電気自動車は航続距離が短いから遠出ができないとか、いつだったか三菱アイ・ミーブとトヨタ・プリウスの比較特集がどこぞの民放であったらしい。スポンサーがトヨタ自動車だったという、実に分かりやすい構図である。電気自動車の航続距離の不安を煽り立てて、ハイブリッドを売り込もうと世論工作したのであろう。だが、電気自動車にはガソリン自動車にはないメリットがあるので、参考にしていただきたい。

電気自動車には、内燃機関を搭載した自動車には欠かせない変速機がない。モーターの特性が、微速から最高速まで、強力なトルクを発生するからだ。電車や電気機関車に変速機はないだろう。だから駆動系の耐久力が桁違いに高い。ガソリン車でよくレース用にエンジンの出力を高めると、大抵壊れるのが変速機。これがないだけでも大変なメリットだ。

これと関連するが、モーターは耐久性が高く、しかもメンテナンスフリーだ。乗りっぱなしでも問題はない。これがガソリンエンジンだと、エンジンオイルの交換やら、オイルフィルターの交換やら、ラジエーター液の交換やら、定期的な整備が必要だ。ガソリンエンジンは熱を発生するから、エンジンルームに熱がこもる。これが原因でエンジンルーム内の部品が劣化する。ガソリン自動車にもあるバッテリーが、エンジンの熱の影響を受けて劣化が進む。ショックアブソーバーの劣化も深刻だ。電気自動車には、これらの問題はほぼない。

電車や電気機関車の寿命はバスやトラックより長い。これらの実績から、電気自動車はかなりの長寿命が期待できる。価格は高くても、少しずつ市場に浸透していくと思う。ディーラーの仕事は新車販売よりも中古車販売が中心になるかも知れない。下取りした中古電気自動車のリフレッシュ工事を行ない、付加価値を与えて再販売する。バッテリーや制御機器を最新のものに交換する。ここで気がつくだろうが、これまで頻繁なモデルチェンジで顧客をひきつけてきたトヨタ商法は、完全に過去のものになるのだ。

電気自動車があれこれ文句をつけている向きがいるが、次の時代の幕は開けたのだから、このような新分野には早く進出し、自らの規格を制定して他社が使用料を支払って利益が転がり込むシステムを整備しておいた方がよい。あのデジタルカメラの普及が一挙に進んで、フィルムカメラが主流から外れるのが早かったことを思えば、電気自動車でも同じことが起きるだろう。