 石油ショック後の政策対応は適切なものだった。総需要が抑制され、また円高が容認されたため、超過需要が調整されたのである。
 その後、省エネルギーのための技術革新が進み、生産能力は回復していった。
戦後復興は、インフレで賄われた
 第二次大戦も、経済の供給サイドに大きな影響を与えた。空襲によって日本国内の生産設備、社会資本、住宅が破壊されたからである。これによって、日本国民は耐乏生活を余儀なくされた。
 フェイズ2において、復興のために政府が行なったのは、1946年に決定し、47年から実施された「傾斜生産方式」である。これは、石炭、鉄鋼、 電力、海運産業などを重点的に復興させようとする国策だ。厳しい供給制約のなかで投資が行なわれたため、インフレが発生して消費が強制的に削減された(イ ンフレが発生したのは、復興金融金庫が復金債を発行して日銀に引き受けさせ、その資金を融資したからである)。今回の復興投資も、国債(とくに、日銀引受 の国債)によってファイナンスされれば、このときと同じことになるだろう。
 その後、1950年に朝鮮戦争が勃発し、日本経済は特需景気に沸いて経済成長を果たしたが、これは、生産力が回復してから後のことだ。これがフェイズ3であり、その後の高度成長につながっていった。
世界経済危機は需要ショック
 以上で述べたのは、経済の供給側で生じたショックである。2007年以降の金融危機と世界経済危機も、経済活動に大きな影響を与えた。ただし、これは、需要が大きく落ち込むことによって引き起こされた需要ショックであった。
 供給力が十分あるにもかかわらず需要が不足する経済、つまりケインズ経済学が想定する典型的な経済になったのだ。だから、需要が追加されれば、総 生産が拡大する。このため、エコポイント等の需要喚起策が効果を発揮したのである。また、中国に対する輸出が増大して、総需要を増加させた。
次のページ>>過去の経験から何を学べるか
過去の経験から何を学べるか
 以上をまとめれば、つぎのようになる。
 (1)世界経済危機は需要の急減という需要ショックであったため、総需要の追加が必要だった。ところが、東日本大震災は供給側で生じたショックであるため、総需要を抑制する必要がある。このように、向きが正反対の政策が必要とされていることに注意が必要である。
 (2)阪神大震災は供給側のショックではあったものの、被災地域が限定的であったため、日本全体としての供給制約は生じなかった。このため、復興 投資が「巨大なケインズ政策」になり、経済を拡大させた。しかし、今回は供給制約が厳しいため、復興投資は有効需要とはならず、クラウディングアウトを引 き起こす。
 (3)石油ショックは、資源の使用に強い制約がかかったという意味で、東日本大震災と同じ供給ショックであった。このときの経済政策は総需要抑制 策と金融引き締め、そして円高容認であり、正しい方向のものであったと評価できる。われわれはいま、このときの経験を手本とすべきである。
 (4)戦災によって生産設備が破壊されたことも、供給ショックである。このときの復興投資は日銀引受の公共債(復興金融金庫債)によってファイナンスされたため、激しいインフレーションを引き起こした。この経験は、反面教師とすべきものだ。

 

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コメント
 
01. 2011年6月13日 21:00:34: Pj82T22SRI
名目GDPは貨幣的な現象だから
仮に電力制約で、財の生産量が低下したとしても
サービスなど、日本が不得意な面での需要の拡大は問題ない

つまり旧来型のエネルギー・資源消費型の産業ではない分野への
投資を促進することで、総需要抑制型の緊縮政策を避け、
選択と集中、拠点移動による成長と資源節約を目指すことも可能だ

(しかし政治に、それを全く期待はできないのが残念なところだ)


02. 2011年6月13日 21:21:12: jKJxrUMDXc
リフレ派エコノミストとは真逆の主張だな。
リフレ派は、徹底的に総需要を伸ばせという主張だからな。

