★阿修羅♪ > 経世済民72 > 244.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
ゲーデルの貨幣-V マクロ経済政策の政治性 リフレ政策はゼロサム 財政政策も流動性危機時には有効
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/244.html
投稿者 sci 日時 2011 年 6 月 22 日 21:26:05: 6WQSToHgoAVCQ
 

実質金利マイナスのデフレ克服には、量的緩和だけでは不十分だが財政政策も組み合わせれば、当然効果はある。
ただし重要なのは、政治的に国民の合意を得られ、将来の成長期待を高めるような財政投資であることだ
http://www.canon-igs.org/column/macroeconomics/
第二十回 マクロ経済政策の政治性@

ゲーデルの貨幣-V-政策篇(20) 『週刊金融財政事情』 2011年6月13日号に掲載

小林 慶一郎
研究主幹
小林 慶一郎
[研究分野]
マクロ経済

「リフレ政策はゼロサム・ゲーム
 世界的な金融危機を契機に、国家の役割が大きく意識されるようになったのは、世界の経済政策がゼロサム・ゲームにみえるようになったからではないか。マクロ経済政策の結果、一国の利益が他国の損失となるならば、マクロ経済政策は政治学の主題である。
 政治は、すでに決まった利益や損失を関係者間で再配分することが主題であり、配分によって全体の利益が増えることはない。この意味で政治はゼロサムの世界といえる。一方、経済取引は分業などによって取引に参加する者たちの厚生の総和を増やす。つまり経済はプラスサムの活動である。
 マクロ経済政策は、経済システムのなかにある非効率を取り除くことによって経済厚生を改善するという意味で、「プラスサム」の活動だと思われている。一部の政治家や評論家には、政府や中央銀行が大胆に行動しさえすれば、コストをかけずに一国の経済厚生を改善できるという、一種の「マクロ経済政策=フリーランチ(ただ飯)」という認識が共有されていた。
 ところが、リーマンショック後は、欧米諸国の金融緩和で為替が下落し、新興国からは欧米の経済運営は通貨安戦争と受け取られるようになった。
 経済政策が、ゼロサム・ゲーム(政治)化しているのである。見方を変えれば、次のようにいえるかもしれない。これまで隠されていたマクロ経済政策の本質が政治性であり、それが危機をきっかけに露わになりつつある、と。このことが「国家が経済運営においてもっと大きな役割を果たすべきだ」という感覚につながっているのである。
 マクロ経済政策でプラスサム(経済厚生の全体量が増えること)が可能だとみる見方は、ケインズ経済学に典型的な考え方である。国家または中央銀行が財政出動や金利引下げを行えば、自国民にも外国にも損害を与えずに自国の経済状態を改善できる。これがケインズ経済学の考え方である。最近の代表例は、日本のリフレ政策論である。デフレから日本経済が脱却し、経済成長を実現するためには、日本銀行があらゆる手段で貨幣供給を増やし、「インフレ期待」を作り出すことが必要かつ十分である、という議論が90年代末から論じられている。この議論の底流にも、コストなしで国家が経済状態を改善できるというフリーランチの思考がある。
 流動性の枯渇などの短期的な金融危機においては、金融緩和や財政出動は大きな効果があると考えられる(次回で詳しく述べる)。しかし、日本のデフレ不況のような長期的な問題をコストなしで改善できるという議論には大いに疑問がある。
 日本のリフレ論は、現実問題として煎じつめれば、金融緩和によって円安を誘導し輸出を増やして経済成長を図る、という「外需依存の成長戦略」だ。これなら経験的にも理論的にもわかりやすい。02年から07年の日本は円安下で外需主導の成長を実現した。マンデル・フレミング・モデルも外需主導の成長を予測する。リフレ政策は国内の地価や株価を上昇させ、内需を増やすといわれたが、外需を経由せずに内需が拡大できるかどうかは神学論争が続いている。
 外需主導の成長は、当然ながら外国に自国の成長のコストを押しつける政策である。2000年代前半のように、日本だけが不況なら外需主導の経済回復も容認されたかもしれない。しかしリーマンショック直後のように世界中が不況のときには、リフレ政策のゼロサム・ゲーム的な本質が露わになる。

