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高齢者を特別扱いしない医療保険 韓国の平均保険料は約1/3 日本の高齢者は極めて優遇
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/507.html
投稿者 sci 日時 2011 年 7 月 25 日 03:33:48: 6WQSToHgoAVCQ
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110720/221575/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>知られざる韓国経済
高齢者を特別扱いしない医療保険
韓国の社会保障制度を分析する――その2「医療保険制度」

2011年7月25日 月曜日
高安 雄一


 前回は韓国の年金制度を取り上げましたが、今回は医療保険を取り上げます。

 年金と同じように高齢化とともに国民負担が増す制度が医療保険制度です。韓国の医療保険の全体像を見て特筆すべき点は、韓国の健康保険では高齢者が特別に優遇されているということはなく、保険料は若干安くなっているとはいえ、ほかの年齢層と医療費の自己負担率が概ね同じとなっていることです。

 日本では通常の自己負担率が30%であるのに対して、70〜74歳の前期高齢者が20%、75歳以上の後期高齢者が10%と低くなっていますが(※1)、韓国ではこのような高齢者に対する優遇措置はありません。前回は国民年金が高齢者に厳しい制度になっている点を見ましたが、医療保険も高齢者に厳しい制度と言うことができそうです。今回も日本の医療保険制度と比較しながら、韓国の医療保険について見ていきます。

一元化されたシンプルな構造

 まず医療保険制度の概略を説明します。韓国の公的な医療保険制度は「国民健康保険制度」に一元化されており、加入者は原則的に国内に居住する国民です(※2)日本の医療保険制度は、大企業の従業員やその被扶養者が加入している「組合管掌健康保険(組合健保)」、中小企業の従業員とその被扶養者が加入している「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」、公務員等やその被扶養者が加入している「共済組合」、自営業者や無業者等が加入している「国民健康保険」、75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」の5つに大きく分かれていますが、韓国はいたってシンプルです。

 韓国の国民健康保険の加入者は、職場加入者と地域加入者の2つに分類され、職場加入者はさらに、勤労者事業所加入者、公・教事業所加入者に分かれます。勤労者事業所加入者は、常用雇用者が1名以上の事業所に雇用される者で、公・教事業所加入者は公務員及び学校の教職員です。そして地域加入者は職場加入者を除く者となります。高齢者については、無職者や自営業者の比率が高いため、地域加入者が多くを占めています。なお国民健康保険の運営は国民健康保険公団が行います。

 医療保険を考える際には負担と給付の2つの面から見ていく必要があります。まず保険料負担については、職場加入者は、8%の範囲内で財政運営委員会(※3)議決内容を斟酌して大統領令で決めた保険料率を、標準報酬月額に掛けた金額を支払います。2011年時点での保険料率は5.64%であり、これを労使が折半します。日本の医療保険の保険料率は、組合健保は平均で7.45%、協会けんぽは、都道府県ごとにわずかに異なっていますが、平均9.34%と(※4)韓国より高い保健料率となっています。

 これに対して地域加入者の保険料の算定方法は若干複雑です。地域加入者の保険料は世帯単位で徴収されます。所得(70等級)、財産保有(50等級)、自動車保有(7等級)の状況がそれぞれ点数化され、合計点数に単価が掛けられ、保険料が決定します。

 ただし年間所得が500万ウォン以下の世帯については、財産保有(50等級)、自動車保有(7等級)に関する点数に、性、年齢、財産などで分類された生活水準及び経済活動参加率点数(30等級)、所得50万ウォン当たり1点を加えた合計点数に単価が掛けられ保険料が決められます。なお、所得が低い場合、財産に応じて10〜30%の軽減、70歳以上の高齢者のみの世帯は、所得が低く財産が一定以下なら30%の軽減がなされます。

 点数の分布を見ると、所得が380点(年間500〜600万ウォン)から1万1625点(同4億9900万ウォン以上)、財産が22点(100〜450万ウォン)から1475点(30億ウォン以上)、自動車が7〜217点です。よって所得のウエートが高く、地域加入者の保険料のかなりの部分は所得で決まることが分かります。

※1 いずれも現役並み所得者は3割負担である。
※2 ただし後述する職場加入者の配偶者や子供などで所得のないものは加入者からは除外される。
※3 保険財政に関連した事項を審議するため、国民健康保険公団に置かれた機関。地域加入者を代表する10名、職場加入者を代表する10名、公益を代表する10名によって構成される。
※4 西沢(2011)199〜200ページ。

 また年間所得が500万ウォン以下の地域加入者については、前述したとおり所得点数ではなく、生活水準及び経済活動参加率点数が加えられますが、これは30〜50歳の点数が高く、20歳未満や65歳以上が低くなっており、男性の点数が高くなっています。これは30〜50歳といった年齢層の人や男性の経済活動参加率が高く、保険料の負担能力が高いと見なされていることがその理由です。また財産や自動車を多く持つなど生活水準が高いと見なされる場合も点数が高くなっています。