■若田部昌澄教授の「日本は復興できる」(早稲田大学教授・若田部昌澄)
3月28日のモーニングサテライトに早稲田大学の若田部昌澄教授が日本の復興の条件を政策提言していた。
(http://www.tv-tokyo.co.jp/nms/shincyouryu/post_1000.html)
主張は、復興財源の確保として増税に反対し日銀引き受けを行う。
その効果として円安とデフレ脱却し、景気が回復することによって財政再建にもなるというものである。…
―――いまの日本でどういう政策がいいのか
一番大事なのは財政政策を出すと同時に金融政策も出すということ。
財政だけを出すと円高に振れていく可能性がある。
円高になると被災地を含めて追い打ちをかけるようにひどいことになる。
税金ではなく、公債を出せばいい。
ただ公債を出すだけではなく、その資金の調達を日銀のマネーを出すことでやる、
日銀直接引き受け。あわせ技。
―――効果としては
関東大震災の時と同じような効果。
ここで言っていることは、関東大震災の時に行ったような政策をできるだけ良い部分も学んで
現在もやればいいということ。
…円安によるデフレ緩和、復興需要で景気後退は軽微になるということが見込める。
復興に対して力強い援軍が必要。
それをマクロ経済で援軍を出していくことが大事で、それがここで言っていること。
―――国の借金が大きくなるので規律を設けなければいけない
出口の議論は非常に大事で、その事の議論をきちんとやらないといけない。
例えば、インフレになることを懸念するのであれば、インフレ目標をつけるということもあり得ますし、
そういう知恵はいくらでも出しようがある。
http://d.hatena.ne.jp/keiseisaimin/20110331/1301545503

■【復興を問う】国債の日銀引き受けも選択肢 早稲田大学政治経済学術院教授 若田部昌澄氏 (1/2ページ)
−−東日本大震災の復興に必要な政策は
「日本経済が停滞し、デフレが続く中で大きな国難にぶつかった。
復興に必要な支出を少なく見積もる過ちを犯してはいけない。
政府は国債を発行して財政出動し、日銀は円高にならないよう金融緩和すべきだ」
−−国債発行には財源の明確化を求める声がある
「復興税を創設し財源にあてる意見もあるが、税金は継続的にかかる費用をまかなうのが筋で、
一時的な支出に増税を充てるのは間違いだ。一時的に借金し、長い年月で返せばいい」
−−これ以上の国債を市中で消化できるか
「マーケットが吸収できないならば、日銀による国債の直接引き受けも、国会の議決があれば可能だ」
−−日銀は国債の直接引き受けが「通貨の信認」低下を招いて悪いインフレにつながると否定している
「(戦前に)高橋是清が日銀に国債を引き受けさせたが、是清の存命中はハイパーインフレになっていない。
日銀は毎年、民間が購入せずに残った国債を事実上引き受けている。
物価上昇が通貨の信認を脅かすなら、世界中の通貨は信認を失っている」
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110603/mca1106032124024-n1.htm

■震災からの経済復興−これから何をなすべきか(学習院大学教授・岩田規久男)
(前略)今後、数年にわたって取り組むべき「東日本大震災からの復興政策」を提言したい。
この提案は、2011年度から直ちに取り組むべき「緊急対策」と
その後、長期にわたって取り組むべき「街づくり政策」、
「エネルギー政策」および「財政金融政策」とから構成される。
▼東日本大震災からの復興のための「緊急対策」
ここでは、「緊急対策」としての「東日本大震災からの復興政策」の骨子を述べておこう。
【1】総額40兆円〜50兆円程度、11年度10兆円の復興費予算の計上:
   今後5年間程度の間にわたって、
   総額40兆円〜50兆円程度の復興予算を計上する。
   初年度の11年度は「緊急対策」として、10兆円程度の復興予算を計上する。
【2】復興国債の発行:復興費の資金は、復興国債の発行によって調達する。
【3】復興国債の全額日銀引き受け:復興国債は、全額、日本銀行が引き受けるものとする。
   政府は日銀法第5条の但し書きを利用して、復興国債を発行して、
   早急に、日銀に引き受けさせる法案を国会に提出する。野党はこの国会議決に協力すべきである。
【4】11年度の復興予算の主たる使途は次の通りとする。
(1)被災者の食料・医療等、必需品の確保
(2)被災者の居住の確保
(3)被災者のうちの入院患者と要介護者の病院と介護施設の確保
(4)瓦礫の除去、道路、港湾、空港など損壊したインフラの修復
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■日銀引き受けの復興国債を発行せよ
…財政破綻を避けるには、デフレを早期に脱却して、長期的には、
インフレ率を2%程度で安定させ、日本経済の名目成長率を先進主要国並の4%程度に引き上げる必要がある。
ところで、日銀の国債引き受けとは、政府が発行した国債を日本銀行が購入することをいう。
ではなぜ、政府が発行した国債の購入を投資家に任せずに、日銀が購入すべきなのだろうか。
これ以降についての解説は、来月発売予定の拙著『経済復興──大震災後の再建のために』(仮題)で、
詳細に述べることにしたい。
http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/sp_shinsai/index.html
■岩田規久男「緊急寄稿 震災からの経済復興」を読む! 
(片岡剛士=三菱 UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員)
(1)総額40兆円〜50兆円程度、11年度10兆円の復興費予算の計上
(2)復興国債の発行
(3)復興国債の全額日銀引き受け
(4)11年度の復興予算の主たる使途
http://synodos.livedoor.biz/archives/1733880.html