金融政策の理論と現実
 マクロ経済学が大恐慌を契機にして誕生したことは有名な話である。アダム・スミス以来、経済学は重商主義などの国家介入に批判的だった。しかし、大恐慌に対して有効な処方箋が打ち出せない従来の経済学に対して、国家による政策介入で経済厚生を顕著に改善できるという新しい理論(マクロ経済学)をケインズが提唱した。
 ケインズ経済学は「国家介入でフリーランチが可能だ」という主張であり、「介入によるフリーランチはない」という古典的な経済学の通念と対立した。また、ケインズ理論は個々の消費者や企業の行動を積み上げて導き出されたものではなかったため、ケインズ理論の結論をどこまで信用できるのか疑義があった。
 ケインズ理論の信頼性を確認するために、消費者や企業の個々の経済行動を基礎にしてマクロの理論を導き出す「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」を行うことが、1970年代以降のマクロ経済学の主要な作業となった。ミクロ的基礎付けを行った結果わかったことは、マクロ経済政策(財政政策と金融政策)は理論的にほとんど効果をもたない、ということである。
 財政政策は「リカードの中立性」命題によって有効性が否定された。公共事業や減税を行っても、国民はその財源が将来の増税で穴埋めされる、と予想し、増税に備えるために貯蓄を増やす。政府が財政政策で公需を増やしても、国民はそれに見合う量の民需を減らすので、財政政策は無効になる。
 金融政策の有効性も、ミクロ的基礎付けから自然には出てこない。情報の非対称性や金融市場の仕切りなどさまざまな要因で金融政策の必要性が説明されたが、どれも現実を説明するインパクトに欠けた。現在、金融政策分析の標準的な枠組みとなっているニュー・ケインジアン理論では、物価と賃金の硬直性が経済の非効率の主要因と仮定されている。そしてこの非効率を除去することが金融政策の目標である、とされる。
 しかし、価格の硬直性が現実にもたらす非効率は小さいという研究も多い。08年の金融危機において、一般物価や賃金の下方硬直性が最も重要な非効率だったとは考えにくい。ところが、金融政策は危機の収束に向けて現実に大きな役割を果たした。
 金融政策の理論と現実には相当なギャップがあるように思われる。価格硬直性による非効率を取り除くことが、一国経済の長期的な繁栄を生み出すとは、なかなか合点がいかないのである。


