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欧州の債務危機はどのくらい深刻か
http://www.asyura2.com/11/hasan73/msg/368.html
投稿者 sci 日時 2011 年 9 月 25 日 14:24:06: 6WQSToHgoAVCQ
 

Q:欧州の債務危機はどのくらい深刻か

   ◇回答

□中空麻奈  :BNPパリバ証券クレジット調査部長
    □杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務


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■今回の質問【Q:1230】

 海外、おもにアメリカのメディアですが、欧州(EU)の債務危機を連日大きく報
道しています。現在の状況ですが、どのくらい深刻なのでしょうか。

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                                  村上龍
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 ■ 中空麻奈 :BNPパリバ証券クレジット調査部長

 先週ロンドンに出張で行っていました。リーマンショックの際の直前にはNYに出
張していたのですが、その時と今回では煮詰まり感が大きく違っているという感触を
受けました。つまり、リーマンショックの時にあったのは、誰がデフォルトするかわ
からないという緊張感でしたが、今回は、もう一年以上もこんな状態を続けているこ
とによる倦怠感とソブリンリスクが浮上したときの抜本的な解決策がないという諦
め、加えて、大国や大手金融機関はデフォルトから乖離されているであろうという楽
観的安心感が、奇妙に取り混ぜされた感じ、というのが比較的正確な表現だと思いま
す。

 欧州危機問題は、この先もまだ続くと考えます。というより、マーケットの目線は
すでに最終局面で、その具現化された結論がギリシャ債務リストラ入り、なのはもう
間違いないのですが、しぶとく資金繰りをつけているのが欧州の現状です。デフォル
トとは資金繰りの欠如によってしかもたらされないため、ECBやIMF、EUが資
金を供給し続ける限り、デフォルトが回避されているからです。結論がほぼ見えてい
るのに、資金供給を続けているのは、時間を稼ぎ、結論を先送りする中で、影響をで
きるだけ、当該国に封じ込め、リスクを小さくしたいと欧州自身が考えているから、
に他なりません。

 現在、CDSのスプレッド推移を見ると、ギリシャのスプレッドは5000bp程度(5
年債)とまさにデフォルトリスクが織り込まれたものとなっています。ポルトガル、
アイルランドは1000bp程度(足元ではポルトガルがギリシャのスプレッドを相変わら
ず追っている一方で、アイルランドのスプレッドは落ち着きを取り戻しています。ア
イルランドは財政赤字の問題というより、金融機関のリスクであるということの違
い、法人税率を12.5%に据え置いたことによる堅調な歳入などがあるためです)、ス
ペイン、イタリアはまだそこまで行っていません。よって、現在の状況を鑑み、今後
の示唆と捉えると、ギリシャは債務リストラを含めたデフォルト、ポルトガルやアイ
ルランドは金融支援を受ける可能性大(とはいえ、金融支援を受けたばかりであり、
時間的猶予があると考えられます)、スペイン・イタリアはスプレッドのワイド化は
継続して受けることになると思われますが(まだまだマーケットにはスペイン・イタ
リアのショートポジションが溜まっており、そのアンワインドの分、スプレッドがワ
イド化するのは必至です)、潜在的GDPの大きさ、人口などを考えるとデフォルト
ということはないであろう、ということになります。

 かといって、問題はこうした結論に近づくまでにはまだ時間がかかるであろうとい
うことです。方向性を見いだし、ギリシャなどをどうしていけばいいのか、ユーロが
一枚岩で対応することができなかったことが、ここまで複雑化させた背景になってい
ると考えられます。欧州問題は欧州自身が対応するしかないはずなのですが、意思決
定機関が多すぎることが災いし、かつ、多くの考え方や気持ち、歴史的背景などをす
べて整理することはパズルとして難解過ぎるということなのです。そもそも、金融機
関が債務超過になっても、公的資本を注入すればなんとか回復の道筋が立ちますが、
相手がソブリンの場合には、資金を供給し続け、時間的猶予をあげ、その間に財政再
建をしてもらうしかないのです。ソブリンリスクを解消する有効な手立ては実はな
い、ということでもあります。

 ギリシャ人はあまり働かないと言います。アングラ経済がGDPの4割を占めると
言われる程のマフィア国でもあり、歳入はなかなか伸びません。一方、歳出について
は、こうしたユーロ危機に陥るまでは、ギリシャは53歳(ドイツは現在67歳!で
あるのに)から年金をもらえていた事実からもわかるように、ばんばん出て行ってし
まう。これでは財政再建などできるはずもありません。ギリシャの場合は医者などい
わゆるエリートも税金逃れをしていると言います。結果、財政再建のためのしわ寄せ
は、残る国民(しかもそのうち7割が国家公務員です)に来ているのが現状です。こ
れでは、国民の不満が充満し、ゼネストを繰り返しているのも当然だということにな
るでしょう。