03. 2011年6月13日 21:24:03: jKJxrUMDXc
ウォールストリートジャーナルなど外国の新聞も「総需要抑制」に反対。

■【社説】日本経済、震災前から低迷(ウォールストリートジャーナル)
菅首相をはじめとする、いわゆる緊縮財政派のお気に入りである消費増税などの悪い考えについては、
誰もが特に懸念すべきだ。
それはデフレで混乱した経済にとって危険であり、
復興に伴う支出が19日のデータに現れた弱気な消費者心理をどれだけ覆い隠すかは関係ない。
日本にとって、「失われた10年」の再来は回避可能だ。
しかし、そのためには、大地震と津波からの復興の取り組みを進めると同時に、失われた自信を回復する努力が必要になる。
http://jp.wsj.com/Opinions/Columns/node_239243

■4月全国消費者物価プラス転換は一時的、デフレ変わらずとの見方
市場では、今回の数値はエネルギー価格高騰による一時的な上昇ものであるとし、
先行き物価押し上げ圧力は薄らいでいくとの見方が多い。
マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏は
「全国CPIがプラスになったことで、目先的には日銀への追加金融緩和圧力は低下するかもしれない」
としながらも、「8月に予定されている基準改定による押し下げでCPIは再びゼロ%近辺に押し下げられる可能性が大きく、
マーケットは物価や金融政策に対する見方を変えることはない」(マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏)と指摘した。
みずほ証券チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏も
「8月の基準年改定前の数字であることや、欧米型コアが底ばい状態であることに変わりがないため、
物価のベースラインは、デフレ状況が変わっていないという判断でよい」と述べた。
コスモ証券投資情報部の担当課長、田口はるみ氏も
「足元の原油価格の上昇に一服感が出ているほか、5月の東京都区部コアCPIの上昇率は小幅にとどまっており、
先行きは一時的な物価上昇から落ち着きを取り戻すとみている。
全体的に消費マインドが落ちており、物価を押し下げる方向にあることは注視しておきたい」との見方を示した。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-21392320110527
除く生鮮0.6%,
除く食料エネルギー▲0.1%。
5年前総務省にいた時消費者物価改定の影響は▲0.3〜▲0.5といわれていた。
8月の改定でどうなるかな(元内閣参事官・高橋洋一)
http://twitter.com/#!/YoichiTakahashi/status/73968579896287232
世界標準であるコアコアCPIは、マイナス。

よって、「総需要抑制」は間違い。


04. 2011年6月14日 09:47:58: PPAJr6WqwQ
電力不足を唯一の根拠としている。

電力などガスで発電すればすぐにでも解消できる。
電力が不足しなければサービス業にしても付加価値の高い製造業にしても総需要を抑制する必要はない。

サービス業は特に消費と同時に生産がおこなわれるのだから、需要不足が生産の減少になる。
付加価値の高い製造業も同じである。消費が起こってから生産される。
需要不足は供給減少となるのだ。

電力不足を根拠に供給不足を説き、増税に持っていこうという意図であろう。
火力にさせないために又CO2温暖化を言いだすの決まっている。
決してCO2温暖化詐欺に引っ掛かってはいけない。