第二一回 マクロ経済政策の政治性A

ゲーデルの貨幣-V-政策篇(21) 『週刊金融財政事情』 2011年6月20日号に掲載

小林 慶一郎
研究主幹
小林 慶一郎
[研究分野]
マクロ経済

財政政策も流動性危機時には有効
 金融危機後の欧米の金融緩和は、新興国から通貨安戦争だと非難された。マクロ経済政策が長期的な効果をもつとしたら、外国から富を移転することによる、というのがこの間の推移が示す一つの自然な仮説である。
 しかしマクロ経済政策は短期の金融危機対応としてはゼロサム・ゲームではない。
 それは08〜09年の経験で示された。大胆な財政金融政策の発動により、外国に深刻なコストを押しつけることなく、欧米の金融危機は急性期を脱した。これは流動性の枯渇(あるいは内部貨幣の消失)という急激で甚大な外部不経済効果を、中央銀行が貨幣(外部貨幣)の供給を増やしたことで大幅に緩和できたからだと考えられる。ミルトン・フリードマンやベン・バーナンキの研究成果が今回の危機で生かされた。彼らは大恐慌が深刻化した主因として、連鎖的な銀行取付けの発生をあげている。銀行取付けは、銀行の短期債務(内部貨幣)の消失をもたらすことによって1930年代の米国経済を大収縮に陥らせた。この教訓が08年の危機では生きた。
 短期の財政政策についても、金融危機時には、追加的コストなしに経済を改善できることが理論研究で示されている。ガウティ・エガートソンとポール・クルーグマンの昨年11月の論文では、民間の経済主体が急に厳しい借入制約に直面する金融危機が分析されている。この状況では、旧来のケインズ経済学の処方箋(積極的な財政出動)が経済を改善することが示されている。
 これ以前の研究でも、一部の消費者が借入制約に直面している場合には財政政策が有効だとする研究はあった。たとえばジョルディ・ガリたちの一連の研究では財政政策が民間消費を増やす効果が示されたが、彼らのモデルの特徴は、貯蓄も借入れもせずに所得をすべて消費してしまう非合理的な消費者が一定数存在していることである。この非合理的な消費者は借入制約に直面していると解釈できるので、ガリたちの研究は、エガートソン=クルーグマンの金融危機モデルを先取りする理論と考えられる。

長期的経済動向の背後に国際政治ファクター
  このように、マクロ経済政策で短期的に金融危機の非効率(内部貨幣の枯渇、借入制約の強化)を除去することができる。しかし、マクロ経済政策が長期的効果をもつことは、筆者の知る限り、一国の閉鎖経済モデルでは示されていない。
 ところが、金融危機直前までのアメリカの長期的な好況(Great Moderation:大いなる安定)は、正しいマクロ経済運営がもたらした、という見方が、経済学者の間でも共有されていた。ミネソタ大学のV・V・チャリたちは、事実上のインフレターゲットによってインフレ率が低く抑えられたことがアメリカの長期的好況をもたらした、と論じている。インフレ率の低下などマクロ経済環境が安定すると、企業が直面する不確実性が減るので、技術開発がしやすくなり、結果的に経済の生産性が長期的に上昇する。これがチャリたちのロジックであるが、明確な理論的根拠は示されてはいない。1990年代から2000年代にかけての日本をみるとインフレ率の安定という意味ではアメリカに負けない状態だったが、実質経済成長率は低迷を続けた。
 マクロ経済政策の巧拙が長期的な経済動向に影響をもつという実感は共有するが、インフレ率の安定だけが問題であるとは考えにくい。ケインズ以後のマクロ経済理論も、一国経済モデルでみる限り長期的な効果を支持していない。
 したがって、現実にマクロ経済政策が一国の経済発展に大きな影響をもつとしたら、国家間のゼロサム・ゲーム的に、自国と外国の資源配分を変えることによってである可能性が高いと思われるのである。
 金融政策が国際的な資源配分を変えることは、マンデル・フレミング・モデルが簡単な枠組みで説明している。しかし、これはケインズ経済学なのでミクロ的な基礎がない。また、このモデルは政策の短期効果を分析対象とするものである。
 マンデル・フレミング・モデルに、ミクロ経済学的な基礎付けを行って、短期と長期の両方の政策効果を分析できるようにしたのが、モーリス・オブストフェルドとケネス・ロゴフの二国モデルである。95年の論文で発表されたオブストフェルド・ロゴフ・モデルは、「新しい開放マクロ経済学(NOEM)」という新潮流を生み出した。
 二国モデルで考えると、二国間の初期の貸借関係によって、各国の生産や消費の定常値は異なったものになる。自国の対外債権が増えると、自国の消費は大きくなり、生産は小さくなる。その分、外国の消費は小さく、外国の生産は大きくなる。オブストフェルド・ロゴフ・モデルは完全なゼロサム・ゲームではないが、対外資産(対外債務)の予想外の変化が、長期的な再配分効果をもつ。ただ、長期的な再配分効果は、このモデルだけの特徴ではなく、二国モデルであれば、どれでも似たような性質が得られる。
 したがって、マクロ経済政策が国際的な貸借関係に予想外の変化を与える場合には、国際的な再配分効果を長期的に有するといえる(注)。
 金融政策や景気循環を分析するマクロ経済学は、どちらかというと国際的な資産の再配分にはあまり着目していなかった。通貨政策などを巡る国家間の戦略的駆け引きが、国際的な資産配分を変化させ、結果として各国経済のファンダメンタルズを変える、としたらどうか。これまでマクロ経済学は、こうした国家間の政治ファクターを捨象して、市場のメカニズムだけを純粋科学的に分析してきた。
 日本の「失われた20年」やアメリカの「大いなる安定」のような長期の経済動向を分析するためには、国際政治的な問題を陽表的に分析する必要があるのかもしれない。
(注)ただし、新古典派的なモデルでは、国際的な再配分は一国の経済動向に大きなインパクトはない、とされている。
同シリーズコラム