 地域加入者の場合は、各自の合計点数に1点につき165.4ウォン(2011年現在)の保険料を支払うことが定められています。では具体的な保険料はどの程度でしょうか。20分位別に2010年における保険料を見ると、最低の第一分位は月額3582ウォン(約276円)、最高の第20分位は26万1411ウォン(約2万170円)です(※5)。そして第10分位と第11分位の平均保険料が6万2103ウォン(4784円)ですので、これが地域加入者の平均的な保険料と考えられます。これは世帯負担額ですが、一人当たりの負担額は2万9328ウォン(約2259円)となります。

30歳代と60歳以上で負担額はそれほど変わらない

 韓国の地域加入者は、日本の国民年金加入者と類似していると考えられるので、両者の保険料を比較してみます。日本については、厚生労働省の「国民健康保険事業年報」によると、一人当たり保険料の平均は2008年で年間8万2765円(月額6897円)です(※6)。

 これは、韓国の地域加入者の一人当たり平均保険料と比べると約3倍です。IMFによる一人当たりGDPは、日本は韓国の約2倍ですが、この差を考慮しても、日本の保険料は高いと言えるでしょう。先に述べたように、韓国の事業所加入者の保険料率も、日本の組合健保や協会けんぽの保険料と比較して低いので、総じて韓国の医療保険料負担は低いと考えて良いでしょう。

 次に、高齢者の負担を見てみましょう。高齢者が多く含まれる韓国の地域加入者について世帯主の年齢別に平均保険料を見ると、30歳代と60歳以上を比較してもそれほど大きな差は見られません(表1)。先述したように65歳以上だけで構成される世帯は保険料が30%軽減されますが、全体的に、高齢者世帯の保険料負担が極端に少ないという状況は見られません。

表1 韓国の地域加入者世帯主年齢別平均保険料負担額(月額)

 
(単位:ウォン)

30歳未満 30歳代 40歳代 50歳代 60歳以上
27587 61696 74308 84533 76040

出所:健康保険政策研究院(2011)14ページ

 一方、日本の高齢者負担について、日本総合研究所の西沢和彦主任研究員は、現役と高齢者を比較した場合、高齢者に極めて有利な保険料になっている点を指摘しています。特に年収150万円の低収入層においては、現役世代の保険料負担は8.0%、前期高齢者、後期高齢者は1.0%、年収200万円の場合は現役世代7.5%、前期高齢者4.0%、後期高齢者2.6%と試算しています(※7)。

 このように、日韓の医療保険料負担を比較すると、韓国では特に高齢者が優遇されているわけではない一方、日本では極めて優遇されているという状況が見えてきます。

 では給付についてはどうでしょうか。自己負担率から考えてみます。

※5 国民健康保険政策研究院(2011)10ページ。
※6 西沢(2011)242ページ。
※7 西沢(2011)216ページ。

 韓国の自己負担率は若干複雑です。外来を見ると病院の種類や地域によって自己負担率が定められています。例えば総合病院の場合は都市地域(基礎自治体が市である地域)で50%、邑面地域(基礎自治体が郡である地域)は45%です。

高度医療を受けると自己負担率は上がる

 また医院や歯科医院の場合では、地域にかかわらず65歳未満は30%の自己負担率ですが、65歳以上の場合は医療費が1万5000ウォン以下の場合は1500ウォンの定額負担ですが、1万5000ウォンを超えた場合は30%の自己負担率が適用されます。薬局は、処方箋による製剤の場合、65歳未満は30%の負担ですが、65歳以上の場合は、1万ウォン以下の場合は1200ウォンの定額負担で、1万5000ウォンを超えた場合は30%の自己負担率が適用されます(表2参照)。

表2 自己負担比率

1.入院 20%

2.外来
病院別 所在地 自己負担比率
上級総合病院   診察料の全額+その他費用の60%
総合病院 都市 50%
邑・面 45%
病院
歯科病院等 都市 40%
邑・面 35%
医院
歯科医院 全地域 <65歳未満>
 30%
<65歳以上>
 15,000ウォン未満であれば1,500ウォン
 15,000ウォンを超過した場合は30%

3.薬局
処方箋製剤 <65歳未満>
 30%
<65歳以上>
 10,000ウォン未満であれば1,200ウォン
 10,000ウォンを超過した場合は30%
処方箋によらない製剤 <4,000ウォン未満>
 投薬1日 1,400ウォン、
 投薬2日 1,600ウォン、
 投薬3日以上 2,000ウォン
<4,000ウォン以上>
 40%

出所:国民健康保険法施行令等により作成。上記自己負担には例外もある。

 日本との比較では、医院に通院した場合は日韓同じ自己負担率ですが、総合病院など高度な医療を提供する医療機関に通院した場合は、日本より高い負担率となります。具体的には、都市地域の総合病院に通院すれば50%、医院に通院すれば原則30%の自己負担率が適用されます。

