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911十周年に向き合えないアメリカ 地震 ハリケーン 雇用 QE3
http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/131.html
投稿者 sci 日時 2011 年 9 月 03 日 22:28:37: 6WQSToHgoAVCQ
 

オバマが「今回の演説で100万人の新規雇用を産み出す」景気対策を行うとすれば、かなり巨額の財政支出になるので、共和党支持者からの反発はさらに強まるだろう。

また米国のサラリーマンらにとって「量的緩和は効いた(インフレ率アップとドル安で実質賃金と金融資産下落)」と思われているため評判が悪く、QE3は最悪のケースと見られているらしい。

さらに地震やハリケーンにも襲われ、911の総括も、ろくにできないのでは、米国も、前途多難だ。


http://ryumurakami.jmm.co.jp/
「911十周年に向き合えないアメリカ」

    ■ 冷泉彰彦:作家(米国ニュージャージー州在住)
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 ■ 『from 911/USAレポート』               第530回
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 911の十周年を前にして東海岸では珍しい天災が2件立て続けに起きています。
まず「地震」が話題になったのが23日の火曜日でした。マグニチュード5・8とい
う全体としても小規模、ニューヨーク市内の震度は恐らくは2程度だったのですが、
地震は生まれて初めての経験という人も多く、ネットのトラフィックは急増し、各種
のSNSで「あの瞬間はどこにいた? 揺れは感じた?」という内容の膨大な量な会
話が行き来したのです。

 ですが、その話題は週末のハリケーン「アイリーン」の襲来で吹っ飛びました。特
にニューヨーク市では、ハリケーンの直撃というのは珍しいこと、高潮と大潮の満潮
時が重なるということなどから、海沿いの地域を中心に30万人という大規模な避難
体制が取られました。上陸の予想は28日の日曜の午前だったのですが、26日の金
曜には市の歴史始まって以来という「強制避難命令」が発動されました。

 公共交通機関の止まる25日の正午を前にブルームバーク市長は「人間の愚かさに
負けずに避難を」という異例をスピーチをしています。特に対象者が多かったのはブ
ルックリンでした。社会人生活のスタートを友人と「ルームシェア」して住んでいた
りする若年人口の多い同区では、身の回りのものをスーツケースに詰めて内陸部の避
難所に駆け込む若者の姿などもありました。

 特に心配されたのが、今回10周年の機会にオープンする予定だった、旧「グラウ
ンド・ゼロ」の「911メモリアルパーク」です。慰霊のために花を投じる池を二つ
設けるなど、地上から大きく掘り下げた空間を大事に設計されているのです。ところ
がこの施設は、マンハッタン島の中では一番標高が低い水面下の場所になっていると
いうことで、高潮の被害への懸念があり、また慰霊のために255本の植樹がされて
いるのですが、その木が強風で倒れる可能性も指摘されていました。

 幸いなことに、マンハッタン周辺の被害は思ったほどではなく、「911メモリア
ルパーク」も全く被害を受けずに済んだのです。その分といっては何ですが、北部の
バーモント州では多くの町村が洪水と土砂崩れに襲われて40人近い犠牲者を出すと
共に、私の住むニュージャージー州では、北部の河川が増水したためにハリケーンが
去った4日後に最大水位を観測、フォートリー市に近いパターソンという町がほぼ全
域で床上浸水が続くなど、甚大な被害が出ています。

 そんなわけで、さまざまな天災の影響もあり、911の十周年という節目に向かい
合うという雰囲気は、ここニューヨーク近郊でも希薄なままです。まして、全国的に
見れば911を振り返り、その10年の間に起きた様々な問題を再検討するなどとい
うムードはありません。せいぜいが、今週チェイニー前副大統領が手記を刊行すると
共に、三大ネットワークなどに出演して自分の主張(捕虜への拷問で情報収集したこ
とは間違っていない、イラク侵攻は不可避だったなど)を繰り返していたこと、その
手記の中でブッシュ前大統領が自伝で述べている見解との食い違いがあったり、ライ
ス前国務長官との確執が語られていることが話題を呼んだくらいでした。

 新設の「メモリアルパーク」が無事であったことも含めて、ニューヨークの街は静
かに「その日」を待っているのだと思います。そのことは悪いことではないかもしれ
ません。もしかすると、5月にオバマ大統領が「ビンラディン殺害」を報告するかの
ようにこの地で献花を行った、そこで「事件としての911の10周年」は完結して
しまっており、この9月11日には静かに遺族を中心としたニューヨークのコミュニ
ティによる追悼がされるということなのかもしれません。オバマ大統領自身は再度
ニューヨークに来るのですが、そのことの意味はそれほど大きくないかもしれないの
です。

 というのは、9月に入ったアメリカで今、最も関心を呼んでいるのは911のこと
でも、911以来の10年の感慨でもないのです。それは現在進行形での雇用の問題
にほかなりません。実は来週、つまり日曜日に「911の十周年」を控えた週におけ
る大統領と野党共和党の動きも、この雇用の問題が中心になっています。

 中でもバカバカしかったのが、大統領の特別演説をめぐるスケジュールの問題です。
オバマ大統領は、雇用創出政策に関する特別な演説を、9月の第二週に「上下両院合
同議会(ジョイント・セッション)」で行うことになったのですが、問題はその日程
です。どうして9月の第二週なのかというと、月曜の5日がレーバーデー(労働者の
日)であり、これに関連付けたいということと、第4四半期の経済を上昇させ201
2年の大統領選を有利に戦うには、このタイミングしかないということがあります。