2011.06.21 第二一回 マクロ経済政策の政治性ANEW
2011.06.14 第二十回 マクロ経済政策の政治性@NEW
2011.06.07 第十九回 なぜ国家の役割が高まっているのか
2011.05.31 第十八回 TPPと日本経済A
2011.05.24 第十七回 TPPと日本経済@
2011.05.20 第十六回 公的機関の介在で被災企業の債務削減を急げ
2011.04.26 第十五回 復興財源調達の最適解
2011.04.19 第十四回 供給不足経済へ 反転する常識
2011.04.12 第十三回 自己言及パラドックスと財政
2011.04.04 第十二回 リスク増殖社会
2011.03.29 第十一回 大震災に立ち向かう(2)
2011.03.25 第十回 緊急寄稿 大震災に立ち向かう
2011.03.16 第九回 国債の暴落に備える(2)
2011.03.08 第八回 国債の暴落に備える(1)
2011.03.03 第七回 欧米のバランスシート問題と日本の対応(2)
2011.02.22 第六回 欧米のバランスシート問題と日本の対応(1)
2011.02.15 第五回 市場の自律的行動と「調整の失敗」
2011.02.10 第四回 成長戦略からみた対外投資の位置付け
2011.02.03 第三回 無限大発散経路に入った日本の政府債務
2011.02.03 第二回 政府のバランスシート問題
2011.02.03 第一回 バランスシートの経済学

小林 慶一郎 その他コラム・メディア掲載/論文・レポート

2011.06.21 第二一回 マクロ経済政策の政治性ANEW
2011.06.16 金融緩和・二重債務・放射線調査 復興前に考えるべき三つの課題NEW
2011.06.14 第二十回 マクロ経済政策の政治性@NEW

小林 慶一郎 その他コラム・メディア掲載/論文・レポートをもっとみる
マクロ経済 その他コラム・メディア掲載/論文・レポート

2011.06.21 第二一回 マクロ経済政策の政治性ANEW
2011.06.17 世界に通用する農業へ −高品質生かし輸出に活路−NEW
2011.06.17 国民が選択できる公的医療保険をNEW

マクロ経済 その他コラム・メディア掲載/論文・レポートをもっとみる
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2011年6月24日 00:21:30: Pj82T22SRI
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/06/21/013048.php
三橋貴明第107回 繰り返される歴史 2011/06/21 (火) 11:12