工場や大規模施設が自家発電のガスタービンを導入して、それを周辺にも売電すれば電力不足などすぐに解決できる問題である。

需要不足を補うことこそ今求められていることであり、増税したががための電力不足に騙されてはいけない。


05. 2011年6月14日 10:02:39: lqOPOFnyLE
電力不足は、ごく一部的なことだ。特定産業では海外重視(移転や配分変更)で十分対応できる。全体の国内供給面は、むしろ産業構造転換の契機ともなってよい方向へ動く。問題はむしろ、米国や欧州などの財政問題で、世界的な需要不足、景気低迷になりかねないことだ。

06. 2011年6月20日 17:14:38: Pj82T22SRI
野口悠紀雄 大震災後の日本経済
http://diamond.jp/articles/-/12764
【第6回(最終回)】 2011年6月20日野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]補論:総需要・総供給モデルによる復興過程の分析
野口教授の最新刊『大震災後の日本経済』(ダイヤモンド社)第1章の全文を順次掲載。最終回の今回は、復興投資が金利や為替相場、物価にどのような影響を与えるかを「IS−LMモデル」と「総需要・総供給モデル」を使って分析する。
 復興過程の経済的な変動を、マクロ経済学の標準的なモデルである「IS−LMモデル」と「総需要・総供給モデル」を使って述べると、つぎのようになる(*1)。
 IS曲線とは、財・サービス市場の均衡を表す曲線だ。政府の支出を所与としたとき、金利が下落した場合に均衡が達成されるためには、所得が増加し なければならない。なぜなら、金利が下落すると投資が増えるので、財市場での均衡のために、貯蓄=所得×(1−消費性向)が増える必要があり、そのために は所得が増える必要があるからだ。したがって、縦軸に金利(i)、横軸に産出量(所得)水準(Y)をとった図において、IS曲線は右下がりの曲線になる (図表−aのISやIS')。

 LM曲線は、資産市場の均衡を表している。名目貨幣供給量と物価水準を所与としたとき、所得が増加した場合に均衡が達成されるためには、金利が上 昇しなければならない。なぜなら、所得が上昇すると貨幣に対する取引需要が増加するため、一定の名目貨幣供給量の下では、金利が上昇して貨幣に対する資産 的需要を抑える必要があるからだ。したがって、縦軸に金利、横軸に産出量(所得)水準をとった図において、LM曲線は右上がりの曲線になる(図表−aの LM)。
 IS曲線とLM曲線の交点E0は、財・サービス市場と資産市場のいずれにおいても均衡が成立する金利と産出量の組み合わせを示している。
 総需要曲線は、縦軸に物価水準(p)、横軸に産出量(Y)をとって、IS曲線とLM曲線の交点の軌跡を示したものである。名目貨幣供給量や外生的 な支出が一定のとき、物価が下落すると実質貨幣残高が増加して産出量が増加する(この効果は、「実質残高効果」Real balance effectと呼ばれる)。したがって、総需要曲線は右下がりになる。図表−bでは、ADやAD'として示されている。
 総供給曲線は、物価に反応して供給量がどのように変化するかを示している。「フィリップス曲線」として経験的に知られている関係は、賃金が上昇す ると供給が増えることを示している。賃金と物価は比例的な関係にあると考えられるので、総供給曲線は右上がりになる。ただし、電力制約のようなボトルネッ クがあると、ある一定水準(Ys)以上に産出量が増えることはなく、総供給曲線はその産出量水準で垂直になる。図表−bのASは、そのような場合を示して いる。
(*1)IS−LMモデルの簡単な説明は、つぎを参照。野口悠紀雄、『日本を破滅から救うための経済学』(第2章)、ダイヤモンド社、2010年。
次のページ>>。ハ1)介入しなければ、復興投資の増加に伴って純輸出が減る
(1)介入しなければ、復興投資の増加に伴って純輸出が減る
 復興投資の増加は、図表−aのIS曲線を右にシフトさせる(ISからIS'に)。均衡点はE0からE1に移動する。これによって金利がi0からi1に上昇する。閉鎖経済(海外との取引がない経済)ではE1が新しい均衡になる。
 開放経済では、金利上昇によって資金が日本に流入し、円高になる。このため、純輸出が減少して、IS曲線は元の位置に戻る。したがって、均衡はE0に戻る。これが、「マンデル=フレミング・モデル」の結論だ(*2)。
(*2)マンデル=フレミング・モデルの簡単な説明は、つぎを参照。野口悠紀雄、『世界経済危機 日本の罪と罰』(解説3−3)、ダイヤモンド社、2008年。
(2)金融を緩和すれば、物価が上昇する
 円高を防ぐために介入すると、貨幣供給量が増えるので、図表−cのようにLM曲線が右にシフトする(LMからLM'に)。