 ギリシャの国民感情もわからなくはないのですが、そうしたギリシャを見て、ドイ
ツをはじめとする経常収支黒字国がその分を転嫁してあげられるのか、といえば、歴
史的背景から見ても、単なる感情論から見ても、難しいことは想像するに難くありま
せん。メルケル首相がユーロ共同発行債を出すべきかどうかについて「債務を同じ鍋
に入れるべきではない。そうすることで、頑張った国が頑張らなかった国を助けるこ
とになってしまうから」と発言したのは、まさに、感情論の象徴とも言えます。

 具体的には、EFSFという金融安定化メカニズムがあるのですが、これではCo
ntagion(病原菌が次々広がるようにリスクが広がること。ギリシャの問題が
ポルトガルやアイルランドへ、それがスペイン、イタリアに波及することをここでは
示します)が止められないとして、現在、EFSFの枠組みを拡大することを各国が
批准しようとしています。おそらく10月にはそれが叶うことになるため、10月に
なれば、マーケットは多少落ち着くと見ています。しかしながら、本格的な枠組みの
拡大は2013年7月スタートのESMを待たなければなりません。またESMの発
効とともに、CAC債が発行される(これは債権ヘアカットが明示化された債券で
す。現在、ギリシャ国債がなかなか債務リストラできないのは、このヘアカットの原
則がないため、です)ことにもなります。そのため、欧州では、現在のような状況の
まま、なんとかデフォルト(ここでのデフォルトはヘアカットやロールオーバーでは
なく、支払い停止や支払い不能に陥るドラスティックなものを示しています。なお、
ヘアカットやロールオーバーが起きても、格付け上の定義ではデフォルトとなりま
す)を避けながら、2013年7月まで時間をかけようとするインセンティブがある
ということになるのです。

 ですから、相応に時間をかけなければ、欧州危機から脱することはできません。そ
の間のマーケットの反応は、まだまだリーマンショックの際と比べることはできませ
ん(わたしはまだリーマンショックと比較して、今の方が悪い、あるいは近づいてい
るといった見方はできないと考えています。金融機関の資金調達コストは当時と現在
ではまだ雲泥の差がありますし、リーマンショック後は流動性が一切枯渇し、かつ、
セーフティネットもなかったとの懸念が先立ちましたが、今回は、資金に偏りがある
ものの、流動性の枯渇はまだ見られませんし、セーフティネットが盤石に用意されて
いるという安心感もあるからです)。それでも現在のようなユーロ危機は継続してし
まう上、その解決策が誰にも見えてこないもどかしさも継続してしまうことを考えれ
ば、長くグローバル経済の足を引っ張ること必至です。しかも、このソブリンリスク
が、金融システム不安に転嫁すること(すでに始まっていますが、どこかの銀行がデ
フォルトするというようなことには至っていません)があれば、リーマンショック以
上の影響が及ぶ可能性はあると思います。欧州金融機関は歴史的関係も深いため、相
互に資金を融通し合っていることが多くなっています。ギリシャのリスクは、フラン
スやドイツのリスク、アイルランドのリスクはイギリスのリスク、にすぐ転嫁される
というわけです。そのため、このままの状況が続き、国債等の価格が暴落を続けれ
ば、大手金融機関の中に損失を抱える場合もあり得るということでしょう。ストレス
テストを7月に行った結果、資本不足行はわずか8行でした、と発表してみたもの
の、その程度の評価の出し方(国債の評価損を15%としました)ではとても足りな
いということで、信認が得られなかったことはご存知でしょう。その後も銀行株の低
下など続いています。個人的には、ベルギーのデクシアやドイツのヒポ・リアルエス
テートなどは、その動向次第では、ユーロ危機を最悪シナリオに近づけていく可能性
が高い、と気にしています。
 
 通貨としてのユーロについても、疑義が生じることは見ておきたい点です。ファン
ダメンタルズが強いわけでもない日本の円は相対的に強くなることを余儀なくされる
状況は欧州の弱さを背景にまだ継続するでしょう。そうなると、直接的には欧州との
関係が希薄な日本においてすら、影響が避けられなくなってくるというわけです。

 ギリシャは、では、この先どうなるのでしょうか。このまま、デフォルトを回避
し、なんとか2013年まで持たせたとしても、それはリスクをギリシャに封じ込
め、他国へのContagionの影響を軽微にする効果があるのであって、ギリ
シャ自身には何らいいことはありません。財政再建の間までの苦しい生活をギリシャ
人は本当に耐えきれるでしょうか。いっそ、ユーロから脱退した方が楽に決まってい
るのに、いつまでもユーロを使い続けるのでしょうか。

 テクニカルにはユーロ離脱のシナリオが検討されています。ギリシャなど弱い国が
抜ける場合とドイツなど強国が抜ける場合。しかし、実際はどちらも難しいと思いま
す。ギリシャが抜ければ、次は誰かと探し続けられるだけでしょうし、ドイツが抜け
るようなユーロは通貨としての魅力を持たなくなるでしょう。しかも、ドイツは東ド
イツと西ドイツを合併させたいというどうしても実行せずにはいられなかったことの
ために、マルクを放棄したわけです。そういう過去を紐解く限り、ユーロ離脱のシナ
リオは現実味を帯びないことになると見ていいのではないでしょうか。