 人類とは意外に進歩がないもので、バブル崩壊後のデフレ環境下で「財政均衡」「財政健全化」を目指した結果、状況を悪化させることを繰り返している。繰り返しているとは言っても、バブル崩壊のようなビッグ・イベントは、数十年に一度しか発生しないため、人々が、「前回のバブル崩壊後の教訓」 を忘れ去ってしまっていることが問題の本質である可能性が高い。
 1929年に古典派経済学者の一人アーヴィン・フィッシャーが、アメリカのイェール大学で聴衆に向かい、「株式市場は高値の安定期に達した。以後はここから上昇していくだけである」と、根拠不明な楽観説を説いた直後に、ウォール街株式バブルの大暴落が始まった。世界恐慌の始まりだ。フィッシャー教授は聴衆を煽るのみならず、自らも投資をしていたため、株価暴落で大損害を被った。
 ある意味で、潔い人物だ。マスコミなどで「日本経済は破綻する!」と叫び、自らは日本円を貯め込んでいる、どこかの国の破綻ビジネス従事者よりは真っ当な人だったわけである。
 1929年10月に下落トレンドになったNYダウの株価指数は、1932年6月にはピークから89%も下落した。90年代の日本のバブル崩壊の場合、日経平均が39000円台から最終的には7000円台にまで落ち込んだが、それ以上の下落率だったわけである。
 29年に始まる大恐慌で、アメリカの失業率は25%(33年)にまで上昇した。国民1人当たり実質GDPに至っては、何と29年からの四年間で 52%も減少したのである。すなわち、32年のアメリカ国民は、29年と比較して半分未満の所得で生計を立てていたということになる。
 1929年以降、アメリカの失業率はまさしく「毎年二倍になる」ほどの恐るべきペースで上昇した。フーヴァー大統領がフランクリン・ルーズベルトに大統領選挙で大敗した1933年には、ついに24.7%という凄まじき水準に上昇したのである。
【図107−1 アメリカ大恐慌期の失業率(単位:%)】