 これによって、金利はi0のままで、図表−bの総需要曲線が右にシフトする(ADからAD'に)。AS曲線との交点で示される均衡点はE0からE1に動く。つまり、物価上昇を伴いつつ産出量が拡大する(Y0からYsへ)。
 復興投資がさらに増大すると、総需要曲線はAD'からAD"にシフトする。しかし、供給制約のため、総供給曲線はYsのところで垂直になっている。したがって、産出量は増加せず、物価だけがp1からp2に上昇する。
 なお、石油ショックのときには、石油禁輸措置によって、それまでAS0であった総供給曲線がASになるようなショックがあった。
 これによって、均衡点がE3からE2に移動した。つまり、産出量が縮小し、かつ物価が上昇した。このときにとられたマクロ経済政策は、総需要抑制策(財政支出の削減と金融引き締め)である。これによって総需要曲線がAD"からAD'に移動し、物価上昇が抑えられた。
(3)「流動性トラップ」とは
 貨幣需要について、「流動性トラップ」という現象がありうることが、ケインズによって指摘された(*3)。
 これは、図表−dで説明されている。この図で、縦軸は金利(i)、横軸は実質貨幣残高(M/p)だ。MDは、所得を一定にした場合の実質貨幣に対する需要を表す。金利が低下すると貨幣の資産的需要が増える。しかし、金利が非常に低い水準imまで低下すると(すなわち、国債の流通価格が非常に高い水準になると)、「将来起こりうるのは金利の上昇(国債価格の下落)しかない」と考えられるようになる。したがって、金利はこれ以上は低下できず、MDはこれより右では水平になる。

次のページ>>。ハ4)「流動性トラップ」の領域ではクラウディングアウトが発生しない
 この図の垂直線は、実質貨幣の供給量を示す。物価水準が一定のとき名目貨幣供給量(M)を増やすと、実質貨幣供給量が増加する。つまり、供給線は 右にシフトする。名目貨幣供給量が一定で物価が下落しても、同じことが起きる。図の左の領域では、これによって金利が低下する。しかし、MD曲線が水平に なっている領域では、実質貨幣供給量を増やしても金利は低下しない。「貨幣の資産的需要が無限大になっていて、増加した貨幣はすべてここに吸い込まれてし まう」ような状態になるのだ。トラップ(わな)と呼ばれるのは、このためである。
 一般に、名目貨幣供給量と物価水準が変化すれば、LM曲線はシフトする。物価水準が一定の場合に名目貨幣供給量が増加すると、実質貨幣供給量が増 加するので、実質貨幣供給を表す垂直線は右に動く。したがって、一定の所得水準に対応する金利が低下する。つまり、LM曲線は右方向(下方向)に動く。こ れが、図表−eでLMからLM'への動きとして示されている。物価水準が下落した場合も、実質貨幣供給量が増加するので、LM曲線はやはり右にシフトす る。