 その第二週の日程ですが、まず米議会は夏期休暇からの再開にあたり、全議員の招
集は7日(水)の夕刻と決まっていました。となると、この週に「両院合同議会での
演説」が可能なのは、7日(水)か8日(木)しか可能性はありません。金曜日とい
うことですと、週末にかかってしまいますし、演説を中継しても大した視聴率が取れ
ないので、招集日の関係でこの2日に絞られたのです。

 そこでホワイトハウスは7日(水)を議会に提案しました。この提案はベイナー下
院議長をはじめとする議会共和党を憤激させたのです。というのは、この日の夕刻に
は既に共和党の大統領候補によるTV討論会がセットされていたからです。ホワイト
ハウス側としては、候補となる日が水木の2日しかないことと、8日の木曜日の晩に
はNFL(アメフトのプロリーグ)の開幕戦が入っている(セインツ対パッカーズ)
が入っているのでダメという主張です。

 これに対して共和党は「雇用創出にはオバマが喋るよりもっと効果的なことを自分
たちは討論するんだ」と息巻いたのでした。そもそも日程を組んだのは共和党の方が
先なのです。結果的にホワイトハウス側が折れて、オバマの議会演説は8日、つまり
NFL開幕戦の当日ということになりました。これに対しては民主党系のアナリスト
からは「大統領制の権威を傷つけられた」という批判が出るなど、何ともスッタモン
ダした感じが残っています。

 この騒動が象徴するように、雇用問題に関する与野党の対立は深刻です。オバマは
「今回の演説では100万人の新規雇用を産み出す政策を発表する」のだと息巻いて
いますが、恐らくは相当なカネを投じた「再度の雇用刺激策」を提案することになる
のでしょう。一方で共和党は前回の「景気刺激策は一過性のものであり失敗だった」
という主張ですから、激しく反発してくるものと思われます。

 民主党系のアナリスト(例えばロバート・ライシュ元労働長官)などは、リーマン
・ショック後の最悪期だった前回と違い、今回のタイミングなら実体経済のファンダ
メンタルズが好転しているので、思い切った刺激策を取れば景気と雇用に「点火する」
可能性はあると言っていますが、こればかりは分かりません。例えば今週も金曜日
(2日)に発表された前月8月の新規雇用数は前月がプラス8万5千だったのが、今
回はプラスマイナスゼロという予想外の低い数字となり、株式市場の売りの材料に
なってしまっています。

 そんな中、共和党が激しく反発する中で「刺激策」の見通しが不透明なようですと、
最悪の場合は連銀が「QE3」へと動くかもしれません。日程的には、6日が共和党
のディベート、7日が大統領演説で、その日には連銀の景気動向レポート「ベージュ
ブック」が発表になり、その翌日の9日(金)にはバーナンキ議長の会見があります。
その流れで何かが出てくるのか? そして肝心のFOMCは9月20日(火)から2
1日(水)です。

 いずれにしても、アメリカは「911の十周年」になかなか向き合えてはいません。
静かな「十周年」、ニューヨークなど現場での遺族中心の「十周年」というのも悪く
ないとは思います。ですが、そもそもリーマン・ショックにしても、直前のITバブ
ル崩壊を受けて911で冷え込んだ景気を回復させるための無茶な減税と無茶な金融
政策の結果であるわけです。これにアフガン+イラク戦争の正当性そして戦争による
アメリカの国富蕩尽についての冷静な考察を加えれば、現在のアメリカが苦しんでい
る雇用、景気、財政の三重苦というのは全て911以降の自分たちの判断ミスの集積
だとも言えるでしょう。

 そうした反省に加えて、バース党なきイラクの現状、タリバンの無害化ができず新
政権の求心力が確立しないアフガンの現状など、911以降のアメリカが行った「戦
争」への総括もこの「十周年」には必要なはずです。更に言えば、アメリカが弱体化
し求心力が多極化する中で、自由と民主主義、人権といった普遍的な理念が脆弱化し
た世界、その不安定さの根源に「アメリカの911に対するリアクション」があった
のでは、という反省も必要でしょう。

 そうした俯瞰的な反省の視点は皆無な中、ひたすらに景気と雇用の問題に一喜一憂
する、そのアメリカは同時にハリケーンや地震に襲われている、2011年9月とは
そうした時期なのです。そんな中、せめて「十周年」のその日だけは、静かに、そし
てこの10年を冷静に振り返るチャンスにしたいものです。


【予告】
先週もお話したように、911以来の10年間を振り返る電子書籍を、G2010と
の企画で準備中です。当時のJMMのレポートを抜粋しながら、そこに「2011年
の視点」を書き下ろしで加えて現在から見たこの10年の総括ができるようにとの思
いを込めています。三部構成で、

第一部「911からの10年、テロ戦争とはなんだったのか?」
第二部「ブッシュの8年、草の根保守とイラク戦争の日々」
第三部「オバマ、性急な改革者か?それとも政治的怪物か?」

となっており、トラディショナルな本で言えば、三巻同時刊行ということになるので
すが、今回は第一部を一つの「アプリ」として、その中で第二部、第三部へと読み進
めていただけるような構成になっています。来週にはもっと詳しいご案内ができると
思います。

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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』など
がある。最新刊『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』(阪急コミュニケーショ
ンズ)( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484102145/jmm05-22 )
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●編集部より 引用する場合は出典の明記をお願いします。
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JMM [Japan Mail Media]                No.651 Saturday Edition
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】98,072部
 

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