 国民所得が半分に減り、その上、労働人口の四人に一人が失業しているわけだ。現在のアメリカは9%を越える失業率に悩んでいるが、大恐慌期に失業率 25%というカタストロフィを経験している以上、オバマ大統領が一般教書演説で「雇用! 雇用!」と叫んだのも、ある意味で当たり前である。
 大恐慌期のアメリカは、別に物不足だったわけではない。むしろ話は真逆で、「物余り」すなわち供給過剰ゆえにデフレギャップが拡大し、雇用が悪化していたのである。現在の日本を見れば分かるが、バブル崩壊や恐慌経済は、「物余りにも関わらず、雇用が悪化し、人々が所得を得られず、自殺者が増える」 という意味で恐ろしいのだ。
(2/3に続く)
(1/3の続き)
 物不足、すなわち極度のインフレーションの場合は、問題が分かりやすい。ところが、デフレーションの場合は、まさに真綿で首を絞められるように国 民経済が縮小していく。それ故に、人々は「数十年に一度のバブル崩壊」の教訓を忘れてしまい、デフレに苦しむ最中にも関わらず、「日銀が国債を買い取ると、ハイパーインフレーション(年率13000%のインフレ)になる。インフレの暴走を制御できなくなる!」 などと言い出す分けだ。
 無論、極度のインフレも問題だが、同じく恐慌的なデフレーションも問題である。筆者は国家の目的について「国民を安全に、豊かに暮らせるようにすること」と定義している。極度のインフレもデフレも、「国民が豊かに暮らせるようにする」ことを実現していないわけだ。
 そうである以上、現在の日本政府は間違いなく政府の義務を果たしていない。これほどまでに深刻なデフレを、事実上、放置している政権は、異様とし か表現のしようがないのだ。しかも、現行政権はデフレ対策を打つどころか、インフレ対策である「事業仕分け」やら「ムダの削減」、そして「増税」に懸命に なっている。これほどまでに笑えないカリカチュア(戯画)は、そうはお目にかかることができない。
 もっとも、バブル崩壊後の恐慌経済下において、評論家や経済学者たちがインフレ対策を叫ぶのは、現在の日本に限った話ではない。1930年頃のアメリカの古典派経済学者たちは、「アメリカの高い失業率は、賃金や価格が固定されているためである。不況は労働者や企業に、より低い対価を受け入れさせる。結果、不況はすぐに終わる」  と、当時の大統領ハーバート・フーヴァーに説いた。すなわち、政府が余計なことをせず、労働者と企業が自らの生産活動の対価として低い賃金、低い価格を受け入れれば、経済はすぐに立ち直ると主張したのである。「国民よ、痛みに耐えて欲しい」 と、フーヴァー大統領が言ったのかどうかは知らないが、当時の財務長アンドリュー・メロンは、大統領に「政府措置を採らないように」と、警告した。
 メロン氏は、当時、以下のことを大統領に対して繰り返したという。「労働を清算しよう。株式を清算しよう。農民を清算しよう。不動産を清算しよう。そうすれば、システムから不健全なものが一掃され、人々が勤勉に働き、道徳的な生活を送るようになるだろう」
 要するに、当時の古典派経済学者は、市場原理に任せて競争を機能させれば、市場から不健全な株式、農民、労働者などが駆逐され、経済は正常な状態を取り戻すと考えたわけである。結果、アメリカ経済は恐慌のどん底に突き落とされる羽目になった。
 しかも、ルーズベルト政権が発足し、ニューディール政策などで一時的に状況が持ち直したと思ったら、またもや同じ事態が発生した。経済学者などの 「財政健全化」や「財政均衡」を求める声に押し切られ、ルーズベルト政権は1937年に緊縮予算を強行した。結果、1938年の第一四半期は実質GDPが 10%も減少するという悲惨な有様に至った。いわゆる、ルーズベルト恐慌である。
 1937年のルーズベルト政権による緊縮財政は、過去四年間のニューディールの成果を台無しにしてしまったわけだ。
(3/3に続く)
(2/3の続き)
 人類の歴史上、増税や政府支出削減といった緊縮財政をデフレ下で強行し、景気拡大に成功した例はない。増税とは、民間の消費や投資意欲を削ぎ落とす。また、政府支出削減とは、文字通り政府最終消費支出や公的固定資本形成(公共投資)を減少させる政策だ。
 GDPとは、大雑把に言うと「個人消費+民間投資+政府支出+純輸出」で計算される。そして、経済成長とはGDPの拡大だ。政府が自ら民間や自身の支出を削減する「努力」をしている以上、GDPが増えるはずがない。
 もちろん、政府の増税や政府支出削減が正しい時期もある。ずばり、インフレ期だ。国内の供給能力が需要に追いついていない状況においては、政府は むしろ率先して増税や政府支出削減を行い、インフレを抑制するべきなのだ。とはいえ、現在の日本が「インフレに悩んでいる」わけではないことは、今さら言 うまでもない。
『2011年6月18日 時事通信「25日にも1次提言=財源問題で詰め−復興会議」
 政府の東日本大震災復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)は18日、首相官邸で第10回会合を開き、第1次提言を25日にも菅直人首相に 提出する方針を決めた。18日は提言の最終案をめぐり協議したが、「基幹税(の増税)を中心に検討」とした復興財源に関する表現などで調整が難航。引き続 き検討し、来週中の決定を目指す。(後略)』
 率直に言って、緊急性が求められる「復興」に関する会議において、「増税するべきか。増税をどのように表現するべきか」 などについて延々と会議で話し合っているなど、正気の沙汰ではない。1930年代のアメリカの場合は、デフレ下の緊縮財政で「国民全体」が苦しむことになったが、現在の日本には真っ先に痛みが直撃する「弱者」がいる。もちろん、被災地住民だ。
 未だに不便な避難生活を送らざるを得ない人々が、何十万人もいる中において、復興構想会議とやらは、会議室で「増税」について話し合っているのである。これまた、全く笑えないカリカチュアだ。
 さすがに、デフレ下かつ「復興需要」がある状況における増税構想は、政治家の支持すら得ていない。無論、増税派の筆頭である財務省に取り込まれてしまった政権中枢や一部の政治家は別だろうが、見識ある人であれば、誰でも現時点における増税路線の異様性は理解できる。
 6月16日。超党派による「増税によらない復興財源を求める会」が国会内で会合を開いた。同会は東日本大震災復興のための財源について、増税ではなく日銀による国債買い切りオペレーションによる調達することを求める声明を発した。
 同会の声明については、民主党や自民党など、超党派の国会議員が211名も署名した。しかも、同会は声明において「政府と日銀によるアコード(政 策協定)」を求めている。素晴らしいことだ。現在の日本がデフレから脱却するには、財政当局(日本政府)と通貨当局(日本銀行)が協力、協調して政策を実 施しなければならない。
 無論、日銀と政府のアコードは、一時的なもので構わない。いずれにせよ、現時点で政府が需要を創り出し、日銀がマネーを供給しなければ、日本経済は永遠にデフレのどん底をさまようことになる。
 現在の日銀は「独立性」などと銘打ち、「通貨の信任」という意味不明な用語を盾に取り、マネタリーベース拡大を拒否している。とはいえ、日本銀行の独立性とは、「日銀が勝手に通貨政策を実施して構わない」という意味ではないのだ。
 日銀は日銀法改正後も、「常に政府と連絡を密にし、充分にコミュニケーションせよ」と定められている。
『日本銀行法(政府との関係)第四条
 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html
 日銀法改正後、日銀の人事は財務省から国会に移された。すなわち、現在は政治家が日銀の人事権を持っているのである。
「アコード拒否するか、あるいは日銀法第四条を無視するなら、人事権を行使するよ」
 国会議員が堂々と上記のことを言うことができるというのが、現在の日銀法なのである。日本の全ての政治家には、是非とも上記の事実を思い出して欲しい。
 さらに、政治家の仕事は財務省の言いなりに「増税」を推進することではなく、国民の豊かさを高めることだ。増税で日本国民が豊かになれるというのであれば、筆者は増税に反対しないが、現実は異なる。
 現段階で政治家が「正しい判断」を実施できない場合、日本は再び98年と同じ状況を迎えることになる。あるいは、30年や38年のアメリカをも上回る恐慌に突っ込みかねないのだ。
 万が一、日本が恐慌期のアメリカのような状況に至ったとき、果たして現在の政治家はその責任を取ることができるのだろうか。