 ところが、流動性トラップの領域(図表−dの右のほう)では、名目貨幣供給量が増えたり物価が下落したりしても、金利は低下しない。つまり、LM 曲線は動かない。これが、図表−eの左のほうでLMが動かないこととして示されている。名目貨幣供給量や物価がLM曲線に影響を与えるのは、金利が高い領 域(図表−eの右のほうの領域)においてだけだ。
 (1)、(2)で述べたのは、流動性トラップがない領域でのことだ。流動性トラップがある領域では、どうなるだろうか? 超低金利政策をとった日本は、流動性トラップに落ち込んでいると考えられるので、これに関する考察は重要である。それを以下に述べよう。
(*3)John Maynard Keynes, The General Theory of Employment, Interest and Money, Macmillan Cambridge University Press, 1936.流動性トラップの簡単な説明は、つぎを参照。野口悠紀雄、『日本を破滅から救うための経済学』(第1章)、ダイヤモンド社、2010年。
(4)「流動性トラップ」の領域ではクラウディングアウトが発生しない
「流動性トラップ」がある場合のLM曲線が図表−eに示されている。LM曲線は最低金利imの水準で水平になっている。こ うなるのは、金利が少し動いただけで資産的需要が大きく変動するからである(金利が少し下がっただけで資産的需要が大きく増えるため、所得が大きく減少し て取引需要を大きく減少させなければならない)。この領域において、復興投資の増加でIS曲線がISからIS'にシフトしても、金利上昇は生じない。した がって、円高にもならない。
 つまり、クラウディングアウトは発生しない。これが、「ケインズ経済学的な状況」である。この場合、金融緩和をしても、ずっと右の領域でLMがLM'になるだけなので、均衡には影響が及ばない。つまり、金融政策は無効である。
 ケインズが考えていたのは、このような状況だった。「金融緩和をしても経済が拡大することはない。経済を拡大させるには政府支出を増やす必要がある」というケインズ的政策提言がなされる背景は、このようなものだ。
次のページ>>。ハ5)「流動性トラップ」の領域を過ぎると物価上昇が始まる
(5)「流動性トラップ」の領域を過ぎると物価上昇が始まる
 すでに述べたように、流動性トラップがない場合にAD曲線が右下がりになるのは、物価が下落すると実質貨幣残高が増加して産出量が増加するから だ。しかし、流動性トラップの領域では、すでに述べたように、この効果は働かない。図表−fで言えば、産出量がYs以下の場合には、物価が下落してもLM 曲線に影響を与えないので、産出量が増えることはない。つまり、AD曲線はYsの水準で垂直になっている。AD曲線が右下がりになるのは、産出量がYsを 超えた場合である。

 産出量がYvに達するまでは、投資の増加によって、AD曲線は右に(上に)シフトする(ADからAD'へ)。したがって、均衡点がE0からE1に動く。つまり、物価上昇を伴いながら産出量が拡大する。しかし、供給限界Yvに達すると、産出量は増加せず、物価だけが上昇してゆくことになる。
(6)現実にはどうなるだろうか
 以上で述べたのは、概念的なモデルだ。現実の動きがどうなるかは、現実が上で述べたどの領域に対応しているかに依存する。
 復興投資が増えても、最初のうちは産出量が図表−eのYs以下の水準に留まる可能性がある。そうだとすれば、(4)で述べたように、金利上昇も円高も発生せずに経済が拡大するだろう。
 しかし、復興投資の規模は大きいので、いずれ産出量はYsのレベルに達するだろう。そうなると、復興投資の増大は、金利上昇を招くことになる。つ まり、クラウディングアウトが発生するわけだ。これは、図表−fで総需要曲線がADからAD'にシフトすることで表される。この過程で、産出量は増加する が、物価も上昇する。
 そして、産出量がYvに達すると、総需要曲線がAD'からAD"にシフトしても産出量は増加せず、価格だけが上昇することになる。
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野口教授の人気コラムはこちら⇒【未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか】


07. 2011年6月23日 03:47:44: Pj82T22SRI
http://diamond.jp/articles/-/12838
未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか
【第18回】 2011年6月23日野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
>>07 中国に対する輸出は今後の日本経済を支えられるか?

