オーストラリアへの現地生産進出は1976年から1980年にかけてトヨタ、日産、三菱自工と続いたが、日産自動車は現地生産の車種の販売が振るわず、1992年に撤退した。参考までに三菱自工についてだが、当時資本提携していたアメリカのクライスラーが1970年代後期に経営危機に見舞われ、海外進出した拠点を全て売却して撤退することとなった。オーストラリアにも現地生産工場のあったクライスラーが売却を打診したようである。これにより三菱自工は三菱商事と共同で買収した。こちらも2000年代に入ってから経営危機に見舞われ、2008年に撤退している。

さて日産自動車は、トヨタに対抗するメーカーとして、トヨタ並みに4年に一度のモデルチェンジと、トヨタの豊富な車種に全部対抗できるように豊富なラインナップ体制を敷いた。しかし国内販売はホンダなどライバルに追い上げられ、トヨタの半分まで落ち込んでしまった。それでも車種は減らさず、モデルチェンジ周期も延長しなかったため、会社の負債は雪だるま式に膨張していった。1998年には2兆円に達したのである。

これによりルノー傘下に入ることになったのだが、彼の経営手法については好き嫌いがはっきり分かれる。日産を立て直したことに対する称賛と、高額な報酬を受け取ることに対する批判とだ。このため彼に対する評価は、人によって完全に分かれる。当方もかつては批判的であったが、彼が就任して以降の海外進出は、かつての日産自動車のような失敗がない。実際うまくいっているのは、彼が個性的であり、人間的魅力があるということだ。自分から積極的に海外に出かけ、交渉する。外国では、こういう人物が好まれる。日本の経営者には顔がないと言う旧来の批判があてはまらない。日産といえばゴーンだと、知名度抜群。他の自動車メーカーに、これほどの人物がいるかと言えば疑問符がつくだろう。

ゴーン会長は、あいまいな決定をしない。かつての日産には、この曖昧さがあった。どっちにもつかない。日本的といえばそうだが、これでは市場の縮小する現在では生き残れない。今後、成長を見込める新興国には大胆につぎ込み、市場の縮小する日本国内では三菱自動車と軽自動車で共同開発を行って費用を節約することとした。スズキにもミニバンを供給している。この日産、三菱自工、スズキの協力が最近進んでいる。トヨタに対抗するグループが着実に形成されている。

日本国内でも、トヨタばかりに乗り続ける層の意識改革が必要だ。