６月28日（ブルームバーグ）：ギリシャのパパンドレウ首相は27日、国会議員らに対し、「愛国的良心」に従い、財政緊縮案を支持するよう呼び掛けた。同国国会は同日から、財政難に陥っている同国がデフォルト（債務不履行）を避けられるかどうかを左右する５カ年の中期財政計画の審議に入った。

　　パパンドレウ首相は３日間の審議の冒頭で、「中期計画に賛成票を投じることで、ギリシャ国民にとっての不確実性に一つの区切りをつけることができる」と発言。「破局の間際でわれわれは国を変革する素晴らしい機会を得ている」と議員らに緊縮案への支持を求めた。

　　中期財政計画案の議会採決は29日に行われる予定。昨年決定された第一次ギリシャ支援の1100億ユーロ（約12兆7000億円）の緊急融資枠から同国政府が５回目の融資を受け取るには、予算削減と資産売却から成る780億ユーロ規模の財政緊縮策の議会承認が必要。否決されれば、ユーロ圏初のデフォルトにつながる恐れがある。

　　一方、ギリシャのベニゼロス財務相は議会で、「私は現実と、平均的なギリシャ国民へのリスクについて十分認識している」と述べ、計画している増税と国有資産売却について説明。「われわれは状況を安定化する必要がある。しかしまずは、こうした状況の改善を可能にするため、財政面で生き残る必要がある」と述べた。

　　パパンドレウ首相は、財政緊縮案と関連実施法案の２回の採決で過半数を取る必要がある。与党・全ギリシャ社会主義運動（ＰＡＳＯＫ）は300議席中155議席を有しているが、うち与党２議員は電力会社パブリック・パワーの政府持ち株売却計画への反対などを理由に反対票を投じる可能性がある旨を表明している。パブリック・パワーの従業員はストを実施中。

　　ギリシャの労働組合は28日から48時間のゼネストに突入した。行政サービスや航空便、公共交通機関に影響が出る見通し。

中期財政計画の関連実施法案も27日に議会に提出された。同法案も、次回融資120億ユーロを承認するかどうかを決める７月３日のユーロ圏財務相会合開催前の６月30日までに議会で可決される必要がある。

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更新日時: 2011/06/28 09:51 JST

　
【経済コラム】ギリシャがアジアから学ぶ５つの教訓−Ｗ・ペセック　

　　６月27日(ブルームバーグ)：ギリシャが混沌（こんとん）の中に落ちていく様子を１万キロ離れたアジアから見守るのは苦痛だ。アジアは結局のところ、欧州がこれからまさに耐えようとする経験をしたばかりの地域だからだ。

　　1997年のアジア通貨危機は国の指導者を打ち倒し、騒乱を引き起こし、生活水準を10年かそれ以上前に逆戻りさせた。それだけでなく、国際通貨基金（ＩＭＦ）の評判も著しく傷つけた。ユーロという欧州単一通貨の壮大な実験の破綻に伴い、これと同じような動きが起きると想定する必要がある。

　　欧州がアジアから学べると思われる５つの教訓がここにある。

　　最初の教訓は、デフォルト（債務不履行）が避けられないということだ。欧州のギリシャ救済の取り組みが見るに堪えないのは、それが無駄な努力だからだ。ギリシャ国民は、指導者らが過去10年間積み上げた全ての債務については責任を負わない考えであり、それは終始一貫している。債務不履行につながるこれほどの事情が考えられるだろうか。

　　欧州の隣国が投じるますます多くの資金をギリシャが使い果たす中で、他のドミノも倒れることになるだろう。97年７月にタイが通貨バーツを切り下げた後、インドネシアはタイの混乱に巻き込まれることはないと実際にそうなるまで断言していた。また、韓国はＩＭＦの支援を回避できるとそれが不可能になるまで主張し続けた。

　　　　　　　　　　　　信用できない

　　教訓の２つ目は、債務を整理すれば、回復ペースが速まるということだ。ゴールドマン・サックス・グループの独創的な金融手法の助けを借りて、ユーロ導入基準を達成したギリシャ政府に対しては、信認不安が大きい。財政赤字を応急処置で穴埋めできると言えば、トレーダーはあきれ果て、政策担当者はますます眠れなくなる。

　　韓国は97年に金融危機に屈服し、ＩＭＦに570億ドル規模の救済を要請したが、その後脆弱（ぜいじゃく）な企業や支払い能力のない銀行の淘汰（とうた）を素早く断行し、脱税を取り締まり、債務の規模の公表にも踏み切った。

　　ギリシャは債務の再編は避けられず、その副次的な影響として、ポルトガルとスペイン、イタリアに対して圧力が増すだろう。ギリシャが１年前に行動していれば、デフォルトがいつどのように起きるかと市場が目を覚ましている間ずっと、緊張し続ける必要もなかっただろう。

　　　　　　　　　　　　早い方がいい

　　ＬＧＴグループの南アジア担当投資戦略責任者、サイモン・グロースホッジ氏は「根本的な問題に迅速に対処すればするほど、それがいかに痛みを伴うものであっても素早く回復できる公算が大きい。アジア危機がそれを物語っている」と話している。

　　３番目の教訓は、改革を忘れるなということだ。債務について苦悩するあまり、中国がますます影響力を拡大する世界にあって、欧州の指導者らは改革の必要性から目をそらしている。財政緊縮策はもちろん大事だが、経済の機動力と競争力を高め、雇用創出に貢献する企業家を後押しするための政策の変更も重要だ。

　　アジアは通貨危機後の数年間で、サービス分野の競争を促し、お役所仕事を効率化し、縁故主義を制限する措置を講じた。歳出を削減せざるを得ないとすれば、新たな活力を生み出す創意工夫が必要だ。成長回復のために通貨の切り下げという手段に訴えることができないユーロ圏諸国にとって、改革こそが唯一の道だ。

　　４つ目の教訓は、財政健全化には成長が増税に勝るということだ。財政赤字が拡大しつつあった97年に消費税率を引き上げ、景気回復の芽をつんだ日本の例が記憶に新しい。現在の国際的な環境の下では、成長こそが財政再建につながる道であり、決して増税ではない。

　　　　　　　　　　　　水に流して

　　最後の教訓は、市場は水に流して忘れるのが早いということだ。ＩＭＦに頭を下げる犠牲はもちろん大きいが、条件が鍵となろう。ＩＭＦのギリシャ支援について、インドネシアや韓国、タイに課された条件よりもはるかに緩いという不満がアジアでは大きい。

　　アジア市場の過去14年間の力強い回復ぶりが示すように新たな出発は可能だ。欧州は拒絶するのをやめ、たとえそれがデフォルトを意味するとしても、ギリシャが必要とすることをやらせるべきだ。危機の後も人生は続くことをアジアは示しているのだから。

（ウィリアム・ペセック）

（ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です）

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更新日時: 2011/06/27 15:19 JST