 6月20日に発表された貿易統計によると、5月の貿易収支は、8537億円の赤字となった。4月の赤字(4648億円)より大幅に拡大したことになる。1979年以降では、リーマン・ショック後の2009年1月(9679億円)に次ぎ、過去2番目の大きさの赤字だ。
 輸出額は、前年同月比10.3%減の4兆7608億円で、3ヵ月連続で前年同月を下回った。自動車の輸出額が同38.9%減と、4月の67.0%減に続いて大幅に減少し、自動車部品も落ち込んだ。IC(集積回路)やDRAMなどの電子部品の輸出も低迷した。
 輸入額は、原油の価格上昇に加え、原発停止で火力発電に必要な原油や液化天然ガス(LNG)の輸入量が増えたため、同12.3%増の5兆6145 億円となり、17ヵ月連続で増加した。増加幅は4月(同8.9%増)より拡大した。金額ベースでは原油が同30.7%増、LNGが同33.0%増だった。 数量ベースでも、それぞれ同6.9%増、同26.0%増だった。
 地域別に見ると、アジアへの輸出が2兆7587億円で同8.7%減と、3ヵ月連続の減少。電子部品、自動車部品、自動車の減少が大きい。うち中国向け輸出は9382億円で同8.1%減。
 アジアからの輸入は2兆4500億円で同8.7%増で、17ヵ月連続の増加。原粗油、石油製品、非鉄金属の増加が大きい。中国からの輸入は1兆1529億円で、同6.6%増だった。
 アメリカへの輸出は6453億円で同14.6%減と3ヵ月連続の減少。自動車関連の減少が大きい。輸入は5415億円で同4.2%増と2ヵ月連続の増加だった。
 サプライチェーンの復旧による生産回復が見込まれるため、7−9月期には輸出は前期比で増加に転じると考えられる。ただし、輸入は資源価格の高止まりに加えて復興需要による効果が出てくることから、今後も増加が続くだろう。
 なお、「貿易赤字は、4−6月期のGDP(国内総生産)に大幅な下方圧力になった」と言われることが多い。しかし、貿易赤字とGDP減少との因果関係について、注意する必要がある。
 輸出は、海外の需要減で減少したのではなく、震災による国内の生産設備の損壊という供給サイドの要因で減少したのだ。また、輸入の増加は、発電の火力シフトによる部分が大きい。こうした国内要因の結果が貿易収支に現われているのである。
 だから、「貿易収支が赤字になったために国内の生産が減少する」という通常の場合とは、因果関係が逆になっていることに注意が必要だ。
次のページ>>日本の輸出の主力は、「アメリカ向け乗用車」から「中国向け資本財」へ
日本の輸出の主力は、アメリカ向け乗用車から中国向け資本財にシフトした
 いま少し対象期間を広げて、日本の貿易構造の変化を見てみよう。
 日本の年間貿易収支黒字は、経済危機前は10兆円程度の水準であった。経済危機によってこれが急減し、08、09年は4兆円程度に縮小した。しかし、10年は7兆円程度まで回復した。それが震災後に赤字になったのだ。
 経済危機後の貿易収支改善をもたらした主要な要因は、一つには原油価格が落ち着いたこと。いま一つは、対中国の輸出が増加したことである。以下では、後者について詳しく見ておこう。
 中国に対する輸出は、2009年の10.2兆円から27.8%増加して10年には13.1兆円となった。これは、07年の12.7兆円、08年の12.8兆円を上回るものであり、過去最高の水準だ。
 これを品目別に見ると、【図表1】に示すとおりである。
拡大画像(上) 拡大画像(中) 拡大画像(下)
 機械と自動車の増加が著しい。自動車では、乗用車よりバス・トラックだ。輸出の平均伸び(27.8%)を超える伸び率を示した品目を列挙すると、つぎのとおりだ(カッコ内は09年からの伸び率)。
・原料別製品のうちの非金属鉱物製品(47.8%)、ゴム製品(37.5%)・一般機械(62.1%)、うち原動機(43.2%)、金属加工機械(100.9%)、ポンプ・遠心分離機(32.1%)、建設用・鉱山用機械 (92.9%)、荷役機械(47.1%)、加熱用・冷却用機器(30.9%)、繊維機械(113.3%)、ベアリング(60.1%)・電気機器のうちのIC(30.8%)、重電機器(29.2%)、電気計測機器(46.5%)、電気回路等の機器(33.9%)・輸送用機器(41.6%)、自動車(70.9%)、うち乗用車(67.2%)、うちバス・トラック(107.8%)、二輪自動車(41.4%)・「その他」のうちの雑製品(29.5%)、科学光学機器(42.4%)
次のページ>>伸び率の低い品目が6割を超える
「部品」は伸びてはいるものの、機械ほどではない(半導体が23.2%、自動車部品が24.5%)。また、電気製品は、電気製品全体で19.8%、うち映像記録・再生機器が13.3%、テレビ受像機が5%などと、伸び率が低い。
 伸びが顕著である「機械」は、資本財である。つまり、中国における生産活動に使われるものだ。自動車のうちでも乗用車よりバス・トラックの伸びが高いが、これは資本財と見なせるものだ。
 したがって、日本の輸出の中心は、経済危機前のアメリカに対する乗用車輸出から中国に対する機械の輸出に変わったと言える。
 資本財は、電化製品のように価格引き下げ競争に巻き込まれることもない。為替レートにもあまり影響されない。日本の比較優位を発揮できる分野だ。したがって、こうした輸出項目が伸びているのは健全な現象であり、日本経済にとって望ましい動きであると評価できる。
伸び率の低い品目が6割を超える
 ただし、以上のことから、「中国に対する輸出が、今後の日本経済を支える」とは必ずしも言えない。なぜなら、中国に対する日本からの輸出は、中国経済の成長に見合って増加しているとは言えないからである。
 上で見たのは、2009年からの輸出の伸びである。しかし、09年は経済危機の影響で中国の輸入が大きく減少し、そのため日本の対中国輸出も非常に大きく落ち込んだ年だった。したがって、そこから大きく回復したのは、ある意味では当然のことだ。
 重要なのは、経済危機前に比べて日本からの輸出が増加しているかどうかである。
 実は、対中輸出全体では、そうはなっていない。中国のGDPと輸入総額は、【図表2】に示すように、08年から10年の間に、それぞれ30.1%と23.2%増加した。したがって、日本からの輸出の伸びも、本来はその程度の値となって然るべきだ。