 なお年間の医療費の自己負担額には上限額が決まっており、これを超えた部分は国民健康保険公団が負担します。具体的には、職場加入者の場合は支払っている保険料が、職場加入者全体で下位50%に相当する場合には200万ウォンが上限額となりますが、上位20%に相当する場合には400万ウォン、その間は300万ウォンとなります。これは地域加入者の場合も同じです。しかしこの上限額も高齢者には配慮されておらず年齢を問わず一律です。

 国民生活基礎保障(日本の生活保護に相当)の受給者、住所不定者で縁故者のいない者、野宿人などは「医療給与法」にもとづき、医療給与を受けることができます。医療給与の受給権者は一種と二種に分かれます。例えば一種受給権者は生活保護を受け、かつ18歳未満あるいは65歳以上の者などが定められています。一種は医療給与額が多く自己負担が少なくなるのですが、一種にせよ二種にせよ、無料、900〜2500ウォンの定額、医療費の5〜15%といった低い自己負担で医療行為を受けることができます。

 この医療給与金は医療給与基金から支払われますが、財源は国庫補助金、地方公共団体の出捐金等です。ただし医療給与は高齢者を対象とした制度ではありません。医療給与の受給権者には高齢者が少なくないことも事実ですが、あくまでも生活困窮者に対する公的な扶助との位置づけです。

 このように、韓国では負担と給付の両面で高齢者は優遇されていませんが、日本では高齢者が大いに優遇されていることが分かります。

国庫支出金の割合は日本の半分程度

 では、健康保険の財源はどのようになっているでしょうか。2010年の国民生活基礎保障総収入は33兆5000億ウォンで、そのうち28億1000ウォン(83.9%)が保険料収入です。また、3兆9000億ウォン(11.7%)が国庫支援金、1兆1000億ウォン(3.2%)がたばこ負担金です。国庫支援金とは、保険料予想収入額の14%を国が支援することが義務づけられているものです。

 たばこ負担金は、たばこの製造業者が支払いを義務づけられている国民健康増進負担金からの支援です。このように、実質的な国からの支援は5兆ウォン(約3900億円)となっています。前回見たように、韓国では年金への国からの財政投入がほとんどなかったことと比べると、医療保険に対する国の支援は比較的多くなっています。

 日本の公費負担は、国保が給付費等の50%(※8)、協会けんぽが16.4%、また後期高齢者医療制度は約50%となっており(※9)、これらを合わせると、医療費国庫負担金は2010年度で9兆4000億円となっています。日本の医療保険制度の総給付費は約30兆円なので、給付費に対する国庫支出の割合は31%となります。一方韓国では、たばこ負担金も含めた財政支出の総給付費に対する比率は14.7%と日本の半分程度の比率にとどまっています。

 このように、韓国の医療保険は、日本と比較すると保険料負担が総じて低く、国費投入が少ないなど、年金と同様、国民負担の面では優しい制度となっています。日本ほど高齢化が進んでいないという事情を加味する必要はありますが、高齢者に対する給付を手厚くすることなく(=自己負担率を低くしない)、高齢者の保険料についてもそれほど優遇しないことによって、現役世代の保険料率を低く抑え、国庫負担率も低く抑えていると捉えることができます。

 韓国では、医療保険についても、年金制度同様、高齢者に厳しい制度を導入することで、現役世代の負担を少なくしていると言えます。韓国の医療制度を見ることで、高齢者に優し過ぎる日本の医療保険制度の問題点が浮かび上がってくるのではないでしょうか。韓国の制度をそのまま日本にあてはめればいいというわけではありませんが、持続可能な医療保険制度を考える上で見習うべき点があるでしょう。

※8 市町村国保の場合。国保組合は43%である。
※9 厚生労働省資料による。

<参考文献>
西沢和彦(2011)『税と社会保障の抜本改革』日本経済新聞出版社
健康保険政策研究院(2011)『2010年保険料負担対比給与費の現況分析』
パクイルス・イドンホン(2010)『健康保険の中・長期財政展望研究』健康保険政策研究院。
このコラムについて
知られざる韓国経済

韓国経済の真の姿を、データと現地取材を通して書いていきます。グローバル企業がめざましく躍進し、高い経済成長率を誇る韓国。果敢に各国と自由貿易協定を結ぶなど、その経済政策は日本でも注目されています。一方、格差、非正規、雇用、農業保護政策、少子高齢化などの分野では、さまざまな課題を抱えてもいます。こういった問題は日本に先駆けている部分もあり、韓国の政策のあり方は、日本にとって参考にすべき点が多くありそうです。マクロとミクロの両方から視点から描きだす、本当の韓国経済の姿がここにあります。

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著者プロフィール

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部社会経済学科准教授。1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。
 

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