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ギリシャ発 世界恐慌は阻止できるか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/21772
2011年10月09日（日） ドクターＺは知っている 週刊現代：現代ビジネス
ギリシャ国債のデフォルト(債務不履行)危機が深刻化している。世界恐慌の引き金になるのでは、との危惧が強まっているのだ。ギリシャのGDPは30兆円で、日本(500兆円)の6%、神奈川県(32兆円)とほぼ同じだ。そんな南欧の小国が世界を揺るがすのかと疑問もあるだろう。
'08年のリーマン･ショックでは、民間金融機関一社の破綻が原因になって世界中がダメージを受けた。リーマン･ブラザーズの負債総額は約65兆円。それに対してギリシャ国債残高はおよそ32兆円だが、影響を受ける欧州の各国の債務を考慮すれば、ギリシャ国債のデフォルトはリーマン･ショック級かそれ以上の破壊力があるのだ。
リーマンはしょせん民間企業で、上には米国という国家組織があり、国が対応策を考えることができた。一方、ギリシャは国ではあるが、EU(欧州連合)に加盟し、通貨も自国通貨(ドラクマ)を放棄して共通通貨ユーロを採用している。そのため、国としての中央銀行は持たず、ECB(欧州中央銀行)に金融政策を委ねており、デフォルトへの対応策もユーロ圏という上部組織が担う。
ちなみに、EUは27ヵ国で構成されているが、ユーロを採用しているのは17ヵ国にとどまる。英国、スウェーデン、デンマークなどは、自国の経済状況に応じた金融政策を実施する自由を失いたくないので、自国通貨を使い続けている。
もしもギリシャがユーロ圏に入っていなかったら、どうだろう。いまのような財政危機に陥った場合、当該国は経済立て直しのために金融を緩和する。すると、その結果として通貨は安くなる。通貨安は輸出振興をもたらし、経済が持ち直す。実際、ギリシャという国は過去200年で平均すると2年に一度くらいの割合で経済苦境に陥っており、そのたびにドラクマの調整で凌いできた。
いわばギリシャは「欧州経済の劣等生」。ユーロ加入にあたっても、「財政赤字はGDPの3%以内」という基準を、デリバティブを使って粉飾した報告書でクリアしたことがわかっている。そんなギリシャの財政危機を、ユーロ圏の国々は本気で助けるのか。
残念ながら、歩調は乱れている。ユーロの中には「南欧の国は怠け者」という不名誉な評価に基づく南北問題があり、特に経済優等生のドイツはギリシャに対して極めて冷淡。「ギリシャをユーロから追放せよ。さもなければ、ドイツがユーロを脱退する」という過激な議論まであるほどだ。
ではIMF(国際通貨基金)はどうかと言えば、出資額第1位の米国の影響力は無視できず、ギリシャ支援にも制約がある。ならばG20は役に立つのか。中国、インド、ブラジルなど発展著しい新興国が加わり、近年影響力を増しているG20だが、口は出すもののカネは出さない。G5、G7時代のような実りある議論もなされず、参加者の顔や名前も覚えられないほどで、実態は「Gゼロ」と揶揄する声も聞こえる。
国際機関や国際会議があてにできない中、ギリシャ危機は確実にやってくる。日本はどうするべきか。まずは自国通貨を持っている特権を生かして、金融緩和による円安を実現し、景気回復を図ることだ。
安住淳財務相はG20で「円高で困っている」と訴えたが、そんな泣き言を国際会議で言っても嘗められるだけ。隣に座っていた白川方明日銀総裁に金融緩和を指示するのが先だ。むろん、増税などもってのほかである。
「週刊現代」2011年10月15日号より
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