 ところが、実際には、貿易統計で見た日本の対中輸出は、この間に1.0%しか伸びていないのである。つまり、中国に対する日本からの輸出は、経済危機前のピークからほとんど増えていない。
 もちろん、こうなる理由は、為替レートが変化したからである。ドルベースで見ると、【図表2】のDに示すように、中国に対する日本からの輸出は、08年から10年の間に17.3%増加した。
 ただし、この値も、中国のGDPや輸入総額の増加率に比べれば低い。したがって、中国経済に占める日本の輸出のウエイトは、経済危機前に比べると低下したことになる。
次のページ>>エネルギー多使用品目と労働集約的品目は、成長が難しい
 では、どのような品目の輸出が減少したのだろうか? ここで、2008年から2010年にかけての輸出の増加率を見ると、先に掲載した【図表1】のA欄のようになる。
 つぎの項目の伸びはかなり低い。
 化学製品(3.4%)、原料別製品(−8.4%)、電気機器(−7.1%)、「その他」 (−3.5%)。そして、これらの合計は、日本の対中輸出総額の62.6%に及ぶ。
 その半面で、目覚ましく成長している品目もある。2008年から2010年にかけての輸出の増加率が20%を超えるものを、表で*印をつけた。
 そのなかでも増加が顕著なのは、一般機械の中の原動機(36.9%)と建設用機械(62.8%)、そして、自動車(45.8%)だ。
 ただし、問題は、こうした品目のウエイトが必ずしも高くないことだ。表で*印をつけた品目を合計すると、20.7%しかない。自動車は総輸出の5%程度の比率でしかない。
エネルギー多使用品目と労働集約的品目は、成長が難しい
 今後を考えると、化学製品、原材料製品はエネルギー多消費型の産業なので、これからの電力不足経済では、成長が難しい。
 電気機器、「その他」は、労働集約的なので、円高によって日本の競争力は低下する。
 つまり、これまでの対中国輸出で大きなシェアを占めていた品目は、今後も引き続き伸びるかといえば、楽観できないのである。
 こうみると、「中国が急速に成長するから、日本は今後も輸出立国を続けられる」とは言えない。
 さらに、利益が上がっているか、という問題がある。以上で見たのは輸出額の推移であるが、日本企業からみて重要なのは、本来は輸出額ではなく、利 益であるはずだ。これは、とくに乗用車について問題となる。また、機械産業は、日本国内での雇用創出力がかならずしも大きくないという問題もある。
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「第1章 復興にかかる厳しい供給制約」の全文を掲載した連載はこちら→【野口悠紀雄 大震災後の日本経済】


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