02. 2011年6月24日 00:42:49: Pj82T22SRI
日本の場合は、年金生活者を守ることが優先されているということだな
米国でもインフレによって実質所得は大きく下がっている

http://www.sankeibiz.jp/macro/photos/110620/mca1106200838008-p1.htm
>>02 米税収増に学ぶ…増税なき復興・再生を  
2011.6.20 08:35 田村秀男

米財政収入とFRB資金供給 
政府・日銀の縮み思考
 デフレ不況の日本列島が大震災・放射能災害の追い打ちを受けているというのに、政府は消費者や企業から税をむさぼりとり、日銀は小手先の金融政策でごまかす。日本の政策当局はなぜ、こうも安易な縮み思考に陥るのだろうか。
  そこで市場経済の総本山、米国の財政・金融政策を再点検してみた。米国は2008年9月のリーマン・ショック後、財政支出を大幅に拡大すると同時に、連邦 準備制度理事会(FRB)は紙くずになりかけた住宅ローン担保証券、さらに米国債を買い上げ、ドル資金発行量を3倍以上も増やしてきた。対照的に日本政府 は財政支出をためらい、日銀は資金供給を抑えてきた。日銀はお札の発行によって財政資金を賄う「中央銀行による財政ファイナンス」は金融市場の動揺を招 き、悪性インフレを引き起こす恐れがあると触れ回る。
 では、米国はどうなっただろうか。ドル安になったが、米国債市場は安定したままで、 株価は回復し続けている。消費者物価は石油や穀物価格の上昇、ドル安の影響を受けているというのに、インフレは許容限度範囲内におさまっている。この4月 時点でもリーマン直前に比べて8%しか上昇せず、前年比で3・1%の上昇にとどまっている。日本は物価下落の速度以上に可処分所得は減り、家計はさらに貧 しくなっている。円高は加速し、企業は海外投資に走る。新卒者の雇用機会は減る一方である。