 長々解説してしまいましたが、船頭多くして・・・の状況のためユーロは進むべき
道筋がなかなか建てられませんでした。歴史や我々にはわかり得ない民族的な感情も
大いに影響していると考えられます。かといって、ドイツやフランスのような大国が
腹をくくって、ソブリンリスクに対峙できる程、それぞれの国の政治力は強くありま
せん。まだまだ時間がかかる問題であり、その広がりの程度にも注意が必要であると
いうことは言うまでもない、ということになります。

 最後に、なぜ米国が連日大きくユーロについて取り上げるのか、については、これ
までの流れと違い、米国の事情があるから、と言う面が大きいことを付け加えたいと
思います。米国自身には、景況感の劣化、地方政府の赤字、財政赤字と債務上限、銀
行の格下げ、銀行の隠れ損失(FHFAによる訴訟など)など多くの問題が山積して
います。そんなことにグローバルな関心を集めないで済むように、欧州問題をクロー
ズアップさせておくというのは、実にアメリカ的な発想なのではないでしょうか。

                 BNPパリバ証券クレジット調査部長:中空麻奈

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 ■ 杉岡秋美  :生命保険関連会社勤務

 ギリシャは放っておくと、2001年にデフォルトを宣言したことにアルゼンチンのよ
うになりそうだということで、EUと米国による懸命に事態を回避するための努力が続
けられています。EU加盟国であるということで、当然EUから援助が期待出来るわけで
すが、もし救援に失敗すると、EU経済統合自体の機能低下をしめす端的な証拠となっ
てしまいます。財政赤字の芳しくない他のEU諸国まで信用不安が広がることになり、
2008年のリーマン危機に匹敵するような金融危機を引き起こしかねない状況です。

 ギリシャ国内では、内政が持ちこたえられるぎりぎりまで、財政の赤字削減の努力
が続けられるとともに、財政にもっとも余裕のあるドイツのさらなる財政支援と、ま
たECB(欧州中央銀行)やユーロの緊急時にデフォルト危機の国債を買ったり、ファ
イナンスを保証したりする救済ファンドの資金を拡大したり、より柔軟な条件を適応
することが検討されています。

 ギリシャ国内では、大規模なストライキが予定されるなど更に厳格な財政赤字削減
策にたいする国民の抵抗が広がっていますし、ドイツではメルケル首相が頑張っても、
ギリシャ支援のための追加的な財政支出を国民に納得させるのは一筋縄ではいかない
のでしょう。イッソップ物語の勤勉なアリが怠け者のキリギリスを、簡単に助けるわ
けにはいかないという、一見もっともな理屈です。

 ただ、ドイツが輸出で儲けられ健全な財政を維持できるのは、ギリシャなど輸出競
争力の弱い国がEUに含まれていて、その分通貨としてのユーロが弱いためであるとい
う側面があるので、そのメリット分は貢献すべきだと言う理屈もなりたちます。アメ
リカなどはこのようなレトリックをつかって、ドイツを説得しているようです。

 このような努力が続いているところなので、来週すぐにデフォルトが宣言されると
いった切迫感は無いようですが、根本的な解決はほど遠いところにあります。問題は、
財政再建のためEU各国で採用されている財政緊縮策が景気低下をもたらし、そのこと
がさらに財政再建を妨げているという効果が明らかになってきたからです。ECBは財
政再建に非常に厳格な態度を崩していませんが、その姿勢は世界経済のデフレ化を促
進しているようにみえます。IMFなどは、財政に余裕のある国は、景気配慮を財政再
建に優先させる余地を示唆していますので、今後は財政再建に景気配慮をバランスさ
せる議論が主流になっていくことが望ましいことのように思われます。

                       生命保険関連会社勤務:杉岡秋美

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コメント
 
01. 2011年9月25日 21:58:57: mHY843J0vA
以前の日本の金融政策と同じで、バブルが崩壊した後の銀行のBS悪化を、いかにして改善するか、信用不安が一般企業や個人へ波及するのをいかに防ぐかが、今後の欧州の最大の課題になります。

となれば、かって日本と同じく、フランス、ドイツ、英など主要国でも巨大銀行を救済するため、低金利を続けて利ザヤを与え、信用力を高めに見積もり、必要であれば資金を注入するなど、時間稼ぎが暫く続くことになるのでしょう。

米国の金融機関もデリバティブで深く関わっているので、他人ごとにはできません。
IMFや世銀なども救済のために動くのは間違いないでしょうが、モラルハザード批判を防ぐためには、そう簡単には動けません。

いずれにせよ欧米のこれまでの金融・税制や産業政策自体の改革がなければ復活は難しいので、時期おりおりにVIXが急上昇するなどして長引きそうですね。


02. 2011年9月26日 07:46:52: lqOPOFnyLE
欧州経済浮揚のために、新規プロジェクトを構想し、ユーロ債を発行してそれに当てるべきで、ソブリン債のためのような後ろ向き支援基金では時間かせぎにしかならず、結局経済萎縮に陥る。

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