http://www.sankeibiz.jp/images/news/110620/mca1106200838008-p1.jpg

グラフは米財政収入の月ごとの、それ以前12カ月の合計とFRBが発行するドル資金(金融用語では、経済全体に出回る おカネの土台になるので「ベースマネー」と呼ばれる)の残高の推移を表している。FRBはリーマン後、まるで狂気に駆られたかのようにドル札を刷ってき た。この「量的緩和」開始後、約1年で財政収入は回復し始め現在に至るまで上昇基調を保っている。米国の今会計年度の開始月である10年10月からこの5 月までの累計でみると、財政収入の4割強を占める個人所得税収は前年同期比28・4%増で、法人税収も上向いている。増税ではなく自然増収による。オバマ 大統領はこの4月、米財政赤字を23年までに4兆ドル減らす財政再建計画を表明し、富裕者向け増税に踏み込んだが、景気の拡大を前提にしている。デフレ下 でも増税しか頭にない菅直人政権とはわけが違う。日本の税収はリーマン後急落を続けており、好転のメドは立たないままだ。

 興味深いことに、日銀が資金を大量に金融機関に流し込む量的緩和政策(01年3月〜06年3月)をとると、一般会計の税収は03年度を底に上昇し始め、07年度まで増え続けた。
  日米のデータからみて、「中央銀行が大量にお札を刷って流せば、国庫も潤う」と結論づけるのはもちろん短絡的過ぎるが、何らかの関連性はあるだろう。政府 の政策と中央銀行の金融政策とがうまくかみ合えば、民間の経済活動が活発になり、めぐりめぐって税収が増えるという「法則」である。日本の場合、小泉純一 郎政権は03年度に巨額の円売り市場介入に踏み切った。日銀の金融緩和政策と連動することで円安が進行し、輸出産業が息を吹き返した。

総合戦略の視点が欠如
 その後、リーマン後の不況に直面しても、白川方明日銀総裁は量的緩和に回帰しようとしない。政府の景気政策に呼応して経済学の教科書にはない超異例のドル増刷作戦を展開してきたFRBのバーナンキ議長とは対極にある。
  現在、日本で行われている社会保障や復興の財源確保のための増税論議の盲点は明白だ。政府の財政支出や規制緩和などの成長政策、あるいは為替政策と、日銀 の金融政策をどう組み合わせると、消費者や企業が活性化し、税収増に結びつけ、財政収支の好転を図るか、という経済の総合戦略の視点が欠落している。
  与謝野馨経済財政担当相がまとめた「社会保障・税一体改革」案はデフレ下で消費税を増税すれば、家計も企業も地域もさらに疲弊するので、消費税収は横ばい で、所得税、法人税収入が減るという98年度から03年度までの苦い教訓を無視する。菅直人首相肝いりの復興構想会議は、消費税増税は与謝野さんの縄張り とばかりに、東日本大震災の復興財源は所得税と法人税の増税で行く方向で、肝心の復興ビジョンは思いつきの寄せ集めになりそうだ。
 そして 日銀は小出しの成長資金融資でその場凌(しの)ぎの構えだ。政府と日銀が一体となった政策を打ち出さない限り、復興の道筋は見えないし、増税しても財政収 支は悪化の一途だろう。そして、増税また増税という悪循環にはまり、若者は未来を失い、社会保障制度は破綻(はたん)するだろう。(編集委員・田村秀男)
【日曜経済講座】震災復興と一体改革、民自は党利党略捨てよ 国民の失望感は極限に
【日曜経済講座】大復興の鍵握る「新結合」 新型投資のルネサンスを
【日曜経済講座】世界の製造業の命運握る 総合力で強み、日系電子部品
【日曜経済講座】3・11で貧しくなる日本 中国マネーに買いたたかれる
【日曜経済講座】政治は国難に立ち向かえ 復興増税から逃げ回る与野党 


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民72掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民72掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